Leading Author ~学会受賞者~

転写因子HIF-2αは関節軟骨最表層に発現し、関節軟骨に保護的に作用する

キーワード:変形性関節症、HIF、軟骨変性

優秀演題賞受賞 牧井 勇磨 先生
(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 整形外科)

【目的】

転写因子HIF-2αは変性に伴って関節軟骨に広く発現するようになり、多くの変性関連分子を転写誘導することによって変形性関節症(OA)の進行を促進的に制御する。このようなOAのキーレギュレーターとしての側面とは別に、我々はHIF-2αが正常関節軟骨の最表層(Superficial zone, SFZ)に高発現することを見出した。本研究ではSFZにおけるHIF-2αの作用をin vitro, in vivoにて解析した。

【方法・結果】

マウス関節軟骨を免疫組織染色すると、HIF-2αタンパクはSFZにのみ高発現していた。SFZにはルブリシン(Prg4)が特異的に発現し、関節の滑動を担っていることから、両分子の関係を検討した。マウス膝関節由来の初代SFZ細胞にAdenovirusを用いてHIF-2αを強制発現すると、Prg4が強く誘導され、反対にHif2afl/flマウス由来のSFZ細胞にCre AdenovirusでHIF-2αをノックアウトしたところ、Prg4の発現は低下した。マウスPrg4遺伝子の転写開始点近傍をクローニングしてルシフェラーゼアッセイを行ったところ、HIF-2αによって転写活性が増強した。この領域に含まれるhypoxia responsive element(HRE)にMutationを加えたところ、HIF-2αによる転写活性化は減弱した。In vivoではPrg4-CreERT2;Hif2afl/flマウスでOAモデルを作成したところ、Prg4-CreERT2;Hif2afl/flでOA進行がコントロールに比較して有意に促進した。

【結論】

HIF-2αはSFZに発現し、Prg4の発現を誘導することによって関節軟骨に保護的に作用する。

  • 写真:第2回日本骨免疫学会にて

    写真:第2回日本骨免疫学会にて