ご挨拶

日本骨免疫学会 理事長からのご挨拶

日本骨免疫学会 理事長
高柳 広

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

現在も、COVID-19感染拡大に伴い2回目の緊急事態宣言が発令され、今後が見通せない状況が続いております。学会員やそのご家族、ご同僚の方々の中にも、感染により御闘病や御不幸に見舞われた方々もいらっしゃることと存じます。心よりお見舞い、お悔やみ申し上げます。また、患者さんの治療や病院・大学等の運営で大変なご尽力をされている先生方には、この場を借りて深くお礼申し上げます。

2020年は、大きな行動変容で学会の活動も大きな影響を受けました。骨免疫学 20周年を記念する年であったにも関わらず、予定しておりました第6回日本骨免疫学会(石井優会長)が開催できず、令和3年6月30日から7月2日に延期をいたしました。現在、令和3年の開催につきましては、オンサイトとオンラインを併用したハイブリッド型の学会を計画しており、今後の感染状況に柔軟に対応しながら開催する予定です。また、第6回日本骨免疫学会ウインタースクールも翌年に延期となり、開催形態を含め今後の状況に応じて再検討をしていく予定です。

従来の学会とは異なるロケーションと交流手法を用いてThink different=非日常空間で得られる新たな着想から新たなサイエンスを目指す日本骨免疫学会にとっては、人と人との繋がりを絶たれるということは大きな障害です。対面での学術集会の開催が困難なことから、令和2年10月から、 Osteoimmunology Web Seminarと題してZoomによるセミナーを月に一回程度開催することで、骨免疫領域における最新情報の発信を継続することといたしました。厳しい感染状況の中、講演や座長をおつとめいただいた先生方にこの場を借りてお礼申し上げます。多くの学会員の先生方が視聴してくださっておりますので、次回の学術集会頃まで継続していくことができそうです。今後も基礎・臨床から最新のご研究をお話しいただく予定となっておりますので、ご活用いただければ幸いです。

COVID-19により、免疫学はこれまで以上に社会にとって重要な分野になってまいりました。骨免疫学は、免疫学と骨代謝学から生まれた境界領域ですが、私を含め自己免疫疾患等のご専門の先生方も多く、免疫学的な研究をしているにもかかわらず、目前の感染症に対して何のアクションも起こすことができないことに苛立つこともありましたし、学会として特別な情報発信ができなかったことも残念に思います。COVID-19感染症は「分断の疾患(A divisive disease)」と形容されるように、未知の感染症であったことから、実態以上の恐怖を社会に与え、人と人との繋がりを引き裂き、不正確な情報が社会の分断と相互不信を引き起こしました。感染症専門医の声がかき消され、マスコミの言う「専門家」の発言に翻弄され、本当の専門家であるべきサイエンティストですら公平な視点を失い、木を見て森を見ることのできない情報による混迷が続いております。すべては、本当に信頼できる情報が不足している中で、全体像をつかみ行動に反映させることが難しいことによるものと考えられます。

日本骨免疫学会の理事や会員の先生方の中には、第一線でCOVID-19患者の治療にあたったり、病院・大学で対策にあたられて大きな成果をあげた先生方がいらっしゃいます。また、COVID-19の重症化の背景には、免疫系の過剰な活性化が関与することも示唆されており、自己免疫や慢性炎症の研究も役に立つ可能性も出てきております。本学会の継続的な活動によって、新たな交流や意見交換が生まれ、新たな研究の方向性を見出したり、本当に価値ある情報をうる契機になればと期待しております。

まだ先が見通せない中ではありますが、明るい話題も入ってきました。早期のワクチン完成には否定的な意見もありましたが、すでに複数のワクチンが完成して、FDAの厳しい治験を通って臨床応用されました。一部の国では感染率が半減したと報じられました。RNAワクチンやアデノウイルスベクターワクチンが短期間の間に実用化されたことは、まさに人類の叡智の結晶と言えるでしょう。今後、その効果、持続力、副作用などのエビデンスが蓄積されることで、COVID-19が制圧される日が近づくものと期待しております。

分断の疾患に対抗するには、人と人との繋がりを再構築し、サイエンスに基づく情報を共有することで相互の信頼を回復し、ワクチンによって1日も早く正常な日常を取り戻すことと存じますが、本学会も今後の活動の中でわずかでもそこに貢献できるものと信じております。時節柄、例年にも増して会員の皆様にはご自愛いただき、安全、健康にお過ごしいただけますようお願い申し上げます。本年が、会員の皆様にとって素晴らしい一年になりますこと、6月に予定通り学術集会を開催して失われた人と人との交流を再開できることを祈っております。