第2回 日本骨免疫学会 受賞研究紹介


エクソソームを介してがんの免疫エスケープを引き起こすEBAG9の新しい作用メカニズムと骨における役割

キーワード:がん免疫、エクソソーム、エストロゲン

優秀演題賞受賞 井上 聡 先生
(東京都健康長寿医療センター研究所 老化制御)

 閉経後骨粗鬆症の主要な要因は女性ホルモンの欠乏である。免疫系と骨はサイトカインや微小環境を介して相互に関連し、エストロゲンは両者を制御する重要なホルモンとして知られている。我々は、性ホルモンの応答ネットワークの研究を1990年代から継続して進めてきている。エストゲン受容体は転写因子であることから、そのゲノム上の結合部位に注目して標的遺伝子を同定しており、現在は次世代シーケンサーを用いたChIP-seqで、研究当初は試験管内でヒトのゲノムDNAと大腸菌に作らせたエストロゲン受容体タンパク質を反応させて、エストロゲン受容体結合領域を単離した。とくに、転写調節領域が濃縮されているCpGアイランドライブラリーを用いて、新規エストロゲン応答遺伝子EBAG9を同定し(Mol Cell Biol, 1998)、がん免疫からの回避に関与すること (Cancer Res, 2005)、この分子の発現が各種のがんの悪性化に伴い上昇すること、特に乳がんの診断マーカーとして有用であることを明らかにしてきた(Clin Breast Cancer 2013他)。一方で、宿主側としての免疫系におけるEBAG9の役割に関しては不明であった。我々は、EBAG9ノックアウト(Ebag9-KO)マウスを作製し、免疫系と骨における機能を解析した。Ebag9-KOマウスにおける免疫系への影響を探るため、遺伝的背景の同一な膀胱がん細胞を皮下移植したところ、野生型マウスと比較して、腫瘍増殖が著しく抑制され、CD8陽性T細胞の腫瘍塊内部への浸潤が増加していることを明らかにした。腫瘍塊より単離したEbag9-KO由来のCD8陽性T細胞では、脱顆粒反応が増強し、細胞傷害活性が亢進していた。興味深いことに、その作用にエクソソームを介する免疫系制御という新しいメカニズムが示され、その詳細を現在投稿準備中である。一方で、Ebag9-KO雌マウスの骨における表現型として、骨量変化を観察しており、そのメカニズムの解析を進めている。本研究により、エストロゲン応答遺伝子EBAG9はがん免疫系に加え骨の免疫系の制御に関わる新しい分子として機能する可能性が示唆された。
 研究内容は以上ですが、貴重な受賞と発表の機会を頂戴し、第2回骨免疫学会の田中栄会長、ならびに骨免疫学会の関係者の方々にこの場を借りて深謝いたします。





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