骨免疫学 最新文献紹介
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  • 1型糖尿病

    RANKL/RANKはサイトカインによって誘導されるβ細胞死に必要である;RANKL阻害剤であるOPGはげっ歯類の1型糖尿病を回復させる

    原題:

    RANKL/RANK is required for cytokine-induced beta cell death; osteoprotegerin, a RANKL inhibitor, reverses rodent type 1 diabetes

    著者:

    Nagesha Guthalu Kondegowda, Joanna Filipowska, Jeong-su Do, Nancy Leon-Rivera, Rosemary Li, Rollie Hampton, Selassie Ogyaadu, Camilla Levister, Josef M. Penninger, Helena Reijonen, Carol J. Levy, Rupangi C. Vasavada

    雑誌:

    Sci Adv, 9, eadf5238(2023)

    POINT!

     1型糖尿病(T1D)の治療には、機能的なβ細胞の再生とストレス下での生存を刺激することが必要である。以前、OPGやデノスマブによるRANKL/RANK経路の阻害がβ細胞の増殖を誘導することが示されている。本研究で著者らは、RANKL/RANK経路の阻害によるβ細胞増殖の分子メカニズムおよび自己免疫性膵島炎や低インスリン血症、高血糖などを示すNOD/LtJマウスを用いたRANKL/RANK経路の阻害によるT1D治療可能性を探索した。まず、著者らはOPGがマウスやヒトのβ細胞におけるサイトカイン(IL-1β、IFN-γ、TNF-α)誘発性細胞死、機能障害、シグナル伝達経路(NF-κB p65やSTAT1)の活性化を抑制することを示した。RANKfloxマウス膵島細胞にアデノウイルスを用いてCreリコンビナーゼを発現させることでRANKを欠損させると、サイトカインによるβ細胞死が有意に抑制された。一方、これらの結果はサイトカイン未刺激状態では観察されなかったことから、基底状態のβ細胞死には影響しないことが示された。また、これらのRANKによるサイトカイン誘発性β細胞死の促進には、RANK-TRAF6相互作用を介したNF-κB活性化が必須であることも示された。過去に報告されたヒト膵臓のシングルセルRNA-seq解析から、RANKは主にβ細胞で発現しており、RANKLは基底状態ではほとんど検出されないことが示されたが、サイトカイン処理によりヒト膵島からのRANKL発現が有意に上昇した。また、健常者末梢血中の免疫細胞では、RANKは単球とBリンパ球に、RANKLは活性化CD4およびCD8 Tリンパ球で観察された。さらにOPGとデノスマブは、RANKLによる単球の活性化を阻害することにより、活性化T細胞での炎症性サイトカイン発現を減少させた。In vivoでのOPG投与は、T1Dを発症したNOD/LtJマウスにおけるβ細胞を増加させ、血中インスリン濃度の上昇や、耐糖能の改善を引き起こすことでT1Dが回復した。また、著者らはヒトT1D患者血清がヒトα細胞死は誘導しない一方、ヒトβ細胞死と機能障害を誘導することを見出し、OPGやデノスマブはこのT1D血清誘導性β細胞死と機能障害を抑制した。以上から、RANKL/RANK経路の阻害がT1D治療につながる可能性が示された。

    FGF23

    FGF23はDmp1欠損マウスにおける骨芽前駆細胞の分化を直接的に阻害する

    原題:

    FGF23 directly inhibits osteoprogenitor differentiation in Dmp1 knockout mice

    著者:

    Guillaume Courbon, Dominik Kentrup, Jane Joy Thomas, Xueyan Wang, Hao-Hsuan Tsai, Jadeah Spindler, John Von Drasek, Laura Mazudie Ndjonko, Marta Martinez Calle, Sana Lynch, Lauriane Hivert, Xiaofang Wang, Wenhan Chang, Jian Q Feng, Valentin David, Aline Martin

    雑誌:

    JCI Insight, 8: e156850(2023)

    POINT!

     FGF23は骨によって産生されるリン調節ホルモンである。遺伝性低リン血症は、FGF23過剰、骨格成長障害、骨軟化症を伴う。FGF23抗体ブロスマブは、X連鎖性低リン血症においては有効な治療戦略となったが、常染色体潜性低リン血症性くる病(ARHR)においては、まだ限られた臨床試験しか行われていない。本研究で著者らは、ARHR1モデルであるDmp1欠損マウスにおいて、食餌性Pi補給と骨特異的Fgf23欠失が骨とミネラル代謝に及ぼす影響、および骨芽細胞の分化・機能に対するFGF23過剰とDmp1欠損の影響を調べた。先行研究と同様に、Dmp1欠損マウスは12週齢において、血清中FGF23およびPTH濃度の上昇、低リン血症、成長障害、くる病、骨軟化症を示したが、これらのマウスに対する6週間の食餌性Pi補給により、既存の総FGF23およびintact FGF23過剰症がさらに悪化し、尿中リン排泄率がさらに増加し、骨軟化症も悪化した。著者らは次に、Dmp1欠損における骨産生FGF23の寄与を理解するために、Dmp1-creを用いて成熟骨芽細胞および骨細胞においてFgf23を欠失させた(Fgf23cKO)。Dmp1欠損マウスにおける成熟骨芽細胞および骨細胞特異的なFgf23の欠失は、過剰な血清中総FGF23およびintact FGF23の約75%減少、血清中PTHの約50%減少、1,25(OH)2Dレベルもそれに比例した減少を示し、血清Pi値を完全に正常化した。骨の表現型に関しては、Fgf23cKOマウスにおいて骨成長および海綿骨は野生型マウスと同様であったが、皮質骨量の増加などの皮質骨の表現型が観察された。一方で、Dmp1欠損Fgf23cKOマウスでは、Dmp1欠損マウスでみられる骨成長や海綿骨および皮質骨の異常、石灰化と骨細胞形態の異常、骨小腔-骨細管ネットワークの異常などを部分的にしか回復させず、くる病の表現型が一部残存していた。そこで著者らは、これらのマウス骨髄間質細胞由来の骨芽細胞を培養し、Dmp1欠損とFgf23欠損の骨芽細胞分化に対する影響を調べた。in vivoの結果と一致して、Dmp1欠損細胞培養上清中FGF23レベルは顕著に上昇しており、Dmp1欠損Fgf23cKO細胞培養上清中では完全に正常化していた。また、Dmp1欠損細胞ではALP染色およびアリザリンレッドS染色性の低下が観察された。Dmp1欠損Fgf23cKO細胞培養ではALP染色性は完全に回復した一方、アリザリンレッドS染色性は同程度であったことから、過剰なFGF23が直接的に骨芽細胞の分化を阻害し、Dmp1の欠損がFGF23やPiレベルとは無関係に石灰化の障害に寄与することが示された。さらに著者らは、これらの培養骨芽細胞のバルクRNA-Seq解析およびシングルセルRNA-seq解析とそれらのパスウェイ解析などを行うことで、FGF23過剰とDmp1欠損が、それぞれ骨芽細胞の分化と石灰化に及ぼす影響の違いを裏付けるデータを示した。実際にMC3T3-E1骨芽細胞に対するリコンビナントFGF23の添加で骨芽細胞分化が有意に阻害され、FGF23もしくはDmp1の過剰発現で、FGF23とDmp1の骨芽細胞の分化と石灰化に及ぼす影響が独立していることを示した。以上から、FGF23による低リン血症は、Dmp1欠損マウスで観察される骨の異常の部分的な原因でしかないことが明らかにされた。

    樹状細胞

    樹状細胞は破骨細胞の重要な前駆細胞である

    原題:

    Bona fide dendritic cells are pivotal precursors for osteoclasts

    著者:

    Antonia Puchner, Elisabeth Simader, Victoria Saferding, Melanie Hofmann, Markus Kieler, Julia Brunner, René Pfeifle, Birgit Niederreiter, Gerhard Krönke, Gernot Schabbauer, Philippe Georgel, Gretchen Diehl, Guenter Steiner, Silvia Hayer Daniel Aletaha, Stephan Blüml

    雑誌:

    Ann Rheum Dis, doi:10.1136/ard-2022-223817(2023)

    POINT!

     破骨細胞は骨髄由来の多核細胞であり、骨吸収を担うユニークな細胞であるが、その前駆細胞の正確な性質はまだ明らかにされていない。本研究で著者らは、様々なジフテリア毒素(DT)による特定の細胞集団除去可能なマウスとレポーターマウスを用いて、関節炎および骨の恒常性維持における樹状細胞(DC)の役割を調べたところ、炎症性関節疾患のみならず、定常状態においてもDCが破骨前駆細胞としてふるまうことを示した。まず、CD11c-ジフテリア毒素受容体(CD11cDTR)マウスでのK/BxN血清移入モデルおよびhTNFtg/CD11cDTRマウス作製により、CD11c+細胞が関節炎に寄与しているかどうかを調べた。これらのマウスに対するDT投与は滑膜炎には影響しなかった一方、炎症性骨破壊と破骨細胞形成が顕著に抑制された。これらのマウスにおける炎症性サイトカイン発現を調べたところ、IL-6とIL-1βはむしろ増加傾向を示した。対照的に、破骨細胞に関連するTRAPやRANKの発現は著しく減少していた。実際に、CD11cDTRマウスにDTを1回投与して長管骨におけるTRAP+破骨細胞数を経時的に解析したところ、投与2日後まではほとんど検出されず、5〜6日後に投与前にまで回復した。骨髄細胞のin vitro破骨細胞分化過程におけるCD11c発現を調べたところ、培養前にCD11cを発現する骨髄細胞はごくわずかであったが、M-CSFで刺激するとほとんどがCD11c陽性となった。さらに、CD11c-CreによりtdTomatoを発現するレポーターマウスを用い、in vitroおよびin vivoで全てのTRAP+多核細胞がCD11c+細胞由来であることが示された。一方、これまでに非古典的単球が破骨細胞に分化できることが報告されており、それらのうちのサブセットはCD11cも発現していることから、これらの細胞で発現するCX3CR1に着目し、CD11c-Cre/CX3CR1-STOP-DTRマウスを作製してDTを投与した。その結果、破骨細胞数などには差がみられなかったことから、破骨細胞はCX3CR1を発現するCD11c+細胞由来ではないことが示唆された。次に、著者らは単球、形質細胞様樹状細胞、その他の免疫細胞集団では発現せず、従来型DC(cDC)に特異的に発現するZbtb46に着目し、Zbtb46-CreによりtdTomatoを発現するレポーターマウスを用いた。in vitro破骨細胞分化系では、大部分の破骨細胞がtdTomato陽性であった一方、骨髄のtdTomato+細胞とtdTomato-細胞をソーティングしたところ、同程度の破骨細胞分化が観察された。in vivoでは、Zbtb46レポーターマウスの長管骨におけるTRAP+破骨細胞のほとんどがtdTomato+であった。さらに、Zbtb46-Cre/DTRマウスにDTを投与すると、長管骨におけるほとんどの破骨細胞が枯渇した。したがって、Zbtb46発現細胞は定常状態においてin vivoでの破骨細胞の重要な前駆細胞プールであることが示唆された。また、ヒト末梢血から採取したCD1c+CD19-ヒトcDC(これらの細胞はCD14-)はこれまでに用いられてきたCD14+単球(これらの細胞はCD1c-CD19-)と比較して同程度、骨吸収性破骨細胞に分化した。以上の結果から、DCが重要な破骨前駆細胞であることが明らかにされた。

    皮膚の創傷治癒

    皮膚の創傷治癒を司るCD201陽性筋膜前駆細胞の同定

    原題:

    CD201+ fascia progenitors choreograph injury repair

    著者:

    Donovan Correa-Gallegos, Haifeng Ye, Bikram Dasgupta,Aydan Sardogan, Safwen Kadri, Ravinder Kandi, Ruoxuan Dai, Yue Lin, Robert Kopplin, Disha Shantaram Shenai,Juliane Wannemacher, Ryo Ichijo, Dongsheng Jiang,Maximilian Strunz, Meshal Ansari, Illias Angelidis,Herbert B. Schiller, Thomas Volz, Hans-Günther Machens, and Yuval Rinkevich

    雑誌:

    Nature, 623: 792–802.(2023)

    POINT!

     皮膚の損傷治癒における線維芽細胞前駆細胞の分化過程とその調節メカニズムの詳細は不明であった。筆者らはマウス皮膚損傷モデルにおいて、損傷後の炎症、増殖、リモデリング期における線維芽細胞の挙動をscRNA-seq解析により追跡することで、筋膜に存在するCD201陽性の線維芽細胞前駆細胞を同定し、これが炎症性線維芽細胞を経て筋線維芽細胞へと分化することを明らかにした。炎症性線維芽細胞を除去したマウスでは、収縮性の筋線維芽細胞の数が減少し、創傷治癒が著しく遅れたことから、筋膜由来の炎症性線維芽細胞の創傷治癒における重要性が示された。CD201+筋膜前駆細胞の分化はレチノイン酸と低酸素誘導因子HIF1αによって調節されており、レチノイン酸は炎症性線維芽細胞から筋線維芽細胞への移行を負に、HIF1αは正に制御することが示唆された。さらに、強皮症患者の皮膚病変における線維芽細胞の分化パターンをscRNA-seqにより解析することで、マウスで観察された結果と類似したパターンの存在が確認された。以上から、皮膚の損傷治癒におけるCD201陽性筋膜前駆細胞の重要性とその分化過程の詳細が明らかとなった。

    骨髄ニッチ

    乳がんは骨髄ニッチを再構成することにより、造血幹細胞のミエロイド系分化を遠隔的に促進する

    原題:

    Breast cancer remotely imposes a myeloid bias on haematopoietic stem cells by reprogramming the bone marrow niche

    著者:

    Yohan Gerber-Ferder, Jason Cosgrove, Aleria Duperray-Susini, Yoann Missolo-Koussou, Marine Dubois, Kateryna, Manuela Pereira-Abrantes, Christine Sedlik, Sonia Lameiras, Sylvain Baulande, Nathalie Bendriss-Vermare, Pierre Guermonprez, Diana Passaro, Leïla Perië, Eliane Piaggio, and Julie Helft

    雑誌:

    Nat. Cell Biol., 25: 1736-1745.(2023)

    POINT!

     腫瘍微小環境には腫瘍増殖を促進するミエロイド系細胞が存在し、ミエロイド系細胞の浸潤が多いほど患者の予後が悪化することが知られている。著者らは、乳がんの自然発癌モデルマウス(MMTV-PyMT、MMTV-Neu)およびがん細胞(Py230)移植モデルを用いて、腫瘍進展中の骨髄におけるミエロイド分化促進機構の解明に挑んだ。腫瘍モデルマウスにおいて、骨髄中の造血幹細胞を含む細胞集団であるLSK細胞(Lin-Sca1+Kit+)の増加と血中ミエロイド系細胞の増加が観察された。シングルセルRNA-seq解析より、PyMTマウス由来LSK細胞ではミエロイド系細胞への分化に関連する遺伝子発現が上昇していた。in vitroおよびin vivoの検証試験からPyMTマウス由来造血幹細胞はミエロイド系細胞への分化が亢進していることが示された。血中タンパク質網羅的解析やOsteoSenseを用いた解析によりPyMTマウスにおいて骨代謝回転が亢進していることが示されため、PyMTマウスの骨髄ストローマ細胞を解析した。PyMTマウスの骨髄では骨分化能の高いCD51陽性間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)が増加しており、IFNやサイトカイン反応関連遺伝子群の発現が上昇していた。共培養実験から、これらMSCは造血幹細胞のミエロイド系細胞への分化を支持することが示された。本研究より、腫瘍による骨髄ニッチの変容がミエロイド系細胞の分化促進に寄与している可能性が示唆された。

    骨発生

    マウスの骨発生において、YAPとTAZは骨芽細胞前駆細胞動員を血管新生と機械刺激調節に結びつける

    原題:

    YAP and TAZ couple osteoblast precursor mobilization to angiogenesis and mechanoregulation in murine bone development

    著者:

    Joseph M. Collins, Annemarie Lang, Cristian Parisi, Yasaman Moharrer, Madhura P. Nijsure, Jong Hyun (Thomas) Kim, Saima Ahmed, Gregory L. Szeto, Ling Qin, Riccardo Gottardi, Nathaniel A. Dyment, Niamh C. Nowlan, and Joel D. Boerckel

    雑誌:

    Dev. Cell, 59: 1-17.(2023)

    POINT!

     胎児の骨の発達には、成長板において無血管性軟骨への血管新生が必要である。これには骨芽細胞前駆細胞と血管の協調的な動員が重要であると推測される。又、成人の骨では血管に隣接する骨芽細胞前駆細胞が機械的刺激を受けて維持されていると考えられているが、どのように機械的な応答をするかは不明である。今回筆者らは機械応答性転写制御因子であるYes 関連タンパク質 (YAP) と PDZ 結合モチーフを持つ転写共活性化因子 (TAZ)が、空間的に血管新生を誘導する血管関連骨芽細胞前駆細胞(VOPs)動員に寄与し、血管の形態形成を制御して軟骨のリモデリングを調節し、マウス胎児の骨形成の機械刺激制御に関わることを示した。また、このVOPsではYAPとTAZがCXCL12発現を調節していると考えられ、YAPとTAZをVOPsから欠失するとコラーゲン-インテグリンを介したVOPsと血管内皮細胞の相互作用が失われた。3Dヒト細胞共培養において、CXCL12添加はストローマ細胞のYAP/TAZ欠失による血管新生障害をレスキューすることができた。またex vivoでの機械的負荷誘導性の骨形成実験において、YAP/TAZの欠失や負荷なしの状態では一次骨化中心の負荷誘導性ALP活性が見られず、Endomucin+細胞も観察できなかった。これらのデータから、血管関連骨芽細胞前駆細胞内で機械的シグナル伝達をYAP/TAZが介することで、骨の発生がなされることが示された。

    IL-4

    骨髄におけるIL-4シグナルが腫瘍促進性骨髄球系細胞の産生を促す

    原題:

    An IL-4 signalling axis in bone marrow drives pro-tumorigenic myelopoiesis

    著者:

    Nelson M. LaMarche, Samarth Hegde, Matthew D. Park, Barbara B. Maier, Leanna Troncoso, Jessica Le Berichel, Pauline Hamon, Meriem Belabed, Raphaël Mattiuz, Clotilde Hennequin, Theodore Chin, Amanda M. Reid, Iván Reyes-Torres, Erika Nemeth, Ruiyuan Zhang, Oakley C. Olson, Deborah B. Doroshow, Nicholas C. Rohs, Jorge E. Gomez, Rajwanth Veluswamy, Nicole Hall, Nicholas Venturini, Florent Ginhoux, Zhaoyuan Liu, Mark Buckup, Igor Figueiredo, Vladimir Roudko, Kensuke Miyake, Hajime Karasuyama, Edgar Gonzalez-Kozlova, Sacha Gnjatic, Emmanuelle Passegué, Seunghee Kim-Schulze, Brian D. Brown, Fred R. Hirsch, Brian S. Kim, Thomas U. Marron, and Miriam Merad

    雑誌:

    Nature, doi: 10.1038/s41586-023-06797-9.(2023)

    POINT!

     がんの進行には腫瘍微小環境が重要であり、単球由来マクロファージ(monocyte-derived macrophages: mo-macs)は抗腫瘍免疫反応を抑制する。著者らは、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer: NSCLC)病変部位のシングルセルRNA-seqの結果からIL-4が腫瘍浸潤mo-macs分化のドライバーになりうる可能性を考えた。この仮説を検証するために、骨髄系前駆細胞特異的にIL-4受容体Il4raを欠損させたマウスに腫瘍を移植したところ、腫瘍浸潤mo-macsの数と腫瘍体積の減少が認められた。またIL-4Rα下流の転写因子であるSTAT6が腫瘍移植群の骨髄でリン酸化されていたことから、IL-4が骨髄系前駆細胞に作用し、mo-macsの分化を促進することがわかった。さらに、抗体による好塩基球の除去によって骨髄系前駆細胞やmo-macsの数、腫瘍体積がいずれも減少したことから、好塩基球がmo-macs分化を促進することが示された。著者らは、NSCLC患者を対象に、IL-4Rα遮断抗体dupilumabとPD-1/PD-L1チェックポイント阻害剤の併用治療を実施した。その結果、mo-macs数の減少および腫瘍浸潤CD8+T細胞数の増加が観察され、6人中1人の患者に顕著な腫瘍の縮小が認められた。本研究により、好塩基球由来のIL-4が、腫瘍そのものではなく骨髄で骨髄系前駆細胞に作用することでmo-macsの分化を促すことを明らかにし、がんは原発部位以外の治療を要する全身性の疾患であるという新たなコンセプトが提示された。また、免疫チェックポイント阻害に加えdupilumabとの併用ががん治療に有用であることを示唆した。

    神経成長因子

    レプチン受容体陽性細胞は神経成長因子の産生を介して骨髄の神経支配と再生を促進する

    原題:

    Leptin receptor+ cells promote bone marrow innervation and regeneration by synthesizing nerve growth factor

    著者:

    Xiang Gao, Malea M Murphy, James G Peyer, Yuehan Ni, Min Yang, Yixuan Zhang, Jiaming Guo, Nergis Kara, Claire Embree, Alpaslan Tasdogan, Jessalyn M Ubellacker, Genevieve M Crane, Shentong Fang, Zhiyu Zhao, Bo Shen, and Sean J Morrison

    雑誌:

    Nat. Cell Biol., 25: 1746–1757.(2023)

    POINT!

     骨髄にある末梢神経は、骨髄破壊後の造血再生を促進することが知られているが、そのメカニズムは不明である。今回、筆者らはレプチン受容体陽性(LepR+)間質細胞から産生される神経成長因子(NGF)が、骨髄における神経線維の維持に必要であることを明らかにした。筆者らは、NGFが骨髄における唯一の神経栄養因子であることに着目し、マウスの脛骨と腓骨の細胞を用いてscRNA-seqを行ったところ、NGF発現細胞としてLepR+細胞を同定した。NGFの役割を調べるために、LeprCre;Ngfflox/Δマウスを作製し、骨髄でNGFの発現を欠失させた結果、骨髄では神経線維がほとんど見られなかった。神経線維のない骨髄(LeprCre;Ngfflox/Δマウス)では、定常時の造血は正常だったが、骨髄破壊後の細胞移入モデルにおいて造血と血管再生が著しく障害され、生存率が対称群と比べて低下した。一方で、神経線維のある骨髄(Ngfflox/Δマウス)ではLepR+細胞からのNGF産生が増加し、神経線維の発芽、造血及び血管再生が促進されていた。最後に、LeprCre;Ngfflox/Δマウスに2受容体アゴニストを投与した結果、LepR+細胞から成長因子の産生が増加し、造血と血管再生の障害はレスキューされた。以上、LepR+細胞がNGF産生を介して神経を維持し、神経がLepR+細胞による成長因子の産生を促進するという相互関係を通じて、骨髄の再生を促進することがわかった。

    クローン退出

    CD8 T細胞の自己寛容は自己反応性胸腺細胞のクローン退出によって成立する

    原題:

    CD8 T cell tolerance results from eviction of immature autoreactive cells from the thymus

    著者:

    Mohamed Elsherif Badr, Zhongmei Zhang, Xuguang Tai, and Alfred Singer

    雑誌:

    Science, 382: 534-541.(2023)

    POINT!

     胸腺はT細胞が分化する臓器である。これまで、自己反応性を有する胸腺細胞(未熟T細胞)は、負の選択によって細胞死に至り、生体から排除されると考えられてきた(クローン欠失: clonal deletion)。本研究において、筆者らはCD8 T細胞系列に決定された自己反応性胸腺細胞が、末梢組織へ移行し、自己寛容の確立に寄与することを突き止めた。筆者らは新たに見出されたこの現象をクローン退出(clonal eviction)と呼称している。自己反応性CD8陽性胸腺細胞は、自己抗原を認識することで強いTCRシグナルを受容する。その結果、細胞死抑制因子Bcl2とスフィンゴシン-1-リン酸受容体の発現が誘導され、同細胞は未熟なまま胸腺外へ排出される。これらの細胞は、末梢組織においてIL-7の作用によって成熟したCD122+Ly49+CD8 T細胞へ分化する。自己反応性CD8 T細胞は、抗原刺激に対する反応性が低く、腫瘍形成を促進し、T細胞誘導性腸炎モデルの病態を改善した。以上より、胸腺にて生存を許された自己反応性CD8陽性T細胞は、クローン退出により末梢組織へ移行し、免疫応答を抑制することが示された。

    骨髄ニッチ

    骨髄ニッチの分化可塑性が造血幹細胞の再生を促進する

    原題:

    Cellular plasticity of the bone marrow niche promotes hematopoietic stem cell regeneration

    著者:

    Hiroyuki Hirakawa, Longfei Gao, Daniel Naveed Tavakol, Gordana Vunjak-Novakovic and Lei Ding

    雑誌:

    Nat. Genet., doi: 10.1038/s41588-023-01528-2.(2023)

    POINT!

     造血幹細胞は骨髄ニッチによって維持されており、その中でもLepR+ストローマ細胞は造血を支えるサイトカインの主な供給源である。LepR+細胞は不均一な集団であり、又、脂肪細胞や骨芽細胞に分化することが知られている。骨髄移植における放射線照射後の造血幹細胞の再生過程でも、LepR+細胞が重要な役割を果たしていると考えられている。放射線照射後の骨髄内は脂肪細胞で埋め尽くされ、造血幹細胞の再生に伴い脂肪細胞が消失するが、そのメカニズムはまだ解明されていない。そこで著者らは、LepR+細胞が脂肪細胞や骨芽細胞に分化するだけでなく、分化後の脂肪細胞もLepR+に戻り得る可能性を考えた。骨髄ストローマ細胞のscRNA-seqデータセットから骨髄成熟脂肪細胞を特異的に標識するマーカーとしてPlin1を同定し、Plin1-creER/+; Rosa26LSL-tdTomatoマウスを作成し、in vivoで放射線照射後の脂肪細胞の動態を追跡した。すると照射後の骨髄では成熟脂肪細胞マーカーPerilipinを発現する細胞は造血再生に伴い減少するものの、Perilipinを発現しないtdTomato+細胞が増加していた。このtdTomato+細胞は、細胞突起を持ち、脂肪細胞マーカーの発現が低くLepR+細胞マーカーの発現が高く、LepR+細胞と酷似していた。このことから、tdTomato+細胞は成熟脂肪細胞がLepR+細胞に戻ったものである可能性が示唆された。さらにtdTomato+細胞はLepR+細胞と同様にin vivoで骨芽細胞に分化することも明らかにした。これらに加えて、長骨の骨髄ストローマ細胞から脂肪分解に有用な酵素をコードするAtglを欠損させると、脂肪細胞はLepR+細胞に戻ることができず、造血幹細胞の再生が著しく損なわれることも明らかにした。本研究により、骨髄ニッチ細胞には分化可塑性があり、放射線照射後に脂肪細胞がLepR+細胞に戻ることで、造血幹細胞の再生が促進されることが明らかになった。

    骨転移

    脊椎骨格幹細胞が転移を促進する

    原題:

    A vertebral skeletal stem cell lineage driving metastasis

    著者:

    Jun Sun, Lingling Hu, Seoyeon Bok, Alisha R. Yallowitz, Michelle Cung, Jason McCormick, Ling J. Zheng, Shawon Debnath, Yuzhe Niu, Adrian Y.Tan, Sarfaraz Lalani, Kyle W. Morse, Daniel Shinn, Anthony Pajak, Mohammed Hammad, Vincentius Jeremy Suhardi, Zan Li, Na Li, Lijun Wang, Weiguo Zou, Vivek Mittal, Mathias P. G. Bostrom, Ren Xu, Sravisht Iyer & Matthew B. Greenblatt

    雑誌:

    Nature 621:602-609.(2023)

    POINT!

     骨転移は種々の固形がんにおいて好発するが、多くの臨床報告において、長管骨よりも脊椎に転移が多いことが示されている。しかし、脊椎転移が多い理由は不明であった。著者らはこの論文において、骨格幹細胞(SSC;skeletal stem cell)が、がんの骨転移に寄与していることを明らかにした。まず脊椎骨格幹細胞(vSSC)と長管骨骨格幹細胞(lbSSC)の遺伝子発現を比較し、vSSCで発現が高い遺伝子としてZIC1とPAX1を同定した。Zic1-creおよびPax1-creERT2マウスを作製し、レポーターマウスを用いて解析したところ、vSSCは骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞への分化能をもち、in vivoにおける自己複製および標識の長期維持など幹細胞特有の性質をもっていることが示された。vSSC特異的に骨芽細胞の分化促進因子(Osterix,Stat3)を欠損したマウスでは、脊椎において骨量の減少、石灰化速度および骨形成速度の低下がみられた。続いて、マウス乳がん細胞株(Py8119,4T1.2,EO771)を尾動脈に移入することにより骨転移を誘導するモデルにおいて、脊椎への高い指向性が確認された。vSSCおよびlbSSC由来骨オルガノイドを作製してマウスに移植し、尾動脈移入モデルを行なったところ、vSSC由来骨オルガノイドへのがん細胞の集積が有意に高かった。さらに、vSSCで高発現している分泌タンパク質としてMFGE8を同定した。がん細胞培養系においてMFGE8を添加したところ遊走能が上昇し、Mfge8欠損マウスでは脊椎への転移率の低下および腫瘍増大の抑制が示された。ヒト組織検体においてもマウスvSSCと相同な細胞が存在しており、ヒトvSSC由来骨オルガノイドを免疫不全マウスに移植したモデルにおいて、MFGE8の阻害がヒト乳がん細胞の集積を抑制することも示された。まとめると、vSSCはこれまでに長管骨で同定されてきたSSCとは異なる分画であり、脊椎への高い骨転移指向性に寄与していることが明らかになった。

    頭蓋骨縫合早期癒合症

    頭蓋骨縫合早期癒合症と頭蓋骨骨化における多幹細胞基盤

    原題:

    A multi-stem cell basis for craniosynostosis and calvarial mineralization

    著者:

    Seoyeon Bok, Alisha R. Yallowitz, Jun Sun, Jason McCormick, Michelle Cung, Lingling Hu, Sarfaraz Lalani, Zan Li, Branden R. Sosa, Tomas Baumgartner, Paul Byrne, Tuo Zhang, Kyle W. Morse, Fatma F. Mohamed, Chunxi Ge, Renny T. Franceschi, Randy T. Cowling, Barry H. Greenberg, David J. Pisapia, Thomas A. Imahiyerobo, Shenela Lakhani, M. Elizabeth Ross, Caitlin E. Hoffman, Shawon Debnath & Matthew B. Greenblatt

    雑誌:

    Nature, DOI: https://doi.org/10.1038/s41586-023-06526-2(2023)

    POINT!

     頭蓋骨縫合早期癒合症とは、頭蓋骨縫合が早期に癒合した結果生じる頭蓋の変形およびそれに伴う種々の臨床症状を合わせたものの総称である。頭蓋骨縫合早期癒合症において、縫合部の癒合を促進する骨芽細胞を供給する頭蓋骨幹細胞(CSC)の正体は、まだ十分に理解されていなかった。これまでの研究で、CTSK+ CSCsは生理的な頭蓋骨のミネラル化に寄与していると考えられており、この細胞集団の欠陥が頭蓋骨縫合早期癒合症のような頭蓋疾患の原因である可能性が考えられていた。そのため、著者らはまず、マウスモデルを用いて、頭蓋骨縫合早期癒合症の原因遺伝子であるTwist1をCTSK+ CSCsでのみ欠損させると、頭蓋骨縫合部の癒合不全を生じることを確認した。しかし、癒合が運命付けられた縫合線の部位では、予想に反して、CTSK+ CSCsが減少しており、その一方で非CTSK系統のCSCが増加していた。そこで、著者らは、縫合部の非CTSK系統細胞の中に、新たな頭蓋幹細胞が存在するという仮説を立て、RNA-seqや免疫染色、フローサイトメトリーを駆使して、DDR2+ CSCsという新たな頭蓋骨幹細胞集団を同定した。in vitro実験や移植実験を通じて、DDR2+ CSCsは多能性を持ち、CTSK+ CSCsとは異なるアイデンティティを有することが示された。また、骨オルガノイドの組織学的解析および免疫染色により、DDR2+ CSCsは、膜性骨化を介して骨化するCTSK+ CSCsとは異なり、造血を伴わない軟骨内骨化という新たな骨化様式で骨化していることが示唆された。また、ジフテリア毒素を用いた系でDDR2+ CSCsを除去すると、頭蓋骨の特定領域において低ミネラル化を呈し、DDR2+ CSCsが頭蓋骨縫合の癒合のみならず、頭蓋骨のミネラル化にも寄与していることが示された。DDR2+ CSCsを縫合部位に移植すると癒合が誘導され、一方でCTSK+ CSCsとの同時移植によってその癒合促進活性が抑制されたことから、CTSK+ CSCsとDDR2+ CSCsの二つの細胞集団の相互作用が頭蓋骨縫合の癒合を制御していることがわかった。さらに、薬剤投与実験やコンディショナルノックアウトマウスを用いた実験から、CTSK+ CSCsの産生するIGF-1がDDR2+ CSCsの増殖および癒合促進活性を制御していることが明らかになった。最後に、ヒトの頭蓋縫合にもCTSK+ CSCsとDDR2+ CSCsが存在し、ヒトにおいてもこの二つの細胞集団の相互作用が頭蓋骨の石灰化および縫合部の癒合を制御していることが示された。

    頭蓋骨癒合症

    頭蓋骨前駆細胞による髄膜リンパ管の修復は頭蓋骨癒合症の神経認知機能を改善する

    原題:

    Skull progenitor cell-driven meningeal lymphatic restoration improves neurocognitive functions in craniosynostosis

    著者:

    Li Ma, Qing Chang, Fei Pei, Mengmeng Liu, Wei Zhang, Young-Kwon Hong, Yang Chai, and Jian-Fu Chen

    雑誌:

    Cell Stem Cell 30: 1–14.(2023)

    POINT!

     頭蓋骨と脳の境界面にある髄膜には、リンパ管と頭蓋骨前駆細胞が存在する。髄膜リンパ管は脳実質内のリンパ液灌流と関連しており、脳の老廃物を除去し神経認知機能を維持するために必要であると考えられている。しかし、頭蓋骨が髄膜リンパ管や脳とどのように機能的に関連しているかについては不明であった。筆者らは頭蓋骨癒合症における脳の機能障害と髄膜リンパ管異常の関連を検証した。頭蓋骨癒合症の動物モデルであるTwist1+/-マウスでは、髄膜リンパ管密度が低下し、トレーサー分子を用いた実験から脳脊髄液の脳灌流が低下していることが明らかにされた。また、Twist1+/-マウスでは頭蓋内圧亢進と神経認知機能障害を呈することも確認された。一方、Twist1+/-マウスにGli1+頭蓋骨前駆細胞を移植すると、頭蓋内圧が低下し、髄膜リンパ管密度と脳灌流が改善し、神経認知機能も回復することが示された。筆者らは髄膜リンパ管の発達と維持に必須であると報告されているVEGF-Cに着目した。Twist1+/-マウスにVEGF-Cを投与すると、髄膜リンパ管内皮細胞の増殖と移動が促進され、頭蓋内圧亢進、脳灌流低下、神経認知機能障害の全てが回復した。髄膜リンパ管に隣接するGli1+頭蓋骨前駆細胞がVEGF-Cを高発現していることを髄膜組織のホールマウント免疫染色によって示した。以上より髄膜の頭蓋骨前駆細胞がVEGF-Cを分泌して髄膜リンパ管を発達させることで、脳実質の恒常性を維持していることが証明された。

    胸腺上皮細胞

    胸腺模倣細胞は自己寛容以外にも機能を有する

    原題:

    Thymic mimetic cells function beyond self-tolerance

    著者:

    Tal Givony, Dena Leshkowitz, Diana Del Castillo, Shir Nevo, Noam Kadouri, Bareket Dassa, Yael Gruper, Razi Khalaila, Osher Ben-Nun, Tom Gome, Jan Dobeš, Shifra Ben-Dor, Merav Kedmi, Hadas Keren-Shaul, Rebecca Heffner-Krausz, Ziv Porat, Ofra Golani, Yoseph Addadi, Ori Brenner, David D. Lo, Yael Goldfarb, and Jakub Abramson

    雑誌:

    Nature, 622: 164-172.(2023)

    POINT!

     胸腺では胸腺髄質上皮細胞(medullary thymic epithelial cell: mTEC)が全身のあらゆる自己抗原を発現し、それらに反応する自己反応性T細胞を除去することで自己寛容(免疫系が自己を攻撃しない性質)が確立される。mTECにおける自己抗原の発現は、無差別遺伝子発現という仕組みにより制御を受けるとされていたが、2022年にDiane博士らのグループがマルチオミクス解析を用いてmTECに新たなサブセットが複数存在することを同定した。それら新規に同定されたmTEC細胞集団は、末梢組織の細胞を模倣していることから、”thymic mimetic cell”と命名された。この発見により胸腺髄質内で発現される自己抗原の多様化機構の理解が大きく進んだ。本論文ではthymic mimetic cellの中でも、内分泌細胞、M細胞に類似したmTECに着目し、詳細な解析を実施した。胸腺内分泌細胞は転写因子Insm1によって分化し、ghrelin依存的に胸腺の退縮を制御すること、胸腺M細胞の分化には転写因子Spibが必要であり、胸腺内のIgA形質細胞を誘導することをそれぞれ遺伝子改変マウスの解析から明らかにした。以上から、thymic mimetic cellには中枢性自己寛容以外に、胸腺に存在する他の細胞種の恒常性維持に寄与していることが明らかになった。

    SASP

    アポトーシスのストレスが老化細胞のmtDNA放出を引き起こしてSASPを駆動する

    原題:

    Apoptotic stress causes mtDNA release during senescence and drives the SASP

    著者:

    Stella Victorelli, Hanna Salmonowicz, James Chapman, Helene Martini, Maria Grazia Vizioli, Joel S. Riley, Catherine Cloix, Ella Hall-Younger, Jair Machado Espindola-Netto, Diana Jurk, Anthony B. Lagnado, Lilian Sales Gomez, Joshua N. Farr, Dominik Saul, Rebecca Reed, George Kelly, Madeline Eppard, Laura C. Greaves, Zhixun Dou, Nicholas Pirius, Karolina Szczepanowska, ebecca A. Porritt1, Huijie Huang, Timothy Y. Huang, Derek A. Mann, Claudio Akio Masuda, Sundeep Khosla, Haiming Dai, Scott H. Kaufmann, Emmanouil Zacharioudakis, Evripidis Gavathiotis, Nathan K. LeBrasseur, Xue Lei, Alva G. Sainz, Viktor I. Korolchuk, Peter D. Adams, Gerald S. Shadel, Stephen W. G. Tait & João F. Passos

    雑誌:

    Nature, 622, 627–636(2023)

    POINT!

     老化細胞は慢性的な細胞老化関連分泌形質(SASP)の誘導などを通じて加齢に関連した組織機能不全を引き起こす。ミトコンドリアはSASPの主要な制御因子であるが、その根底にあるメカニズムはまだ解明されていない。アポトーシスの際、広範なミトコンドリア外膜透過化(MOMP)により細胞死が引き起こされる。本研究で著者らは、超解像顕微鏡などを用いてミトコンドリアの一部のみで起こるMOMP(マイノリティMOMP(miMOMP))が細胞老化の特徴であることを発見した。亜致死的アポトーシスストレスの結果であるmiMOMPは、cGASの基質であるTFAM結合ミトコンドリアDNA(mtDNA)の細胞質への放出を可能にするBAXとBAKによるマクロポア形成を必要とする。このことは、BAXとBAKの両方を欠損させたヒト線維芽細胞がDNA損傷によって誘導される老化におけるmtDNA放出の抑制と、SASP遺伝子発現低下を示すことによって確認された。また、生体レベルでもBaxfl/flBak–/–マウスを用い、AAV-Creウイルスを尾静脈注射して肝臓のBaxを欠損させたところ、放射線照射や加齢によるSASPの誘導が抑制された。一方、BAXとBAKの欠失は、老化に伴う細胞周期の停止には影響がなかった。次に、ミトコンドリア欠乏細胞を作製したところ、SASP因子であるIL-6やIL-8の分泌、その他のSASP因子発現が抑制され、mtDNAをトランスフェクションすることで部分的に回復した。また、cGASやSTINGを欠失させると同様にIL-6やIL-8の分泌が抑制され、mtDNAのトランスフェクションによって誘導されるIL-6やIL-8の分泌もSTING欠損細胞では有意に減少したことから、細胞質mtDNAは、SASPの主要な制御因子であるcGAS-STING経路を活性化することが示された。さらに、低分子BAX阻害剤BAI1は老化ヒト線維芽細胞において、mtDNAの遊離、SASP発現を抑制したことから、加齢に伴う老化細胞を標的とした治療法として、BAI1によるmiMOMPの薬理学的阻害を検討した。BAI1投与によりSASP因子発現を有意に減少させ、加齢に伴った神経・筋協調性の低下や前肢握力を改善し、大腿骨の海綿骨量上昇と椎骨・大腿骨の骨梁数増加、ミクログリアやオリゴデンドロサイトにおける老化遺伝子パネルの減少などを誘導することで老齢マウスの健康寿命が改善することを見いだした。以上の結果から、miMOMPによって誘導される炎症を阻害することが健康寿命を改善する治療経路になりうる可能性が示された。

    ヘモグロビン

    軟骨細胞の低酸素順応におけるヘモグロビン体の赤血球外での役割

    原題:

    An extra-erythrocyte role of haemoglobin body in chondrocyte hypoxia adaption

    著者:

    Feng Zhang, Bo Zhang, Yuying Wang, Runmin Jiang, Jin Liu, Yuexian Wei, Xinyue Gao, Yichao Zhu, Xinli Wang, Mao Sun, Junjun Kang, Yingying Liu, Guoxing You, Ding Wei, Jiajia Xin, Junxiang Bao, Meiqing Wang, Yu Gu, Zhe Wang, Jing Ye, Shuangping Guo, Hongyan Huang & Qiang Sun

    雑誌:

    Nature, doi: 10.1038/s41586-023-06611-6(2023)

    POINT!

     ヘモグロビンは赤血球の酸素運搬体として知られ、酸素を長距離輸送する機能を持つが、赤血球以外での生理的役割はほとんど解明されていない。本研究で著者らは、新生仔マウス成長板軟骨の注意深い観察から、肥大化軟骨細胞にエオシン陽性構造体を発見した。その大きさと形は骨髄中の赤血球と類似しており、他の軟骨組織の肥大軟骨細胞や、静止層および増殖層の軟骨細胞にも存在した。エオシン陽性構造の構成成分を決定するためにレーザーマイクロダイセクション・質量分析を行ったところ、ヘモグロビン-βサブユニット(HBB)とヘモグロビン-αサブユニット(HBA)の存在が確認された。このことは免疫染色や免疫電子顕微鏡でも確認された。これらの結果から、軟骨細胞はヘモグロビンを大量に産生し、細胞質にエオシン陽性の構造体(Hedy)を形成することが示された。Hedyの構造は軟骨細胞の細胞質内に独立した無膜性凝縮体であり、その動的性質は相分離によるタンパク質凝縮体に似ており、配列解析からHBBのC末端に相分離に重要な役割をもつ天然変性領域(IDR)が同定され、ヘモグロビンの相分離がHedyの形成を促進することが明らかにされた。赤血球のヘモグロビンは発生期に胚性型から成体型へのスイッチが起こることが知られているが、軟骨でも同様のスイッチングが起こることが確認された。軟骨でのヘモグロビン発現調節について調べたところ、HIF1/2αを欠損させると発現がむしろ上昇したことから、グロビンスイッチングに必須であることが示されているKlf1による制御機構を調べた。その結果、Klf1が低酸素によるエピジェネティックなメカニズムを介して発現が上昇し、ヘモグロビンの発現量が低酸素依存的に上昇することを見出した。ヘモグロビン遺伝子欠損マウスを用いて軟骨発生におけるヘモグロビンの役割を調べたところ、HbaまたはHbbの全身性欠損マウスや、Prx1-CreマウスおよびCol2a1-CreERT2マウスを用いた細胞特異的Hbb欠損マウスでは、軟骨細胞が低酸素状態に晒され細胞死に至ったことから、軟骨細胞の生存にヘモグロビンが不可欠であることが示された。また、in vitroで単離したHedyを用いて低酸素感受性細胞であるPC12と24時間共存培養したところ、低酸素によって上昇したHIF1α発現が、赤血球共存培養および正常酸素環境下のコントロールと同程度のレベルまで低下した。これらの結果から、軟骨細胞が大量のヘモグロビンを産生し、Hedyを介して軟骨細胞の局所的な低酸素状態に対し細胞生存を維持するための酸素が供給されるという、これまで認識されていなかったメカニズムが明らかにされた。

    NCoR/HDAC3

    RANKLはNCoR/HDAC3コリプレッサーをPGC1βおよびRNA依存性破骨細胞遺伝子発現コアクチベーターに変換する

    原題:

    RANK ligand converts the NCoR/HDAC3 co-repressor to a PGC1β- and RNA-dependent co-activator of osteoclast gene expression

    著者:

    Yohei Abe, Eric R. Kofman, Maria Almeida, Zhengyu Ouyang, Filipa Ponte, Jasmine R. Mueller, Grisel Cruz-Becerra, Mashito Sakai, Thomas A. Prohaska, Nathanael J. Spann, Ana Resende-Coelho, Jason S. Seidman, Joshua D. Stender, Havilah Taylor, Weiwei Fan, Verena M. Link, Isidoro Cobo, Johannes C.M. Schlachetzki, Takao Hamakubo, Kristen Jepsen, Juro Sakai, Michael Downes, Ronald M. Evans, Gene W. Yeo, James T. Kadonaga, Stavros C. Manolagas, Michael G. Rosenfeld, Christopher K. Glass

    雑誌:

    Mol Cell, 83, 3421–3437(2023)

    POINT!

     核内受容体コリプレッサー(NCoR)は、核内受容体や他のシグナル依存性転写因子の重要な転写コリプレッサーであり多様な役割をもつ。その機能は、主にヒストン脱アセチル化酵素3(HDAC3)に依存しており、NCoR/HDAC3コリプレッサー複合体はLXRを含む核内受容体などと相互作用し、ヒストンの脱アセチル化と転写抑制をもたらすと考えられてきた。本研究で著者らは、破骨細胞におけるNCoRの役割を調べるため、LysM-Creを用いてミエロイド系特異的NCoR欠損(NKO)マウスを作製したところ、破骨細胞分化低下による海綿骨量の上昇を示すことが明らかになった。NKO由来骨髄細胞のRNA-seq解析を行ったところ、NCoR欠損は破骨細胞分化に関わるJdp2、Fosl2、Nfatc1などを含む多くのRANKL依存性遺伝子発現を低下させることがわかった。対照的に、LXR標的遺伝子に対しては従来のNCoRコリプレッサー活性と一致する結果であった。ChIP-seqによりRANKLに応答したNCoRとHDAC3、H3K27ac部位を調べたところ、RANKL刺激後にNCoR/HDAC3複合体が結合した部位の多くがH3K27acの上昇を示したのに対し、H3K27acの低下と関連していたのは少数であった。一方、NCoR欠損はこれらの上昇したH3K27acの顕著な低下をもたらした。また、H3K27acを増加させるNCoR/HDAC3のピークは、AP-1やNF-κB-p65ファミリーメンバーによって認識されるモチーフに濃縮されていた。以上からRANKによるシグナル伝達がNCoR/HDAC3コリプレッサー複合体を、マウス破骨細胞分化に必要なAP-1およびNF-κB標的遺伝子のコアクチベーターに変換する可能性が示された。すなわち、NCoR/HDAC3複合体がRANKシグナルに応答してヒストンのアセチル化と遺伝子の活性化に必要であるという証拠が得られた。次に著者らは、近年HDAC3とPGC1ファミリーの関連が示されていることから、破骨細胞分化に関わることが知られているPGC1βとNCoR/HDAC3の関連性を検討した。ChIP-seqなどにより、RANKシグナルがPGC1βとNCoR/HDAC3複合体との相互作用を促進し、PGC1βの活性化とアセチル化ヒストンH3に対するHDAC3活性の阻害をもたらすことが示された。PGC1ファミリーは保存されたC末端のRNA認識モチーフを有しており、潜在的なRNA結合活性を示唆している。実際にPGC1β免疫沈降物にRNase処理を行うと、RANKL誘導性のPGC1βとNCoR/HDAC3複合体との相互作用が抑制された。enhanced crosslinking and IP(eCLIP)などにより、骨恒常性との関連が明らかにされている非コードRNAであるDancrとRnu12が、RANKL刺激下でPGC1βとNCoR/HDAC3の複合体に優先的に組み込まれることで複合体形成を促進し、in vitroでのRANKL誘導性破骨細胞分化に必要であることが明らかにされた。これらの発見は、NCoRが主にコリプレッサーとして機能するという従来の定説に疑問を投げかけ、NCoR複合体がシグナル依存性のコアクチベーターとして機能する可能性が提起された。

    腸管免疫

    細菌抗原とそれを認識するT細胞レパトアの対応関係の解析

    原題:

    Mapping the T cell repertoire to a complex gut bacterial community

    著者:

    Kazuki Nagashima, Aishan Zhao, Katayoon Atabakhsh, Minwoo Bae, Jamie E. Blum, Allison Weakley, Sunit Jain, Xiandong Meng, Alice G. Cheng, Min Wang, Steven Higginbottom, Alex Dimas, Pallavi Murugkar, Elizabeth S. Sattely, James J. Moon, Emily P. Balskus & Michael A. Fischbach

    雑誌:

    Nature, doi: 10.1038/s41586-023-06431-8 (2023)

    POINT!

     腸内細菌による腸管の免疫系の制御がさまざまな疾患と関連することが明らかとなりつつある一方、数多存在する細菌種それぞれがどのように免疫系と相互作用しているかはまだよく分かっていない。本論文では、腸管免疫で中心的な役割を担うT細胞の分化や活性化が、どの細菌種によって誘導されるか明らかにすることを目指した。
    筆者らは、既知の細菌種112種からなる人工腸内細菌叢を無菌マウスに移植したのち、腸管に存在するT細胞のTCR配列をシングルセルT細胞受容体(TCR)シーケンスにより同定した。腸管内で増殖・活性化したと考えられるT細胞のTCR (92クローン) をハイブリドーマにそれぞれ発現させ、112種の腸内細菌と共培養した際のTCRシグナル誘導能を1クローン-1細菌種レベルで解析した。 その結果, 13個のTCRクローンがFirmicutes群に属する細菌種によって広く活性化されることが明らかになった。より詳細な解析の結果、これらのTCRは人工腸内細菌が共通して発現している抗原 (substrate-binding protein: SBP) を認識していることも明らかになった。以上の結果から, 腸管のT細胞の分化・維持にはいくつかの腸内細菌種に共通して高発現している抗原による抗原刺激が重要である可能性が示唆された。

    破骨細胞

    知見定常状態と神経疾患における頭蓋骨髄の異なる分子プロファイル

    原題:

    Distinct molecular profiles of skull bone marrow in health and neurological disorders

    著者:

    Zeynep Ilgin Kolabas et al.

    雑誌:

    Cell, doi: org/10.1016/j.cell.2023.07.009 (2023)

    POINT!

     頭蓋骨の骨髄は、脳と髄膜の免疫応答に重要であるが、骨の部位による骨髄細胞の分子プロファイルの違いやヒトの疾患との関連性は不明であった。著者らはまず、マウスの6つの異なる骨、硬膜、脳から採取した細胞を対象にシングルセルRNA-seq(scRNA-seq)解析とプロテオミクス解析を行った。その結果、骨髄細胞は全身で不均一であり、頭蓋骨が最もユニークな分子プロファイルを有することが判明した。疑似時間解析により、頭蓋骨では他の骨に比べて成熟好中球が多く集積しており、これが頭蓋骨特有の分子プロファイルの形成に寄与していることが明らかになった。ヒトの頭蓋骨においても、プロテオミクス解析から、椎骨や骨盤とは異なる特有のプロテオームが確認され、特に、好中球に関連する経路やシナプスタンパク質の発現パターンが特異的であることが明らかになった。また、著者らは透明化技術を用いたライトシートイメージングにより、ヒトの頭蓋-髄膜結合(SMC)が硬膜を越えて硬膜下腔まで広がっていることを明らかにした。最後に、神経炎症のバイオマーカーであるトランスロケータータンパク質(TSPO)を利用して、頭蓋骨のSMCと様々な神経性疾患との関連性を検討した。アルツハイマー病、タウオパチー、再発性多発性硬化症、進行性多発性硬化症、急性期脳梗塞の患者に対してトランスロケータータンパク質陽電子放射断層撮影(TSPO-PET)を行ったところ、患者の頭蓋骨におけるTSPO-PET信号の取り込みに疾患特異的パターンが認められることが明らかになった。以上の結果から、頭蓋骨は他の部位の骨とは異なるユニークな特徴を持つことが明らかになり、頭蓋骨へのアプローチがアルツハイマー病や脳卒中などの疾患の診断や治療に有用である可能性が示唆された。

    Y染色体欠損

    がん細胞におけるY染色体欠損は抗腫瘍免疫逃避を促進する

    原題:

    Y chromosome loss in cancer drives growth by evasion of adaptive immunity

    著者:

    Hany A. Abdel-Hafiz, Johanna M. Schafer, Xingyu Chen, Tong Xiao, Timothy D. Gauntner, Zihai Li, Dan Theodorescu

    雑誌:

    Nature, 619: 624–631. (2023)

    POINT!

     Y染色体は男性の性決定と精子形成に必須である。様々ながん種でY染色体の欠損(Loss of the Y chromosome: LOY)を認めるが、その臨床的・生物学的意義は不明であった。筆者らは公共のデータベースを用いて膀胱がんの男性300人のトランスクリプトームデータを解析した結果、Y染色体遺伝子発現スコア低下が全生存期間低下と相関することを見出した。筆者らはY染色体遺伝子発現とがん悪性度の相関関係を検証するために、単一細胞クローン選別で樹立したLOY変異膀胱がん細胞株と、CRISPR-Cas9によってY染色体を欠損させた膀胱がん細胞株を用いて詳細な研究を行った。これらY染色体遺伝子陰性腫瘍(Y-腫瘍)は培養条件下ではY染色体遺伝子陽性腫瘍(Y+腫瘍)と同様の増殖率であったが、野生型マウスへ皮下移植するとY腫瘍はY+腫瘍よりも有意に増殖率が高かった。一方でT細胞欠損マウス(Tcrb/Tcrd–/–)への移植では増殖率の差が消失することから、LOYは抗腫瘍T細胞免疫を抑制することが示唆された。この所見と一致して、Y腫瘍内のCD8+T細胞はTOXやTIM3などの疲弊T細胞マーカーの発現が増加していることが判明した。さらにLOYを伴うヒト膀胱がんにおいても、マウスのデータと同様に疲弊CD8+T細胞が増加することをsingle-nuclei RNA seqと空間プロテオミクス解析を用いて証明した。マウスとヒトいずれにおいても、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果はY+腫瘍よりもY-腫瘍の方が顕著であった。以上より、LOY変異を持つがん細胞は抗腫瘍T細胞免疫を抑制することで悪性度を増す一方で、免疫チェックポイント阻害剤治療に感受性を持つことが示された。

    骨破壊

    ヒト中耳真珠腫のシングルセルトランスクリプトミクスにより、骨破壊を誘導するactivin A産生破骨細胞分化促進線維芽細胞サブセットが同定された

    原題:

    Single-cell transcriptomics of human cholesteatoma identifies an activin A-producing osteoclastogenic fibroblast subset inducing bone destruction

    著者:

    Kotaro Shimizu, Junichi Kikuta, Yumi Ohta, Yutaka Uchida, Yu Miyamoto, Akito Morimoto, Shinya Yari, Takashi Sato, Takefumi Kamakura, Kazuo Oshima, Ryusuke Imai, Yu-Chen Liu, Daisuke Okuzaki, Tetsuya Hara, Daisuke Motooka, Noriaki Emoto, Hidenori Inohara, Masaru Ishii

    雑誌:

    Nat. Commun., 14: 4417 (2023)

    POINT!

     中耳真珠腫は慢性中耳炎の一種で、骨を破壊しながら拡大し、難聴、めまい、髄膜炎などの症状を引き起こす疾患である。しかし、骨が破壊されるメカニズムはまだ解明されていない。今回、筆者らは患者由来の中耳真珠腫組織を用いて、シングルセルRNAシークエンス解析を行った結果、中耳真珠腫に特異的なアクチビンAを高発現する線維芽細胞が存在することを見出した。Activin Aの機能解析を行ったところ、In vitroではactivin Aの添加はRANKLによる破骨細胞分化を促進したことがわかった。In vivoでは、マウスのケラチノサイトと線維芽細胞を他のマウスの頭頂骨骨膜下に移植することによって頭頂骨表面に骨破壊が誘導される中耳真珠腫マウスモデルを確立できた。Activin A欠損(Inhbaflox/flox; CreERT2)線維芽細胞を同じように移植したところ、破骨細胞の数が減少した。さらに、activin Aを阻害するfollistatinを投与しても破骨細胞の数の減少が見られた。以上から、中耳真珠腫において骨を破壊する特殊なactivin A産生線維芽細胞が破骨細胞を誘導することで骨破壊が起こることが明らかとなり、中耳真珠腫の新たな治療法開発へ繋がると期待される。

    RANKL

    骨細胞のRANKL発現を制御するイントロンエンハンサーの同定

    原題:

    Identification of an intronic enhancer regulating RANKL expression in osteocytic cells

    著者:

    Minglu Yan, Masayuki Tsukasaki, Ryunosuke Muro, Yutaro Ando, Kazutaka Nakamura, Noriko Komatsu, Takeshi Nitta, Tadashi Okamura, Kazuo Okamoto and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Bone Res., 11: 43. (2023)

    POINT!

     破骨細胞は、「古くなった骨」や「傷ついた骨」を取り除くことによって骨の新陳代謝(リモデリング)を促すとされているが、その詳細なメカニズムは不明である。骨リモデリング期における破骨細胞制御において、骨細胞RANKLの寄与が明らかとなっているが、骨細胞におけるRANKL発現調節機構に関しては不明な点が多い。著者らは公共データベースを活用し、様々な細胞種の中で骨細胞様細胞において特異的に活性化しているエンハンサーをRANKL遺伝子のイントロン領域に同定した。当該領域の周辺にはヒト骨量と相関する一塩基変異のいくつかが存在し、GATA, CEBP, CREBといった細胞老化・細胞死に関連する転写因子群が結合することが明らかとなった。死にかけた骨細胞を含むシングルセルRNAseqデータの解析から、細胞死シグナルが骨細胞においてRANKL発現を顕著に上昇させる可能性が示唆された。CRISPR-Cas9によってイントロンエンハンサーを欠損したマウスを作製したところ、当該マウスでは骨細胞のRANKL発現が抑制される一方でリンパ球や骨芽細胞のRANKL発現は正常であり、成獣期において破骨細胞数の減少と骨量増加を認めた。以上より、骨細胞特異的RANKLエンハンサーが同定され、その生理的重要性が示された。骨組織の中で最も長寿命な骨細胞は、イントロンエンハンサーを活用することで細胞老化・細胞死のシグナルとRANKL発現を結びつけ、破骨細胞に「古くなった骨」や「傷ついた骨」の位置情報を伝えているのかもしれない。

    筋分化

    一核レベルの解像度での解析が明らかにした筋線維の分化と成熟を制御する遺伝子プログラム

    原題:

    Opposing gene regulatory programs governing myofiber development and maturation revealed at single nucleus resolution

    著者:

    Matthieu Dos Santos, Akansha M Shah, Yichi Zhang, Svetlana Bezprozvannaya, Kenian Chen, Lin Xu, Weichun Lin, John R McAnally, Rhonda Bassel-Duby, Ning Liu, Eric N Olson

    雑誌:

    Nat. Commun., 14(1): 4333

    POINT!

     筋分化には特異的な遺伝子発現プログラムが働いているが、詳細は不明である。著者らは、シングル核RNA-Seq (snRNA-Seq) 法とシングル核ATAC-Seq (snATAC-Seq) 法により、胎生期 (E14.5) 〜成獣 (2m) のマウスの後肢の筋の遺伝子発現を解析し、UMAP解析を行った。その結果、筋芽細胞はP5までの筋でしか認められないこと、E14.5-18.5の分化途上の核はP5や2mの成熟した筋の核とは遺伝子発現パターンが異なることが示された。このパターンはsnRNA-SeqとsnATAC-Seqで同様であった。分化した筋細胞以外の核のデータを用いて筋分化のトラジェクトリーを描出したところ、それぞれの分化段階で特徴的に発現する遺伝子が明らかになった。この解析で、核は9のクラスターに分けられた。クラスター1は胎生期の筋の中央部に位置し、クラスター2は筋線維の端に存在する核であると考えられた。E18.5の核はクラスター4と5に分布し、前者はMyomarkerを発現する新しい筋線維の核、後者はそれを発現しない初期に分化した筋線維の核であった。筋分化に伴いミオシン重鎖の発現パターンは変遷していくが、新生仔期の筋 (クラスター6、7) では分化途上のマーカー (Myh8) と成熟マーカー (Myh4) が共発現していた。次に、このような遺伝子発現パターンを誘導する転写因子の探索を行った。それにより、胎生期にはSox4やEtv5が、出生前にはMyog、Tead4、Klf5が、新生仔期にはPrrx1、Nfixが、成獣マウスではThrb、Esr1、Nr4a1がそれぞれ重要であることがわかった。Myog、Tead4、Klf5は新生仔において発現が高いが、これらが協調するかは不明であった。免疫沈降法により、これらが複合体を作ることが示され、ChIP-Seq法により、この複合体は神経筋接合部の形成に必要なChrngやトロポニンT (Tnnt2)、筋細胞の融合に重要なCol25a1、Myomarker、Myomixerのエンハンサー領域に結合することがわかった。Myog、Tead4、Klf5をノックダウンにより、これらの遺伝子の発現は低下した。Myomarkerのエンハンサーを用いたLucアッセイにより、Myog、Tead4、Klf5は単独で強制発現させた場合よりも一緒に強制発現させた方が転写活性が10倍近く高いことが明らかになった。成熟筋線維の核では転写因子Mafの発現が高レベルであった。ChIP-Seq解析の結果、筋機能に関わる遺伝子への結合が高頻度に見られ、特に、筋成熟に関わるMyh4、Actn3、Mybpc2、Atp2a1、Ckmに強く結合することがわかった。Maf欠損マウスを作出したところ胎生致死であった。E18.5の段階で、体が小さく円背、組織学的には骨格筋は多核化していたものの、幅径が著しく小さかった。このマウスの筋ではMyh4、Mybpc2、Atp2a1、Ckmの発現が著しく低値であった。一方、初期分化に関わる遺伝子の発現には変化はなかった。筋の運動には細胞内カルシウム濃度の変動が重要であるが、これが分化における遺伝子の転写制御をどう制御するかは不明であった。そこで、カルシウムチャネルをコードするCacna1s遺伝子を欠損するマウスを解析した。このマウスの筋ではMafを発現する成熟筋線維の核が減少していた。以上より、筋細胞分化の段階ごとのマーカー分子が明らかになり、分化の進行と筋収縮の関係の一部が明らかになった。

    骨細胞分化

    CDK1による骨芽細胞から骨細胞への分化転換の制御

    原題:

    Regulation of Osteoblast to Osteocyte Differentiation by Cyclin-Dependent Kinase-1

    著者:

    Tomoyuki Tanaka, Yuri Miyakoshi, Yutaka Kobayashi, Sun Xiaolong, Yu Daiyang, Hiroki Ochi, Shingo Sato, Tsuyoshi Kato, Toshitaka Yoshii, Atsushi Okawa, Philipp Kaldis, Hiroyuki Inose

    雑誌:

    Adv. Biol., e2300136 (2023)

    POINT!

     骨細胞は骨芽細胞の終末分化の一形態である。骨細胞は力学刺激やホルモン・サイトカイン刺激に応答してさまざまなサイトカインを発現し、骨代謝や遠隔臓器に影響を及ぼす。骨芽細胞から骨細胞への分化メカニズムには不明な点が多い。骨細胞は細胞増殖を行わない。細胞増殖に関わるCDKファミリーの骨細胞における発現動態に着目し解析を行った。骨細胞様細胞株IDG-SW3細胞の骨細胞分化培養系において、骨細胞分化の促進に伴うCdk1の低下が認められた。Cdk1のノックダウンやCDK1阻害剤RO-3306によってIDG-SW3細胞は減少した。CDK1阻害によってこの細胞の分化は阻害された。そこで、Cdk1f/fDmp1-Creマウスを作出し、解析した。大腿骨のマイクロCT解析の結果、Cdk1f/fDmp1-Creマウスでは海綿骨量の減少が認められたが、皮質骨厚には有意な差が無かった。椎骨の骨形態計測では、このマウスでは骨形成の低下をともなう骨量の減少を認めたが、骨吸収には差は認められなかった。骨梁に含まれる骨細胞の密度もこのマウスで低値を示した。血清のELISA解析でもこの結果と一致して、Cdk1f/fDmp1-Creマウスでは骨形成マーカーのP1NPが低値を示す一方骨吸収マーカーのCTX-1はコントロールマウスと同程度であった。また、血清中のRANKLとSclerostinが低い値を示した。Cdk1f/fDmp1-Creマウスから採取した骨芽細胞では、Alp、Sp7、Dmp1、Phexの発現がコントロールマウスよりも低かった。これらのマウスでは血中のPTHrPが少なく、CDK1を阻害したIDG-SW3細胞ではPthlhの発現が低いことから、PTH投与がCdk1f/fDmp1-Creマウスの骨量減少を回復しうることが予想された。PTHを間歇投与することによって、骨細胞数の回復は不明であるが、海綿骨骨量については部分的な回復効果がみられた。以上より、CDK1は骨芽細胞から骨細胞への分化転換制御に寄与する分子であることが分かった。

    CD24

    マルチパラメトリック老化細胞表現型解析により老化マウス骨における老化細胞除去治療の標的が明らかにされた

    原題:

    Multiparametric senescent cell phenotyping reveals targets of senolytic therapy in the aged murine skeleton

    著者:

    Madison L. Doolittle, Dominik Saul, Japneet Kaur, Jennifer L. Rowsey, Stephanie J. Vos, Kevin D. Pavelko, Joshua N. Farr, David G. Monroe & Sundeep Khosla

    雑誌:

    Nat Commun, 14, 4587 (2023)

    POINT!

     細胞老化は個体の老化を促進するが、生体内における老化細胞の詳細な解析はまだ不完全である。本研究で著者らは、慎重に検証された抗体を用いてマスサイトメトリーを行い、老化細胞を単一細胞の分解能で解析した。まず著者らはCyTOF解析のために細胞と老化表現型の両方のマーカーを含む包括的なCyTOF抗体パネルを構築した。老化細胞の特徴としてp16やp21の発現が知られているため、これらのタンパク質に対する抗体を慎重に検証した。(これらの抗体についてはその特異性などに懸念が示されていたが、著者らは様々な検証によって少なくともシングルセルCyTOFにおいては正しく検出できる抗体を選定した。)これらの抗体により、16+細胞が年齢とともに増加する一方、骨微小環境におけるp21+間葉系細胞は年齢とともに増加しなかった。加齢によって誘導される老化細胞と特異的に関連するマーカーをさらに定義するために、老化パネルに含まれるすべてのマーカーを用いて、若齢マウスと加齢マウスから採取したp16陽性間葉系細胞の多次元クラスタリングを行ったところ、増殖が停止しアポトーシスに抵抗性を示す老化間葉系細胞としてp16+Ki67–BCL-2+細胞(p16KB細胞)を同定した。p16KB細胞は老化(p21)、SASP(IL-1α、IL-1β、pNFκB、CXCL1)、DNA損傷(pATM)の多数のマーカーの発現上昇を示し、若齢マウスでは全細胞の0.2%未満であったが、加齢に伴って6.8倍上昇した。著者らはさらに骨髄細胞のシングルセルRNA-seq解析なども行い、p16KB細胞がSASPやDNA損傷マーカー、抗アポトーシス関連遺伝子などを強く発現することを示した。次に、どの間葉系骨格細胞集団が加齢とともに老化細胞となるかを評価するため、細胞クラスタリングを行って骨髄間質細胞と分化した細胞型の11の集団を同定した。それらのうち、CD24high骨芽系列細胞(CD24+/Runx2+/Osterix+)はSASP関連遺伝子発現に加えて、アポトーシスに対して強い抵抗性を持つことが示唆された。さらに、後期骨芽細胞/骨細胞およびCD24high骨芽系列細胞集団は、老化マウスにおいてINK-ATTACマウス(p16Ink4aプロモーターによって誘導可能なカスパーゼ8カセットを持つトランスジェニックモデルであり、AP20187投与によって老化細胞を選択的にクリアランスすることができる)を用いた遺伝的老化細胞除去や、ダサチニブ+ケルセチンによる老化細胞除去療法により取り除かれる集団であることが明らかにされた。ソーティングした骨髄Lin–CD24+細胞をin vitroで解析したところ、増殖停止、SA-β-gal陽性、低いコロニー形成能や骨形成能を示した。これらの結果から、CD24high骨芽系列細胞は、他の骨格細胞集団と比較して、顕著な老化および炎症プロフィールを示し、骨細胞に加えて老化細胞除去療法の重要な標的であることが明らかになった。

    デノスマブ

    骨細胞によるOPG発現の低下は、デノスマブ中止後の骨吸収リバウンドに寄与している可能性がある

    原題:

    Reduced OPG expression by osteocytes may contribute to rebound resorption after denosumab discontinuation

    著者:

    Qiang Fu, Nancy C. Bustamante-Gomez, Humberto Reyes-Pardo, Igor Gubrij, Diana Escalona-Vargas, Jeff D. Thostenson, Michela Palmieri, Joseph J. Goellner, Intawat Nookaew, C. Lowry Barnes, Jeffrey B. Stambough, Elena Ambrogini, and Charles A. O’Brien

    雑誌:

    JCI Insight, doi.org: 10.1172/jci.insight.167790 (2023)

    POINT!

     抗RANKL抗体デノスマブは骨吸収を強力に抑制し、骨量を増加させ、骨折リスクを低下させる。デノスマブの投与を中止すると、急激な骨吸収亢進と骨量減少のリバウンド(オーバーシュート)が起こるが、その分子メカニズムは不明であった。著者らは、ゲノム編集によりデノスマブ結合エピトープの4アミノ酸をマウスTnfsf11遺伝子に導入することで新たにヒト化RANKLマウスを作製し、デノスマブを投与してリバウンド時に誘導される骨吸収に関連する細胞および分子の状態を調べた。これらのhRANKLマウスは、未処置では野生型マウスと比較して骨量に変化がなかった一方、デノスマブを週1回、3週間投与すると、骨吸収と骨形成が強力に抑制されることやデノスマブ休薬による骨吸収亢進のリバウンドが観察された。RANKLおよびOPG発現を調べたところ、デノスマブの長期投与はTnfsf11を増加させ、Tnfrsf11b(OPGをコードする)を減少させることを見出した。一方、デノスマブ単回投与後にはこのような変化は観察されなかった。
     次に著者らはRNAScopeを用いたTnfrsf11b発現の局在解析を行ったところ、関節軟骨細胞、成長板の軟骨細胞集団、骨芽細胞、骨細胞を含む様々なタイプの細胞で産生されていることが明らかになった。皮質骨におけるTnfrsf11b発現骨細胞のパターンから、Tnfrsf11bを高発現している骨細胞はSost発現骨細胞と比較して、皮質骨表面により近傍に存在することが確認された。この結果はヒトの皮質骨においても同様であった。また、デノスマブの長期投与は成長板軟骨細胞におけるTnfrsf11b発現には影響を与えなかった一方、骨細胞における発現は減少させた。これらの結果は、新生骨細胞が骨リモデリングにおけるOPGの重要な供給源であり、骨リモデリングを抑制すると新生骨細胞形成が減少することによりOPGの量が減少することを示唆している。以前の報告において、Dmp1-CreとSost-CreでそれぞれOPGを欠失させたマウスを比較することで、骨細胞ではなく骨芽細胞がOPGの主要な供給源であることが示されている。この結論は本研究における骨細胞によるTnfrsf11bの高発現とは一致していないことから、著者らはAi9マウスを用いてCre発現骨細胞を再検討した。その結果、Dmp1-Creはほぼすべての骨細胞を標的としていたが、Sost-Creでは主に骨膜表面や骨内膜表面付近にCre陰性骨細胞が観察された。このパターンは、Tnfrsf11b発現骨細胞のパターンと類似している。これらの知見から、Sost-Creは新生骨細胞を標的としておらず、Dmp1-Cre; Tnfrsf11bf/fマウスで観察された低骨量が、骨芽細胞に加えて新生骨細胞におけるTnfrsf11bの欠損によるものであることが示唆された。
     破骨前駆細胞の蓄積が骨吸収リバウンドの一因と考えられてきたが、デノスマブ投与マウス骨髄のin vitro破骨細胞形成能は増加してはいなかった。また、オステオモルフの蓄積が骨吸収リバウンドに寄与している可能性も報告されていることから、著者らはCD11b陽性細胞のシングルセルRNA-seq(scRNA-seq)解析により、オステオモルフに一致する遺伝子発現プロファイルを持つ細胞を同定し、デノスマブ投与による変化を検討した。好中球、ミエロイド系前駆細胞、単球、マクロファージを含む既知のミエロイド系細胞のクラスターが確認されたが、コントロールマウスとデノスマブ投与マウスに明らかな差はなかった。また、オステオモルフが含まれると考えられるクラスターについても同様であった。
     以上の結果から、新生骨細胞の欠如とそれらが産生するOPGがデノスマブ休薬後の骨吸収のリバウンドに寄与している可能性が示された。

    骨内膜幹細胞

    骨髄の骨内膜幹細胞は、活発な骨形成と積極的な腫瘍形成を運命づける

    原題:

    Bone marrow endosteal stem cells dictate active osteogenesis and aggressive tumorigenesis

    著者:

    Yuki Matsushita, Jialin Liu, Angel Ka Yan Chu, Chiaki Tsutsumi-Arai1, Mizuki Nagata, Yuki Arai, Wanida Ono, Kouhei Yamamoto, Thomas L. Saunders , Joshua D. Welch, and Noriaki Ono

    雑誌:

    Nat. Commun., 14: 2383 (2023)

    POINT!

     骨髄には、さまざまな骨格幹細胞 (SSC) の集団が間質に含まれており、それらは骨形成の重要な制御因子として働く。レプチン受容体 (LepR) 陽性血管周囲間質細胞が、成人および高齢の骨髄における骨形成骨芽細胞の主要な供給源であることはよく研究されているが、若齢の骨髄におけるSSCの本体と、それらが活発な骨形成をどのように調整するのかは依然として不明である。今回筆者たちは、若齢(21日齢)と老齢(18ヶ月齢)の骨髄中のPrrx1+細胞のsinle cell RNA-seqを行い、これらの統合解析を行なった。その結果、骨芽細胞-軟骨細胞移行型細胞(osteoblast-chondrocyte transitional, OCT)を同定した。これらは骨芽細胞と軟骨細胞の特徴を併せ持つ細胞でありFibroblast growth factor receptor 3 (Fgfr3)が高発現していた。Fgfr3-GFPトランスジェニックマウス21日齢の大腿骨でFgfr3の発現細胞を見たところ、成長板および遠位骨膜だけでなく骨髄側の骨内膜にも局在していた。また、Fgfr3+細胞は高いコロニー形成能を有していた。若齢期にはFgfr3-creER でマークされた骨内膜間質細胞が幹細胞としてはたらき、その後加齢するにつれてLepr-creでマークされる細胞が幹細胞としてはたらいているようだった。ドリルホールによって皮質骨損傷を引き起こすと、若齢マウスではFgfr3によってマークされた細胞が再生を促していたが、9ヶ月齢マウスでは少なくなっており、加齢に伴い骨再生能が失われているようであった。また、Fgfr3発現細胞特異的にp53腫瘍抑制因子を欠失させると、進行性の骨肉腫様病変が誘発された。以上より、Fgfr3+骨内膜細胞は若齢の骨髄に存在しており、若齢期における骨芽細胞のソースとなっている上に、腫瘍形成にも関与することがわかった。

    破骨細胞

    肺胞微石症の研究から見出された、肺のリン酸恒常性と破骨細胞分化に関する知見

    原題:

    Insights into pulmonary phosphate homeostasis and osteoclastogenesis emerge from the study of pulmonary alveolar microlithiasis

    著者:

    Yasuaki Uehara, Yusuke Tanaka, Shuyang Zhao, Nikolaos M. Nikolaidis, Lori B. Pitstick, Huixing Wu, Jane J. Yu, Erik Zhang, Yoshihiro Hasegawa, John G. Noel, Jason C. Gardner, Elizabeth J. Kopras, Wendy D. Haffey, Kenneth D. Greis, Jinbang Guo, Jason C. Woods, Kathryn A. Wikenheiser-Brokamp, Jennifer E. Kyle, Charles Ansong, Steven L. Teitelbaum, Yoshikazu Inoue, Göksel Altinişik, Yan Xu, Francis X. McCormack

    雑誌:

    Nat. Commun., 14: 1205 (2023)

    POINT!

     肺胞微石症(PAM)は常染色体潜性遺伝疾患であり、SLC34A2遺伝子の変異によりナトリウム-リン酸共輸送体(Npt2b)が欠損し、肺胞腔内にリン酸が蓄積することによりハイドロキシアパタイトの微石が形成され、進行すると重篤な呼吸障害を引き起こす。著者らは、PAM患者およびモデルマウス(Npt2b–/–マウス)の微石を解析し、破骨細胞関連タンパク質が微石中に含まれていることを見出した。そこで、PAM患者の肺組織を一細胞RNA-seqにより解析したところ、肺マクロファージにおける破骨細胞関連遺伝子の発現量が増加しており、Npt2b–/– マウスおよびPAM患者の肺胞でTRAP+ CTSK+ 破骨細胞様細胞が存在することが組織学的に明らかになった。微石をマウスの気管内に直接移入するモデルにおいて、野生型マウスでは移入14~28日後に肺胞内の微石が除去されるが、CCR2–/–マウスでは28日後でも微石が除去されなかったことから、破骨細胞様細胞が微石の除去に寄与していると考えられた。さらに、Npt2b–/– マウスの肺胞内リン酸およびカルシウムは食餌性のリン酸量に伴って増加し、微石の沈着が増加することがわかった。Npt2b–/– マウスでは肺胞上皮細胞のRANKL発現量が増加しており、高リン食摂餌時にはオステオプロテグリンが増加するとともに、破骨細胞様細胞が減少することが示された。抗RANKL抗体の投与実験により、破骨細胞様細胞の分化と微石除去はRANKL依存性であることが示された。肺胞内で分化する破骨細胞様細胞の機能や分化メカニズムは未だ不明な点が多いが、肺胞微石症やその他の肺疾患の有用な治療標的となることが期待される。

    オステオレクチン

    オステオレクチンは成長板軟骨細胞増殖を促進することで骨を伸長させる

    原題:

    Osteolectin increases bone elongation and body length by promoting growth plate chondrocyte proliferation

    著者:

    Jingzhu Zhanga, Liming Du, Bethany Davis, Zhimin Gu, Junhua Lyu, Zhiyu Zhao, Jian Xua, and Sean J. Morrison

    雑誌:

    Proc Natl Acad Sci U S A., 120: e2220159120 (2023)

    POINT!

     オステオレクチンはインテグリンα11 (Itga11)に結合し、骨髄間質細胞おけるWnt経路の活性化と骨形成分化を促進する分子として近年同定された。ゲノムワイド関連研究より、オステオレクチンの16 kb下流の一塩基変異(rs182722517)が低身長および血漿オステオレクチン濃度の低下と関連することが報告されている。そこで筆者らは、オステオレクチン欠損マウスを用いてオステオレクチンと骨の伸長の関連性を検証した。オステオレクチン欠損マウスでは骨の伸長が抑制されていた。さらにItga11を四肢の間葉系前駆細胞 (Prx1Cre Itga11flox/flox)や軟骨細胞 (AcanCreERT Itga11flox/flox)で欠損するマウスでは成長板軟骨細胞の増殖と骨の伸長が抑制された。一方で野生型マウスへのオステオレクチンの投与は骨の伸長を促進することが判明した。ヒト骨髄間質細胞にrs182722517の変異を導入するとオステオレクチンの産生が減少し、骨形成分化が抑制されることがin vitroの実験により示された。これらの研究により、オステオレクチンとインテグリンα11は、マウスおよびヒトの骨伸長を制御する因子であることが明らかにされた。

    抗腫瘍免疫

    CD4陽性T細胞による炎症性細胞死は免疫逃避性腫瘍を制御する

    原題:

    CD4+ T cell-induced inflammatory cell death controls immune-evasive tumours.

    著者:

    Bastian Kruse, Anthony C. Buzzai, Naveen Shridhar, Andreas D. Braun, Susan Gellert, Kristin Knauth, Joanna Pozniak, Johannes Peters, Paulina Dittmann, Miriam Mengoni, Tetje Cornelia van der Sluis, Simon Höhn, Asier Antoranz, Anna Krone, Yan Fu, Di Yu, Magnus Essand, Robert Geffers, Dimitrios Mougiakakos, Sascha Kahlfulß, Hamid Kashkar, Evelyn Gaffal, Francesca M. Bosisio, Oliver Bechter, Florian Rambow, Jean-Christophe Marine, Wolfgang Kastenmüller, Andreas J. Müller, and Thomas Tüting

    雑誌:

    Nature, 618: 1033-1040 (2023)

    POINT!

     臨床応用されているがん免疫療法では、腫瘍細胞はCD8+ T細胞の細胞傷害活性により生体内から排除されるが、この治療法は主要組織適合抗原複合体(MHC)を欠損する腫瘍細胞や免疫系が抑制される腫瘍微小環境では、その効果が低いと考えられる。近年、CD8+ T細胞とは独立に、エフェクターCD4+ T細胞の一部がミエロイド系細胞の活性化を介して抗腫瘍効果を発揮することが示された。本論文では、メラノーマ移植マウスモデルを用いて、CD4+ T細胞による間接的な抗腫瘍効果がCD8+ T細胞による直接的な抗腫瘍効果に匹敵することを明らかにした。IFN非応答性かつMHCを欠損した腫瘍に浸潤した免疫細胞集団の解析と生体内イメージング解析から、腫瘍抗原特異的CD4+ T細胞はMHCクラスⅡを発現する抗原提示細胞によって活性化され、IFNを産生することで単球の分化・活性化を誘導することがわかった。これによって、ミエロイド細胞の一部に一酸化窒素の分泌が誘導され、腫瘍細胞の排除に寄与することが示唆された。本研究から明らかにされたエフェクターCD4+ T細胞による間接的な抗腫瘍免疫応答を最大限に発揮することがでれば、従来の免疫療法では困難であったMHC非発現およびIFN非応答性の腫瘍の排除が実現する可能性があり、より効果的ながん免疫療法の開発に繋がると考えられる。

    バイオフィルム

    バイオフィルム形成によるコレラ菌のヒト免疫細胞への侵略

    原題:

    Biofilm formation on human immune cells is a multicellular predation strategy of Vibrio cholerae

    著者:

    Lucia Vidakovic, Sofya Mikhaleva, Hannah Jeckel, Valerya Nisnevich, Kerstin Strenger, Konstantin Neuhaus, Keerthana Raveendran, Noa Bossel Ben-Moshe, Marina Aznaourova, Kazuki Nosho, Antje Drescher, Bernd Schmeck, Leon N Schulte, Alexandre Persat, Roi Avraham, and Knut Drescher

    雑誌:

    Cell, 186: 2690-2704 (2023)

    POINT!

     地球上の多くの細菌はバイオフィルムを形成して生息している。このバイオフィルム形成は一般的に、抗生物質やバクテリオファージ、免疫系など、外的脅威に対する細菌の防御機構として知られている。しかし、それ以外の役割については明らかにされていなかった。そこで著者らは、本研究において、バイオフィルムと免疫細胞との相互作用に着目し、バイオフィルムの防御機構以外の役割を探索した。
     まず著者らは、バイオフィルム研究における代表的なモデル細菌であるVibrio choleraeを種々の免疫細胞と共培養させて、免疫細胞上にバイオフィルムを形成するか調べたところ、V. choleraeは好中球やNK細胞、T細胞、B細胞、さらにはマクロファージの細胞周囲にバイオフィルムを形成し、数時間のうちにこれらの細胞を殺し、細胞が死んだ後は表面から離散してゆくことを観察した。次にV. choleraeの遺伝子発現解析および欠損変異株を用いた解析より、V. choleraeのマクロファージへの付着は、鞭毛、マンノース感受性ヘマグルチニン(MSHA)線毛、毒素制御性(TC)線毛、分泌拡散性TcpFタンパクによって媒介されることを明らかにした。また、マクロファージ上に形成されるバイオフィルムのマトリックス成分は主に、MSHA線毛、TC線毛、TcpFで構成されており、他の細胞や非生物性物質の表面上に形成されるバイオフィルムの構成成分とは異なっており、これらの細菌因子は、バイオフィルムの機械的安定性の向上や細菌の配向性に関与していることが明らかになった。また、V. choleraeのバイオフィルムからの離散は、TC線毛と細胞内c-di-GMPレベルの調節によって起こることがわかった。さらに、病原因子の欠損変異株を用いた解析により、V. choleraeは細胞表面にバイオフィルムを形成することで、分泌型毒素hemolysin(HlyA)を局所的に蓄積させ、マクロファージを死滅させることが明らかになった。最後に著者らは、V. choleraeと腸管オルガノイドを用いた共培養実験により、V. choleraeは上皮バリアを破った後にも、鞭毛とMSHA線毛、TC線毛を用いてマクロファージ上にバイオフィルムを形成することを確認している。
     以上の研究から、バイオフィルムは単に防御的な役割のみならず、免疫細胞を死滅させるという攻撃的な側面も有することが明らかになった。

    先天異常

    FMR1は骨形成、骨量、骨強度を低下させる骨芽細胞/骨細胞の抑制分子である

    原題:

    Fragile X Messenger Ribonucleoprotein 1 (FMR1), a novel inhibitor of osteoblast/osteocyte differentiation, regulates bone formation, mass, and strength in young and aged male and female mice

    著者:

    Padmini Deosthale, Julián Balanta-Melo, Amy Creecy, Chongshan Liu, Alejandro Marcial, Laura Morales, Julita Cridlin, Sylvia Robertson, Chiebuka Okpara, David J Sanchez, Mahdi Ayoubi, Joaquín N Lugo, Christopher J Hernandez, Joseph M Wallace, Lilian I Plotkin

    雑誌:

    Bone Res., 11(1): 25 (2023)

    POINT!

     脆弱X症候群では、X染色体上のFMR1遺伝子座におけるCGGリピートの過長 (正常では6-40、患者では200超) が見られ、同部位のメチル化により転写産物FMRPの発現が抑制される。本疾患では知的障害とともに長頭型などの骨格異常が認められるが、この遺伝子の骨代謝における機能は不明であった。脆弱X症候群のモデルマウスとしては、Fmr1y/– (♂) およびFmr1–/– (♀) マウスが用いられる。本研究において、著者らは若齢/老齢の♂および♀マウスの骨の表現型解析を行った。若齢および老齢の♂と♀の両方のマウスでFmr1欠損マウスの骨密度の増加が認められた。骨幹部の皮質骨の厚さ周長などのパラメーターも増加し、物性も向上した。組織学的解析により、このマウスにおける骨芽細胞数の増加が認められた。血清中ではP1NPが上昇していた。このマウスの骨髄細胞を骨芽細胞に分化させたところ石灰化度が上昇した。一方、破骨細胞分化を誘導させたところ、野生型マウスの場合と同等であった。骨細胞様細胞株IDG-SW3細胞でFmr1をノックアウトしたところ、石灰化度の上昇、Dmp1、Sost、Phex、Cx43の上昇を認めた。骨細胞様細胞株MLO-Y4細胞は、Fmr1ノックアウトにより細胞突起が増加した。Fmr1欠損マウスの骨細胞でも細胞突起の増加とそれに伴う骨細管の変化が認められた。以上より、性染色体上に存在する遺伝子Fmr1による骨代謝制御が示された。この制御の変調が患者の骨格異常に関係すると考えられる。

    好塩基球

    一細胞解析により明らかになった好塩基球の分化・成熟経路

    原題:

    Single cell transcriptomics clarifies the basophil differentiation trajectory and identifies pre-basophils upstream of mature basophils

    著者:

    Kensuke Miyake, Junya Ito, Jun Nakabayashi, Shigeyuki Shichino, Kenji Ishiwata, Hajime Karasuyama

    雑誌:

    Nat Commun., 14(1): 2694 (2023)

    POINT!

     好塩基球は末梢血中で最も少ないことから、機能や分化の解析が困難であった。レポーターマウスやノックアウトマウスを初めとした研究ツールの登場により、好塩基球の解析が進んだものの不明な点は多く残されている。著者らは、骨髄由来の好塩基球の解析から、大型で核がソラマメ状のもの (FcεRIhiCD49bloまたはCLEC12AhiCD9lo) とより小型で輪状の核を有するもの (FcεRIloCD49bhiまたはCLEC12AhiCD9lo) の2タイプを見出した。前者が骨髄内にほぼ限局して存在していた一方、後者は骨髄、末梢血、脾臓に見出された。Mcpt8gfpレポーターマウスから単離された好塩基球のシングルセルRNA–Seq解析法により、前述のマーカーの発現レベルの異なるクラスターが見出された。さらに、Fcer1a+Kit+Cd34+細胞 (プレ好塩基球/MAST細胞様) から、Clec12ahi好塩基球を経てClec12alo好塩基球へと成熟していく分化経路が描出された。これを実験的に検証するためにc-Kit-FcεRIhiCD49blo細胞を単離・培養したところ、細胞表面マーカーの発現はCLEC12AhiCD9loからCLEC12AhiCD9loへと変化し、シングルセル解析より導き出された分化経路が実証された。一方、c-Kit-FcεRIloCD49bhi細胞の細胞表面マーカーには変化がなかったものの、培養期間中に大部分が細胞死に陥った。コンジェニックマウスにこれらの細胞を移入した場合も同様の変化が認められた。以上より著者らは、FcεRIhiCD49blo/CLEC12AhiCD9lo細胞をプレ好塩基球、FcεRIloCD49bhi/CLEC12AhiCD9lo細胞を成熟好塩基球と定義した。RNA-Seq解析の結果、プレ好塩基球はCD34+の好塩基球前駆細胞 (BaP) によく似た遺伝子発現パターンを示すことがわかった。また、細胞分裂に関わる遺伝子発現も高く、EdU取り込みのレベルは高かった。一方、成熟好塩基球はでは免疫反応に関わる遺伝子の発現が高いレベルであり、IgEおよび抗体で刺激した際に脱顆粒マーカーの発現やIL-4産生が誘導された。興味深いことに、IL-3、IL-33、LPSなどで刺激した際にはプレ好塩基球の方がIL-4産生は高度であり、2つの好塩基球サブセットの応答性の違いが明らかになった。著者らはさらに、寄生虫感染モデルを用いてこれらの好塩基球サブセットの機能を解析した。Nippostrongylus brasiliensis (Nb) をマウスに感染させたところ、成熟好塩基球だけでなくプレ好塩基球も末梢組織中に認められた。Nb感染した肺に浸潤したプレ好塩基球は増殖能を維持しつつ成熟好塩基球と同等のIL-4産生を行なっており、Th2反応への寄与が予想された。また、Nbへの二次感染に際しては成熟好塩基球よりもプレ好塩基球の方が皮膚病変に見出された。寄生虫感染に伴う骨髄外へのプレ好塩基球の遊走機構を解析したところ、Nb感染により全身で発現が上昇することが知られているIL-3をマウスに投与したところ、プレ好塩基球におけるCXCR4発現が減少した。CXCR4阻害剤の投与によりプレ好塩基球が末梢に出現したことから、CXCL12–CXCR4の走化性がこの細胞の生体内での動態を制御することが明らかになった。

    Piezo1

    顎口腔系の力学刺激誘導性の骨リモデリングはPiezo1非依存的である

    原題:

    Mechanical-induced bone remodeling does not depend on Piezo1 in dentoalveolar hard tissue

    著者:

    Cita Nottmeier, Josef Lavicky, Marcos Gonzalez Lopez, Sarah Knauth, Bärbel Kahl-Nieke, Michael Amling, Thorsten Schinke, Jill Helms, Jan Krivanek, Till Koehne, Julian Petersen

    雑誌:

    Sci. Rep., 13(1): 9563 (2023)

    POINT!

     力学刺激は骨代謝制御に重要である。骨構成細胞のうち、骨細胞はメカノセンサーであることが知られている。力学刺激の感受は、その一部をPiezoファミリーに代表されるイオンチャネルの開口が担っている。成熟骨芽細胞や骨細胞でPiezo1を欠損するマウスでは、骨形成低下と骨吸収上昇により骨量が減少することから、骨芽細胞/骨細胞のPiezo1が骨代謝制御に重要であることが示された (Li, eLife, 2019)。本研究において、著者らはPiezo1の歯・歯周組織における発現を解析し、象牙芽細胞、セメント芽細胞、骨芽細胞、骨細胞に発現することを見出した。顎口腔系には咀嚼力をはじめとした力学刺激が発生することから、顎骨リモデリングにこれらの細胞のPiezo1が関与する可能性が考えられた。そこで、Piezo1f/fDmp1Creマウスの顎骨を解析したところ、小顎症が認められた。根間中隔の骨では骨芽細胞数には有意な変化がなかった一方は骨細胞数は有意に増加していた。顎口腔系における力学刺激付加のモデルとして矯正学的歯の移動モデルを実施したところ、Piezo1f/fDmp1Creマウスの歯の移動量には差が認められなかった。この結果は、以前紹介したJiang, Fron. Physiol., 2021とは異なる結果である(こちらの論文では、GsMTx4の全身投与により歯の移動が抑制されると報告している)。遺伝子改変マウスの場合は矯正力を付加する前からPiezo1欠損の影響が出ていること、GsMTx4はPiezo1以外のチャネルも阻害すること、全身投与によるドラッグデリバリーの問題など、どちらの実験系も完全なものではなく、矯正学的歯の移動のメカノバイオロジーにはさらなる検討の余地があるといえる。

    タウリン

    老化促進因子としてのタウリン不足

    原題:

    Taurine deficiency as a driver of aging

    著者:

    Parminder Singh, Kishore Gollapalli, Stefano Mangiola, Daniela Schranner, Mohd Aslam Yusuf, Manish Chamoli, Sting L. Shi, Bruno Lopes Bastos, Tripti Nair, Annett Riermeier, Elena M. Vayndorf, Judy Z. Wu, Aishwarya Nilakhe, Christina Q. Nguyen, Michael Muir, Michael G. Kiflezghi, Anna Foulger, Alex Junker, Jack Devine, Kunal Sharan, Shankar J. Chinta, Swati Rajput, Anand Rane, Philipp Baumert, Martin Schönfelder, Francescopaolo Iavarone, Giorgia di Lorenzo, Swati Kumari, Alka Gupta, Rajesh Sarkar, Costerwell Khyriem, Amanpreet S. Chawla, Ankur Sharma, Nazan Sarper, Naibedya Chattopadhyay, Bichitra K. Biswal, Carmine Settembre, Perumal Nagarajan, Kimara L. Targoff, Martin Picard, Sarika Gupta, Vidya Velagapudi, Anthony T. Papenfuss, Alaattin Kaya, Miguel Godinho Ferreira, Brian K. Kennedy, Julie K. Andersen, Gordon J. Lithgow, Abdullah Mahmood Ali, Arnab Mukhopadhyay, Aarno Palotie, Gabi Kastenmüller, Matt Kaeberlein, Henning Wackerhage, Bhupinder Pal, Vijay K. Yadav

    雑誌:

    Science, 380, eabn9257 (2023)

    POINT!

     加齢は代謝物濃度の全身的な変化と関連しているが、このような変化が単に老化の経過なのか、それともこれらの分子が老化の促進因子なのかは、まだほとんど解明されていない。準必須微量栄養素であるタウリンは、ヒトや他の真核生物に最も豊富に存在するアミノ酸の一つであるが、血中タウリン濃度が加齢に影響するかどうかは不明である。そこで著者らは加齢とタウリン血中濃度の関連を調べたところ、タウリンの血中濃度はマウス、サル、ヒトにおいて加齢とともに低下することが示された。この減少が老化に関与しているかどうかを調べるため、14ヶ月齢の野生型C57BL/6Jマウスにタウリン(1000 mg / kg体重)または対照溶液を1日1回、死亡するまで経口投与したところ、オスメスともにコントロールマウスよりも長く生存し、寿命中央値が10〜12%延び、28ヶ月齢における平均余命が約18〜25%延びた。一方、タウリンは酵母の複製寿命には影響を与えなかったが、線虫でも寿命を延ばすことが示された。タウリンによる健康寿命改善効果を検討したところ、加齢に伴う体重・脂肪増加の抑制と骨量・骨質の改善、筋持久力・筋力の増加、抑うつ様行動・不安の減少や探索行動と記憶の上昇、耐糖能・インスリン抵抗性と消化管通過時間の改善、加齢よって増加した骨髄球系細胞の減少などが観察され、様々な側面から健康寿命が延びていることが示された。逆にタウリントランスポーターSlc6a6の欠損マウスでは、骨密度の低下、筋力の低下、不安の増大、記憶力の低下など、老化に関連した表現型の加速を示した。また、卵巣摘出後マウスの体重増加や骨量低下も正常化することも示された。タウリンの補給が健康寿命を改善するメカニズムを調べたところ、タウリン補給により細胞老化の指標であるSA-β-Gal陽性細胞数が低下し、テロメラーゼ欠損ゼブラフィッシュの老化を抑制、ゲノムDNA損傷を抑制、一部臓器でのDNAメチル化を若齢時と近い状態にさせ、栄養素のセンシングとプロテオスタシス経路を調節し、血中炎症性サイトカイン濃度を若齢レベルまで低下させ、腸管上皮や毛包におけるLgr5+幹細胞数を増加させ、ミトコンドリアの機能不全を抑制することが明らかにされた。細胞質のタウリンはミトコンドリアへ輸送され、ミトコンドリアtRNAに特異的な5-タウリノメチルウリジン-tRNALeu(UUA)(τm5U-tRNA)を形成することが知られており、この修飾は電子伝達系複合体IサブユニットND6の翻訳を促進する。実際に加齢に伴ってtRNAのτm5U含量が減少するが、タウリン補給によって正常化することや、ND6タンパク質発現も改善することなどから、電子伝達系複合体I活性の増加がタウリンによる健康促進メカニズムに関わることが示唆された。ヒトにおける臨床的危険因子との関連解析から、タウリン代謝物(タウリン、ヒポタウリン、N-アセチルタウリン)濃度が高いほど、BMI、腹部肥満、2型糖尿病の有病率、高血圧、炎症(CRP)などが低いことと関連しており、一方でヘモグロビン、血小板、白血球数などは正の相関を示した。さらに運動によって血中のタウリン代謝物濃度が上昇することも明らかにされたことから、タウリンが運動による老化防止効果に関連する可能性が明らかにされた。また、アカゲザルに対するタウリンの補給でも健康寿命が伸びることも示された。以上の結果から、タウリン欠乏が本論文で検討した種における老化の促進因子である可能性が明らかになった。タウリン欠乏がヒトにおいても同様に老化の促進因子であるかどうかを検証するため、ヒトを対象とした臨床試験が必要であると考えられる。

    FGF23

    FGF23阻害はβサラセミアにおける造血幹細胞ニッチ異常を標的とする治療戦略である

    原題:

    Inhibition of FGF23 is a therapeutic strategy to target hematopoietic stem cell niche defects in β-thalassemia

    著者:

    Annamaria Aprile, Laura Raggi, Simona Bolamperti, Isabella Villa, Mariangela Storto, Gaia Morello, Sarah Marktel, Claudio Tripodo, Maria Domenica Cappellini, Irene Motta, Alessandro Rubinacci , Giuliana Ferrari

    雑誌:

    Sci Transl Med, 15, eabq3679 (2023)

    POINT!

     血液と骨との関係の重要性が明らかになりつつあるが、完全には解明されていない。本研究で著者らは、血液と骨に関わる分子メカニズムを解明するために、骨異常を伴う先天性貧血のモデルとしてβサラセミアを用いた。βサラセミアは、ヘモグロビン(Hb)β鎖遺伝子の変異によって引き起こされ、輸血が必要な重症型では貧血だけでなく髄外造血、肝脾腫、内分泌障害や骨異常を含む多臓器病変が生じる。また、βサラセミアモデルであるHbbth3/+(th3)マウスを用いて、骨髄ニッチとのクロストークが変化するために造血幹細胞の機能が損なわれていることが報告されている。近年、FGF23と骨疾患および赤血球造血への関与が明らかにされていることから、著者らは患者の血漿中FGF23濃度を調べたところ、健常人と比較して有意に高く、Hbや骨密度と負の相関を示し、血中網状赤血球数やエリスロポエチン(EPO)と正の相関を示した。(EPOの上昇はβサラセミアの特徴である。)骨におけるFgf23発現を比較すると、骨細胞と骨髄Ter119+細胞が、th3マウスにおけるFGF23産生亢進の大部分を占めていたが、内皮細胞もFgf23発現に寄与している可能性が示された。in vitroでのEPO刺激およびシグナル伝達阻害により、ERK1/2経路およびSTAT5経路が、それぞれ骨および骨髄赤血球細胞においてFgf23の転写を増強することが示された。実際にth3マウスに抗EPO中和抗体を投与すると血中FGF23量が低下した。FGF23は分解されてC末端フラグメント(cFGF23)が生成されるが、これはFGF23シグナル伝達を特異的に遮断することが知られている。高レベルFGF23の影響を調べるためにth3マウスにcFGF23を投与したところ、血中リン・カルシウム濃度が正常化しただけでなく、ALP活性やPPi濃度が正常化することにより骨密度が上昇した。長期投与により、海綿骨量、骨芽細胞数、類骨面、石灰化速度および骨形成速度が改善されたが、骨細胞や破骨細胞数などには影響を与えなかった。さらに、これらのマウスではニッチ因子であるオステオポンチン、Jagged-1、CXCL12発現が正常化して造血幹細胞機能が回復しており、さらに、赤血球産生についても、様々な分化段階でのアポトーシスを抑えることで赤血球造血の改善が観察された。以上の結果から、FGF23シグナル伝達の阻害は、骨疾患を改善し、造血幹細胞-骨髄ニッチ相互作用を回復させるための治療戦略となる可能性が示された。

    骨細胞

    交感神経支配は授乳期の骨細胞による皮質骨吸収を制御する

    原題:

    Sympathetic Innervation Regulates Osteocyte-Mediated Cortical Bone Resorption during Lactation

    著者:

    Qiaoyue Guo, Ningrong Chen, Cheng Qian, Cheng Qi, Kathleen Noller, Mei Wan, Xiaonan Liu, Weixin Zhang, Patrick Cahan, and Xu Cao

    雑誌:

    Adv Sci, e2207602 (2023)

    POINT!

     骨細胞は骨基質に埋め込まれ、骨細管ネットワークにより連絡しており、力学的刺激を受け取る細胞として機能すると考えられている。本研究で著者らは、骨の内受容、特に交感神経活性が骨細胞による骨吸収を制御しているかどうかを調べるために、授乳期やグルココルチコイド投与、卵巣摘出マウスの骨におけるノルエピネフリン(NE)レベルの変化を調べたところ、いずれのモデルにおいても有意に上昇していることを見出した。さらに、授乳期には皮質骨中のNE濃度や骨内膜近傍におけるチロシンヒドロキシラーゼ陽性(TH+)交感神経線維の範囲が漸増し、それと一致してTRAP+骨細胞の割合も上昇することが示された。著者らは以前、破骨細胞がnetrin-1を分泌して感覚神経支配を誘導することを明らかにしていることから、骨細胞でのnetrin-1発現を調べたところ、授乳マウスの皮質骨では、Ctsk+骨細胞の80%がnetrin-1陽性であった。これらの結果から、骨細胞でnetrin-1発現が誘導されることで骨内膜近傍における交感神経発芽が促進されるフィードフォワードループが形成されていることが示唆された。Dmp1-Creによる骨細胞選択的Adrb2欠損マウスを作製したところ、これらの授乳期マウスでは、海綿骨量や皮質骨厚が上昇し、骨小腔面積などが有意に低下した。同様に、皮質骨中のTRAP+およびCtsk+骨細胞の割合と骨内膜からの距離も著しく減少していた。非選択性β遮断薬プロプラノロールを授乳期マウスに投与した場合も同様の結果が得られた。Adrb2を介したNEシグナルはpCREBシグナルを活性化することや、Ca2+依存的に骨細胞による細胞外小胞放出を刺激することで、それらに含まれるCtskなどによって骨細胞による骨量減少に関わる可能性が示唆された。さらに、交感神経を選択的に除去する6-OHDAやカテコールアミン放出を抑制するグアネチジンの骨内投与の結果から、TH+交感神経支配の除去や皮質骨におけるNE放出の阻害は、骨細胞を介した骨小腔周囲の骨吸収を低下させることが示唆された。以上の結果から、交感神経系が授乳期における骨細胞によって誘導される骨量減少を促進することを示しており、これはおそらく授乳期の母親のエネルギーおよびミネラル要求量の増加に対する適応反応であると考えられる。

    マンノースグリカン

    宿主由来のマンノース糖鎖は自己免疫における病原性γδT細胞/IL-17a軸を誘導する

    原題:

    Host-derived mannose glycans trigger a pathogenic γδT cell/IL-17a axis in autoimmunity

    著者:

    Inês Alves, Beatriz Santos-Pereira, Noelia de la Cruz, Ana Campar, Vanda Pinto, Pedro M. Rodrigues, Marco Araújo Sofia Santos, Javier Ramos-Soriano, Carlos Vasconcelos, Roberto Silva, Nuno Afonso, Filipe Mira, Cristina C. Barrias, Nuno L. Alves, Javier Rojo, Lélita Santos, António Marinho, and Salomé S. Pinho

    雑誌:

    Sci. Transl. Med., 15: eabo1930 (2023)

    POINT!

     全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする自己免疫疾患は、免疫刺激が自己寛容機構を破綻させることで生じる。以前、筆者らは、細胞の糖鎖配列の変化が炎症反応の促進やがんの進行に関連する免疫抑制ネットワークに影響を及ぼすことを示した。しかし、糖鎖が自己免疫疾患を引き起こす機構は、ほとんど明らかになっていない。筆者らは、C型レクチン受容体DC-SIGN陽性γδT細胞が腎臓表面の微生物関連マンノース構造を認識し、インターロイキン-17a(IL-17a)を介した自己免疫応答を誘導することを明らかにした。腎臓にマンノース構造が多く存在するMgat5欠損マウスでは、腎臓へのγδT細胞浸潤が増加し、高齢マウスではループスの自然発症と相関が認められた。分岐型N-糖鎖の生合成を促進するN-アセチルグルコサミンを経口投与することで、腎臓へのγδT細胞浸潤が抑制され、疾患発症を抑制することができた。以上より、SLE発症にマンノース–γδT細胞–IL-17a軸が関与し、糖代謝をリプログラミングが自己免疫疾患の治療戦略につながることを示した。

    造血幹細胞

    ヒト造血幹細胞の科学的に定義されたサイトカインフリーな増殖

    原題:

    Chemically defined cytokine-free expansion of human haematopoietic stem cells

    著者:

    Masatoshi Sakurai, Kentaro Ishitsuka, Ryoji Ito, Adam C. Wilkinson, Takaharu Kimura, Eiji Mizutani, Hidekazu Nishikii, Kazuhiro Sudo, Hans Jiro Becker, Hiroshi Takemoto, Tsubasa Sano, Keisuke Kataoka, Satoshi Takahashi, Yukio Nakamura, David G. Kent, Atsushi Iwama, Shigeru Chiba, Shinichiro Okamoto, Hiromitsu Nakauchi, and Satoshi Yamazaki

    雑誌:

    Nature, 615: 127-133. (2023)

    POINT!

     白血病や悪性リンパ腫などの化学療法のみで治らない疾患では、健常人ドナーから採取した造血幹細胞を移植する造血幹細胞移植が行われている。しかし造血幹細胞の数は非常に少なく、ドナー不足をはじめ、さまざまな困難がある。また造血幹細胞は生体外で維持を試みてもすぐに分化してしまい、長期間未分化な状態で維持・増殖させるのは難しく、生体外での効率的な増殖技術の開発が求められている。著者らは2019年に、液体のりの主成分であるポリビニルアルコール(PVA)という化学物質とサイトカインを組み合わせることで造血幹細胞の未分化性を維持したまま数ヶ月間培養できることを報告した(Adam C. Wilkinson, Nature, 2019)。そこで今回、サイトカインをも含まない、化合物のみで構成された培地を用いて、ヒト造血幹細胞を長期に維持・増殖する技術の開発を目指し、研究を行なった。筆者らが2019年に報告した培地では、マウス造血幹細胞は増幅できるものの、ヒト造血幹細胞の増殖は限定的という問題点があった。そこでマウスとヒトの造血幹細胞を比較したところ、ヒト造血幹細胞ではPI3K/AKTシグナルが減少しており、740Y-Pという化合物でPI3Kを活性化させるとヒト造血幹細胞の増殖率が改善することを見出した。さらにこの740Y-Pはサイトカインの代わりとなり、PVA、TPO受容体作動薬ブチザミド、ピリミドインドール誘導体UM171を組み合わせると血清アルブミン、サイトカインの無い培地でヒト造血幹細胞が長期的に培養可能になることを見出した。また、PVAの代わりにポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(PCL-PVAc-PEG)を用いるとヒト造血幹細胞の増殖能はより高まることも発見した。さらにscRNA-seq解析により、以前報告のあったUM171, SR-1培地で培養された造血幹細胞と比較したところ、今回報告した培地で培養した造血幹細胞は、造血幹細胞に特異的な遺伝子を発現する細胞が多く含まれており、造血幹細胞をより選択的に増殖できることも示した。今回報告された造血幹細胞の培養技術により、ヒト造血幹細胞に関する基礎研究のさらなる発展が見込まれるとともに、造血幹細胞移植の安全性やドナー不足といった問題の解決が大いに期待される。

    CAR-T細胞

    標的細胞特異性の高いCAR-T細胞の開発

    原題:

    Co-opting signalling molecules enables logic-gated control of CAR T cells

    著者:

    e Aidan M. Tousley, Maria Caterina Rotiroti, Louai Labanieh, Lea Wenting Rysavy, Won-Ju Kim, Caleb Lareau, Elena Sotillo, Evan W. Weber, Skyler P. Rietberg, Guillermo Nicolas Dalton, Yajie Yin, Dorota Klysz, Peng Xu, Eva L. de la Serna, Alexander R. Dunn, Ansuman T. Satpathy, Crystal L. Mackall, and Robbie G. Majzner

    雑誌:

    Nature, 615: 127-133 (2023)

    POINT!

     CAR-T細胞療法はいくつかの造血器腫瘍の治療において高い有効性を示し、治療薬として利用されている。一方で固形がんに対するCAR-T細胞療法は開発が遅れており、その理由として固形がんで高発現している抗原の多くは正常組織にも発現しており、単一の抗原を標的とすると正常組織を障害してしまうことが挙げられる。従来のCAR-T細胞には、標的抗原特異的なscFvと共刺激因子、CD3ζなどのシグナル分子を組み合わせたキメラ受容体が搭載されている。筆者らは、CD3ζの代わりにT細胞受容体シグナルの担い手であるLATを搭載したキメラ受容体と、同じくT細胞受容体シグナルの担い手であるSLP-76を搭載した第二の抗原特異性をもつキメラ受容体を同時発現することで、両方のキメラ受容体が共に抗原を認識した時のみシグナルが入る(論理回路でいうところの ”AND回路” となる)CAR-T細胞を作製した。一方のみのキメラ受容体によるシグナルの”もれ”を抑制するため、それぞれのキメラ受容体に幾つかの変異を導入した後に抗原を発現するがん細胞と共培養したところ、両方の抗原を発現するがん細胞への障害活性を高い水準に保ったまま、単一抗原のみを発現する細胞への障害活性を著しく抑制することに成功した。本技術は固形がんへのCAR-T療法の実現に繋がるのみならず、特異性の高いCAR-T療法としてさまざまな疾患に応用できる可能性が期待される。

    軟骨内骨化

    幹細胞を用いたモデリングと単一細胞マルチオミクスによる、ヒト骨格形成機構の解明

    原題:

    Stem cell-based modeling and single-cell multiomics reveal gene-regulatory mechanisms underlying human skeletal development

    著者:

    Shoichiro Tani, Hiroyuki Okada, Shoko Onodera, Ryota Chijimatsu, Masahide Seki, Yutaka Suzuki, Xiaonan Xin, David W. Rowe, Taku Saito, Sakae Tanaka, Ung-il Chung, Shinsuke Ohba, and Hironori Hojo

    雑誌:

    Cell Rep., doi: 10.1016/j.celrep.2023.112276. (2023)

    POINT!

     骨は人体にとって運動、内分泌、造血を司る必要不可欠な臓器であるが、発生期における骨格形成の分子メカニズムは十分に解明されていない。著者らは、in vitroにおいてヒト多能性幹細胞(hPSCs)から原始線条、前体節中胚葉、体節中胚葉を経て椎板へと分化させる手法を開発した。試験管内でhPSCsから誘導した椎板を免疫不全マウスの腎皮膜下に移植したところ、8週後に軟骨円柱様構造が形成され、18週後には増殖軟骨、肥大軟骨、海綿骨の形成を認めた。この骨構造を単一細胞RNA-seqにより解析したところ、ヒト由来細胞が骨格系細胞に分化しており、マウス由来の血球系細胞が骨構造内に遊走していた。当該データとヒト胎児長管骨の単一細胞RNA-seqデータを統合解析したところ、hPSC由来骨格系細胞の分化経路は胎児の軟骨内骨化を再現している可能性が示唆された。続いて、オープンクロマチン解析と遺伝子発現解析を統合した単一細胞マルチオーム解析を行い、細胞種特異的遺伝子の発現とオープンクロマチン状態が相関することを明らかにした。転写因子のモチーフ解析により、骨軟骨系前駆細胞ではRUNX2やMEF2C、骨芽細胞ではTWIST1、軟骨細胞ではFOXA2などといった各細胞集団に特異的な転写因子群が活性化していることが明らかになり、細胞種ごとに異なる転写制御ネットワークが骨格系細胞の分化に重要であることが示唆された。さらに、発現変動遺伝子(DEGs)、RNA velocity、転写因子データベースの統合解析により、骨格系細胞分化に重要な転写因子として新たにZEB2を同定した。ヒトMSCにおいてZEB2をノックダウンしたところ、骨格系細胞分化関連遺伝子群の発現が低下し、骨芽細胞特異的Zeb2欠損マウスでは骨形成が障害された。本研究により、ヒト骨系統疾患の機序解明や新規治療標的の探索に有用な新規モデルが確立され、ヒト骨発生過程における転写制御ネットワークの詳細が明らかとなった。

    異所性骨化

    ARHGAP36遺伝子座におけるエンハンサーのハイジャックは、結合組織から骨への転換に関与する

    原題:

    Enhancer hijacking at the ARHGAP36 locus is associated with connective tissue to bone transformation

    著者:

    Uirá Souto Melo, Jerome Jatzlau, Cesar A. Prada-Medina, Elisabetta Flex, Sunhild Hartmann, Salaheddine Ali, Robert Schöpflin, Laura Bernardini, Andrea Ciolfi, M-Hossein Moeinzadeh, Marius-Konstantin Klever, Aybuge Altay, Pedro Vallecillo-García, Giovanna Carpentieri, Massimo Delledonne, Melanie-Jasmin Ort, Marko Schwestka, Giovanni Battista Ferrero, Marco Tartaglia, Alfredo Brusco, Manfred Gossen, Dirk Strunk, Sven Geißler, Stefan Mundlos, Sigmar Stricker, Petra Knaus, Elisa Giorgio, Malte Spielmann

    雑誌:

    Nat. Commun., 14: 2034 (2023)

    POINT!

     異所性骨化は、軟部組織における異常な石灰化を原因とする疾患で、BMP、TGFβ、WNTなどのシグナル伝達経路が異所性骨形成を促進することが知られている。今回、筆者らは非常に稀な進行的異所性骨化の小児の症例を報告した。患児及び両親に対してエクソーム解析を行ったところ、異所性骨化に関連する既知の病的変異を持っていないことがわかった。次に、アレイCGHとFISH法により、2番染色体上の約820kbの領域が重複しX染色体に挿入される染色体間挿入性重複が同定された。この820kb重複は、高次クロマチン構造を構成するtopologically associating domain (TAD)に挿入されたことがわかった。その結果、TADに含まれるARHGAP36の発現上昇が認められた。正常のX染色体についてChIP-seqを行ったところARHGAP36遺伝子領域は不活性化状態になっていることから、ARHGAP36が挿入領域のエンハンサーをハイジャックしたことを示唆した。In vitroでヒト間葉系幹細胞(MSC)と軟骨細胞でARHGAP36を過剰発現させ、骨分化誘導した結果、骨分化マーカー遺伝子であるCOL1A1COLXRUNX2の発現上昇が認められた。さらに、ARHGAP36過剰発現線維芽細胞においてカルシウム沈着が早められたことがわかった。ARHGAP36はhedgehog (HH) シグナル経路を活性化することが知られている。また、筆者らの研究からARHGAP36はBMPとTGFβシグナルを抑制すると示されたが。だが、HHシグナルを阻害してもARHGAP36過剰発現による骨分化促進を打ち消すことができなかった。よって、ARHGAP36による骨分化促進はHH、BMP、TGFβ、WNTといった複数経路間の複雑なクロストークに起因する可能性があると筆者らは考えている。本研究は、異所性骨化症例から、初めてARHGAP36が骨形成と代謝に関与していることを明らかにした。

    代用甘味料

    代用甘味料のスクラロースはT細胞応答を抑制する

    原題:

    The dietary sweetener sucralose is a negative modulator of T cell-mediated responses

    著者:

    Fabio Zani, Julianna Blagih, Tim Gruber, Michael D Buck, Nicholas Jones, Marc Hennequart, Clare L Newell, Steven E Pilley, Pablo Soro-Barrio, Gavin Kelly, Nathalie M Legrave, Eric C Cheung, Ian S Gilmore, Alex P Gould, Cristina Garcia-Caceres, Karen H Vousden

    雑誌:

    Nature, 615(7953): 705-711 (2023)

    POINT!

     代用甘味料は、肥満や齲蝕を抑制するために有用な調味料として20年以上使用されてきたが、近年、長期的な摂取による影響が報告され始めた。代表的な人工甘味料の一つであるスクラロースが免疫系に影響を及ぼす可能性が指摘されている。著者らは、マウスに高濃度のスクラロースを経口摂取させ、免疫細胞に対する影響を解析した。Rag2–/–マウスにCFSE標識T細胞を移入する系によりT細胞の増殖活性に対する影響を調べたところ、他の代用甘味料とは異なり、スクラロースを摂取させたマウスにおいては、濃度依存的にCD4+T細胞およびCD8+T細胞の増殖抑制効果が見られた。どちらのサブセットでもIFN-γ産生細胞の占める割合が低下していた。スクラロースがT細胞の増殖を促す、すなわちTCRシグナルを活性化するメカニズムを解析した。スクラロースで処理したT細胞ではPLCγリン酸化の顕著な遅延が認められた一方、ZAP70やLAT経路には異常は認められなかった。スクラロースはT細胞の主に細胞膜分画に存在していたので、さらに詳細に局在解析を行ったところ、スクラロースは細胞外に存在すること、スクラロースの結合によって膜構造が変化し、TCR刺激時のPLCγのクラスタリングやTCRβとの共局在が障害されることがわかった。その結果、TCRシグナルによるカルシウム濃度の上昇が妨げられた。カルシウムシグナルは他の免疫細胞にも重要であるが、樹状細胞やB細胞のカルシウムシグナルには影響はなく、スクラロースの薬理作用はT細胞を特異的に標的とすることが示された。次に、スクラロースによるT細胞活性の低下が病態に与える影響を解析するために、担癌モデルにおけるT細胞の抗腫瘍活性を評価した。スクラロース投与マウスでは抗原特異的CD8+T細胞の腫瘍内浸潤やIFNγ産生が低下し、腫瘍の排除が障害された。Listeria monocytogenesを用いて病原体排除に対するスクラロースの影響を解析したところ、同様に抗原特異的CD8+T細胞やIFNγ産生が減少し、細菌の排除の障害が認められた。I型糖尿病を自然発症するNODマウスおよび、Tcra–/–マウスに対するCD4+T細胞移入による腸炎モデルを用いて自己免疫応答に及ぼす影響を評価したところ、スクラロースによる症状の軽減を認めた。以上より、代用甘味料のスクラロースは膜構造に干渉することによってTCRシグナルを阻害し、T細胞の応答性を抑制することが示された。さらに、この機構によって腫瘍や感染症、自己免疫疾患の症状や予後が左右されうることが示唆された。

    形態形成

    p130Casはアンドロゲン依存性の生後の顎下腺の発生制御に必要である

    原題:

    p130Cas is required for androgen‐dependent postnatal development regulation of submandibular glands

    著者:

    Jing Gao, Aonan Li, Shinsuke Fujii, Fei Huang, Chihiro Nakatomi, Ichiro Nakamura, Hiroaki Honda, Tamotsu Kiyoshima, Eijiro Jimi

    雑誌:

    Sci Rep, 13(1): 5144 (2023)

    POINT!

     唾液線発生過程では、上皮間葉相互作用により分枝構造が作られる。顎下腺線条導管の顆粒性膨大部 (GCT) は齧歯類に特有の構造で、アンドロゲン依存的に生後3週間で急速に形成が進む。p130Casはインテグリンや受容体型チロシンキナーゼ (RTK) と細胞内シグナル分子を結ぶ分子であり、腺組織などの臓器の複雑な形態の形作りに重要であることが知られている。著者らは生後42日の♂マウスのGCTでp130Casが発現することを見出し、同分子の唾液線の形態形成における機能を解析した。上皮特異的にp130Casを欠損するマウス (p130Casf/fKRT14Cre/+: 以下p130CasΔepi–マウス)の解析をおこなったところ、♂マウスにおいて唾液腺重量の低下を認められた。EdU取り込み法およびTUNEL法の結果、このマウスの唾液腺では細胞増殖が低下し、細胞死が亢進することが示された。機能面での変調を検討するために、唾液の解析を行った。p130CasΔepi–マウスでは、唾液量が顕著に減少し、アミラーゼの量も減少を認めた。組織学的解析から、このマウスの唾液腺導管の構造はコントロールと比して屈曲の少ない単純な形状であり、粘液産生も少ないことが見出された。GCT発生にはアンドロゲンが重要である。p130CasΔepi–マウスの唾液腺腺房およびGCTでは、アンドロゲン受容体 (AR) の発現量はコントロールと変わらなかったが、核内に局在するARは減少していた。NGFやEGFなどのアンドロゲン依存的な分子の発現量が低下していたことから、p130Casは唾液腺組織でアンドロゲンシグナルを制御することが示された。p130CasΔepi–マウスのGCTでは核の管腔側への偏位が見られ、線条部導管と似た組織像を呈したことから、p130Casは線条部導管からGCTへの分化を制御すると考えられた。p130CasΔepi–マウスのGCTではEGFを含む分泌顆粒が見られなかったことから、分泌に関わる経路も解析した。このマウスでは、分泌顆粒や小胞体のマーカー分子が減少していた。ジヒドロテストステロンをコントロールマウスに投与した際には小胞体マーカーの発現上昇が認められたが、p130CasΔepi–マウスではそれが認められなかった。以上より、p130Casは唾液腺導管の形成プロセスにおいて、アンドロゲンシグナルを介在することによって細胞の増殖、生存、分化、機能を制御することが明らかになった。

    インターフェロン

    STING依存的インターフェロン産生は破骨細胞分化と骨吸収を制御する

    原題:

    STING-dependent interferon signatures restrict osteoclast differentiation and bone loss in mice

    著者:

    Susan MacLauchlan, Priyanka Kushwaha, Albert Tai, Jia Chen, Catherine Manning, Gaurav Swarnkar, Yousef Abu-Amer, Katherine A Fitzgerald, Shruti Sharma, Ellen M Gravallese

    雑誌:

    Proc Natl Acad Sci U S A., 120(15): e2210409120 (2023)

    POINT!

     cGAS–STINGは、DNAを認識を介したI型インターフェロン (IFN-I) 産生を制御する経路である。IFN-Iの一つであるIFN-βはRANKLにより誘導され、破骨細胞分化を抑制する。IFN-I上流のSTINGの破骨細胞分化や骨吸収に関する報告はなされているが、感染などの外来刺激で活性化された”inducible”な機能についてであり、定常状態の”tonic”な機能についての報告はなかった。著者らは、STINGをコードするTMEM173遺伝子の機能獲得型変異を原因とし、IFN-Iの過剰産生により発熱、皮膚症状、呼吸器症状が現れる乳児発症STING関連血管炎 (SAVI) モデルマウスを解析した。このマウスから採取された破骨細胞前駆細胞を破骨細胞に分化誘導したところ、コントロールと比べて破骨細胞数の形成は少なく、成熟破骨細胞マーカー遺伝子の発現は低値を示した。同じ実験系でIFN-I受容体のIFNAR1に対する抗体を用いた場合、SAVIマウス由来の細胞から分化する破骨細胞は増加した。同受容体を欠損するSAVIマウス由来の細胞を分化させた場合は、IFNAR1欠損細胞と同程度に破骨細胞が誘導され、外来刺激が無い”tonic”な条件でも、STINGがIFN-I、IFNAR1を介して破骨細胞分化を制御すると考えられた。個体レベルでのSTINGの”tonic”な作用を明らかにするために、STING KO (Tmem173–/–) マウスおよび骨髄球系細胞でSTINGを欠損するマウス (Tmem173f/fLysM-Cre+/–: STINGMylマウス) の骨を解析した。その結果、どちらのマウスにおいても骨吸収の亢進を伴う骨量低下が認められた。STING KOまたはSTINGMyl骨髄細胞を破骨細胞に分化誘導したところ、どちらもコントロールと比較して誘導される破骨細胞数が多かった。”tonic”な状況でSTINGが破骨細胞分化に与える影響をRNA-Seq法によりさらに詳細に解析したところ、野生型細胞とSTING KO細胞とでは、分化誘導後 (day 1-4) よりも誘導前 (day 0) の時点で大きな遺伝子発現の差異を認めた。Gene ontology解析の結果、ISG15依存的抗ウイルス作用に関係する遺伝子の発現変動が大きい (day 0のSTING KOでISG15は低値) ことがわかったので、野生型およびSTING KO細胞にISG15を強制発現させたところ、STING KOかつISG15強制発現細胞から形成される破骨細胞数はSTING KO細胞の場合よりも減少していた。以上より、”tonic”な条件下で、STINGとISG15は生理的なレベルのIFN-Iの発現を誘導し、破骨細胞分化を制御していると考えられた。インターフェロン誘導性遺伝子の中には、RANKLによって発現上昇するものと低下するものが含まれた。STINGに誘導され、かつ、RANKLにより抑制される遺伝子として、ISG15を含む50の遺伝子が見出され、さらに、その中にはSAVI細胞で発現が高い遺伝子も複数含まれた。以上より、STINGは無刺激の状態でもインターフェロン誘導性分子群の発現を調節し、破骨細胞分化を抑制することが明らかになった。多くの細胞において”tonic”なIFN-I産生メカニズムは不明であるが、これらの細胞でもSTINGが定常レベルのIFN-I産生を誘導している可能性が示唆される。

    フィブロネクチン

    運動によって活性化されるFN1-α5β1インテグリン経路を介した肝オートファジーは代謝に対する運動ベネフィットを促進する

    原題:

    Exercise-activated hepatic autophagy via the FN1-α5β1 integrin pathway drives metabolic benefits of exercise

    著者:

    Kenta Kuramoto, Huijia Liang, Jung-Hwa Hong, and Congcong He

    雑誌:

    Cell Metab, 35, 620–632 (2023)

    POINT!

     運動が全身性の代謝改善効果をもたらす分子メカニズムはほとんどわかっていない。オートファジーはタンパク質やオルガネラのターンオーバーや代謝適応に関わるが、オートファジーの異常が多くの代謝性疾患に関与していることが報告されてきた。運動は筋肉だけでなく、肝臓などの非収縮組織においてもオートファジーを活性化するが、非収縮性組織における運動によるオートファジーの役割やメカニズムは不明であった。本研究で著者らは、肝細胞特異的なTBGプロモーターとAAV2/8を用いてshATG7を肝細胞特異的に発現させノックダウンすると、オートファジーが阻害され、コントロールマウスでは毎日のトレッドミル運動によって改善される高脂肪食(HFD)誘導性の耐糖能異常とインスリン抵抗性が改善されないことを見出した。さらに、リン酸化Aktによって解析したインスリン投与による肝インスリンシグナルも、これらのマウスでは運動による増強効果が観察されなかった。以上から、肝オートファジーの活性化が、HFDに対する運動誘導性代謝改善効果に必須であることが示唆された。運動したマウス由来の血漿または血清は、in vitroで細胞内のオートファジーを活性化するのに十分であったことから、運動前後の野生型マウス血清を用いてプロテオミクス解析を行った。トレッドミル運動90分後を運動前と比較したところ、これまで細胞外マトリクスタンパク質と考えられていたフィブロネクチン(FN1)が、最も有意に上昇することが明らかになった。この上昇はmRNA発現上昇には依存せず、FN1は定常状態では複数の細胞種から分泌されるが、運動に応答した分泌は活性化AMPKによって阻害されるRabGAPや、Sec6などのエクソシストを介して主に筋細胞から行われることが示された。また、精製FN1のみでもオートファジーが誘導されることから、FN1が運動によって筋肉から分泌されるオートファジー誘導性の血中因子であることが明らかになった。実際、筋肉特異的なMHCK7プロモーターとAAV2/9を用いFN1に対するshRNAを発現させてノックダウンしたマウスでは、運動誘発性の急性の血中FN1上昇がほぼ完全に消失した。これらのマウスでは、運動誘発性の筋肉におけるオートファジーや筋肉の形態、最大運動能力には影響がなかった一方、運動によるHFD誘導性の耐糖能異常とインスリン抵抗性の改善が観察されなかった。さらに、コントロールマウスの筋肉と肝臓の両方で観察される運動によるインスリンシグナル改善が、これらのマウスでは筋肉でのみ観察され、肝臓では観察されなかったことから、筋肉由来のFN1が運動誘発性の非収縮組織におけるインスリン感受性亢進に必須であることが示された。次に著者らは、これまでFN1受容体として報告されてきたα5β1インテグリンに着目し、筋肉から分泌されるFN1が肝臓におけるFN1受容体α5β1インテグリンと下流のIKKα/β-JNK1-Beclin1経路を介して、運動誘発性の肝臓におけるオートファジーと全身性インスリン感受性亢進を誘導することを明らかにした。肝細胞特異的TBGプロモーターとAAV2/8を用いてshITGA5を発現させノックダウンしたマウスでは、shATG7を肝特異的に発現させたマウスと同様の運動誘導性代謝改善効果が観察されなかった一方、shATG7を発現させたマウスとは異なり、絶食によるオートファジーには影響がなかった。以上から、運動による肝臓でのオートファジー活性化は、筋肉から分泌される可溶性FN1が肝臓のα5β1インテグリンに作用して、運動による糖尿病に対する代謝改善効果を促進することが証明された。

    免疫グロブリン静注療法(IVIg)

    免疫グロブリンG依存的な炎症性骨リモデリングの抑制はパターン認識受容体Dectin-1を必要とする

    原題:

    Immunoglobulin G-dependent inhibition of inflammatory bone remodeling requires pattern recognition receptor Dectin-1

    著者:

    Michaela Seeling, Matthias Pöhnl, Sibel Kara, Nathalie Horstmann, Carolina Riemer, Miriam Wöhner, Chunguang Liang, Christin Brückner, Patrick Eiring, Anja Werner, Markus Biburger, Leon Altmann, Martin Schneider, Lukas Amon, Christian H.K. Lehmann, Sooyeon Lee, Meik Kunz, Diana Dudziak, Georg Schett, Tobias Bäuerle, Anja Lux, Jan Tuckermann, Timo Vögtle, Bernhardt Nieswandt, Markus Sauer, Rainer A. Böckmann, and Falk Nimmerjahn

    雑誌:

    Immunity, doi.org/10.1016/j.immuni.2023.02.019 (2023)

    POINT!

     免疫グロブリン静注療法(IVIg)において、免疫グロブリンは強力な免疫調節活性や抗炎症活性を発揮する。この過程には、補体系およびFcγR活性化の阻害、制御性T細胞の誘導、自己抗体半減期の調節、抑制性FcγRIIbの発現上昇などの関与が報告されてきた。さらに、IVIg製剤中の高シアル化IgGはC型レクチンファミリーに属する細胞表面受容体を介して炎症を抑制することも示された。しかし、IVIgの作用機序は複雑であり、免疫調節作用に関する詳細なメカニズムは不明な点が多く残されていた。本研究で著者らは、hTNFtgマウスおよびK/BxN血清移入関節炎モデルマウスの関節炎成立後にIVIg投与を行うと効率的に炎症の消散を誘導した一方、どちらのモデルにおいてもノイラミニダーゼ処理したIVIgでは炎症抑制効果が減弱していたことから、IVIg依存的な関節炎の抑制には末端シアル酸が必要であることを確認した。しかしながら、IVIgによる骨破壊および炎症性破骨細胞形成の抑制は、どちらのモデルにおいてもIgGのシアル酸に依存しないことを発見した。そこで、著者らはこれまでに報告されてきた破骨細胞形成に対するIVIgの抑制効果に関わる細胞表面受容体に着目したところ、FcγR、SignR1、DCIRの欠損は影響しなかった一方、FcγRIIbやDectin-1を欠損したマウスでは、IVIgによる破骨細胞形成抑制効果が消失することを見出した。FcγRIIb欠損マウスやDectin-1欠損マウスにK/BxN関節炎を誘導し、関節炎の成立後IVIg投与を行ったところ、どちらのマウスにおいても炎症の消散が誘導された一方、破骨細胞形成および骨破壊の抑制効果がキャンセルされたことから、IVIgによる破骨細胞形成の抑制にこれらの受容体が必要とされることが明らかになった。FcγRIIbやDectin-1は破骨前駆細胞であるLy6Chigh単球で発現しており、破骨細胞への分化に伴い著しく発現が低下することから、IVIgが作用する主な標的細胞はLy6Chigh単球であると考えられた。さらにRNA-seq解析などから、IVIgはDectin-1依存的なFcγRIIbシグナルを介してLy6Chigh単球を破骨細胞に分化しにくい表現型にリプログラミングすることが示唆された。次に、IVIgが両受容体とどのように相互作用するかを検討したところ、Dectin-1はIgGに直接結合できないが、FcγRIIbへのIgG結合を増強する可能性が明らかになった。Dectin-1に依存したFcγRIIbへのIgG結合の調節についてより深く理解するために、分子動力学シミュレーションや超解像顕微鏡、近接ライゲーションアッセイによる解析を行った。その結果、Dectin-1がIgG結合に最適な受容体コンフォメーションでFcγRIIbの膜クラスター化を促進することにより、FcγRIIbへのリガンド結合をコントロールしていることが示された。以上の結果から、マウスおよびヒトの破骨細胞形成をIgG依存的に抑制する抑制性シグナルとして、Dectin-1の病原体非依存的な機能が同定された。これらの知見は、自己抗体やサイトカインによって引き起こされる炎症の治療標的として重要であると考えられる。

    Slc37a2

    糖トランスポーターSlc37a2は破骨細胞のチューブ状リソソームネットワークを介してマウスにおける骨代謝を制御する

    原題:

    Sugar transporter Slc37a2 regulates bone metabolism in mice via a tubular lysosomal network in osteoclasts

    著者:

    Pei Ying Ng, Amy B. P. Ribet, Qiang Guo, Benjamin H. Mullin, Jamie W. Y. Tan, Euphemie Landao-Bassonga, Sébastien Stephens, Kai Chen, Jinbo Yuan, Laila Abudulai, Maike Bollen, Edward T. T. T. Nguyen, Jasreen Kular, John M. Papadimitriou, Kent Søe, Rohan D. Teasdale, Jiake Xu, Robert G. Parton, Hiroshi Takayanagi & Nathan J. Pavlos

    雑誌:

    Nat Commun, 14, 906 (2023)

    POINT!

     破骨細胞は、骨吸収のために分泌リソソーム(SL)と呼ばれる特殊なリソソーム関連小器官を有していることが知られている。SLにはカテプシンKやTRAPなどが含まれ、膜上にはClC-7やV-ATPaseが存在し、破骨細胞の波状縁の膜前駆体として機能するが、SLの分子構成や時空間的な構造化過程については不明な点が残されていた。本研究で著者らは、超常磁性酸化鉄ナノ粒子を用いたリソソーム濃縮法を確立し、それらのプロテオミクス解析により、GWAS解析で推定骨密度に対して有意な関連性を示したSL糖輸送体としてSlc37a2を同定した。Slc37a2はRANKL刺激によって破骨細胞で発現誘導されるタンパク質で、骨芽細胞や骨細胞、骨髄では発現していなかった。Slc37a2-emGFP融合タンパク質を発現させてタイムラプス観察したところ、破骨細胞の細胞質全体に放射状に広がる管状小器官ネットワークに局在していた。これらのSlc37a2+管状小器官の内腔は酸性で、カテプシンKが含まれるエンドリソソーム由来である一方、初期エンドソームやミトコンドリアなどの他のオルガネラとは形態的・動態的に異なっていた。さらに、Slc37a2+管状小器官は骨表面上の細胞膜に向かって伸び、長時間接触した後、一過性に融合し、その後急速に後退している様子が観察された。これらのデータから、Slc37a2はカテプシンKを含む管状小器官のネットワークに局在し、この小器官は骨表面上の細胞膜と融合することから破骨細胞SLの基準を満たすことが示されたため、著者らはこの小器官を管状SLとした。Slc37a2欠損マウスの骨を調べたところ、オスでもメスでも非常に高い骨量を示し、卵巣摘出による骨量減少にも耐性を示した。これらのマウスでは骨モデリングにも異常があり、遠位骨幹部と骨幹端幅が広がっているだけでなく、骨膜から発生し近位の骨幹端-骨幹部に沿って伸びる線維軟骨性病変がみられた。Slc37a2欠損マウスでは、RANK発現が著しく上昇することにより破骨細胞数や血中TRAP5bレベルの上昇が観察された。血清CTX-Iには変化がなかったが、破骨細胞あたりの吸収の指標として用いられるCTX-IとTRAP5bの比は著しく低下していることが明らかになった。また、骨芽細胞数の上昇や骨形成の促進も観察されたが、in vitroでの骨芽細胞分化能には差がなく、破骨細胞由来カップリング因子として知られるSphk1およびTgfb1発現の顕著な上昇が関与している可能性が示唆された。さらに、Slc37a2欠損細胞は、in vitroでの破骨細胞分化には異常が観察されなかった一方、骨吸収能の顕著な低下を示した。以上から、破骨細胞による骨吸収の低下と、リモデリングに基づく骨形成の不均衡により、Slc37a2欠損マウスで高骨量の表現型を示すことが明らかにされた。Slc37a2が破骨細胞活性を制御するメカニズムを調べるため、著者らはRNA-seq解析やプロテオミクス解析を行ったが、有意な変化は観察されなかった。一方、細胞内の定量的メタボロームプロファイリングから、D-グルコースやD-フルクトースが上昇していることが明らかにされた。グルコースとフルクトースがリソソームから輸送されることは古くから知られていることから、著者らはSlc37a2が単糖のSLからの輸送を制御している可能性を検討した。様々な解析の結果、骨吸収の際にSlc37a2がSLから単糖の輸送を促進することでSLの管状化を促し、骨表面の細胞膜に輸送して分泌させ、破骨細胞の波状縁を維持することが明らかにされた。以上の結果から、Slc37a2は破骨細胞特有の分泌器官の生理的な構成要素であり、代謝性骨疾患の治療標的となる可能性が示された。

    骨内リンパ管

    骨内リンパ管が損傷後の骨髄再生を支持する

    原題:

    Lymphatic vessels in bone support regeneration after injury

    著者:

    Lincoln Biswas, Junyu Chen, Jessica De Angelis, Amit Singh, Charlotte Owen-Woods, Zhangfan Ding, Joan Mane Pujol, Naveen Kumar, Fanxin Zeng, Saravana K. Ramasamy, and Anjali P. Kusumbe

    雑誌:

    Cell, 186: 382-397 (2023)

    POINT!

     これまでの組織学的解析により、骨髄微小環境では血管が造血・骨形成の両面において重要であることが明らかになってきたが、リンパ管は存在しないと考えられてきた。著者らは、独自に樹立した組織透明化技術を用いて骨の3Dイメージングを行い、皮質骨および骨髄にリンパ管が存在することを証明した。過去に報告された透明化技術と比較しても、著者らの手法は所要時間が短く、かつ高解像度でのイメージングを可能にするものであった。この手法により、放射線照射および5-FU投与による遺伝毒性ストレス下において、骨内リンパ管が増生することが示された。Prox1-Cre-ERT2;Rosa26-tdTomato;iDTAマウスを用いてタモキシフェン誘導性にリンパ管上皮細胞を除去したところ、放射線照射後の骨髄細胞において造血系再構築能が低下したことから、骨内リンパ管は損傷後の骨髄再生に寄与している可能性が示唆された。骨内リンパ管増生メカニズムの解明のため、放射線照射後の骨髄で発現量が上昇しているサイトカインを網羅的に探索したところ、IL6誘導性にリンパ管が増生することが示された。また、造血機能に関与する因子を調べたところ、放射線照射後の骨髄でCXCL12の分泌が増加していることが明らかになった。著者らは、リンパ管上皮細胞由来CXCL12の寄与を明らかにするため、Prox1-Cre-ERT2;Cxcl12fl/flマウスの骨髄を解析したところ、定常状態における造血幹細胞数はコントロールと差がなかったが、放射線照射後の造血系再構築能は低下していた。また、Prox1-Cre-ERT2;iDTAマウス、Prox1-Cre-ERT2;Cxcl12fl/flマウスでは骨形成が低下していた。骨髄間葉系細胞のlineage tracingを行なったところ、放射線照射後の骨髄ではCXCL12誘導性にMyh11+ CXCR4+ペリサイトが増殖し、骨芽細胞に分化していることが明らかになった。さらに、放射線照射によるリンパ管増加とそれに伴う骨形成の亢進は老化により低下し、若齢マウス由来リンパ管上皮細胞の移植により回復することが示された。以上により、損傷後の骨髄においてIL6誘導性の骨内リンパ管増生およびそれに伴うリンパ管上皮細胞由来CXCL12の増加が、骨および造血系の再生に重要であることが明らかになった。

    メカノトランスダクション(機械的シグナル伝達)

    出生前の骨格形成におけるTRPV4の役割

    原題:

    Mechanoregulatory role of TRPV4 in prenatal skeletal development

    著者:

    Nidal S. Khatib, James Monsen, Saima Ahmed, Yuming Huang, David A. Hoey, and Niamh C. Nowlan

    雑誌:

    Sci. Adv., 9: eade2155 (2023)

    POINT!

     出生前における軟骨・骨形成の力学的制御機構は未だ十分に明らかにされていない。今回著者らは、軟骨や骨細胞のメカノセンシングを制御するイオンチャンネルであるTRPV4が荷重駆動型の出生前骨格形成に重要であることを明らかにした。まずマウス胎児後肢を機械的に刺激する生体外培養モデルを確立し、機械的刺激下では関節軟骨の成長と形態形成が促され、TRPV4が高生体刺激部位に局在することを見出した。さらに、荷重による関節軟骨の成長と形状が、細胞増殖とマトリックス生合成の制御を介したTRPV4活性に依存していることを示し、力学的荷重が関節形成時の成長と形態形成を誘導することを明らかにした。以上から、TRPV4は骨格の再生・修復に関連する治療開発において、非常に有望なターゲットである可能性が示唆された。

    ミトコンドリア

    ミトコンドリアの断片化とドーナツ化がミトコンドリア分泌を促進し骨形成を促す

    原題:

    Mitochondrial fragmentation and donut formation enhance mitochondrial secretion to promote osteogenesis

    著者:

    Joonho Suh, Na-Kyung Kim, Wonn Shim, Seung-Hoon Lee, Hyo-Jeong Kim, Eunyoung Moon, Hiromi Sesaki, Jae Hyuck Jang Jung-Eun Kim, and Yun-Sil Lee

    雑誌:

    Cell Metab., DOI: 10.1016/j.cmet.2023.01.003 (2023)

    POINT!

     ミトコンドリアの細胞内におけるダイナミクスはさまざまな疾患に関与することが近年明らかになってきているが、骨芽細胞の分化過程におけるミトコンドリアの形態変化や生理的意義に関しては不明な点が多かった。本研究では、骨芽細胞内のミトコンドリアを特異的にGFPで標識する遺伝子改変マウス(Col1a1-Cre Igs1CKI-mitoGFP/+マウス)を用いることで、骨形成におけるミトコンドリアの役割を探索した。まず著者らは、上記の遺伝子改変マウスの骨芽細胞を種々のイメージング技術を駆使して観察したところ、骨芽細胞の成熟過程において、ミトコンドリアの分裂とドーナツ型の形状変化が起こること、分裂したミトコンドリアおよびミトコンドリア由来小胞(MDV)が細胞外へ分泌されることを見出した。これらの分泌にはCD38/cADPRシグナルが寄与しており、分泌されたミトコンドリアとMDVは骨芽細胞分化誘導能を有していることが明らかになった。タンパク質分解酵素処理を施したミトコンドリアおよびMDVでは骨芽細胞分化誘導能が阻害されることから、分泌されたミトコンドリアおよびMDVに含まれる特定のタンパク質が骨形成の促進に重要な機能を果たすことが示唆されているが、具体的な物質の特定に関しては今後の研究が待たれる。また、ミトコンドリア融合遺伝子Opa1のノックダウンやミトコンドリア分裂遺伝子Fis1の過剰発現によりミトコンドリア分裂とドーナツ形成を促進させると、ミトコンドリアの分泌が増加し、骨芽細胞分化誘導能の促進が認められた。さらに、Opa1発現を誘導するミトコンドリア融合因子M1を投与したマウスでは骨量が低下すること、一方、骨芽細胞特異的にOpa1を欠損させたマウスでは骨量が増加することが示された。以上より、骨芽細胞の成熟過程におけるミトコンドリアの形態変化は、細胞外への分泌に適応しており、ミトコンドリアとMDV分泌は骨形成促進の重要な因子であることが示唆された。

    前立腺がん骨転移

    マクロファージは前立腺がん骨転移における抗アンドロゲン抵抗性を促進する

    原題:

    Macrophages promote anti-androgen resistance in prostate cancer bone disease

    著者:

    Xue-Feng Li , Cigdem Selli, Han-Lin Zhou, Jian Cao, Shuiqing Wu, Ruo-Yu Ma, Ye Lu, Cheng-Bin Zhang, Bijie Xun, Alyson D Lam, Xiao-Cong Pang, Anu Fernando, Zeda Zhang, Asier Unciti-Broceta, Neil O Carragher, Prakash Ramachandran, Neil C Henderson, Ling-Ling Sun, Hai-Yan Hu, Gui-Bo Li, Charles Sawyers, and Bin-Zhi Qian

    雑誌:

    J. Exp. Med., 220: e20221007. (2023)

    POINT!

     転移性去勢抵抗性前立腺がんは、アンドロゲン除去療法(ADT)に対する抵抗性を獲得した最終段階の前立腺がんである。がん転移先の腫瘍微小環境がADT抵抗性にどのように関与しているのかは不明であった。筆者らは、これまでに報告されているヒトの原発性前立腺がん及び転移臓器の遺伝子発現データセットを再解析し、骨転移においてはマクロファージが有意に増加していることを発見した。筆者らは骨転移微小環境における抗アンドロゲン療法抵抗性獲得の機序を解明するために、骨に好発転移するマウス前立腺がん細胞株であるMycCaP-Bo細胞を新たに樹立した。続いて、筆者らはMycCaP-Bo細胞の骨転移においても腫瘍浸潤マクロファージが増加していることを確認した。またクロドロネート投与及びCD11b-DTRマウスを用いた2種類のマクロファージ除去モデルにおいて、エンザルタミド(アンドロゲン受容体拮抗薬)の骨転移抑制効果が増強した。以上から前立腺がん骨転移におけるエンザルタミド耐性は、マクロファージに依存していることがわかった。腫瘍細胞に対するRNA-seqデータのパスウェイ解析によると、エンザルタミド抵抗性腫瘍においてはマクロファージ依存的に細胞外基質-受容体関連遺伝子の発現が上昇していた。細胞外基質のうちfibronectin (FN1)はヒト骨転移のデータセットにおいて、高いレベルで発現しており、前立腺がん骨転移に関与していることが予想された。またFN1の受容体であるintegrin alpha 5 (ITGA5)の発現も骨転移組織において有意に高かった。そこでMycCaP-Bo細胞にItga5を高発現させたところ、エンザルタミドに対する抵抗性が増すことが判明した。これらのデータから、マクロファージが腫瘍細胞のITGA5発現を促進することによってADT抵抗性を誘導することが示唆された。マクロファージが骨転移性前立腺がんにおいてFN1-ITGA5発現を誘導するメカニズムを理解するため、ナイーブ腫瘍とエンザルタミド抵抗性腫瘍由来のマクロファージを用いてRNA-seqを実施した結果、アクチビンAがFN1-ITGA5発現を促進する主要なサイトカインであると考えられた。また筆者らはエンザルタミド抵抗性腫瘍ではSRC活性が有意に上昇し、マクロファージの除去により活性が低下することを見出した。さらに、SRC活性は、ヒトの骨転移におけるFN1およびITGA5の発現とも有意に相関していた。以上より、マクロファージはアクチビンAを介した骨転移性前立腺がん細胞のFN1-ITGA5-SRCシグナルカスケードを誘導することによってADT抵抗性を促進することが判明した。

    プロテアーゼ活性

    B細胞濾胞領域における低プロテアーゼ活性は免疫後の完全な抗原の保持を促進する

    原題:

    Low protease activity in B cell follicles promotes retention of intact antigens after immunization

    著者:

    Aereas Aung, Ang Cui, Laura Maiorino, Ava P. Amini, Justin R. Gregory, Maurice Bukenya, Yiming Zhang, Heya Lee, Christopher A Cottrell, Duncan M. Morgan, Murillo Silva, Heikyung Suh, Jesse D. Kirkpatrick, Parastoo Amlashi, Tanaka Remba, Leah M. Froehle, Shuhao Xiao, Wuhbet Abraham, Josetta Adams, J. Christopher Love, Phillip Huyett, Douglas S. Kwon, Nir Hacohen, William R. Schief, Sangeeta N. Bhatia, and Darrell J. Irvine

    雑誌:

    Science, 379: eabn8934. (2023)

    POINT!

     ワクチン接種による免疫の獲得にはリンパ節内で抗原が分解されずに完全なまま保持されることが重要であるが、その分子メカニズムは明らかにされていない。本論文では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原のリンパ節内での動態を蛍光共鳴エネルギー移動によって解析し、リンパ節内に発現する様々な細胞外プロテアーゼの活性が領域によって不均一であることを明らかにした。リンパ節辺縁洞や濾胞外領域では細胞外プロテアーゼ活性が高く抗原は速やかに分解されるが、濾胞樹状細胞(follicular dendritic cells: FDC)の近傍ではプロテアーゼ活性が低く、抗原は分解されずに数日間にわたり保持されることが示された。そこで、一度に大量の抗原を投与する従来法と抗原を封入したFDC指向性ナノ粒子の投与を比較した結果、ナノ粒子投与群では、胚中心B細胞数およびHIV抗原反応性B細胞数が顕著に増加しただけではなく、分解前の抗原に反応性をもつB細胞も増加していた。効率的に抗原を濾胞へ到達させることで、より広範囲な感染症に対する有効な予防法が確立できる可能性がある。

    皮膚再生

    線維芽細胞の炎症性プライミングはトナカイにおける再生性皮膚修復か線維性皮膚修復を決定する

    原題:

    Fibroblast inflammatory priming determines regenerative versus fibrotic skin repair in reindeer

    著者:

    Sarthak Sinha, Holly D Sparks, Elodie Labit, Hayley N Robbins, Kevin Gowing, Arzina Jaffer, Eren Kutluberk, Rohit Arora, Micha Sam Brickman Raredon, Leslie Cao, Scott Swanson, Peng Jiang, Olivia Hee, Hannah Pope, Matt Workentine, Kiran Todkar, Nilesh Sharma, Shyla Bharadia, Keerthana Chockalingam, Luiz G N de Almeida, Mike Adam, Laura Niklason, S Steven Potter, Ashley W Seifert, Antoine Dufour, Vincent Gabriel, Nicole L Rosin, Ron Stewart, Greg Muench, Robert McCorkell, John Matyas, Jeff Biernaskie

    雑誌:

    Cell, 185: 4717-4736 (2022)

    POINT!

     ヒトを含む哺乳類における深層皮膚損傷は主として線維芽細胞による瘢痕組織の形成によって修復されるのに対し、胎児期では組織再生によって修復される。その一方でトナカイの角は特殊な皮膚であるベルベットによって被覆され、高い再生能力を持つことが知られている。筆者らはトナカイを用い、ベルベットの全層損傷は再生されるが、背中皮膚の全層損傷は線維性瘢痕を形成することを見出した。さらに、ベルベット組織をトナカイの背中の皮膚に移植した後に損傷させても、傷跡を残さずに再生できた。ベルベット組織が高い再生能を維持するメカニズムを調べるために、未損傷組織のbulk RNA-seq及びscRNA-seqを行い、特徴的な集団として、線維芽細胞に着目した。その結果、背中皮膚由来の線維芽細胞は炎症や線維化関連遺伝子群を発現する(炎症性/線維化プライミング)のに対し、ベルベット由来の線維芽細胞は再生関連遺伝子群(再生性プライミング)を発現し、胎児の線維芽細胞に類似していることがわかった。さらに、損傷後の背中皮膚組織での免疫細胞の浸潤は、ベルベット組織と比べ顕著に増加していたことから、損傷後の線維芽細胞プライミングは、部位特異的な免疫応答を誘導することが示唆された。しかし、移植されたベルベット由来の線維芽細胞は、短期間においては再生性の表現型を維持したが、6ヶ月後までには線維化の表現型に変化してしまった。最後に線維芽細胞から産生される炎症プライミングメディエーターとして同定されたCSF1とCXCL12を阻害したところ、皮膚再生が促進された。以上から本研究は、トナカイが損傷治癒のモデルとして有力であることを示したとともに、線維芽細胞と免疫の相互作用が瘢痕治療の有望な標的になりうる知見を提供した。

    バイオマーカー

    加齢や認知症による脳脊髄液の免疫学的変調

    原題:

    Cerebrospinal fluid immune dysregulation during healthy brain aging and cognitive impairment

    著者:

    Piehl N, van Olst L, Ramakrishnan A, Teregulova V, Simonton B, Zhang Z, Tapp E, Channappa D, Oh H, Losada P, Rutledge J, Trelle A, Mormino E, Elahi F, Galasko D, Henderson V, Wagner A, Wyss-Coray T, Gate D

    雑誌:

    Cell. 185(26): 5028–5039 (2023)

    POINT!

     神経炎症は、加齢に伴う神経変性性疾患と深く関わっている。中枢神経を保護する脳脊髄液 (CSF) にも免疫機能が備わっており、その機能の破綻は認知症などの神経・精神疾患につながると考えられてきた。しかし、従来の研究ではサンプル数の不足などが原因でCSFによる神経炎症制御についての理解は十分でなかった。そこで、著者らは54~82歳の健常者45人分のCSFのscRNA-Seq解析を行った。それにより、加齢に伴うT細胞のCD74やグランザイム類の遺伝子発現上昇を見出した。また、非古典的単球におけるCCL3、CCL4、TNFA、IL1B遺伝子の発現低下と脂質輸送関連遺伝子 (APOE、APOC1、PLTP) の発現上昇が認められた。次に、健常者と認知機能が低下している患者のサンプルを比較したところ、非古典的単球におけるAPOE、APOC1、PLTPの発現低下が認められた。CellChatを用いた解析により、CSFにおける細胞間相互作用を解析したところ、患者サンプルにおいてCXCL16–CXCR6相互作用が示唆された。この時、CXCL16は非古典的単球や樹状細胞で高く発現し、CXCR6はクローナルに増殖したT細胞で高く発現していた。健常サンプルと認知機能低下サンプルのサブセットごとのCXCR6発現を解析したところ、CD8+ TEM細胞において有意差が認められた。CSF中のCXCL16濃度は患者サンプルの方が健常者よりも高濃度であった。CXCL16+Iba1+細胞とCXCR6+CD3+細胞が近接することが分かり、このケモカインシグナルが脳内への免疫細胞浸潤を誘導すると考えられた。CSF中の各種免疫細胞におけるアルツハイマー病リスク遺伝子の発現を解析したところ、CD4+T細胞とCD8+T細胞において多くのリスク遺伝子が有意に発現上昇していることが認められた。以上より、CXCL16–CXCR6シグナルの変調が脳内へのT細胞浸潤を誘導し、認知機能を低下させることが示唆された。

    血液老化

    IL-1による骨髄間質細胞ニッチの炎症は血球細胞の老化を駆動する

    原題:

    Stromal niche inflammation mediated by IL-1 signalling is a targetable driver of haematopoietic ageing

    著者:

    Mitchell A, Verovskaya E, Calero-Nieto F, Olson O, Swann J, Wang X, Hérault A, Dellorusso P, Zhang SY, Svendsen A, Pietras E, Bakker S, Ho T, Göttgens B, Passegué E

    雑誌:

    Nat. Cell Biol., 25(1): 30-41 (2023)

    POINT!

     血液の老化は、再生能の低下と脱幹細胞化の亢進によって特徴付けられる。造血幹細胞 (HSC) の制御にはニッチが重要な役割を果たすが、ニッチの老化が血球に及ぼす影響には不明な点が多い。若齢および老齢マウスの骨髄内の血管ニッチを比較したところ、細動脈内皮細胞の数や頻度に差が認められなかった一方、老齢マウスの骨髄では洞様毛細血管内皮細胞の数や頻度が減少していた。骨膜幹細胞ニッチを解析したところ、老齢マウスにおける間葉系幹細胞 (MSC) やそれに由来する骨芽細胞系列の細胞の減少が見出された。対照的に、骨髄中央部ではLepR+MSCやSca-1intの炎症性のMSCサブセットが増加していた。老化骨髄MSCは増殖能が低下していた。scRNA-Seq解析を行ったところ、老齢マウスでは、細胞外基質産生能や骨形成能の高い細胞が少ない一方、脂肪細胞分化能の高い細胞が高頻度に認められた。骨髄液の炎症状態を検討したところ、加齢に伴うIL-1などの炎症性サイトカインの上昇が認められた。サイトカイン産生の上昇は、骨膜の間質細胞でのみ起きていた。老齢マウスのMSCとHSCを共培養した際の細胞増殖はIL-1βの中和抗体投与により消失したことから、血液老化にはニッチ由来のIL-1βが重要であると考えられた。IL-1βをマウスに継続的に投与することにより、骨髄球系細胞、特に血小板の増加という加齢変化と同様の変化が認められた。抗癌剤5-FUの投与により骨髄細胞の細胞死を誘導すると、若齢マウスでは回復可能なレジメンであっても、老齢マウスの場合はB細胞数や赤血球数の回復が障害された。アナキンラによってIL-1シグナルを阻害することによって、5-FUによる骨髄障害からの回復効果が上昇した。Il1r1-/-マウスでは、野生型マウスにおける骨髄細胞のサブセットの加齢変化が認められなかった。以上より、IL-1は血液老化を予防する際の標的分子となる可能性がある。

    ミトコンドリア

    運動はAMPKとミトコンドリア動態を介して肉体の健康を維持する

    原題:

    Exercise preserves physical fitness during aging through AMPK and mitochondrial dynamics

    著者:

    Campos J, Bozi L, Krum B, Bechara L, Ferreira N, Arini G, Albuquerque R, Traa A, Ogawa T, van der Bliek A, Beheshti A, Chouchani E, Van Raamsdonk J, Blackwell T, Ferreira J

    雑誌:

    Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 120(2): e2204750120 (2023)

    POINT!

     健康に歳を重ねていくためには適度な運動を行うことが重要である。運動の効能のいくつかは、ミトコンドリア機能により説明される。ミトコンドリアは分裂と融合を繰り返し、ネットワーク構造のリモデリングがおこる。ミトコンドリアの機能と動態には密接な関係があるといわれているが、ミトコンドリア動態と筋機能を繋ぐ知見は不足している。著者らは運動負荷を行った線虫の体壁の筋細胞のミトコンドリアを用いた解析を行った。加齢に伴い水泳時の動きは減少し、筋中のミトコンドリアの分裂が増加した。運動負荷直後は、幼齢〜老齢のいずれの線虫でもミトコンドリアが急激に分裂し、運動機能が低下した。ミトコンドリア分裂像は約1日で元のレベルに回復した。分裂に関わる遺伝子 (drp-1) と融合に関わる遺伝子 (fzo-1eat-3) を欠損した線虫の解析を行ったところ、これらの線虫ではミトコンドリア動態の異常に伴う運動機能の低下が認められた。1日1時間程度の運動により、老齢の線虫でも運動機能がある程度保たれるが、drp-1fzo-1を欠損する線虫ではそのような運動機能の保持は見られず、これらの両方を欠損する場合はむしろ運動機能の低下が見られた。タンパク質の網羅的発現解析により、野生型では運動によりミトコンドリアのエネルギー産生やカルシウム代謝に関わる分子の発現上昇が認められた一方、fzo-1欠損体ではそのような変化は見られなかった。これらの線虫では、運動によるミトコンドリアの応答を代償するかの如く細胞質中の解糖やオートファジーに関連するタンパク質が増加した。運動に関わる分子としてAMPKα2 (aak-2) の構成的活性化変異 (CA-AAK2) を有する線虫の解析を行ったところ、老齢でも運動機能が保たれたが、同時にdrp-1fzo-1、その両方を欠損する個体はこの抗加齢変化が消失した。このことから、ミトコンドリア動態はAMPK機能に関係すると示唆された。以上より、ミトコンドリア動態の異常は運動に対するミトコンドリアの応答を阻害し、運動の抗加齢効果を減弱せしめると考えられた。

    好中球

    オスマウス骨髄でTGFβ1+CCR5+好中球サブセットが増加し、加齢性骨粗鬆症の原因となる

    原題:

    TGFβ1+CCR5+ neutrophil subset increases in bone marrow and causes age-related osteoporosis in male mice

    著者:

    Jinbo Li, Zhenqiang Yao, Xin Liu, Rong Duan, Xiangjiao Yi, Akram Ayoub, James O. Sanders, Addisu Mesfin, Lianping Xing & Brendan F. Boyce

    雑誌:

    Nat. Commun., 14, 159 (2023)

    POINT!

     著者らは以前の報告で、骨におけるTRAF3量がマウスでもヒトでも加齢に伴って減少することや、TGFβ1がTRAF3の分解を促進することにより間葉系前駆細胞(MPC)におけるRANKL発現が上昇し、破骨細胞分化促進により骨微小環境へのTGFβ1の放出がより促進されることで、加齢に伴う骨量減少を誘導することを明らかにした。しかし、加齢に伴った骨粗鬆症を引き起こすTGFβ1の産生源は不明であった。本研究では、骨髄TGFβ1+細胞の解析からCD11b+Ly6C-6G+の好中球がその主な産生源であり、加齢に伴って骨髄での割合が増加し、末梢血や腸間膜リンパ節、脾臓での割合が低下することを見出した。老化の過程でTGFβ1発現好中球が血液または末梢リンパ組織から骨髄に動員される可能性が示唆されたことから、骨髄CD45-細胞のケモカイン発現をqPCRおよび抗体アレイにより検討したところ、この過程にCCL5が関与する可能性が示唆された。CCL5の受容体であるCCR5発現を調べると、TGFβ1+好中球で高かったことから、このTGFβ1+CCR5+好中球サブセットに着目した。Prx1-Creにより間葉系細胞でTRAF3を欠失させたマウスは骨形成の減少と骨吸収の増加により骨量減少を示したが、これらのマウスや老齢野生型マウスの骨髄では、TGFβ1+CCR5+好中球の数が増加していたことから、MPCのTRAF3が若齢マウス骨髄でのTGFβ1+CCR5+好中球数を制限している可能性が示唆された。加齢に伴って引き起こされるMPCでのTGFβ1誘導性TRAF3分解は、MPCによるNF-κBを介したCCL5の発現を促進し、骨量減少を引き起こす骨髄TGFβ1+CCR5+好中球数の増加と関連しており、実際にTGFβ1+好中球をNSGマウスに移植すると破骨細胞数の上昇などにより骨量を減少させた。また、CCR5アンタゴニストであるマラビロクを22ヶ月齢の野生型マウスに1ヶ月間毎日投与したところ、骨髄のTGFβ1+CCR5+好中球の数を減少させ、破骨細胞数の低下と骨形成の上昇を伴って骨量の有意な上昇を示すことも明らかにされた。さらに、Prx1-CreによりTGFβRIIを欠失させた15ヶ月齢のマウスでは、骨のTRAF3タンパク質レベルが若齢野生型マウスと同程度であり、骨形成上昇と破骨細胞数の低下を伴う顕著な骨量上昇を示した。以上から、本研究により骨髄におけるTGFβ1+CCR5+好中球数を減少させることが、加齢性骨粗鬆症の治療または予防に効果がある可能性が示された。

    β酸化

    骨芽細胞による脂肪酸のミトコンドリアβ酸化は副甲状腺ホルモンによる骨形成を促進する

    原題:

    Mitochondrial β-oxidation of adipose-derived fatty acids by osteoblast fuels parathyroid hormone-induced bone formation

    著者:

    Nathalie S. Alekos, Priyanka Kushwaha, Soohyun P. Kim, Zhu Li, Abdullah Abood, Naomi Dirckx, Susan Aja, Joe Kodama, Jean G. Garcia-Diaz, Satoru Otsuru, Elizabeth Rendina-Ruedy, Michael J. Wolfgang, and Ryan C. Riddle

    雑誌:

    JCI Insight, e165604 (2023)

    POINT!

     骨形成が多量のエネルギーを必要とすることから、骨芽細胞は脂肪のようなエネルギー密度の高い主要栄養素を供給できる組織とその活動を調整することが必要であると考えられる。PTH間歇投与(iPTH)の場合、骨形成は全身性の脂質恒常性の変化により進行する。PTH誘導性骨形成において、骨芽細胞による脂肪酸酸化の必要性を調べるために、Ocn-Creにより骨芽細胞でCpt2を欠損させることでミトコンドリアにおける長鎖脂肪酸β酸化を欠損させたマウス、およびAipoq-Creにより脂肪細胞でPTH受容体または脂肪トリグリセリドリパーゼ(ATGL)を欠損させたマウスにiPTH投与を行った。PTHは脂肪分解により脂肪細胞数やサイズを低下させ、脂肪細胞からの脂肪酸の放出と骨芽細胞におけるβ酸化を上昇させたが、これらの遺伝子改変マウスではiPTHの骨同化作用に抵抗性を示した。特に、脂肪細胞選択的PTH受容体欠損マウスでは、iPTH投与により骨でのCpt1bAcadlなどのβ酸化関連遺伝子発現が上昇するにもかかわらず、骨形成促進効果が観察されなかった。すなわち、iPTHの骨同化作用には脂肪における脂質分解反応によって脂肪酸が動員され、それが骨芽細胞によって酸化されて骨形成を促進する、骨-脂肪間の協調的なシグナル伝達が必要であることが示唆された。

    多核化

    多核化はヒトマクロファージのアイデンティティを失わせ、特殊化した機能にリセットする

    原題:

    Multinucleation resets human macrophages for specialized functions at the expense of their identity

    著者:

    Kourosh Ahmadzadeh1, Marie Pereira, Margot Vanoppen, Eline Bernaerts, Jeong-Hun Ko, Tania Mitera, Christy Maksoudian , Bella B Manshian, Stefaan Soenen, Carlos D Rose, Patrick Matthys, Carine Wouters & Jacques Behmoaras

    雑誌:

    EMBO Rep., e56310 (2023)

    POINT!

     マクロファージは、細胞膜の融合と細胞の多核化を経て、骨における破骨細胞、肉芽腫でみられるラングハンス巨細胞(LGC)、非分解性異物に対する反応としての異物巨細胞(FBGC)等の多核巨細胞(MGC)に分化する。しかしながら、多核化そのものがヒト成熟単核マクロファージの機能分化にどのように寄与しているかはまだ十分に明らかにされていなかった。本研究で著者らは、ヒト単核マクロファージからin vitroで分化させ(3種類のMGCはいずれもTRAP陽性であったが、破骨細胞のみがハイドロキシアパタイト吸収能を示した)、それぞれ単核と多核の破骨細胞、LGC、FBGCをソーティングし、トランスクリプトミクス解析と機能アッセイを行うことで詳細な解析を行った。その結果、3種類のMGCすべてにおいて、多核化がマクロファージのアイデンティティ(MRC1、CSF1R、TLR2、FOS発現)を顕著に失わせ、MGC形成を促進するリソソームを介した細胞内鉄イオン恒常性が亢進されることが明らかにされた。単核から多核への移行は、それぞれの多核細胞に特異的な特殊化を伴っており、FBGCでは食細胞機能が、破骨細胞においてはミトコンドリア機能が強化され、LGCはB7-H3(CD276)を発現してin vitroで肉芽腫様クラスターを形成できることから、T細胞活性化能を強化する可能性が示唆された。以上の結果から、細胞融合と多核化が、MGCに特異的な機能を付与する高度な成熟段階の一部として、ヒトマクロファージのアイデンティティをリセットすることが証明された。

    免疫関連副作用(irAE)

    αミオシン特異的なT細胞が免疫チェックポイント阻害剤誘導性の心筋炎を引き起こす

    原題:

    T cells specific for α-myosin drive immunotherapy-related myocarditis

    著者:

    Margaret L. Axelrod, Wouter C. Meijers, Elles M. Screever, Juan Qin, Mary Grace Carroll, Xiaopeng Sun, Elie Tannous, Yueli Zhang, Ayaka Sugiura, Brandie C. Taylor, Ann Hanna, Shaoyi Zhang, Kaushik Amancherla, Warren Tai, Jordan J. Wright, Spencer C. Wei, Susan R. Opalenik, Abigail L. Toren, Jeffrey C. Rathmell, P. Brent Ferrell, Elizabeth J. Phillips, Simon Mallal, Douglas B. Johnson, James P. Allison, Javid J. Moslehi, Justin M. Balko

    雑誌:

    Nature 611: 818–826 (2022)

    POINT!

     免疫チェックポイント阻害剤を用いたがん治療はさまざまながん種に対して有効性が示されているが、免疫応答のブレーキを外す本剤はさまざまな免疫関連副作用(irAE)を引き起こすことが知られている。筆者らはPdcd1–/–Ctla4+/–の遺伝子型を持つマウスが発症する心筋炎の原因細胞がCD8T細胞であることを突き止め、このT細胞の詳細な解析を行なった。Pdcd1–/–Ctla4+/–マウスの脾臓細胞をRag1–/–マウスに移入すると、このマウスも心筋炎を発症しやすくなることを見出した筆者らは、これらドナーとレシピエントの心臓から採取したCD8T細胞のTCR配列を読み、複数のマウスで共通して増えているCD8T細胞クローンを同定した。次に、胸腺で発現せずに心臓で高発現する遺伝子に着目してこのCD8T細胞が持つTCRの抗原探索を行なったところ、αミオシン(Myh6)由来のペプチドがこれらのTCRの抗原になり得ることを見出した。最後に、αミオシンへの反応性を持つT細胞が、免疫チェックポイント阻害剤治療によってirAEを引き起こしている患者の末梢血中にも存在していることを確認した。以上より、自己抗原としてのα-ミオシンやαミオシン反応性末梢T細胞の同定は、irAE高リスク患者を見極めるためのバイオマーカー開発につながる可能性を示した。

    軟骨膜細胞

    骨の発生における初期軟骨膜細胞の動態

    原題:

    The fate of early perichondrial cells in developing bones

    著者:

    Yuki Matsushita, Angel Ka Yan Chu, Chiaki Tsutsumi-Arai, Shion Orikasa, Mizuki Nagata, Sunny Y. Wong, Joshua D. Welch, Wanida Ono, Noriaki Ono

    雑誌:

    Nat. Commun., doi: 10.1038/s41467-022-34804-6. (2022)

    POINT!

     軟骨内骨形成において、骨を形成する骨芽細胞と骨髄間質細胞は、胎児軟骨と軟骨膜の二つに起源を持つ。しかし、軟骨膜細胞がどのように骨形成に寄与しているかは不明であった。筆者らはCol2a1-cre; R26RtdTomatoで標識した胎児の骨格系細胞に対してSingle-cell RNA-seqを行い、骨発生初期の細胞の多様性を検証した。その結果、Fgfr3は軟骨原基に、Dlx5は軟骨膜外層でそれぞれ特異的に発現していることを発見した。次にDlx5-creERFgfr3-creERを用いた細胞系譜解析により、軟骨膜外層由来の細胞は骨幹部に、軟骨原基由来の細胞は骨幹端部の構成に寄与していることを示した。筆者らは細胞制御の分子学的機序を解明するためにSingle-cell RNA-seqをさらに解析し、軟骨原基細胞がヘッジホッグシグナリングを介して軟骨原基自身と軟骨膜細胞に働き細胞分化を制御していることを示した。さらに骨髄間質に存在するDlx5+軟骨膜細胞由来の細胞は、脂肪細胞形成に偏向している一方、Fgfr3+軟骨原基由来の細胞は骨芽細胞や軟骨細胞形成に偏向していることを示した。以上より、骨の細胞構成は、発生初期に軟骨原基と軟骨膜に由来する細胞によって決定することが判明した。

    エストロゲン

    骨格幹細胞における性差のあるエストロゲン感知は骨格再生を制御する

    原題:

    Sexually dimorphic estrogen sensing in skeletal stem cells controls skeletal regeneration

    著者:

    Tom W. Andrew Lauren S. Koepke, Yuting Wang, Michael Lopez, Holly Steininger, Danielle Struck, Tatiana Boyko, Thomas H. Ambrosi, Xinming Tong, Yuxi Sun, Gunsagar S. Gulati, Matthew P. Murphy, Owen Marecic, Ruth Telvin, Katharina Schallmoser, Dirk Strunk, Jun Seita, Stuart B. Goodman, Fan Yang, Michael T. Longaker, George P. Yang, Charles K. F. Chan

    雑誌:

    Nat. Commun., doi: 10.1038/s41467-022-34063-5. (2022)

    POINT!

     性差のある組織は性ホルモンの制御を受けている。骨芽細胞と破骨細胞は性差の区別なく存在する組織であるが、性ホルモンの影響を大いに受けることが知られている。ところが骨形成における性差の違いを決定するメカニズムは不明である。筆者らは成獣オスマウスおよびメスマウスを用いて骨折モデルを解析することで、性ホルモンが骨再生をどのように調節するかを調べた。骨折後の骨形成を調べると、オスマウス、メスShamマウス、メス卵巣摘出マウスの順に骨形成レベルが高いことがわかった。骨折処置後のオスマウス骨格幹細胞の数は、メスマウスのものに比べて多く増殖していた。さらに、メスShamマウスと比べメス卵巣摘出マウスでは、骨格幹細胞の数について骨折処置後も目立った増殖が観察されなかった。遺伝子発現解析の結果から、オスマウスの骨格細胞の活性化はアンドロゲン受容体の関与が示唆された。筆者たちはメスShamマウスとメス卵巣摘出マウスを比較してメス卵巣摘出マウスの骨格幹細胞ではestrogen receptor 2 (Esr2) の発現上昇が起きていないこと見出し、骨折治癒におけるエストロゲンの影響を調べた。エストロゲン投与はメス卵巣摘出マウスの骨形成障害をレスキューすることができ、in vitro実験においてもメスマウス骨格幹細胞はエストロゲン濃度依存的に骨形成が亢進した。一方でオスマウスではエストロゲンの効果は見られなかった。また、卵巣摘出マウスにおいて、骨折部位にエストロゲンを局所投与することで、骨修復を促進させることを示した。以上より、メスマウスにおいてエストロゲンは骨格幹細胞を介することで骨保護作用を示し、局所的なエストロゲン投与は骨再生を促進させることが示された。

    腫瘍免疫微小環境

    肝臓がんにおける免疫微小環境分類および好中球多様性の解析

    原題:

    Liver tumor immune microenvironment subtypes and neutrophil heterogeneity

    著者:

    Ruidong Xue, Qiming Zhang, Qi Cao, Ruirui Kong, Xiao Xiang, Hengkang Liu, Mei Feng, Fangyanni Wang, Jinghui Cheng, Zhao Li, Qimin Zhan, Mi Deng, Jiye Zhu, Zemin Zhang and Ning Zhang

    雑誌:

    Nature, 612: 141-147 (2022)

    POINT!

     腫瘍内の免疫細胞とストローマ細胞による免疫微小環境は、転移や再発、治療抵抗性に影響を与えている。しかし、肝臓がんにおける腫瘍免疫微小環境と臨床予後との関連は不明であった。著者らは、未治療の肝臓がん患者124名から検体を採取し、single cell RNA-seqにより解析した。これまでの患者由来検体scRNA-seqの報告はおおよそ1万細胞〜10万細胞程度のものが多いが、本研究では合計100万細胞以上を解析しており、既報と比較して桁違いの情報量である。著者らは、免疫細胞およびストローマ細胞のクラスターごとにco-enrichment pattern解析を行い、CM1-CM5の5つのパターンに分類した。患者ごとにCM1-CM5の割合を算出し、TIME-IA (CM1;免疫活性化)、TIME-ISM (CM2;免疫抑制性ミエロイド)、TIME-ISS (CM3;免疫抑制性ストローマ)、TIME-IE (CM4;免疫排除)、TIME-IR (CM5;常在型免疫)の5種類(TIMELASER分類)に患者を分類した。詳細なデータ解析により、ケモカインネットワーク、転写因子や細胞内シグナル活性などに差があることが明らかになった。また、TIME-ISMおよびTIME-ISSは予後不良と相関があり、TIME-IRは予後良好と相関がみられた。著者らはTIME-ISMに注目し、TIME-ISMで多数を占める腫瘍関連好中球(tumor-associated neutrophil : TAN)が予後に影響している可能性を考えた。好中球のデータをさらに解析したところ、TANではCCL4を高発現するクラスターとCD274 (PD-L1)を高発現するクラスターが存在していた。著者らはin vitro共培養系においてCCL4、CD274を高発現するin vitro induced TANを誘導し、単球の遊走促進およびCD8+T細胞のサイトカイン産生抑制などの作用を明らかにした。さらに、著者らは新規マウス肝臓がん細胞株を樹立し、マウスに移植した腫瘍をscRNA-seqにより解析した。腫瘍に浸潤する好中球クラスターは、マウスとヒトで大部分が一致していた。この肝臓がん移植マウスモデルにおいて、抗Ly6G抗体を用いた好中球除去実験を行なった。好中球除去により、腫瘍の増大は有意に抑制された。また、腫瘍に浸潤するマクロファージおよび疲弊化T細胞の割合が減少した。本研究により、肝臓がんの免疫微小環境の多様性が明らかになり、好中球が重要な治療標的となりうることが示された。

    変形性関節症

    Runx2とRunx3は外科的に誘導した変形性関節症において、別々に関節軟骨細胞を制御する

    原題:

    Runx2 and Runx3 differentially regulate articular chondrocytes during surgically induced osteoarthritis development

    著者:

    Kosei Nagata, Hironori Hojo, Song Ho Chang, Hiroyuki Okada, Fumiko Yano, Ryota Chijimatsu, Yasunori Omata, Daisuke Mori, Yuma Makii, Manabu Kawata, Taizo Kaneko, Yasuhide Iwanaga, Hideki Nakamoto, Yuji Maenohara, Naohiro Tachibana, Hisatoshi Ishikura, Junya Higuchi, Yuki Taniguchi, Shinsuke Ohba, Ung-il Chung, Sakae Tanaka, Taku Saito

    雑誌:

    Nat. Commun., 13: 6187 (2022)

    POINT!

     変形性関節症(OA)は、軟骨の変性を特徴とする最も一般的な関節疾患である。Runxファミリーは軟骨の恒常性においてさまざまな役割を担っている。今回の報告で筆者らは、外科的OAマウスモデルを用いてOAにおけるRunx2とRunx3の役割を明らかにした。まず、Runx3の作用を調べるために、軟骨特異的Runx3欠損マウス(Col2a1-CreERT2;Runx3fl/fl, R3-cKOER)を用いた。R3-cKOERマウスにおいてPrg4(lubricin)とAcan(aggrecan)の発現が抑制され、OAが増悪したことがわかった。次にRunx2の作用を調べるために、軟骨特異的Runx2ヘテロ(Col2a1-CreERT2;

    Runx2

    i>fl/+, 以下R2-Hetero cKOと表記する)とホモ(Col2a1-CreERT2; Runx2fl/fl, 以下R2-Homo cKOと表記する)欠損マウスを作製した。R2-Hetero cKOマウスにおいてOAが抑制され、Mmp13の発現が低下した一方、R2-Homo cKOマウスではOAが増悪し、Col2a1の発現が減少した。Runx2とRunx3の標的遺伝子をChIP-seqで調べたところ、Runx3はlubricinとaggrecanを制御し、Runx2はSox9発現低下時(炎症時)においてCol2a1のイントロン6にあるエンハンサーを介してCol2a1の発現を維持していることが示唆された。さらに、Runx3アデノウイルスの関節内投与はOAを改善した。以上から、Runx3は正常な状態において細胞外マトリックスタンパク質の産生を介して成人の関節軟骨を保護するが、Runx2は炎症状態においてMmp13発現を介する異化作用とCol2a1発現を介する同化作用の両方を発揮することが明らかになった。

    IL-11

    骨芽細胞・骨細胞由来のIL-11が骨形成や全身性脂肪形成を制御する

    原題:

    Osteoblast/osteocyte-derived interleukin-11 regulates osteogenesis and systemic adipogenesis

    著者:

    Bingzi Dong, Masahiro Hiasa, Yoshiki Higa, Yukiyo Ohnishi, Itsuro Endo, Takeshi Kondo, Yuichi Takashi, Maria Tsoumpra, Risa Kainuma, Shun Sawatsu bashi, Hiroshi Kiyonari, Go Shioi, Hiroshi Sakaue, Tomoki Nakashima, Shigeaki Kato, Masahiro Abe, Seiji Fukumoto, Toshio Matsumoto

    雑誌:

    Nat. Commun., 13: 7194 (2022)

    POINT!

     運動によって骨はメカニカルストレスを受けると同時に、脂肪組織ではエネルギー消費が促進されている。そこで著者らは、骨のメカニカルストレスと、脂肪エネルギー代謝の双方を制御する因子が存在すると考えた。IL-11は主に骨で発現し、メカニカルストレスにより発現が上昇することがわかっており、in vitroで骨髄脂肪細胞の脂肪分化を抑制することが報告されている。これらの背景から、IL-11が骨リモデリングの変化と脂肪組織の代謝を繋ぐ因子である可能性を考えた。IL-11ノックアウトマウスを作製したところ、このマウスではWnt阻害遺伝子の発現が増加することでWntシグナルが低下し、骨形成が抑制され、骨量が減少していた。さらにこのマウスでは白色脂肪組織が増加し、糖代謝異常が起こっていた。骨と脂肪組織のどちらの IL-11 発現低下が骨形成の低下と脂肪の増加を招いたかを明らかにするため、骨芽細胞・骨細胞特異的IL-11欠損マウス(Ocn-Cre;IL-11flox/flox)と、脂肪細胞特異的IL-11欠損マウス(Apn-Cre, IL-11flox/flox)を作製した。すると骨芽細胞・骨細胞特異的IL-11欠損マウスでは、メカニカルストレスによって骨形成が抑制され、全身性に脂肪率が増加したのに対し、脂肪細胞特異的IL-11欠損マウスでは異常は認められなかった。これらの結果から、骨芽細胞・骨細胞由来のIL-11がメカニカルストレスに応答して骨形成と脂肪代謝の両方を制御することが明らかになった。本研究で、運動により増加した骨由来の IL-11 は、全身循環を介して脂肪量を制御するホルモンのように作用していることがわかり、血清IL-11が運動量を評価する指標として使用できる可能性が示唆された。さらに本研究ではIL-11Rα-STAT1/3活性化を介して、骨でのSost発現抑制や脂肪組織でのDkk1, 2発現抑制によるWntシグナルの増強が起こる機序をも明らかにしており、今後骨粗鬆症やメタボリックシンドロームの更なる理解に繋がることが期待される。

    治癒過程の腱の遺伝子発現マップ作成によるScleraxis系列細胞の分化と機能の解析

    原題:

    Defining the spatial-molecular map of fibrotic tendon healing and the drivers of Scleraxis-lineage cell fate and function

    著者:

    Jessica E. Ackerman, Katherine T. Best, Samantha N. Muscat, Elizabeth M. Pritchett, Anne E.C. Nichols, Chia-Lung Wu, Alayna E. Loiselle

    雑誌:

    Cell Rep., 41, 111706 (2022)

    POINT!

     損傷を受けた腱の治癒は、瘢痕形成によるところが大きい。より再生に近い形での治癒が望まれるが、そのような治療法開発を生物学的観点からアプローチした研究はない。マウスの場合、断裂した腱が修復する際、断端を繋ぐ修復組織にはScleraxis陽性で配向性の整った細胞が存在し、周縁部には配向が乱れた細胞が存在する。このような修復組織の細胞の遺伝子発現の部位特異性や、各々の細胞の機能はわかっていない。本研究では、Scx-CreER Ai9マウスにタモキシフェンを注射した後に屈筋腱を切断し、解析を行った。その結果、断裂した腱の断端部や両断端を結合するbridging tissueでScx陽性細胞 (ScxAi9) が増殖した。この一部は治癒段階の早期に平滑筋などのマーカーであるVCAM-1を発現したが、その後は同マーカーの陽性率は低下した。線維芽細胞活性化マーカーのFAPはVCAM-1より遅れて発現し、bridging tissueの多くを占めるが、治癒後期にはほぼ消失した。ScxAi9細胞周囲にはECM産生が認められた。腱の断端にはScxAi9細胞由来の筋線維芽細胞 (αSMA+) が見られたが、bridging tissueには見られなかった。以上の所見から、腱の治癒におけるScxAi9細胞の機能には時空間的な特異性があることが示された。そこで、複数時点の腱切断モデルのin situシングルセルRNA-Seq解析により、再生過程の腱の遺伝子発現マップを構築した。これにより、遺伝子発現の異なる複数のクラスターとその部位特性が明らかになった。断端付近ではTnmd発現が高くコラーゲンなどのECM合成能の高い細胞集団が多く (C0synthetic)、治癒部位近傍にはMmp13などを高発現しECMの合成や分解能の高い集団 (C2reactive) が存在し、治癒部位を取り囲む被殻部位にはCol3a1などの線維化マーカーを発現する集団 (C3fibrotic) が存在した。他に、損傷前の腱細胞 (C1native)、筋腱接合部 (C5muscle-assoc)、炎症性細胞 (C4inflammatory) の集団が見出された。次に、pseudotime trajectory解析により、C1native細胞が他の集団に分化するメカニズムを検討した。この結果、C1native細胞の分化経路はC3fibrotic、C2reactive、C0syntheticへの三叉分岐であることがわかった。各々の集団の性質をさらに詳細に検討したところ、C0synthetic細胞ではEgr1、Smad3、Klf4 Sp1、Nfkb1、Mbd2、Tal1、Sox10、Relaの高発現を認めた。C3fibrotic細胞は炎症反応に関わる遺伝子発現が高く、それを反映しNfkb1、Rela、Irf8、Fosb、Tcf4が高発現であった。C2reactive細胞は、他の細胞との相互作用が活発な細胞集団であり、Periostinを介したC3fibrotic細胞との相互作用やThrombospondinを介したC4inflammatory細胞との相互作用が示唆された。これらの知見が腱の再生医療に役立てられることが期待される。

    運動

    運動は海馬における情報処理と長期記憶の安定性を向上させる

    原題:

    Exercise increases information content and affects long-term stability of hippocampal place codes

    著者:

    Yoav Rechavi, Alon Rubin, Ofer Yizhar, Yaniv Ziv

    雑誌:

    Cell Rep. 41, 111695 (2022)

    POINT!

     運動により記憶機能や認知機能が向上することはよく知られているが、そのメカニズムには不明な点が多い。著者らは、カルシウムインジケーターのGCaMP6を発現するウイルスをマウスの脳内に投与し、ホイールによる自発運動を行わせた。その後、異なる形状のレーンや壁面の模様が異なるフィールド中で自由行動させた。自発運動したマウスは対照群マウスと比較してBrdU取り込み細胞やDCX陽性細胞が海馬で増加していた。頭蓋に固定したファイバーを介してCA1部のカルシウムシグナルを顕微鏡観察したところ、自発運動群ではカルシウムシグナルの頻度と強度が高値を示し、場所細胞(特定の場所にマウスが来たときに活性化する海馬の神経細胞)の応答性も向上した。これにより、記憶の解像度とパターンの弁別能の向上が示唆された。継続的な細胞の活動率の変化や高発火頻度の新生神経細胞の変化は時間的な経験の記憶に関わることから、自発走行が場所記憶の情報に関わると考えられた。細胞の活動率は運動群と対照群で変わらなかったが、運動群の方が場所細胞の安定性は向上しており、記憶の安定化が示唆された。カルシウムシグナルのパターンから記憶情報の質を計算したところ、運動群において高い値を示した。また、位置情報を記憶する細胞の入れ替わりの促進も見られた。以上より、運動による記憶機能の向上は、これまでいわれていた神経細胞の増殖の他に、活動する神経単位の変化による位置情報の精度の向上が影響することが明らかになった。

    ILC2

    神経ペプチドによる上皮障壁における非重複性のILC2反応の制御

    原題:

    Neuropeptide regulation of non-redundant ILC2 responses at barrier surfaces

    著者:

    Amy M Tsou, Hiroshi Yano, Christopher N Parkhurst, Tanel Mahlakõiv, Coco Chu, Wen Zhang, Zhengxiang He, Katja J Jarick, Connie Zhong, Gregory G Putzel, Mai Hatazaki; JRI IBD Live Cell Bank Consortium; Ivo C Lorenz, David Andrew, Paul Balderes, Christoph S N Klose, Sergio A Lira, David Artis

    雑誌:

    Nature. 611(7937): 787-793 (2022)

    POINT!

     ILC2は多彩な機能を有する自然リンパ球であるが、機能の多くは獲得免疫系リンパ球と共有されている。このため、生体においてこれらの細胞間に機能の重複があるのかは不明である。著者らは、免疫細胞ではILC2で特異的に発現するNMUR1プロモーター依存的にiCreとeGFPを発現するBAC-トランスジェニックマウス (Nmur1iCre-gfp) を作出した。eGFPの蛍光およびRosa26LSL-RFPマウスによるfate mapping解析、さらにはRosa26LSL-DTRマウスとジフテリア毒素A (DTA) による欠失実験から、NMUR1発現の特異性が確認できた。既存のILC2を標的とするシステムよりもDTR-DTAによる欠失の効率は高かった。そこで、このマウスを用いてILC2と獲得リンパ球の作用の切り分けを行った。ILC2は腸管などの上皮障壁に多く存在し、上皮の恒常性や組織修復に寄与するが、その際に重要な分子がAREGといわれている。大半のAREG+ILC2はNMUR1を発現していたことから、Areg-floxマウスを作出し、Nmur1iCre-gfpマウスと交配した。得られたAregΔILC2マウスではILC2におけるAREG発現はほぼ消失していた。これらのマウスではILC2の細胞数やIL-5、IL-13産生能には変化がなかった。AREGはマウス鞭虫感染において寄生虫排除を促進することが報告されているがAREG産生源は不明であった。著者らは、鞭虫感染によりILC2でのAREG産生が増加することを見出したので、AregΔILC2マウスに対して鞭虫の感染実験を行った。これらのマウスでは、対照群と同等の免疫応答が誘導されたが、感染による杯細胞増加が認められず、虫体が増加していた。CD4+T細胞にもAREGを産生する集団が存在することから、CD4-Creを用いてこれらの細胞でAREGを欠損するマウス (AregΔCD4マウス) を作出し、解析したが、これらのマウスでの鞭虫感染は対照群と同等であった。次に、ILC2由来のAREGが組織修復に寄与するかを解析するために、AregΔILC2マウスにDSS腸炎モデルを施したところ、対照群よりも重症化した。NMUR1リガンドのNMU刺激はILC2によるAREG産生を促進するといわれており、DSS腸炎モデルに対するNMU投与は治癒をもたらした。潰瘍性大腸炎患者の生検組織でもNMU高発現が認められ、ヒトILC2をNMU刺激するとAREG産生が上昇するなど、著者らの知見はヒトでも認められた。以上より、NMU-ILC2-AREG経路が消化器疾患の治療に寄与しうると考えられる。

    Prrx1

    Prrx1は成体マウスの骨、白色脂肪組織、真皮の幹細胞を標識する

    原題:

    Prrx1 marks stem cells for bone, white adipose tissue and dermis in adult mice

    著者:

    Huijuan Liu, Ping Li, Shaoyang Zhang, Jinnan Xiang, Ruichen Yang, Jiajia Liu, Md Shafiquzzaman, Soma Biswas, Zhanying Wei, Zhenlin Zhang, Xin Zhou, Feng Yin, Yangli Xie, Stephen P. Goff, Lin Chen & Baojie Li

    雑誌:

    Nat Genet, 54, 1946–1958 (2022)

    POINT!

     骨や脂肪組織などの結合組織は、ミネラルやエネルギーの恒常性維持などの様々な生理活動を制御している。しかしながら、これらの組織を成体まで維持する幹細胞の正体は不明であった。本研究で著者らは、生体幹細胞におけるPrrx1の役割を調べるため、新たにPrrx1-CreおよびPrrx1-CreERT2ノックインマウスを作製した。Rosa-tdTomatoマウスとPrrx1-Creを交配すると、E8.5の側板中胚葉の他に沿軸中胚葉と中間中胚葉にもTomato+細胞がみられたことから、Prrx1発現が肢芽細胞に限定されないことが示唆された。成体マウスでは、骨芽細胞や軟骨細胞のみならず、脂肪細胞や真皮線維芽細胞、立毛筋および毛乳頭細胞もPrrx1により標識されたが、表皮細胞および血管内皮細胞は標識されなかった。成体マウスにおけるPrrx1発現細胞を調べるために、3ヶ月齢のPrrx1-CreERT2 tdTomatoマウスに3回タモキシフェンを投与し、異なる時点のTomato+細胞を追跡した。誘導後早期では少数のTomato細胞が検出されたが、時間とともに増加し2ヶ月でプラトーに達した。さらに、Prrx1+細胞は骨芽細胞に分化し、標識後30日目の骨芽細胞の約半数を占め、360日目には多くの脂肪細胞、線維芽細胞、背側真皮のほとんどの立毛筋を標識した。以上から、Prrx1発現細胞は長期間増殖し複数の細胞型に分化する、長寿命の組織幹細胞である可能性が示された。Prrx1+幹細胞の生理的機能を明らかにするためiDTRマウスによりPrrx1+細胞を欠失させたところ、成長板や関節軟骨に影響を与えずに骨量や骨形成速度、骨芽細胞数が低下し、骨折治癒の遅延を示した。さらに、白色脂肪組織(WAT)重量および脂肪細胞数の減少や構造の破綻、真皮および皮膚脂肪層が減少し皮膚損傷の修復遅延も示した。以上の結果は、これらの組織の恒常性と修復に不可欠なPrrx1発現細胞が存在することを明らかにした。次に、Prrx1発現細胞の特徴を明らかにするためにPrrx1-CreERT2 tdTomatoマウスの骨、WAT、真皮組織から分離したPrrx1+細胞のシングルセルRNA-seq解析を行った。いずれの組織でも2〜3のサブグループが明らかになったが、骨のPrrx1+細胞だけでなく、WATや真皮のPrrx1+細胞でも骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞および間質細胞に特異的な遺伝子セットを同時に発現していることが明らかとなった。また骨髄のPrrx1+細胞は骨格幹細胞(SSC)マーカーであるCtskを発現する一方、他のSSCマーカーはほとんど発現しておらず、Prrx1が既知の幹細胞とは異なる細胞を標識する可能性が示唆された。さらに、シングルセル解析のデータ等から細胞表面マーカーとして、骨髄や白色脂肪組織のPrrx1+幹細胞はCD31–CD45–CD29+CD130+、皮膚のPrrx1+細胞はCD31–CD45–ITGAV+CD130+を同定した。次に、骨やWAT、真皮から採取したPrrx1+細胞がそれぞれ骨、脂肪細胞、線維芽細胞/脂肪細胞/立毛筋にそれぞれ分化することや、それらの移植片から採取した細胞を再移植しても同様の分化能を有していたことから、これらの細胞の幹細胞性が確認された。RNA-seq解析から、Prrx1+幹細胞ではWnt/-カテニン経路が活性化しており、Wnt16Wnt5aWnt2bなどの様々なWntリガンドを発現していることから、Wnt分泌に必要なWlsをPrrx1-CreERT2により欠損させた。これらのマウスでは、骨量、骨形成速度、骨芽細胞数が低下し、WATおよび真皮組織において脂肪細胞のサイズとKi67+細胞の数が減少し、これらの組織の萎縮が引き起こされた。本研究で得られた知見は、結合組織の恒常性・再生に関する知識を拡げ、幹細胞を用いた治療の改善に役立つことが期待される。

    骨細胞

    骨細胞はMYD88シグナルを介して細菌性骨感染における骨溶解を直接制御する

    原題:

    Osteocytes directly regulate osteolysis via MYD88 signaling in bacterial bone infection

    著者:

    Tetsuya Yoshimoto, Mizuho Kittaka, Andrew Anh Phuong Doan, Rina Urata, Matthew Prideaux, Roxana E. Rojas, Clifford V. Harding, W. Henry Boom, Lynda F. Bonewald, Edward M. Greenfield & Yasuyoshi Ueki

    雑誌:

    Nat Commun, 13, 6648 (2022)

    POINT!

     細菌感染誘導性骨溶解において骨細胞がどのような影響を及ぼすかについてはよくわかっていなかった。本研究で著者らは、細菌の病原体関連分子パターン(PAMPs)で刺激された骨細胞が、MYD88を介するシグナル伝達経路により直接的に骨吸収を促進することを明らかにした。Dmp1-Creにより、骨細胞や骨芽細胞などにおいてMYD88を欠損したマウスでは、Pam3CSK4やLPS、リポタイコ酸、Porphyromonas gingivalisPg)生菌の頭蓋骨への注射による破骨細胞分化促進および骨破壊がいずれも抑制され、骨細胞でのMYD88を介したRANKL発現がPAMPsによって誘導される骨破壊に関わることが示された。また、Pgの口腔内播種によって誘導される歯周炎モデルでの歯槽骨吸収はRag1欠損マウスではコントロールと同程度であった一方、Dmp1-CreによりTLR2もしくはMYD88を欠損させたマウスではどちらもRANKL発現および破骨細胞分化促進が抑制されることにより歯槽骨吸収に抵抗性を示した。免疫染色により、歯槽骨の骨小腔-骨細管系にPg成分が検出されたことから、骨細胞のTLR2-MYD88シグナルが直接的に活性化され、歯槽骨吸収を引き起こす可能性が示唆された。一方、Cre誘導性にMYD88を発現するマウス(Cre陰性細胞ではMYD88発現が欠損している)を用い、Dmp1-CreによりMYD88を骨細胞や骨芽細胞などで発現させると、Pam3CSK4の頭蓋骨投与やPg誘導性歯周炎モデルにおけるRANKL発現誘導や破骨細胞形成、骨破壊が野生型マウスと同程度であった。これらのマウスでは炎症性サイトカイン発現や炎症性細胞の浸潤も観察されたことから、骨細胞や骨芽細胞におけるMYD88経路の活性化は破骨細胞による骨吸収だけでなく、炎症性細胞の動員にも関わることが示された。次に著者らは、in vitroでPAMPsによるRANKL発現誘導能を比較するため、初代骨細胞と骨芽細胞濃縮画分を採取し様々なPAMPsによる刺激を比較したところ、骨芽細胞よりも骨細胞においてRANKLが高く発現誘導され、MYD88欠損マクロファージとの共培養でもPAMPsにより骨細胞において高い破骨細胞分化支持能が誘導されることが示された。MYD88シグナルによるRANKL発現誘導の詳しい分子メカニズムを調べたところ、MYD88-ERK経路を介したCREBやSTAT3の活性化およびRANKL遺伝子エンハンサーへの結合が、骨細胞でのRANKL発現誘導に重要であることが明らかにされた。さらに、MYD88シグナルはE3ユビキチンリガーゼであるFBXL19とPDLIM2による、それぞれCREB/CBPおよびSTAT3のK48ユビキチン化を抑制することでRANKLの発現を制御していることも示された。MYD88特異的阻害剤であるT6167923の腹腔内投与により、Pg誘導性歯周炎モデルにおける破骨細胞誘導および歯槽骨吸収が抑制された。これらの知見は、骨細胞が細菌感染によって誘導される炎症性骨破壊を直接的に制御していることを明らかにし、骨細胞におけるMYD88および下流のRANKL制御因子が歯周炎および骨髄炎などにおける骨破壊の治療標的となりうることを示唆している。

    Sema4D

    セマフォリン4Dは軟骨細胞を転写的に再プログラムすることにより、関節軟骨の破壊と炎症を誘発する

    原題:

    Semaphorin 4D induces articular cartilage destruction and inflammation in joints by transcriptionally reprogramming chondrocytes

    著者:

    Tomohiko Murakami, Yoshifumi Takahata, Kenji Hata, Kosuke Ebina, Katsutoshi Hirose, Lerdluck Ruengsinpinya, Yuri Nakaminami, Yuki Etani, Sachi Kobayashi, Takashi Maruyama, Hiroyasu Nakano, Takehito Kaneko, Satoru Toyosawa, Hiroshi Asahara, Riko Nishimura

    雑誌:

    Sci Signal, 15, eabl5304 (2022)

    POINT!

     炎症性サイトカインは関節疾患の病態形成に重要な役割を担っていることがよく知られているが、著者らは関節破壊に関わる未同定の炎症性サイトカインが存在するのではないかと考えた。そこで、LPS刺激した骨髄由来マクロファージ(BMDM)培養上清から、軟骨破壊の主要なドライバーであるMMP13発現を関節軟骨表層(SFZ)細胞等で誘導するタンパク質として、質量分析法により可溶型のセマフォリン4D(Sema4D)を同定した。LPS刺激BMDM培養上清によるMmp13発現誘導能はSema4Dに対する中和抗体で部分的に抑制された。また、Sema4DはSFZ細胞においてMmp13以外にもMmp3Adamts4Adamts5Il6およびRankl発現誘導能を有することもin vitroで示された。関節におけるSema4D発現細胞を免疫染色により調べたところ、通常マウスでは少数の破骨細胞が陽性であった一方、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルではマクロファージ、リンパ球および破骨細胞で発現が確認された。著者らが作製したSema4D欠損マウスでは、CIAモデルにおいてMMP13発現低下により軟骨破壊が部分的に抑制されていた。分子メカニズムを探索したところ、Sema4Dによる関節軟骨細胞におけるMmp13の発現上昇は、細胞骨格再構成に関わるRhoAには依存せず、Plexin-B2およびc-Metによって構成される受容体の下流でRas-MEK-Erk1/2シグナルとTRAF2-NF-κBシグナルが活性化され、最終的に転写因子IκBζおよびC/EBPδにより誘導されることが明らかにされた。大腿骨頭器官培養においてSema4D刺激は関節軟骨破壊を促進するが、c-Met阻害剤クリゾチニブおよびNF-κB阻害剤BAY11-7082はこのSema4D誘導性軟骨破壊を抑制したことや、著者らが作製した軟骨細胞特異的Plexin-B2欠損マウス由来の器官培養ではSema4Dが軟骨破壊を促進しなかったことから、このシグナル伝達経路の重要性が確認された。以上の結果から、Sema4Dシグナルが軟骨破壊を促進するメカニズムが明らかにされ、このシグナル伝達経路が関節疾患の治療標的となる可能性が示された。

  • 組織破壊型線維芽細胞

    組織破壊型線維芽細胞の運命決定を司る転写因子ETS1の同定

    原題:

    ETS1 governs pathological tissue-remodeling programs in disease-associated fibroblasts

    著者:

    Minglu Yan, Noriko Komatsu, Ryunosuke Muro, Nam Cong-Nhat Huynh, Yoshihiko Tomofuji, Yukinori Okada, Hiroshi I. Suzuki, Hiroyuki Takaba, Riko Kitazawa, Sohei Kitazawa, Warunee Pluemsakunthai, Yuichi Mitsui, Takashi Satoh, Tadashi Okamura, Takeshi Nitta, Sin-Hyeog Im, Chan Johng Kim, George Kollias, Sakae Tanaka, Kazuo Okamoto, Masayuki Tsukasaki and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Nat. Immunol., 23: 1330-1341. (2022)

    POINT!

     線維芽細胞は単に体を構成する足場としての機能だけでなく、病変部位において組織破壊型や炎症型といった形質を獲得し、様々な疾患の病態形成に関与することが知られている。しかしながら、線維芽細胞の悪性転化を司る詳細な分子機構は不明であった。関節リウマチにおいて、滑膜線維芽細胞は破骨細胞誘導因子RANKLを産生することで骨破壊を引き起こす。そこで著者らはまず、滑膜線維芽細胞が RANKL を発現するメカニズムに着目し、関節リウマチ患者の滑膜線維芽細胞のエピゲノム解析により RANKL 発現に関わる可能性のあるエンハンサー領域を複数同定した。これらのエンハンサー領域を欠損させたマウスを複数作製し、特定のエンハンサー領域(E3)を欠損させたマウスでは炎症に伴う滑膜線維芽細胞の RANKL発現が抑制されること、E3欠損マウスに関節炎を誘導すると炎症は正常に起こるものの骨破壊は抑制されることを見出した。さらにE3に結合する転写因子として ETS1 を同定し、ETS1はRANKL だけでなく軟骨破壊をひきおこす細胞外基質分解酵素の発現も誘導することを明らかにした。滑膜線維芽細胞特異的に ETS1 を欠損させたマウスでは、関節炎の炎症レベルには影響がない一方で、骨と軟骨の破壊は共に抑制された。以上から、関節リウマチにおいてETS1 が組織破壊型線維芽細胞の運命決定を担う転写因子であると考えられた。興味深いことに、ETS1 は腸炎やがんにおいても組織破壊型線維芽細胞に高発現する一方で、炎症型の線維芽細胞サブセットには発現しておらず、 ETS1は他の病態においても組織破壊型線維芽細胞の形成に関与する可能性が示唆された。

    ミクログリア

    胎生期の免疫ストレスはミクログリアの免疫反応性を低下させ神経回路を障害する

    原題:

    Prenatal immune stress blunts microglia reactivity, impairing neurocircuitry

    著者:

    Lindsay N. Hayes, Kyongman An, Elisa Carloni, Fangze Li, Elizabeth Vincent, Chloë Trippaers, Manish Paranjpe, Gül Dölen, Loyal A. Goff, Adriana Ramos, Shin-ichi Kano and Akira Sawa

    雑誌:

    Nature, 610: 327–334. (2022)

    POINT!

     脳における免疫細胞であるミクログリアは胚発生早期の神経上皮に浸潤し、成体まで維持される。胎生期のストレス(異常な細菌叢、免疫活性化、低栄養など)が脳の発達や機能に影響することが知られているが、ミクログリアとの関連は明確ではなかった。筆者らは胎生9.5日に母体免疫活性化(Maternal immune activation: MIA)を受けた仔のミクログリア(MIA microglia)はLipopolysaccharide投与後の免疫反応が低下することを見出した。この免疫反応性の低下は胎生18日目の線条体ミクログリアでも確認された。次に筆者らはMIA microgliaの免疫反応性の低下はchromatin accessibilityの変化とopen chromatin領域転写因子の占有率の低下と関連していることをATAC-seqの解析によって示した。さらにCSF1R antagonistを胎生9.5-12.5日に投与することでMIA microgliaを除去したところ、免疫反応性が改善したミクログリアによって置換されることを示した。MIA後の神経回路の変化として、ドーパミンD2受容体中型有棘神経細胞へのシナプス前小胞放出確率の低下を認めた。この神経回路の障害はMIA microgliaの除去によって修復されることを示した。以上より胎生期の免疫ストレスはミクログリアの免疫反応性を低下させ神経回路を障害することが示唆された。

    Runx2

    Runx2はクロマチンアクセシビリティを調節し、新生児期の骨芽細胞プログラムを制御する

    原題:

    Runx2 regulates chromatin accessibility to direct the osteoblast program at neonatal stages

    著者:

    Hironori Hojo, Taku Saito, Xinjun He, Qiuyu Guo, Shoko Onodera, Toshifumi Azuma, Michinori Koebis, Kazuki Nakao, Atsu Aiba, Masahide Seki, Yutaka Suzuki, Hiroyuki Okada, Sakae Tanaka, Ung-il Chung, Andrew P. McMahon and Shinsuke OhbaeLife

    雑誌:

    Cell Rep., 40: 111315. (2022)

    POINT!

     Runx2は軟骨細胞の成熟化や骨芽細胞の運命決定を制御する転写因子であるが、軟骨細胞と骨芽細胞におけるRunx2の動作原理はこれまで十分に明らかになっていなかった。著者らは、次世代シークエンサーを駆使したゲノムワイド解析を通して、軟骨細胞と骨芽細胞におけるRunx2の機能発現メカニズムの解明に取り組んだ。Runx2が結合するゲノムDNA領域を網羅的に同定するため、Biotin-3xFLAGを含むエピトープタグをRunx2遺伝子座にノックインしたマウスを作製し、抗FLAG抗体を用いたChip-seq解析およびATAC-seq解析を行ったところ、Runx2は骨芽細胞と軟骨細胞でそれぞれ細胞特異的なオープンクロマチン領域に集積していることが分かった。また、このオープンクロマチン領域には、Runx2と共に細胞特異的な転写因子群や、両細胞で共通する転写因子群が協働することで、同領域を制御している可能性が示唆された。次に、Runx2がオープンクロマチン領域の形成に必要かどうか検証するため、骨芽細胞系列でのみRunx2遺伝子欠損およびtdTomato標識が起こるマウス(Sp7-EGFP:Cre;Runx2fl/fl;R26tdTomato)を作製し、Runx2欠損細胞を単離してATAC-seq解析を行った。その結果、Runx2を欠損させると、骨芽細胞で重要だと考えられるエンハンサー領域の多くでDNA構造が変化し、転写因子群が働きにくくなることがわかった。一方、培養線維芽細胞にRunx2を異所性に発現させると、Runx2によるエンハンサー領域のDNA構造変化を介して骨芽細胞へ運命決定されることも確認された。最後に、同定したRunx2依存的なエンハンサー候補領域の中で、骨形成への寄与が高いエンハンサーを同定するため、エンハンサー候補領域をCRISPRスクリーニングし、Sp7の転写開始点から11 kb離れた遠位エンハンサー領域を同定した。このエンハンサー領域は骨芽細胞において特異的に活性化しており、同エンハンサー領域を欠損したノックアウトマウスでは、骨形成が抑制された。以上より、Runx2によるゲノムDNAの制御機構が明らかになった。

    一細胞トランスクリプトーム解析

    細胞を殺さずに採取したRNAを用いるシングルセルトランスクリプトーム解析法 (Live-seq) の開発

    原題:

    Live-seq enables temporal transcriptomic recording of single cells

    著者:

    Wanze Chen, Orane Guillaume-Gentil, Pernille Yde Rainer, Christoph G. Gäbelein, Wouter Saelens, Vincent Gardeux, Amanda Klaeger, Riccardo Dainese, Magda Zachara, Tomaso Zambelli, Julia A. Vorholt and Bart Deplancke

    雑誌:

    Nature, 608: 733–740. (2022)

    POINT!

     一細胞トランスクリプトーム解析は、細胞集団のヘテロ性を解析できる手法として注目を集め、様々な分野で広く利用されている。現行の手法は基本的に、細胞のライセートに含まれるmRNAを用いてトランスクリプトーム解析を行っているが、この方法では解析のために細胞を溶解して殺してしまうため、その後のさらなる細胞機能解析を行うことはできなかった。本論文で筆者らは、流体力学的顕微鏡 (FluidFM) と、微量mRNAからの次世代シーケンスライブラリ作成法 (Smart-Seq2) を組み合わせることによって、生きたままの細胞からmRNAを含む細胞質を抽出し、トランスクリプトーム解析を行う技術 (Live-seq) を開発した。この技術を用いて、LPS刺激前のマクロファージのトラスクリプトーム情報を取得し、刺激後のTNF発現量を追跡したところ、刺激前 (基底状態) のNfkbiaの発現が刺激後のTNF発現量と負の相関を示すことが明らかになった。又この技術は、細胞の状態変化をトランスクリプトームレベルで解析することも可能にする。筆者らはLive-seqによって脂肪前駆細胞の分化前後のトランスクリプトーム解析を行い、そのデータをscRNA-seqデータに投影することで、細胞分化系譜を実際に捉えることにも成功した。Live-seqは現在行われているscRNA-seqと比較してスループット性の点で未だ及ばないが、技術の改良が進めば、scRNA-seqの弱点を克服する有用な技術になると考えられる。

    COVID-19

    免疫応答の低下は加齢によるCOVID-19の重症化を促進する

    原題:

    Impaired immune response drives age-dependent severity of COVID-19

    著者:

    Julius Beer, Stefania Crotta, Angele Breithaupt, Annette Ohnemus, Jan Becker, Benedikt Sachs, Lisa Kern, Miriam Llorian, Nadine Ebert, Fabien Labroussaa, Tran Thi Nhu Thao, Bettina Salome Trueeb, Joerg Jores, Volker Thiel, Martin Beer, Jonas Fuchs, Georg Kochs, Andreas Wack , Martin Schwemmle and Daniel Schnepf

    雑誌:

    J. Exp. Med. 219: e20220621 (2022)

    POINT!

     新型コロナウイルス感染症(COVID19)の重症化は加齢と高い相関関係があるため、その重症化機序を解明し、有効な治療法を開発することは喫緊の課題である。これまで、ヒトACE2トランスジェニックマウスを用いてSARS-CoV2感染に対する免疫応答が研究されてきたが、過剰なhACE2を全身性に発現することからも、生理的条件を反映していないという指摘もある。そこで筆者らはマウスに馴化したSARS-CoV2 MA株(Dinnon et al., Nature 2020)を用いて、加齢がCOVID19の重症化に及ぼす影響を解析した。肺におけるウイルスの複製は若齢マウス(8-18週齢)よりも老化(36-60週齢)マウスで亢進した。インターフェロン(IFN)α受容体欠損、IFNλ受容体欠損、および両者を欠損する若齢マウスでは、野生型に比較して肺におけるウイルスの複製は増加していたが、体重の減少は認められなかった。一方、これらIFN受容体単独または両方を欠損する老化マウスでは、感染により体重減少が認められた。筆者らは、SARS-CoV2 MA株をIFNα受容体/IFNλ受容体両欠損マウスの体内で20代に渡り連続的に継代し、MA20株を得た。MA20は様々な変異を獲得しており、感染によって若齢野生型マウスの体重を減少させ、自然免疫応答を強く誘導した。また、MA20を老化マウスに感染させた結果、全個体が5日以内に死亡した。さらに、若齢のIFNα受容体/IFNλ受容体両欠損に感染させたところ、老化マウスへの感染時と酷似した表現型が観察された。このようなMA20による病態の重症化はIFNα、 IFNγ、そしてIFNλの投与によって改善された。特に、MA20をIFNα受容体欠損老化マウスに感染させると、全個体が死亡したが、IFNγとIFNλを同時投与することで、体重減少は10%以内に抑えられ、全個体が14日後も生存した。以上の結果は、IFNシグナルは老化に伴うCOVID19の重症化抑制に重要であり、重症化患者に対しIFNγとIFNλの併用療法が有効であることを示唆する。

    ビタミンC

    ビタミンCはエピジェネティックに骨芽細胞分化と石灰化を制御する

    原題:

    Vitamin C epigenetically controls osteogenesis and bone mineralization

    著者:

    Roman Thaler, Farzaneh Khani, Ines Sturmlechner, Sharareh S. Dehghani, Janet M. Denbeigh, Xianhu Zhou, Oksana Pichurin, Amel Dudakovic, Sofia S. Jerez, Jian Zhong, Jeong-Heon Lee, Ramesh Natarajan, Ivo Kalajzic, Yong-hui Jiang, David R. Deyle, Eleftherios P. Paschalis, Barbara M. Misof, Tamas Ordog & Andre J. van Wijnen

    雑誌:

    Nat Commun, 13, 5883 (2022)

    POINT!

     ビタミンCの欠乏は、骨を含む結合組織を崩壊させることが知られている。ビタミンCは、コラーゲン三重らせんの成熟に関わるプロリル水酸化酵素の必須補因子であるため、コラーゲンを含む組織に必要不可欠であると考えられてきた。近年、ビタミンCがヒストンH3K9およびH3K27脱メチル化に関わるJumonji-Cドメイン含有ヒストン脱メチル化酵素(JHDM/KDM)ファミリーやDNAの5-メチルシトシン(5mC)を5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)に変換する脱メチル化酵素であるTen-eleven translocation(TET)ファミリーなどのαケトグルタル酸(αKG)依存性ジオキシゲナーゼ(αKGDDs)を含む様々な酵素の補因子として機能することが報告されている。

     まず著者らはビタミンC欠乏症と壊血病のモデルであるGulo欠損マウス(マウスではGulo遺伝子にコードされるL-グロノラクトンオキシダーゼなどによってグルコースからビタミンCが生成される)を用い、15週齢まで飲水中からビタミンCを供給し、その後欠損させた5週間後の骨RNA-seq解析から、BglapDkk1Dmp1などの著者らが定義づけした骨選択的遺伝子発現が著しく抑制されることを見出した。そこで、ビタミンC依存性のエピジェネティック修飾であるH3K9me3、H3K27me3およびDNAの5hmCに着目したところ、ビタミンC欠乏は骨におけるH3K9me3およびH3K27me3標識を増加させ、5hmc標識を低下させた。実際、5hmC-DNA免疫沈降のSeq解析によって、骨選択的遺伝子近傍のピーク数とシグナル強度のビタミンC欠乏による減少が明らかにされた。Gulo欠損マウス由来骨髄間質細胞はin vitroにおいてビタミンC欠乏下で骨芽細胞分化能や石灰化能が著しく低下し、ビタミンC添加で回復する一方、脂肪細胞分化には影響がみられなかった。また、ビタミンCによる骨選択的遺伝子発現にコラーゲンマトリクス成熟や抗酸化作用が関与していないことも阻害剤などによる実験で示された。次に著者らはどのビタミンC依存性αKGDDが骨芽細胞分化に関わるのかを調べるため、ノックダウン実験を行った。その結果、Tet2ノックダウンが細胞外マトリクス沈着、コラーゲン架橋、石灰化、骨形成性遺伝子発現を最も強く低下させ、ビタミンCによる5hmcの蓄積にはTet2が大きく関与していることが明らかにされた。また、H3K9me3脱メチル化酵素Kdm4aおよびKdm4bや、H3K27脱メチル化酵素Kdm6aおよびKdm6bなどもある程度骨芽細胞分化等に関与していることも示された。さらにdCas9-VP64による過剰発現実験から、特にTet2が骨芽細胞形成の多様な特徴を制御する中心的なエピジェネティック酵素であることが確認された。Prrx1-CreによりTet1Tet2を欠損させると、ビタミンCが十分でも大腿骨において骨選択的遺伝子周囲を含む領域の5hmCレベルが有意に減少し、それらの遺伝子発現低下と椎骨の骨量低下などの表現型が観察された。これらの結果から、ビタミンCがTET酵素を介して骨芽細胞分化と骨形成をエピジェネティックに制御する必須栄養素であり、一般的な骨減少性疾患の予防に活用できる可能性が示された。

    骨吸収

    ガスダーミンDは破骨細胞性骨吸収のエンド-リソソーム経路の制御を介して骨量を維持する

    原題:

    Gasdermin D maintains bone mass by rewiring the endo-lysosomal pathway of osteoclastic bone resorption

    著者:

    Mobai Li, Dehang Yang, Huige Yan, Zhibin Tang, Danlu Jiang, Jian Zhang, Zhexu Chi, Wanyun Nie, Wenxuan Zhen, Weiwei Yu, Sheng Chen, Zhen Wang, Qianzhou Yu, Xue Zhang, Fan Yang, Shunwu Fan, Xianfeng Lin, and Di Wang

    雑誌:

    Dev Cell, 57, 2365–2380.e8 (2022)

    POINT!

     ガスダーミンD(GSDMD)は53 kDaの細胞内タンパク質で、パイロトーシスや炎症性サイトカインなどの放出を誘導し炎症を促進する孔形成性エフェクタータンパク質として知られている。免疫細胞では活性化カスパーゼによってGSDMDがN末端(p30 NT)と自己抑制性のC末端(CT)のリンカー領域で切断され、それによってp30 NTが遊離して細胞膜上の酸性リン脂質に結合し、多量体化して細胞膜に孔を形成することでパイロトーシスが誘導される。しかし、GSDMDの骨組織における機能は不明であった。著者らはRANKL誘導性破骨細胞分化におけるGSDMDのタンパク質発現を調べたところ、通常のパイロトーシスにおける切断を行うカスパーゼ1や11ではなく、カスパーゼ8およびカスパーゼ3によってRIPK1依存的な切断を受け、p20タンパク質が破骨細胞分化後期に生成されることを見出した。Gsdmd欠損細胞は破骨細胞分化やNFATc1などの発現は正常であったが、骨吸収窩面積や深さが顕著に上昇しており、この骨吸収活性の上昇はカスパーゼ8やカスパーゼ3の欠損でも同様に観察された。さらに、Gsdmd欠損破骨細胞にGSDMD全長やp20を強制発現させると骨吸収活性が正常化する一方、カスパーゼ3によって切断される部位に変異を入れると骨吸収活性は高いままであったことから、GSDMD p20が破骨細胞性骨吸収を抑制する機能を持つことが示唆された。実際に、Gsdmdの全身性欠損、もしくはLyz2-Creによるコンディショナル欠損マウスでは、どちらも骨芽細胞数や骨形成、破骨細胞数には変化がみられなかった一方、骨吸収面の上昇を伴う海綿骨量の減少が観察された。さらに、卵巣摘出や加齢による骨粗鬆症モデルでは、どちらもより重度の骨量減少を呈した。Gsdmd欠損破骨細胞の定量的プロテオミクス解析とそのパスウェイ解析などから、GSDMDが破骨細胞におけるリソソーム機能を抑制していることが示唆され、実際にGsdmd欠損破骨細胞を透過型電子顕微鏡で観察したところ、リソソーム数やサイズが上昇しており、それに伴い波状縁の成熟・活性化も促進されれていることが明らかにされた。さらなる詳しい解析から、GSDMD p20は初期エンドソームに局在し、ホスファチジルイノシトール3-リン酸(PI(3)P)に優先的に結合してオリゴマー化し、PI(3,5)P2への変換を抑制することでエンド-リソソーム輸送と成熟を制限し、過剰な骨吸収を回避する機能を有していることが明らかとなった。以上の結果から、GSDMDがリソソームの成熟と分泌のチェックポイントとして、破骨細胞による骨吸収を抑制することが明らかになった。

    可溶型RANKL

    可溶性RANK-RANKL相互作用を阻害し骨粗鬆症を治療するための標的となる可溶性RANKL結合部位の同定

    原題:

    Identification of a binding site on soluble RANKL that can be targeted to inhibit soluble RANK-RANKL interactions and treat osteoporosis

    著者:

    Dane Huang, Chao Zhao, Ruyue Li, Bingyi Chen, Yuting Zhang, Zhejun Sun, Junkang Wei, Huihao Zhou, Qiong Gu & Jun Xu

    雑誌:

    Nat Commun, 13, 5338 (2022)

    POINT!

     タンパク質間相互作用の阻害剤を発見するための大きな課題の一つは、タンパク質表面における選択的かつ創薬可能な結合部位を同定することである。本研究で著者らは、免疫抑制効果を伴わない骨粗鬆症治療薬を設計するために、可溶型RANKLとRANKの相互作用を選択的に阻害する低分子結合部位を同定した。分子動力学シミュレーションにより、著者らは膜型RANKL-RANKの相互作用を阻害することなく、可溶型RANKL-RANKの相互作用を選択的に阻害する低分子結合部位を発見した。化合物ライブラリーから仮想的スクリーニングを行い、表面プラズモン共鳴アッセイにより可溶型RANKL阻害剤S3を同定し、さらにその選択性と効力を高めるために作製した誘導体の中から、非常に強力で経口投与可能な阻害剤S3-15を開発した。S3-15は膜型RANKL-RANKと比較してより強力に可溶型RANKL-RANK相互作用を阻害し、破骨細胞分化を抑制することがin vitro実験から明らかにされた。さらに、in silicoおよびin vitro実験から、S3-15が選択的に可溶型RANKLを遮断しRANKLの3量体化に影響を与えることなく破骨細胞分化を抑制する機構が示された。また、S3-15は高濃度において可溶型RANKLとOPGの結合を抑制したが膜型RANKLとOPGの結合には影響を与えないことや、RANKL逆シグナルを介して骨芽細胞分化を促進することも確認された。RANKLは免疫系にも重要な機能を果たしているが、S3-15は抗RANKL抗体デノスマブと比較してin vitroで刺激したリンパ球増殖などに影響を及ぼさないことが示された。さらに、卵巣摘出ラットに対するS3-15の経口投与により、in vivoでも免疫抑制効果を示すことなく、可溶型RANKL-RANK相互作用を阻害することで破骨細胞分化を抑制して骨量を上昇させることが示された。以上から、本研究は分子動力学によって、タンパク質間相互作用を標的とした阻害剤探索のための低分子結合部位の発見とそれによる創薬が可能となりうることを示唆している。

    発生

    RNA結合タンパク質Elavl1は頭蓋領域の神経堤細胞の運命決定に必要である

    原題:

    RNA-binding protein Elavl1/HuR is required for maintenance of cranial neural crest specification

    著者:

    Erica J Hutchins, Shashank Gandhi, Jose Chacon, Michael Piacentino, Marianne E Bronner

    雑誌:

    eLife 2022; 11:e63600 (2022)

    POINT!

     個体発生時の形態形成には、緻密に制御された遺伝子発現制御ネットワークが重要である。近年、遺伝子発現だけでなく、転写後調節も重要であることがわかってきた。RNA結合タンパク質は、転写産物の半減期を調節することから、形態形成時の遺伝子の転写後調節に関与すると考えられている。著者らは、既報 (Williams, Dev. Cell, 2019) のscRNA-Seqデータの再解析により、神経堤 (NC) 中のpremigratory NC (pNC) において、3’-UTRに結合してmRNAを安定化し、翻訳を調節する分子Elav1が発現することを見出した。Elav1欠損マウス (胎生致死) では頭蓋の形態異常が起こることから、この分子が頭蓋の発生に重要であると考えられた。ニワトリ胚の観察から、神経管の形成部位でElav1の発現が認められ、その一部はPax7+であるpNCやmigratory NC (mNC) であることがわかった。ニワトリ胚の片側にモルフォリノオリゴを投与し、Elav1ノックダウン実験を行った (Elav1 MO)。Elav1がWnt経路に関わることから、それに関わる分子を解析したところ、Axud1Foxd3Draxin転写産物の減少を認めた。Pax7+細胞数は全体では変わらなかったものの、神経管から剥離しているものが増えていた。以上より、Eval1は神経堤細胞の分化と神経管からの剥離を制御することがわかった。Elav1 MO片側投与胚を用いた網羅的遺伝子発現解析の結果、神経堤の分化に関わる遺伝子の中で、Axud1DraxinBmp4Msx1がElav1 MOにより発現低下することを見出した。これらのmRNAの分解を解析したところ、DraxinのみがElav1 MOで不安定化した。RNA免疫沈降法によりElav1結合を評価したところ、Draxinのみが高い結合を示した。近接ライゲーションアッセイでもElav1とDraxin3’-UTRの結合が示唆された。そこで、DraxinをMOによってノックダウンしたところ、Elav1 MOの時と同様に、Axud1Bmp4Msx1の低下を認めた。Draxin過剰発現はElav1ノックダウンの効果を打ち消した。以上より、Elav1はDraxinを直接の標的とし、mRNAを安定化させることで、神経堤由来の構造の正常発生を導くことが示された。

    ダウン症

    性腺刺激ホルモン放出ホルモン補充療法はダウン症における認知機能低下を改善する

    原題:

    GnRH replacement rescues cognition in Down syndrome

    著者:

    Maria Manfredi-Lozano, Valerie Leysen, Michela Adamo, Isabel Paiva, Renaud Rovera, Jean-Michel Pignat, Fatima Ezzahra Timzoura, Michael Candlish, Sabiha Eddarkaoui, Samuel A. Malone, Mauro S. B. Silva, Sara Trova, Monica Imbernon, Laurine Decoster, Ludovica Cotellessa, Manuel Tena-Sempere, Marc Claret, Ariane Paoloni-Giacobino, Damien Plassard, Emmanuelle Paccou, Nathalie Vionnet, James Acierno, Aleksandra Maleska Maceski, Antoine Lutti, Frank Pfrieger, S. Rasika, Federico Santoni, Ulrich Boehm, Philippe Ciofi, Luc Buée, Nasser Haddjeri, Anne-Laurence Boutillier, Jens Kuhle, Andrea Messina, Bogdan Draganski, Paolo Giacobini, Nelly Pitteloud, Vincent Prevot

    雑誌:

    Science, 377, eabq4515 (2022)

    POINT!

     ダウン症 (21トリソミー) は多彩な症状を呈するが、その中には、早期の認知機能低下、思春期以前の嗅覚障害、低受胎が含まれる。これらの症状はGnRH欠乏を主徴とするKallmann症候群と類似することから、ダウン症とGnRHの関係が類推された。ダウン症モデルマウス (Ts65Dnマウス) の嗅覚の訓化/脱訓化試験と新奇物体認識試験を行ったところ、ダウン症患者と同様に嗅覚障害と認知機能障害が認められた。成獣の♂および♀のTs65Dnマウスでは、luteinizing hormone (LH) の発現頻度はコントロールと同様であったが、発現量は減少していた。透明化した野生型マウスの脳を用いてGnRHニューロンの投射を解析した結果、視床下部から脳の様々な部位への投射が見られたが、Ts65Dnマウスではこの様な投射パターンは見られず、これが脳機能の変調に影響していると考えられた。出生早期の性的成熟時 (P12) には、miR-155やmiR-200ファミリーのマイクロRNAと、その標的遺伝子のZeb1やCebpbがGnRHを制御するといわれている。ヒトの21番染色体がコードするマイクロRNAのうち、miR-99a、let-7c、miR-125b-2、miR-155はGnRHニューロンに多くみられる。P12やP90のTs65DnマウスではこれらのマイクロRNA発現の低下傾向と、Gnrh1の発現低下などの標的遺伝子の変化を認めた。アデノ随伴ウイルス血清型9 (AAV9) をステレオタキシスでTs65Dnマウスの視床下部に注射し、miR-200bを過剰発現させたところ、GnRH上昇に伴う認知機能と嗅覚機能の上昇が認められた。さらに詳細な検討として、6-8ヶ月齢の野生型およびTs65Dnマウス、それらにAAVを投与し視床下部でmiR-200bを過剰発現させたマウスの海馬の網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、野生型とTs65Dnマウスでは神経鞘形成に関わるものをはじめとした91もの遺伝子発現に有意差を認め、3ヶ月間miR-200bを過剰発現したマウスではこの変化が緩和された。これらのマウスの海馬の電気生理学的解析を行ったところ、Ts65DnマウスのfEPSPや細胞外集合電位は野生型よりも低値であったが、miR-200b投与Ts65Dnマウスでは緩和されていた。GnRH補充療法がダウン症の症状を改善できるのか、治療実験により検証を行なった。成獣のTs65Dnマウスの第三脳室に野生型新生仔マウスの視床下部より単離したGnRH陽性細胞を注入したところ、嗅覚や認知機能が野生型マウスレベルに改善した。野生型新生仔マウスの代わりにGnRHニューロンでボツリヌス毒素Bを発現するマウス (神経伝達物質の開口分泌が阻害される) を用いた場合はこの治療効果は認められず、このマウスにGnRHを投与すると治療効果が見られたことから、この細胞療法における機能分子は細胞外に放出されるGnRHであることがわかった。Ts65DnマウスのGnRHニューロンをDREADDシステムにより活性化させたところ認知機能が向上したが、野生型マウスの海馬のGnRH受容体をDREADDシステムで不活性化した場合は認知機能と嗅覚が障害された。ゴナドレリン酢酸塩を持続投与ではなく間歇投与した場合、Ts65Dnマウスの嗅覚と認知機能が改善した。これらの結果を受け、GnRHパルス療法をダウン症患者に行い、空間認知機能や注意などの脳機能の改善が認められた。このpilot studyでは治療効果が限定的ではあったが、今後この治療法がダウン症の症状改善に広く用いられることが期待される。

    Reticulocalbin-2

    骨髄の力学的刺激感受性脂肪分解因子は骨形成とリンパ球産生を促進する

    原題:

    A mechanosensitive lipolytic factor in the bone marrow promotes osteogenesis and lymphopoiesis

    著者:

    Hui Peng, Biao Hu, Ling-Qi Xie, Tian Su, Chang-Jun Li, Ya Liu, Mi Yang, Ye Xiao, Xu Feng, Rui Zhou, Qi Guo, Hai-Yan Zhou, Yan Huang, Tie-Jian Jiang, Xiang-Hang Luo

    雑誌:

    Cell Metab, 34, 1168-1182 (2022)

    POINT!

     運動は骨粗鬆症を予防し免疫機能を向上させることが知られているが、そのメカニズムの多くは不明であった。著者らは、1分子あたり最も高いエネルギーを生み出す脂肪酸β酸化(FAO)・脂質代謝に着目し、骨髄脂肪組織(BMAT)の分解が骨芽細胞やリンパ球の産生・機能の維持に関わるかを調べた。脂肪分解酵素であるAtglに対するshRNAをFabp4プロモーター下流で発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)を両側骨髄内に注入したところ、運動によって誘導される骨髄脂肪細胞の数とサイズの減少がキャンセルされた。さらに、運動によって上昇する海綿骨量や皮質骨厚、共通リンパ系前駆細胞(CLP)の頻度がAtglノックダウンによりキャンセルされ、非運動群でもAtglノックダウンにより有意に減少した。次に、著者らは力学的免荷と加齢の両方によって誘導される脂質代謝異常に関与する調節因子を特定することとした。老齢ラットの骨髄上清において発現変動する因子と運動したラットにおいて発現変動するタンパク質のうち、Reticulocalbin-2(RCN2)のみが共通して変化していた。RCN2は運動したラット骨髄に多く発現し、老齢ラットでは減少していた。リコンビナントRCN2(rRCN2)刺激を行うと、BMSC由来脂肪細胞のグリセロールとNEFAsの遊離が促進され、脂肪分解酵素の発現が上昇した。次に、RCN2の産生源について検討したところ、RCN2は骨髄を含む様々な組織で発現しており、特に骨髄ではマクロファージがBMSCや骨芽細胞と比較して高い発現を示し、in vitroの力学的刺激やin vivoの運動により発現上昇した。一方、加齢により骨髄マクロファージにおけるRCN2の発現が減少した。マクロファージでRcn2を欠損させたマウス(Lyz2Cre Rcn2flox/flox)は定常状態では骨に変化がない一方、運動によって上昇する海綿骨量やオステオカルシン陽性骨芽細胞数、CLP頻度の上昇が抑制された。さらに、これらのマウスでは運動によって誘導される骨髄脂肪細胞数とサイズの減少が観察されなかった。次に、RCN2を介した骨形成およびリンパ球生成の増強に脂肪分解が必要かどうかを調べるため、AAV-shAtglを骨髄腔に注入し、さらにこれらのマウスにrRCN2を投与した。rRCN2は骨形成を促進し骨髄のCLP頻度を上昇させたが、Atglノックダウンによりこれらの効果がキャンセルされた。また、rRCN2がBMSCにおけるFAO関連遺伝子発現を促進することなども明らかにされた。以上から、RCN2はBMATの脂肪分解を刺激し、FAOに直接作用して骨形成を促進すると推測される。

     cAMP-PKAシグナル伝達の活性化は、脂肪分解を活性化するメカニズムとしてよく知られており、RCN2も脂肪細胞におけるcAMP-PKAシグナル活性化を誘導することが明らかとなった。RCN2の受容体を同定するために、標識したRCN2とインキュベートした3T3-L1細胞から分離した膜タンパク質を用いてLC-MS/MS解析を実施した。同定されたタンパク質のうち、Neuropilin-2(NRP2)とインテグリンβ1の発現が他に比べて高かったことからこれらの受容体に着目した。実際にRCN2はNRP2に結合し、siRNAによってNrp2またはItgb1をノックダウンすると、rRCN2刺激によって誘導されるcAMP-PKAシグナル活性化が著しく抑制され脂肪分解酵素発現上昇がキャンセルされた。

     運動が骨髄マクロファージからのRCN2分泌を促進することをさらに詳しく調べるために、尾部懸垂免荷モデルを用いた。力学的刺激の低下は骨髄におけるRCN2発現の低下を誘導し、これらのマウスにrRCN2タンパク質を投与すると、尾部懸垂によって誘導される骨髄脂肪数・サイズ上昇や骨量低下、オステオカルシン陽性骨芽細胞数低下、骨髄CLP頻度減少を抑制することが示された。さらに、rRCN2の老齢マウスに対する投与でも同様の結果が得られた。以上の結果から、RCN2は骨に存在する細胞のエネルギー恒常性維持における新規の力学的刺激感受性脂肪分解因子であり、骨と免疫に寄与する有望な創薬ターゲットであることが判明した。

    CIITA

    骨細胞のCIITAは骨髄腫の溶骨性病変を悪化させる

    原題:

    Osteocyte CIITA aggravates osteolytic bone lesions in myeloma

    著者:

    Huan Liu, Jin He, Rozita Bagheri-Yarmand, Zongwei Li, Rui Liu, Zhiming Wang, Duc-hiep Bach, Yung-hsing Huang, Pei Lin, Theresa A. Guise, Robert F. Gagel, Jing Yang

    雑誌:

    Nat Commun, 13, 3684 (2022)

    POINT!

     骨吸収の活性化と骨形成の抑制による溶骨性骨破壊が多発性骨髄腫の特徴である。しかし、骨髄腫の微小環境下における破骨細胞や骨芽細胞の分化・活性化に対する骨細胞の役割は不明な点が残されていた。著者らは、多発性骨髄腫細胞株Vk12598を大腿骨内に移入したマウスから採取した骨細胞のRNA-seq解析から、骨髄腫によって骨細胞で発現上昇する4つの候補遺伝子を同定した。それらのうち、Ciita発現量のみが骨量や骨形成、骨芽細胞面と負の相関を示し、破骨細胞面や骨吸収と正の相関を示したことから、骨細胞CIITAに着目した。Dmp1-cre/ERT2 Ciita2flox/floxマウスは通常の骨量を示した一方、Vk12598移入モデル骨髄腫による骨量低下は著しく抑制された。初代骨細胞と骨髄腫細胞との共培養によって、RANKLやスクレロスチンの発現が上昇したが、CIITA欠損骨細胞ではこの上昇が抑制されていた。骨髄腫細胞はチミジンホスホリラーゼ(TP)を高発現することで2-デオキシ-D-リボース(2DDR)を分泌しており、これらは骨髄腫における骨疾患の病態に重要な役割を果たすことが知られていることから著者らはこの経路に着目した。2DDRをin vitroで添加すると、骨細胞から分泌されるRANKLやスクレロスチンなどに加え、CIITAの発現が有意に増加した。2DDRによって誘導される細胞内シグナル伝達経路を調べたところ、リン酸化SykとSTAT1レベルの上昇が観察された。2DDRの受容体としてインテグリンαvβ3が知られており、骨細胞でも発現していることから抗インテグリンαv抗体を添加すると、2DDRによって誘導されるSyk、STAT1リン酸化、CiitaTnfsf11およびSost発現上昇が抑制された。さらに2DDR刺激によりリン酸化STAT1がIrf1プロモーターやCiitaプロモーターに結合すること、STAT1阻害剤フルダラビンにより、2DDR刺激によるCiitaTnfsf11Sost発現上昇が有意に抑制されることも示された。

     CIITAは、MHC class IIプロモーターにおけるヒストンアセチルトランスフェラーゼとしてよく知られているが、それ以外の遺伝子制御機構は不明な点が残されていた。2DDR添加によりH4やH3K27ではなくH3K14アセチル化レベルが上昇した。さらに、2DDR刺激した骨細胞において、Tnfsf11SostプロモーターにH3K14アセチル化とCIITAの結合がみられた。CIITAはDNAに結合しない転写活性化因子であることから、著者らは質量分析法を用いてCIITAとプロモーター領域を媒介するタンパク質としてAP2αを同定した。AP2αはTnfsf11およびSostプロモーターに結合し、AP2αのノックダウンによって2DDR刺激後のTnfsf11SostプロモーターにおけるH3K14アセチル化とCIITAの結合レベルの低下が観察された。すなわち、AP2αがCIITAをTnfsf11Sostプロモーターにリクルートし、プロモーターにおけるヒストンアセチル化を誘導していることが示唆された。最後に、骨髄腫患者由来骨生検における骨細胞での抗CIITA抗体染色Hスコア(陽性細胞率、染色強度を併せたスコア)と骨病変数、骨髄液中RANKL・スクレロスチンレベルに正の相関があることなどが示された。以上から、本研究は骨髄腫における骨溶解の理解を広げ、インテグリンαv/STAT1/CIITAシグナル経路を標的とすることが、骨髄腫誘導性骨疾患の治療戦略として可能性があることを示している。

    骨髄脂肪細胞

    骨髄脂肪細胞の脂肪分解はエネルギー不足における骨と骨髄ニッチの燃料補給に必要である

    原題:

    Lipolysis of bone marrow adipocytes is required to fuel bone and the marrow niche during energy deficits

    著者:

    Ziru Li, Emily Bowers, Junxiong Zhu, Hui Yu, Julie Hardij, Devika P Bagchi, Hiroyuki Mori, Kenneth T Lewis, Katrina Granger, Rebecca L Schill, Steven M Romanelli, Simin Abrishami, Kurt D Hankenson, Kanakadurga Singer, Clifford J Rosen, Ormond A MacDougald

    雑誌:

    eLife, 11, e78496 (2022)

    POINT!

     骨髄脂肪細胞(BMAd)の脂肪分解が骨のホメオスタシスにおいて果たす役割を調べるために、BMAd特異的Creマウスを作製した。一般的に使用されるAdipoq-Creを用いた方法では、白色脂肪細胞、骨芽細胞、骨髄間質細胞などの他の細胞で組換えが起こってしまうことから、著者らはCRISPRによってOsterix locusにOsterix-P2A-FLPo(コドン最適化FLPリコンビナーゼ)をノックインしたOsterix-FLPoマウスおよびAdipoqの3’ UTRにIRES-F3-Frt-reversed Cre-F3-FrtをノックインしたFLPo依存的Adipoq-Cre(FAC)マウスを作製し、Osterixを発現し、その後もしくは同時にAdipoqを発現する細胞でのみCreが発現するマウスモデルを構築した。mT/mGマウスとの交配により、これらのマウスでは他の白色脂肪組織や褐色脂肪、骨芽細胞ではなく、BMAd(および一部の他の細胞)でのみCreが発現することが示され、BMAd-Creマウス作製に成功した。

     脂肪トリグリセリドリパーゼ(ATGL、Pnpla2遺伝子)は脂肪分解プロセスの最初の酵素であり、律速酵素でもある。そこで、BMAdの脂肪分解が骨代謝や造血に及ぼす生理的機能を明らかにするために、Pnpla2をBMAd特異的に欠失させたBMAd-Pnpla2–/–マウスを作製し、BMAdの脂肪分解が骨代謝や造血に及ぼす影響を検討した。BMAd-Pnpla2–/–マウス骨髄では脂肪分解が阻害され、BMAd数の増加や肥大化が観察された。にもかかわらず、これらのマウスで海綿骨量、骨密度、血球系細胞に以上はみとめられなかった。一方、カロリー制限を行ったところ、BMAd-Pnpla2–/–マウスは骨芽細胞による類骨産生の低下により海綿骨量、骨密度などが低下し、骨髄の血球系細胞についても好中球の割合が減少することが示された。さらに、放射線照射後の造血系細胞の回復を評価したところ、通常食マウスではBMAd脂肪分解の欠損による影響を受けなかったが、カロリー制限を行うと骨髄細胞数や単球、好中球の減少が確認された。

     著者らは骨髄脂肪組織のRNA-seq解析を行い、Pnpla2の欠損は通常食マウスでの遺伝子発現はそれほど変化させなかったが、カロリー制限下では多くの遺伝子発現変動が確認された。特に、カロリー制限により細胞外マトリックス構築と骨格系発生に関連する遺伝子の上昇が引き起こされ、これらには骨芽細胞で発現するAlplCol1a1およびCol1a2を含めた複数のコラーゲン遺伝子、さらにFgf/FgfrおよびWntシグナル関連分子、LoxAdamtsファミリーが含まれていた。以上のデータから、食餌エネルギーが制限された条件下で、BMAdは類骨産生のためのコラーゲンの分泌を含む骨芽細胞機能を維持するためのエネルギーを供給していることが示唆された。また、BMAd由来のエネルギー供給は、損傷時の骨再生や寒冷曝露による骨量の維持にも必要であることも示された。以上から、骨髄脂肪細胞由来のエネルギーはカロリー制限下で骨恒常性などに寄与していることが示唆された。

    運動模倣

    運動模倣によるカルシウム– PGC-1αシグナルを介した筋と骨の強化

    原題:

    Simultaneous augmentation of muscle and bone by locomomimetism through calcium-PGC-1α signaling

    著者:

    Ono T, Denda R, Tsukahara Y, Nakamura T, Okamoto K, Takayanagi H, Nakashima T

    雑誌:

    Bone Res., 10(1), 1-14 (2022)

    POINT!

    高齢化率が上昇し続ける我が国では、転倒、骨折、寝たきりのリスクとなるサルコペニアや骨粗鬆症に対する治療薬の開発ニーズが高い。多くの基礎疾患を抱える高齢者の服薬アドヒランスを考えると、筋と骨の両方を単剤で治療できるのが理想的である。しかし、現状そのような薬剤は存在しない。著者らは、独自に開発したスクリーニング法により、ケミカルライブラリから筋細胞分化と骨芽細胞分化を促進し、破骨細胞の形成を著しく抑制する化合物を発見し、locamidazole (LAMZ) と命名した。この薬物は経口投与あるいは皮下注射により血中に移行し、明らかな副作用を示すことなく、筋線維幅径の増加と筋機能の向上、そして骨量や骨密度の上昇効果を示した。培養細胞を用いた実験でミトコンドリア関連遺伝子の増加が認められたことから、PGC-1αの関与が示唆された。実際、LAMZはin vitroin vivoの両方でPGC-1α遺伝子の発現を上昇させ、PGC-1α阻害剤SR18292はLAMZによる筋細胞分化や骨芽細胞分化の促進効果を低減させた。In vivoでも、LAMZと同時にこの阻害剤を投与したところ、筋や骨に対する薬効が消失した。運動により誘導され、PGC-1αを誘導しうるシグナル経路としてカルシウムシグナルが想起されたことから、カルシウムシグナルについての検討が行われた。LAMZ刺激により培養細胞の細胞内カルシウム濃度は増加し、カルシウムシグナルの阻害剤や、シグナル分子Mef2cのノックダウンはLAMZの薬効を減弱した。筋や骨の脆弱化に対してLAMZが治療薬となりうるか、廃用萎縮モデルマウスを用いて検討した。このモデルマウスに対してもLAMZは筋や骨を強化した。以上より、LAMZは運動模倣薬として機能し、運動器疾患治療薬となりうることが示された。

    運動療法

    トレッドミルによる運動はPPARαを介してαシヌクレインの拡散を防ぐ

    原題:

    Treadmill exercise reduces α-synuclein spreading via PPARα

    著者:

    Debashis Dutta, Ramesh Kumar Paidi, Sumita Raha, Avik Roy, Sujyoti Chandra, Kalipada Pahan

    雑誌:

    Cell Rep., 40(2) 111058 (2022)

    POINT!

    αシヌクレインはシナプス前膜に豊富に存在し、ドーパミンの分泌小胞の細胞内輸送を担う。この分子の変異や異常凝集はパーキンソン病やLewy小体型認知症の原因となる。トレッドミルを用いた走行訓練はパーキンソン病患者の運動機能向上に有効である。このことから、運動がαシヌクレインの産生や蓄積に何らかの影響をおよぼすと考えられた。まず、A53T変異ヒトα-シヌクレインBACトランスジェニックマウス(A53Tマウス)の脳内にα-シヌクレインpreformed fibril (PFF) を投与し、病的な修飾体であるpSyn129を増加させた。PFF投与後からトレッドミルによる強制走行を行ったところ、pSyn129量は減少し、臨床的知見と一致した結果が得られた。中脳黒質のドーパミンニューロンはPFF投与によって減少したが、強制走行によって回復した。ドーパミンおよびその代謝産物も同様にPFF投与で減少し、強制走行により回復した。オープンフィールド内での自由行動をトラッキングしたところ、PFF投与により行動量や移動速度が減少した。Rotaロッド試験によって運動機能を評価したところPFF投与マウスは容易に脱落した。これらの異常所見は強制走行によって回復した。老齢マウスの脳内でも上記と同様の所見が見出され、バーンズ迷路を用いた実験ではPFFによる空間記憶低下の強制走行による回復効果が認められた。次に、運動に伴うα-シヌクレインの減少メカニズムを解析した。異常タンパク質の除去にはオートファジーやライソゾームが関与する。PPARファミリー分子はライソゾーム形成に寄与することが知られており、PFF投与マウスの黒質ドーパミンニューロンではPPARα発現が低下する一方、強制走行マウスでは上昇していた。強制走行マウスの脳では、PPARαのTfebプロモーターへの結合活性が増大しており、TFEB発現量とも相関がみられた。オートファジーやライソゾームに関連する遺伝子の発現を解析したところ、TFEBまたはPPARαの標的遺伝子が多く抽出された。この中の一つのCln2をヘテロ欠損するA53Tマウスを作出したところ、αシヌクレインとドーパミンニューロンの減少、運動機能の低下が認められた。同様に、PPARαを欠損するA53Tマウスを作出したところ、これらのマウスでは強制走行を行なっても上記の神経の異常は改善されなかった。治療実験として、アゴニストによるPPARαの活性化を行なったところ、PFFによる神経毒性に対する保護効果が認められた。以上より、運動はPPARαを介してαシヌクレインによる神経疾患に対する治療効果を発揮することが示された。

    進行性骨化性線維異形成症(FOP)

    抗ACVR1抗体は変異ACVR1を活性化しFOPを増悪させる

    原題:

    Anti-ACVR1 antibodies exacerbate heterotopic ossification in fibrodysplasia ossificans progressiva (FOP) by activating FOP- mutant ACVR1

    著者:

    Senem Aykul, Lily Huang, Lili Wang, Nanditha M. Das, Sandra Reisman, Yonaton Ray, Qian Zhang, Nyanza Rothman, Kalyan C. Nannuru, Vishal Kamat, Susannah Brydges, Luca Troncone, Laura Johnsen, Paul B. Yu, Sergio Fazio, John Lees-Shepard, Kevin Schutz, Andrew J. Murphy, Aris N. Economides, Vincent Idone, and Sarah J. Hatsell

    雑誌:

    J. Clin. Invest., 132(12) e153792 (2022)

    POINT!

    進行性骨化性線維異形成症 (FOP) は、外傷などに伴う組織障害を契機に筋や腱に異所性骨化 (HO) が生じる疾患である。FOP患者にはBMP受容体であるACVR1に種々の変異が認められる。変異型のACVR1は野生型とは異なり、アクチビンAがアゴニストとしてBMPシグナルを活性化することが明らかにされたことから、ACVR1とリガンドの結合を阻害する抗体はHO発症を抑制できると考えられた。ヒトおよびマウスのACVR1に対する結合能と特異性が高く、下流シグナルを阻害する抗体を3クローン作製した。これをタモキシフェン誘導性に変異型のACVR1を発現するマウス (Acvr1[R206H]FlEx/+GT(ROSA26)SorCreERT2/+マウス、以下FOPマウス) に用いたところ、驚くべきことにアイソタイプコントロールを投与されたマウスよりも異所性骨の形成が亢進した。これらの抗体は野生型マウスの異所性骨化モデル (熱傷による腱切断) では異所性骨形成を抑制したことから、異所性骨化の増悪は変異型ACVR1により引き起こされると示唆された。ACVR1シグナルは肝臓におけるヘプシジン産生を誘導し、血清中の鉄濃度を低下させることが知られている。抗ACVR1抗体を野生型マウスに投与したところ、ヘプシジン産生は低下し血清鉄が増加したが、FOPマウスでは正反対の結果となった。このことから、抗ACVR1抗体は変異型ACVR1のシグナルを活性化すると考えられた。抗体による変異型ACVR1活性化機構を明らかにするために、BMP-response elementを用いたルシフェラーゼアッセイを行なった。DmrBドメインとダイマー化試薬を用いたホモダイマー化処理を行なったところ、ACVR2B-Fcによる内因性リガンド中和条件下においても変異型ACVR1は下流シグナルを誘導した。このことから、抗ACVR1抗体は変異型ACVR1をダイマー化する可能性が想定された。Fab化抗体であれば受容体のダイマー化は誘導せず、異所性骨化を抑制できることが期待できた。Fab化抗体は半減期が短いことから、これを発現するプラスミドをhydrodynamic deliveryにより遺伝子導入した。その結果、Fab化抗ACVR1抗体を発現するFOPマウスでは異所性骨化が減少した。さらに、FOPマウスのES細胞および線維脂肪前駆細胞 (FAP) を用いた検討を行なった。In vivoの実験結果と矛盾なく、抗ACVR1抗体は変異型ACVR1下流でSmadシグナルを誘導した一方、Fab化抗ACVR1抗体はアクチビンAの作用を阻害した。今回見出されたFOPの異常なシグナルにACVR2A、ACVR2B、BMPR2といったII型の受容体が必要であるか、これらを欠損するFOPマウスES細胞を作出し検討した。その結果、BMP2欠損細胞ではリガンドあるいは抗体誘導性のシグナルに変化はなかったものの、ACVR2AとACVR2Bの両方を欠損する細胞ではSmadシグナルが顕著に抑制された。ヒト患者でも同様の有害事象が起こり得るかを、ヒト化した変異型ACVR1を発現するFOPマウスを作製し、解析を行った。その結果、マウス変異型ACVR1発現マウスの場合よりも軽度ではあるものの抗ACVR1抗体による異所性骨化の増悪が認められた。以上より、FOPのACVR1を標的とする抗体療法を行う際には、何らかの修飾により二量体形成を防ぐ必要がある。

    胸腺上皮細胞

    両能性胸腺上皮前駆細胞の分化ダイナミクス

    原題:

    Developmental dynamics of two bipotent thymic epithelial progenitor types

    著者:

    Anja Nusser, Sagar, Jeremy B. Swann, Brigitte Krauth, Dagmar Diekhoff, Lesly Calderon, Christiane Happe, Dominic Grün, Thomas Boehm

    雑誌:

    Nature, 606, 165-171 (2022)

    POINT!

    胸腺上皮細胞(Thymic epithelial cells: TEC)から構成される特有の微小環境は、T細胞の分化に必須である。単一細胞遺伝子発現解析により、TECは想像以上に不均一な集団であることが明らかにされたが、胸腺上皮細胞前駆細胞の分類や分化経路については不明な点が多い。本研究では、単一細胞RNA発現解析(scRNA-Seq)およびCRISPR/Cas9システムによる新規単一細胞バーコーディンング法を組み合わせることで、マウスにおけるTECの質的および量的変化を継時的に追跡した。具体的には、TECにおいて、Hprt遺伝子にランダムな変異が導入されるマウスを作成し、その変異のパターン(すなわち、バーコード)を読み解いた。その結果、TEC前駆細胞には、皮質上皮細胞(cTEC)または髄質上皮細胞(mTEC)に偏った2種類の前駆細胞が胎生16.5日の胸腺に存在することが示された。これらの細胞の一部は、活性化されておらず休眠の状態にあることがわかった。線維芽細胞増殖因子(FGF)をTECにて過剰発現するマウスでは、出生後1年の胸腺でもTEC前駆細胞が維持されていたことから、オートクラインなFGF刺激がTECの維持に寄与することが示された。本研究は、胸腺微小環境の機能を人為的に調節するための基盤的技術の開発に繋がると考えられる。

    筋再生

    IL-17A産生 γδT細胞は細菌叢依存的に筋再生促進する

    原題:

    IL-17A–producing γδT cells promote muscle regeneration in a microbiota-dependent manner

    著者:

    Alexander O. Mann, Bola S Hanna, Andrés R Muñoz-Rojas, Inga Sandrock, Immo Prinz, Christophe Benoist, Diane Mathis

    雑誌:

    J Exp Med, 219, e20211504 (2020)

    POINT!

     骨格筋損傷は極めて協調された筋再生プロセスを開始し、筋の恒常性を再構築する。様々な免疫細胞は筋再生に影響を及ぼすと知られているが、今回の報告では筆者らはcardiotoxinのマウス後肢注射による筋損傷モデルを用いて、γδT細胞が筋再生を促進することを明らかにした。具体的には、筋損傷後においてフローサイトメトリー解析からIL-17A産生 γδT細胞が損傷部位に蓄積することを見出した。ジフテリア毒素受容体を用いた誘導的システムにおいて作製されたgdT細胞(Tcrd)欠失マウスを損傷したところ、筋再生が遅延することがわかった。その機序は、gdT細胞が筋損傷後の急性炎症と筋幹細胞の増殖を促進することにあると筆者らが示した。更に、germ-free (GF)マウスとspecific pathogen-free (SPF)マウスを損傷した結果、GFマウスではgdT細胞が減少していた。SPFマウスに抗生物質を投与するとgdT細胞とIL-17A産生の減少が見られ、筋再生と細菌叢との関連が示唆された。最後に、抗生物質を投与したSPFマウスでは、損傷部位における免疫細胞の蓄積と筋再生の障害が認められたが、IL-17A注射によりレスキューされた。以上から本研究は筋再生はIL-17A産生gdT細胞を介し細菌叢に依存していることを示し、筋にまつわる病態に新たな視点を提供した。

    骨格幹細胞

    生後の骨格成長において、骨膜幹細胞は成長板幹細胞を制御する

    原題:

    Periosteal stem cells control growth plate stem cells during postnatal skeletal growth

    著者:

    Masayuki Tsukasaki, Noriko Komatsu, Takako Negishi-Koga, Nam Cong-Nhat Huynh, Ryunosuke Muro, Yutaro Ando, Yuka Seki, Asuka Terashima, Warunee Pluemsakunthai, Takeshi Nitta, Takashi Nakamura, Tomoki Nakashima, Shinsuke Ohba, Haruhiko Akiyama, Kazuo Okamoto, Roland Baron, Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Nat Commun, 13, 4166 (2022)

    POINT!

    内軟骨性骨化と膜性骨化はそれぞれ成長板幹細胞と骨膜幹細胞によって独立して制御されると考えられており、骨膜幹細胞と成長板幹細胞の関係性や相互作用に関しては不明であった。著者らは、タンパク質修飾酵素のひとつであるPRMT5の破骨細胞における機能を探索する目的で、PRMT5 flox/CtsK-Creを作製した。当該マウスでは、内軟骨性骨化と膜性骨化の両方が障害され骨成長障害を呈したものの、破骨細胞の分化や機能、遺伝子発現プロファイルは全く変化しておらず、骨成長障害はCtsK-Creが他の細胞でPRMT5遺伝子を除去したことによる影響と考えらた。原因を探索してゆき、CtsK-Creが骨膜幹細胞でも作動していること、骨膜幹細胞でPRMT5が除去されると、生後徐々に骨膜幹細胞の数が減少してゆくことを明らかにした。これまで、骨膜幹細胞が膜性骨化にのみ寄与すると考えられてきた理由は、①骨膜幹細胞の子孫細胞は、骨内部には侵入せず骨外膜に限局する ②骨膜幹細胞で骨形成に必須の遺伝子Osterixを除去すると、膜性骨化のみが障害される ③骨膜幹細胞を異所性に移植すると、膜性骨化のみ引き起こすという3つの根拠によるものであった。しかしながら、骨膜幹細胞が可溶性因子を分泌することで遠隔的に内軟骨性骨化を制御する可能性に関しては見落とされていた。そこで骨膜幹細胞で高発現する可溶性因子を探索し、骨化制御因子Ihhを同定した。Ctsk-Creを用いて骨膜幹細胞でIhhを除去したマウスを作製したところ、成長版幹細胞の増殖が阻害され、3週齢(ヒトだと幼児期)以降に重篤な骨成長障害を呈した。以上から、可溶性因子を介した「幹細胞クロストーク」が生後の骨成長を制御するという新たな概念が創出され、膜性骨化と内軟骨性骨化システムは互いに相互作用しつつ複雑な骨格系を形成している可能性が示唆された。

    組織修復

    単球–レプチン–血管新生経路は感染後の組織修復に重要である

    原題:

    A monocyte–leptin–angiogenesis pathway critical for repair post-infection

    著者:

    Rachel M. Kratofil, Hanjoo B. Shim, Raymond Shim, Woo Yong Lee, Elodie Labit, Sarthak Sinha, Catherine M. Keenan, Bas G. J. Surewaard, Ji Yeon Noh, Yuxiang Sun, Keith A. Sharkey, Matthias Mack, Jeff Biernaskie, Justin F. Deniset and Paul Kubes

    雑誌:

    Nature, 609, 166–173 (2022)

    POINT!

    細菌感染において、炎症性単球と好中球は感染初期に遊走し、細菌の排除に重要な役割を果たすと考えられてきた。しかし、単球は好中球ほど殺菌能が高くないことから、感染のコントロール以外の役割があるのではないかと筆者らは考えた。まず、Staphylococcus aureus (S. aureus)でコートしたアガロースビーズをマウスの皮下に移入し、生体二光子顕微鏡を用いて移入部位の単球、好中球を観察した。移入24時間後において、好中球は移入部位に著しく浸潤しS. aureusと接触していたのに対し、単球は浸潤せず移入部位周辺に留まり、S. aureusとほとんど接触していなかった。しかし、移入7日後においては、単球は移入部位に浸潤しマクロファージへと分化していた。続いて、単球欠損マウスの解析により、単球はS. aureusの排除において有意な影響はなく、感染後の組織修復において重要であることが明らかになった。単球欠損マウスでは、S. aureus移入30日後における組織修復が著しく遅延していた。移入部位は血管が増生しており、厚いコラーゲンの層に覆われていた。さらに、単球欠損マウスでは移入部位の皮下脂肪が肥大しており、脂肪細胞のレプチン産生が亢進していた。そこで、S. aureus移入後にレプチンアンタゴニストを投与したところ、異常血管増生は見られず、組織修復遅延も改善したため、単球欠損によるレプチン産生亢進が異常血管増生および組織修復遅延を引き起こしていると考えられた。野生型マウスのS. aureus移入部位に集積する単球を解析したところ、グレリンの発現が上昇しており、グレリンノックアウトマウスの骨髄を移植したマウスでは、異常血管増生がみられるとともに組織修復が遅延していた。以上の結果から、単球はグレリンの分泌を介して脂肪細胞によるレプチン産生を調整し、感染後組織修復時の血管再生を制御することが示された。

    R-spondin2

    原題:

    RSPO2 defines a distinct undifferentiated progenitor in the tendon/ligament and suppresses ectopic ossification

    雑誌:

    Sci. Adv, 8, eabn2138 (2022)

    POINT!

    腱/靭帯の異所性骨化は、過剰な機械的負荷の繰り返しや炎症によって生じる。腱/靭帯にはプロジェニター細胞が存在し、組織修復能を有することや、その一部がPRG4(proteoglycan4)を発現していることが知られている。しかし、異所性骨化の詳細なメカニズムや腱/靭帯プロジェニター細胞との関係は明らかにされていなかった。筆者らは、プロジェニター細胞の中でもPRG4陽性サブセットが、後縦靱帯骨化症の原因遺伝子の一つで、WNT活性化因子であるRSPO2(R-spondin2)を特異的に発現していること、またRSPO2を発現するプロジェニター細胞が病的環境で腱/靭帯の恒常性維持に寄与していることを示した。まず、マウスのアキレス腱穿刺による異所性骨化モデルを用いてシングルセル解析を行ったところ、PRG4陽性のプロジェニター細胞はRSPO2を特異的に発現していた。シュードタイム解析では、RSPO2クラスターは最も未分化な集団であった。続いて、RSPO2を過剰発現するCAG-EGFP-Rspo2マウスを作製し、アキレス腱穿刺モデルを施行したところ、異所性骨化は抑制された。さらに、後縦靱帯骨化症の患者の靭帯では、脊椎症の患者と比較してRSPO2発現量が有意に低下しており、in vitroの実験では、RSPO2タンパク質はヒト靭帯細胞の軟骨分化を抑制した。またRSPO2は、炎症や機械的負荷によりnuclear factor kBを介して誘導された。以上から、RSPO2を分泌するプロジェニター細胞は、腱/靭帯の修復を制御し、異所性骨化を防いでいることが示された。本研究で同定されたプロジェニター細胞は、後縦靱帯骨化症以外の疾患にも広く関わっている可能性があり、今後さまざまな腱/靭帯の疾患での解析が期待される。

    胸腺上皮細胞

    胸腺上皮細胞は系統を規定する転写因子を選び取り、自己反応性T細胞を排除する

    原題:

    Thymic epithelial cells co-opt lineage-defining transcription factors to eliminate autoreactive T cells

    著者:

    Daniel A. Michelson, Koji Hase, Tsuneyasu Kaisho, Christophe Benoist and Diane Mathis

    雑誌:

    Cell, 185: 2542-2558. (2022)

    POINT!

    胸腺は、骨髄で産生された未熟T細胞から有用かつ自己に反応しないT細胞を選択するのに必須の微小環境である。特に、自己反応性T細胞の排除には胸腺髄質上皮細胞(medullary thymic epithelial cell: mTEC)が主要な役割を果たしており、Aireなどの転写制御因子を用いて多様な自己抗原を異所性に発現させていると報告されてきた。しかし、全身の自己抗原を胸腺内に発現させる仕組みの全貌は未だ解明されていなかった。今回筆者らは、mTECのscATAC-seqとscRNA-seqを組み合わせて、複数の新規mTECサブセットを発見した。それらは末梢組織の分化系統を規定する転写因子によって各々特徴づけられ、末梢の細胞を模倣していることから”mimetic cell”と名付けられた。一例としてM細胞に類似したmicrofold mTECを組織解析やFACSで同定し、転写因子SpiB, Sox8ノックアウトマウスで著減することを示した。また一部のmimetic cell特異的転写因子を発現するTECでのみ、モデル抗原としてYFPを発現させた系で、末梢におけるYFP反応性T細胞が減少することも証明した。以上から、胸腺には末梢の特定の細胞種に類似した上皮細胞サブセットが複数存在し、自己反応性のT細胞を排除することで中枢性免疫寛容に寄与していることが明らかとなった。

    ヒト免疫

    臓器横断型ヒト免疫細胞の分化マップの作図

    原題:

    Mapping the developing human immune system across organs

    著者:

    Chenqu Suo, Emma Dann, Issac Goh, Laura Jardine, Vitalii Kleshchevnikov, Jong-Eun Park, Rachel A. Botting, Emily Stephenson, Justin Engelbert, Zewen Kelvin Tuong, Krzysztof Polanski, Nadav Yayon, Chuan Xu, Ondrej Suchanek, Rasa Elmentaite, Cecilia Domínguez Conde, Peng He, Sophie Pritchard, Mohi Miah, Corina Moldovan, Alexander S. Steemers, Pavel Mazin, Martin Prete, Dave Horsfall, John C. Marioni, Menna R. Clatworthy, Muzlifah Haniffa, and Sarah A. Teichmann

    雑誌:

    Science, 376 : eabo0510 (2022)

    POINT!

    単一細胞遺伝子発現解析が開発されたことで、数種の臓器については、免疫細胞の構成が明らかにされた。しかし、免疫システムが構築される過程を多臓器に渡り横断的かつ単一細胞レベルで追跡した研究はない。今回、筆者らは、出生前ヒト組織 ( 卵黄嚢、肝臓、骨髄、胸腺、脾臓、リンパ節、皮膚、腎臓、腸 ) を用いて単一細胞遺伝子発現解析、単一細胞抗原受容体配列解析、そして空間的遺伝子発現解析を実施し、これらを統合することでヒト免疫免システムの分化過程を解明した。本研究より得られた組織横断型データより、妊娠中期における骨髄系細胞およびリンパ球系細胞の機能獲得機構と末梢組織移入前の単球と T 細胞の詳細な成熟過程が明らかにされた。さらに筆者らは、ヒト血球系細胞分化の全体像や出生前 B1 細胞を特徴づけるとともに非典型的 T 細胞の起源を示した。これら大規模なヒト免疫細胞のデータは、生物学的に重要なもたらすリソースとして活用でき、生体内細胞工学や再生医療、先天性疾患の治療に役立つと考えられる。

    骨の成長

    機械的な負荷が骨基質石灰化と血管新生抑制を誘導し、思春期の骨成長を制限する

    原題:

    Mechanical forces couple bone matrix mineralization with inhibition of angiogenesis to limit adolescent bone growth

    著者:

    Maria Dzamukova, Tobias M. Brunner, Jadwiga Miotla-Zarebska, Frederik Heinrich, Laura Brylka, Mir-Farzin Mashreghi, Anjali Kusumbe, Ralf Kühn, Thorsten Schinke, Tonia L. Vincent, and Max Löhning

    雑誌:

    Nat. Commun., 13: 3059 (2022)

    POINT!

    骨の成長には、血管新生作用が強く骨芽細胞の分化を促進する H 型血管が、重要な役割を持つ。この H 型血管は、成長期が終わると骨成長を促進する能力を持たない L 型血管に分化するが、 L 型血管へ分化を誘導する機序は不明であった。筆者らは若年マウスを解析し生後 5.5-6 週の時期に骨芽細胞由来の DMP1 が骨化前線から成長板に至る範囲で分布していることを発見した。次に DMP1 f/f Col1-CreERT2 (Dmp1iΔOB) マウスを用いて、骨芽細胞特異的に成長期の DMP1 を欠損させたところ、 H 型血管が増加することを見出した。この Dmp1 iΔOB マウスでは VEGFR2 のリン酸化が促進していることを示した。さらに筆者らは in vitro で DMP1 が内皮細胞の VEGF シグナルを阻害することを確認した。また DMP1 の分泌は体重および FAM20C (分泌型リン酸化酵素の主要キナーゼ)と正の相関があることを示した。骨に荷重もしくは免荷する実験系を用いて、機械的な負荷が FAM20C と DMP 1の発現を増加させることを示した。 DMP 1発現細胞特異的 PIEZO 1欠損マウス( Dmp1 -Cre Piezo1fl/fl )では FAM20C および DMP 1の発現が有意に低下したことから、機械的受容器 PIEZO1 が必須であることが判明した。以上の結果から筆者らは、思春期末期の体重増加に伴う機械的負荷が、骨芽細胞の機械受容器 PIEZO1 を作動させ、 FAM20C の産生および DMP 1の分泌を促進することで H 型血管から L 型血管への分化を誘導していると結論づけた。

    炎症性合併症

    骨髄造血の不適応な自然免疫訓練は炎症性合併症に結びつく

    原題:

    Maladaptive innate immune training of myelopoiesis links inflammatory comorbidities

    著者:

    Xiaofei Li, Hui Wang, Xiang Yu, Gundappa Saha, Lydia Kalafati, Charalampos Ioannidis, Ioannis Mitroulis, Mihai G.Netea, Triantafyllos Chavakis, George Hajishengallis

    雑誌:

    Cell, 185: 1709-1727 (2022)

    POINT!

    歯周病が心血管疾患や関節リウマチなど種々の炎症性疾患のリスク因子になることは多くの研究により明らかにされている。本研究では、歯周病と関節リウマチが骨髄造血の変調を引き起こすことで、双方向的に病態を増悪させる可能性を示した。まず著者らは、マウスの大臼歯に絹糸を結紮することで誘導する実験的歯周炎( LIP )が、骨髄中の造血幹細胞において顆粒球分化に関連する遺伝子群の発現を上昇させ、ミエロイド系前駆細胞の数を増加させることを示した。マウス大臼歯から結紮糸を除去したマウス( LIP-trained )では、歯周病が治癒し顆粒球造血も定常レベルに戻る一方、歯周病誘導歴のないマウスと比較して LPS 投与後の顆粒球分化とミエロイド系細胞の炎症性サイトカイン産生が亢進した。 LIP-trained マウス由来骨髄細胞を用いたシングルセル ATAC-Seq 解析により、上記現象の原因がクロマチン変化を伴うエピジェネティックな変調であり、炎症刺激が除去された後も一定期間持続することが示された。さらに著者らは、歯周病によって“訓練”された骨髄細胞を移植したマウスはコラーゲン抗体誘発関節炎( CAIA )が悪化すること、逆に CAIA の誘導によって“訓練”された骨髄細胞を移植したマウスでは歯周病が悪化することを示した。分子メカニズムとしては、 LIP を誘導したマウスでは血中 G-CSF 濃度が上昇しており、これが好中球による IL-1 β産生を誘導し、造血幹細胞を刺激することで、骨髄訓練の変調を引き起こす可能性を示した。以上より、骨髄造血の変調がさまざまな炎症性疾患同士の連関を担う統一基盤の一つであり、有効な治療標的となりうることが示唆された。

    骨髄異形成症候群

    骨髄異形成症候群では細胞外小胞を介して MSC の骨芽細胞系分化が抑制されることにより正常な造血が障害される

    原題:

    MDS cells impair osteolineage differentiation of MSCs via extracellular vesicles to suppress normal hematopoiesis

    著者:

    Yasutaka Hayashi, Kimihito C. Kawabata, Yosuke Tanaka, Yasufumi Uehara, Yo Mabuchi, Koichi Murakami, Akira Nishiyama, Shigeru Kiryu, Yusuke Yoshioka, Yasunori Ota, Tatsuki Sugiyama, Keiko Mikami, Moe Tamura, Tsuyoshi Fukushima, Shuhei Asada, Reina Takeda, Yuya Kunisaki, Tomofusa Fukuyama, Kazuaki Yokoyama, Tomoyuki Uchida, Masao Hagihara, Nobuhiro Ohno, Kensuke Usuki, Arinobu Tojo, Yoshio Katayama, Susumu Goyama, Fumio Arai, Tomohiko Tamura, Takashi Nagasawa, Takahiro Ochiya, Daichi Inoue, and Toshio Kitamura

    雑誌:

    Cell Rep., 39: 110805 (2022)

    POINT!

    骨髄異形成症候群( MDS )は、造血幹細胞( HSPC )の異常なクローン性増殖による末梢の血球減少や造血前駆細胞の異形成、急性骨髄性白血病への移行を特徴とする疾患群である。 MDS 細胞はあまり増殖能が高くないにもかかわらず、正常な造血幹細胞を阻害し骨髄腔を占拠することが知られているが、どのようなメカニズムが関与しているかは不明であった。著者らは Abcg2 を過剰発現させた骨髄細胞を二次移植することにより MDS/AML 様の病態を示すマウスモデル (MDS/AML マウス ) を樹立し、 recipient の骨髄細胞を調べたところ、 HSPC の colony 形成能の低下およびアポトーシスの増加が見られた。しかし、 MDS/AML マウスの骨髄細胞と野生型 HSPC の共培養により、 MDS 細胞は直接 HSPC を阻害しているわけではないことがわかった。 MDS/AML マウスでは組織学的に骨の菲薄化が認められ、大腿骨の骨量が減少し、骨形成の低下が認められたことから、著者らは MDS 細胞が骨芽細胞系に影響を与えている可能性を考え、 MDS/AML マウス骨髄中の CD45TER119CD31CD140a+CD51+ 細胞を scRNA-seq で解析した。その結果、 MDS/AML マウスの間葉系幹細胞 (MSC) はコントロールの MSC と遺伝子発現に差があり、骨芽細胞系への分化マーカーの発現が低下していることが示された。また、 MDS/AML マウス由来 MSC を野生型 HSPC と共培養したところ HSPC の colony 形成が抑制され、骨芽細胞分化誘導培地で培養すると HSPC に対する抑制効果が打ち消された。すなわち、 MDS/AML マウスでは MSC の骨芽細胞への分化が抑制され、その結果 HSPC の維持が阻害されていると考えられた。著者らは MDS 細胞由来の細胞外分泌小胞 (EVs) に着目し、 in vitro で MDS/AML マウス骨髄細胞由来 EVs を野生型 MSC に添加したところ、骨芽細胞分化が抑制されることを見出した。さらに MSC と HSPC の共培養系に EVs を添加すると、 HSPC の colony 形成が低下した。続いて、 EVs に含まれる miRNA を miRNA microarray で解析し、 MDS/AML マウス骨髄細胞由来 EVs では骨芽細胞分化や生存・増殖に関わるシグナルを抑制する miRNA が多く含まれていることを見出した。最後に、 MDS 患者の血清と健常者の血清に含まれる miRNA を miRNA-seq で解析したところ、マウスと同様に、骨芽細胞分化や生存・増殖に関わるシグナルを抑制する miRNA が多く含まれていた。

    以上の結果により、 MDS 細胞由来の EVs が MSC の骨芽細胞系への分化を抑制し、正常な HSPC の維持を阻害している可能性が示された。 EVs に含まれる他の因子の関与や MSC 以外の骨髄ニッチ構成細胞の関与などは否定できないが、今後の更なる研究により EVs による MDS 病態の制御機構が詳細に解明されることが期待される。

    機械刺激

    機械的シグナル経路を阻害すると、分層植皮における皮膚の繊維化や拘縮が抑制される

    原題:

    Disrupting mechanotransduction decreases fibrosis and contracture in split-thickness skin grafting

    著者:

    Kellen Chen, Dominic Henn, Michael Januszyk, Janos A. Barrera, Chikage Noishiki, Clark A. Bonham, Michelle Griffin, Ruth Tevlin, Theresa Carlomagno, Tara Shannon, Tobias Fehlmann, Artem A. Trotsyuk, Jagannath Padmanabhan, Dharshan Sivaraj, David P. Perrault, Alsu I. Zamaleeva, Chyna J. Mays, Autumn H. Greco, Sun Hyung Kwon, Melissa C. Leeolou, Savana L. Huskins, Sydney R. Steele, Katharina S. Fischer, Hudson C. Kussie, Smiti Mittal, Alana M. Mermin-Bunnell, Nestor M. Diaz Deleon, Christopher Lavin, Andreas Keller, Michael T. Longaker, Geoffrey C. Gurtner

    雑誌:

    Sci. Transl. Med .14; eabj9152. (2022)

    POINT!

    火傷をはじめとした皮膚損傷は、その損傷の深さが浅い場合、分層植皮 (split-tickness skin grafting: STSG) と呼ばれる皮膚の上層のみの移植によって治療をすることができる。しかしこの治療では移植後に異常な色素の沈着や皮膚の拘縮を引き起こし、繰り返しの皮膚移植が必要になってしまうことも少なくない。近年、マウスを用いた実験によって皮膚損傷後の繊維性瘢痕形成に機械刺激が関与していることが明らかにされてきているが、シグナルの詳細な解析までは進んでいない。加えてマウスは皮膚の柔らかい動物であるため、ヒトの STSG 部位でみられるような拘縮が起きにくく、モデルの妥当性にも議論があった。

    本論文で筆者らは、ヒトに近い皮膚をもつブタをモデル動物として STSG を行い、生じる瘢痕組織のシングルセル RNA シーケンス解析を行なった。その結果、正常皮膚に比べ STSG の線維芽細胞では炎症シグナル、機械刺激シグナルが亢進していることを見出し、そのシグナルに関わる FAK (focal adhesion kinase) の阻害剤を添加することで皮膚の拘縮を抑えることに成功した。

    続けて筆者らは、拘縮抑制の詳細なメカニズムの解析を行うため、 FAK 阻害剤を塗布した STSG 部位についてもシングルセル RNA シーケンス解析を行った。その結果、移植 7 日後のミエロイド細胞における炎症シグナルの亢進が阻害剤の添加で抑えられていること、 90 日後の線維芽細胞では、阻害剤の添加によって繊維化に特徴的な遺伝子発現が抑制され、再生や脂肪形成に重要な遺伝子群の発現が上昇することを見出した。また、ハイドロゲル上でヒトの皮膚細胞を力をかけながら培養したところ、阻害剤の添加で同様の遺伝子発現変化が起きることを確認し、このメカニズムがヒトでも維持されている可能性を示した。

    神経免疫学

    ATP は感覚ニューロンと介在ニューロンを介して片脚の炎症を反対側に拡延する

    原題:

    ATP spreads inflammation to other limbs through crosstalk between sensory neurons and interneurons

    著者:

    Rie Hasebe, Kaoru Murakami, Masaya Harada, Nada Halaka, Hiroshi Nakagawa, Fuminori Kawano, Yoshinobu Ohira, Tadafumi Kawamoto, Fiona E. Yull, Timothy S. Blackwell, Junko Nio-Kobayashi, Toshihiko Iwanaga, Masahiko Watanabe, Nobuhiro Watanabe, Harumi Hotta, Toshihide Yamashita, Daisuke Kamimura, Yuki Tanaka, Masaaki Murakami

    雑誌:

    J. Exp. Med., 219(6) e20212019 (2022)

    POINT!

    関節リウマチなどいくつかの疾患では炎症が両側性に発生し、それには神経が関与すると考えられている。著者らは、 F759マウスの IL-17Aと IL-6を関節腔注射することで関節炎を発症するモデル (Murakami, J. Exp. Med., 2011) を用いてこのメカニズムを解析した。両側踵関節にサイトカインを注射し、第 5腰椎 (L5) レベルで片側後根神経節 (DRG) 近傍で求心路遮断を行ったところ、両側とも関節炎スコアが低下し、感覚神経を介した炎症の伝播が示された。片側のみの踵関節にサイトカインを注射したところ、同側の L5および反対側の L4-6で神経細胞の活性化が認められた。関節に神経線維のトレーサーを注射したところ、 L5 DRGの Nav1.8+TRPV1-感覚神経が標識されたことから、炎症部を支配する感覚神経が炎症の伝播に関わることがわかった。 Herpes simplex virus 2 (HSV2) により、神経伝道路を解析したところ、注射側の踵関節から L5 DRG、 L5脊髄後角、第 13胸髄 (T13) を経て反対側の T10-13、 L4-6の DRGへと投射された。 T9-13で長軸方向に脊髄を切断したところ、サイトカイン投与に伴う反対側の L5 DRG神経細胞の活性化が見られなくなり、介在ニューロンの関与が示された。この経路に関わる介在ニューロンは proenkephalin陽性細胞であることがわかった。さらに、この神経回路に関係する神経伝達物質の探索をおこない、注射側の反対側で感覚神経における ATP産生増加を認めた。この ATP増加は求心路遮断や介在ニューロンの切断によって消失したことから、 ATPが炎症の拡延に関与することが示された。 ATP受容体 P2RX7は感覚神経だけでなく間葉系細胞や内皮細胞でも発現を認め、関節炎発症に伴い間葉系細胞や内皮細胞で CREBリン酸化が亢進したことからこれらの細胞が関節炎の拡延に際して細胞外 ATPに応答すると考えられた。関節リウマチの古典的モデルである CIAマウスにおいても上記と同様な経路の存在が確認された。以上より、片側の関節炎は感覚神経と介在ニューロンにより反対側に拡延すること、その経路には ATPが関与することが示された。

    血管新生

    心臓の周皮細胞における MEK阻害によるリプログラミングは虚血心の血管新生を促進する

    原題:

    Cardiac pericyte reprogramming by MEK inhibition promotes arteriologenesis and angiogenesis of the ischemic heart

    著者:

    Elisa Avolio, Rajesh Katare, Anita C. Thomas, Andrea Caporali, Daryl Schwenke, Michele Carrabba, Marco Meloni, Massimo Caputo, Paolo Madeddu

    雑誌:

    J. Clin. Invest., 132(10): e152308 (2022)

    POINT!

    心筋梗塞 (MI) の予後は血行の回復に依存することから、血管新生の誘導が治療戦略のキーとして注目されている。著者らは血管内皮細胞 (EC) を被覆する血管周皮細胞 (PC) に着目した。ヒト成人の心臓の冠動脈には CD31CD34+PDGFRβ+α-smooth muscle actin (αSMA) PCが存在する。これらの細胞は HGF、 angiopoietin-1/2、 VEGFなどの血管新生因子を産生することが見出された。 PCと ECを共培養したところ、長い管腔様構造を形成した。 PCは EGFと FGF2を含まない培地で培養することで血管平滑筋 (VSMC) に分化した。得られた VSMCでは endothelin刺激によるカルシウムシグナルや細胞収縮が増強された。また、ヒト冠動脈平滑筋細胞と同様にエラスチン (ELN) を高いレベルで発現した。 PCから VSMCへの分化メカニズムを解明するために、 EGFや FGF2で誘導されるシグナルを解析した。これらのサイトカインシグナルの下流では、 ERK1/2シグナルが活性化された。 PCの VSMC分化系に MEK阻害剤の PD0325901を添加したところ、 EGFおよび FGF2不含培地で培養した時と同様の効果が得られた。遺伝子発現の網羅的解析により、この阻害剤を添加することで、 MAPKシグナル遺伝子群の発現低下を伴う血管平滑筋収縮に関わる遺伝子群の上昇が見出された。 VSMCは PCと比較して ANGPT2 TIE1 SERPINEF1といった抗血管新生作用を有する遺伝子の減少を認めた。 PD0325901 をマウスに投与したところ、心筋への有害作用なく冠動脈の血管新生が促進され、心収縮能の向上が認められた。以上より、 MEKシグナルの阻害が心筋梗塞治療の新たな治療戦略の核となることが示唆される。

    ランゲルハンス細胞

    ランゲルハンス細胞は慢性皮膚炎を仲介する重要な細胞である

    原題:

    Langerhans cells are an essential cellular intermediary in chronic dermatitis

    著者:

    Holly Anderton, Michael Chopin, Caleb A. Dawson, Stephen L. Nutt, Lachlan Whitehead, Natasha Silke, Najoua Lalaloui, John Silke

    雑誌:

    Cell Rep., 39, 110922 (2022)

    POINT!

    慢性皮膚炎では、 TNFαなどのサイトカインの過剰産生によって上皮細胞の細胞死が誘導される。直鎖状ユビキチン鎖合成酵素複合体 LUBACの構成要素である Sharpinに cpdm型変異のあるマウスは、 TNF依存的に重度の皮膚炎を発症する。 TNFαの産生源についての検討から、好酸球とリンパ球ではないことが分かっている。著者らは Sharpin cpdmマウスの皮膚炎病巣でマクロファージや樹状細胞 (DC)、特にランゲルハンス細胞 (LC) が増加することに着目した。 Cd11b Ccr2 Cd11c、ランゲリン (Cd207) プロモーターによりこれらの細胞でジフテリア毒素受容体 (DTR) を発現するマウスを Sharpin cpdmマウスと交配、ジフテリア毒素 (DT) 投与により、目的の細胞を欠損する皮膚炎マウスを作出した。その結果、 DCや LCが欠失する条件では皮膚炎の緩和が認められた。さらに、最近開発された CD11c発現細胞特異的に Suz12を欠損することにより LCが生後間もなく消失するマウス (Zhan, Sci. Immunol., 2021)を Sharpin cpdmマウスと交配することにより、皮膚炎における LC機能の解析を行った。このマウスでは、皮膚炎の全身への影響が低減し、皮膚局所の炎症は劇的に抑制された。 Sharpin cpdmマウス骨髄細胞を移入した Sharpin cpdm Cd207 DTRマウスでは皮膚炎が発症した一方、 Sharpin cpdm Tnfa –/–マウス骨髄細胞の移入では皮膚炎が抑制されたことから、 Sharpinの機能不全 LCは実験的皮膚炎マウスモデルにおける TNFαの産生源であると考えられた。

    Fgf17

    若齢マウス脳脊髄液は Fgf17 を介して老齢マウスのオリゴデンドロサイト形成と記憶を回復させる

    原題:

    Young CSF restores oligodendrogenesis and memory in aged mice via Fgf17

    著者:

    Tal Iram, Fabian Kern, Achint Kaur, Saket Myneni, Allison R. Morningstar, Heather Shin, Miguel A. Garcia, Lakshmi Yerra, Robert Palovics, Andrew C. Yang, Oliver Hahn, Nannan Lu, Steven R. Shuken, Michael S. Haney, Benoit Lehallier, Manasi Iyer, Jian Luo, Henrik Zetterberg, Andreas Keller, J. Bradley Zuchero, Tony Wyss-Coray

    雑誌:

    Nature, 605, 509-515 (2022)

    POINT!

    脳脊髄液( CSF )は脳細胞の直接的な環境を構成し、栄養となる物質を供給している。本研究で著者らは、若齢マウス由来 CSF ( YM-CSF )を老齢マウス脳に 1 週間、浸透圧ポンプを用いて持続的に直接注入すると、記憶能が向上することを発見した。海馬は加齢に伴う認知機能低下の中心であり、 CSF と密接な関係にあることから海馬の RNA-seq 解析を行ったところ、 YM-CSF を注入した海馬で最も反応するのはオリゴデンドロサイトであることが明らかになった。海馬 CA1 領域では YM-CSF 注入によりオリゴデンドロサイト前駆細胞( OPC )の増殖が促進され、この現象は健常若齢ヒト由来 CSF ( YH-CSF )を注入したマウスでも同様に観察された。さらに、 YH-CSF は初代 OPC 培養において、細胞増殖と分化を促進することを明らかにした。 OPC の初代培養系において SLAMseq 法により新生 mRNA を代謝的に標識して解析したところ、 YH-CSF 処理後 1 時間でアクチン細胞骨格系の遺伝子発現に関わる転写因子である血清応答因子( SRF )が、最も高く誘導されることを見出した。実際に YH-CSF 処理後 6 時間で発現変化を示した遺伝子の多くが SRF の既知の標的遺伝子であり、 SRF とアクチン細胞骨格の調節が in vivo での若齢 CSF 注入効果のメディエーターであることを突き止めた。また、海馬 OPC では加齢に伴い SRF の発現が減少し、 YM-CSF の注入により SRF の転写標的遺伝子発現が活性化することも示された。著者らは、いくつかの SRF 標的遺伝子にポジティブフィードバック機構があることに着目し、利用可能なデータセットと転写因子結合予測から 35 の SRF 誘導因子候補に絞り込みを行いレポーター細胞で SRF 活性化因子をスクリーニングしたところ、 Fgf8 と Fgf17 が最も強い誘導活性を示した。著者らは脳に多く発現し、ヒト CSF では加齢に伴いその発現量が低下する Fgf17 に着目した。実際、 Fgf17 の老齢マウス脳への注入により OPC の細胞増殖や分化、長期記憶の定着が誘導された一方、抗 Fgf17 ブロッキング抗体を若齢マウス脳室内に注入すると認知機能が低下することが示された。これらの知見から、 Fgf17 が老化した脳のオリゴデンドロサイト機能を回復させる重要な標的であることが明らかにされた。

    CSF-1

    コロニー刺激因子 -1 を産生する血管内皮細胞と間葉系間質細胞は骨髄血管周囲ニッチ内で単球を維持する

    原題:

    Colony stimulating factor-1 producing endothelial cells and mesenchymal stromal cells maintain monocytes within a perivascular bone marrow niche

    著者:

    Takuo Emoto, Jessie Lu, Tharini Sivasubramaniyam, Hassaan Maan, Aniqa B. Khan, Amina A. Abow, Stephanie A. Schroer, Sharon J. Hyduk, Marwan G. Althagafi, Trevor D. McKee, Fred Fu, Shiva Shabro, Antigona Ulndreaj, Felix Chiu, Elvira Paneda, Shaun Pacheco, Tao Wang, Angela Li, Jean X. Jiang, Peter Libby, Mansoor Husain, Bo Wang, Barry B. Rubin, Myron I. Cybulsky, Clinton S. Robbins

    雑誌:

    Immunity , 55, 862-878 (2022)

    POINT!

    CSF-1/M-CSF はミエロイド系細胞の維持に重要な役割を担っている。しかし、 CSF-1 の先天性全身欠損( Csf1 op/op )は大理石骨病を引き起こし、間接的に造血に影響を及ぼす可能性がある。マウス骨髄の血管、血管周囲、骨芽細胞ポピュレーションを含む 2 つのシングルセル RNA-seq データセットを解析したところ、血管周囲の間質細胞、内皮細胞、骨芽細胞が Csf1 の主要な供給源であることが確認された。単球を維持する機能的に重要な CSF-1 の供給源を明らかにするために、骨髄の主要な Csf1 供給源である骨芽細胞系列細胞および間葉系間質細胞( MSC )の Csf1 を欠失させた。 Osx1 -Cre; Csf1fl/fl マウスでドキシサイクリンを投与せずに発生段階から Csf1 を欠損させた場合、 Csf1 op/op と同様の骨と血球系の表現型を示した一方、 8 週齢までドキシサイクリンを投与し、その後 Csf1 を欠損させた場合では、骨芽細胞および骨細胞、骨髄 Lepr+ MSC において Csf1 発現は約 70% 減少したが、骨髄、血液中の造血幹 / 前駆細胞( HSPC )や単球、リンパ球などには影響を及ぼさなかった。 Lepr -Cre; Csf1fl/fl マウスでは、 PDGFR 発現 MSC で Csf1 欠損が誘導されたが、血液、脾臓、骨髄での白血球には影響が観察されなかった。同様に、 Pdgfrb -CreERT2; Csf1fl/fl Nes -CreERT2; Csf1fl/fl マウス、 Lepr -Cre; Nes-CreERT2; Csf1fl/fl および Dmp1 -CreERT2; Csf1fl/fl マウスでも骨髄における単球に変化はみられなかった。一方、 8 週齢の Ubc -CreERT2; Csf1fl/fl マウスにタモキシフェン含有食を与えることで Csf1 を誘導性に全身で欠失させると、骨髄の単球系細胞の生存や分化、遊走、末梢のマクロファージ数などが低下した。骨の組織学的解析により単球の局在を詳細に調べたところ、類洞内皮細胞や Lepr 陽性の血管周囲 MSC の近くに存在することが明らかになった。実際、 Cdh5 -CreERT2; Csf1fl/fl マウスでは骨髄の Ly6Cint と Ly6C 単球が選択的に減少しており、内皮細胞由来の CSF-1 が Ly6C 細胞の生存を直接的に維持していることが示唆された。内皮細胞特異的 Csf1 欠損は、脾臓や血中の Ly6C 単球も減少させ、内皮細胞由来の CSF-1 が Ly6Chi → Ly6C 分化を制御することが示された。 Lepr -Cre; Cdh5-CreERT2; Csf1fl/fl マウスで Lepr+ MSC と内皮細胞で Csf1 を欠損させると、骨髄や血中の Ly6Chi 、 Ly6Cint 、 Ly6C 単球が減少した。以上のデータから、成体骨髄において内皮細胞由来の CSF-1 が Ly6C 単球の維持に重要である一方、内皮細胞と Lepr+ MSC は Ly6Chi 単球の維持に必要な CSF-1 の供給源であることが示唆された。さらに、 Bmx -CreERT2 を用いて Csf1 を動脈内皮細胞特異的に欠失させたマウスでは単球の数に影響を与えなかったことから、類洞内皮細胞が Ly6C 単球を維持するための機能的に重要な CSF-1 の供給源であることが明らかになった。また、内皮細胞特異的 Csf1 欠損マウスに腸管穿孔による腹膜炎を誘導したところ、敗血症生存率は同様であったが、体重減少が促進され、血中および骨髄における Ly6C 単球の回復が阻害された。以上の結果から、 Ly6C 単球が類洞内皮細胞の産生する CSF-1 によって維持され、 Ly6Chi 単球は内皮細胞と Lepr+ MSC の両方が産生する CSF-1 を必要ととする一方、骨芽細胞系列細胞由来の CSF-1 は単球の維持には重要でないことが明らかになった。

    TGF-β1

    老齢マウス骨折後の仮骨老化細胞は TGF-β1 を発現し骨折治癒を阻害する

    原題:

    Age-associated callus senescent cells produce TGF-β1 that inhibits fracture healing in aged mice

    著者:

    Jiatong Liu, Jun Zhang, Xi Lin, Brendan F. Boyce, Hengwei Zhang, Lianping Xing

    雑誌:

    J Clin Invest, 132: e148073 (2022)

    POINT!

    老化細胞( SC )は細胞老化関連分泌形質により炎症性サイトカインなどを産生し、隣接する細胞や SC 自身の機能に影響を与える。高齢者では一般的に骨折治癒が遅延するが、間葉系前駆細胞( MPC )の減少がその一因と考えられてきた。しかしながら、高齢者の骨折治癒に対する細胞老化の寄与については、まだ十分に研究されてはいなかった。本研究で著者らは、 4 ヶ月齢の若齢マウスと 20 ヶ月齢の高齢マウスを用いて骨折を誘導したところ、仮骨において若齢・老齢どちらでも老化マーカーの p16 、 p21 、 SA–β-gal および γ-H2AX の発現が増加することを見出した。すなわち、骨折後の仮骨において SC が急速に増加していることが明らかになった。 SC の抑制が骨折治癒を促進するかどうかを調べるため、老化細胞除去薬であるダサチニブとケルセチン( D+Q )を若齢および老齢マウス骨折後 1 、 3 、 5 、 7 日目に投与した。これにより、老齢マウスでのみ新生骨面積や骨強度が上昇することが確認された。老齢仮骨細胞馴化培地は若齢と比較して仮骨由来 MPC ( CaMPC )の増殖を阻害し、 D+Q によって抑制された。老齢仮骨 SC で発現している SASP 因子を qPCR により調べたところ、検討した 21 の SASP 因子のうち特に Tgfb1 が老齢仮骨の SASP 因子として最も高い発現量を示し、仮骨中の p16+TGF-β1+ 細胞数は若齢と比較して 25 倍多かった。また、仮骨の TGF-β1 タンパク質量は D+Q 投与により著明に低下した。著者らは、老齢マウス仮骨中の SC が過剰な TGF-β1 を産生し、仮骨 MPC の増殖を阻害して骨折の治癒を遅らせるのではないかと考え、 TGF-β 中和抗体を老齢マウス骨折後 1 、 3 、 5 、 7 日目の仮骨内に投与した。 TGF-β 中和抗体により、コントロールと比較して仮骨体積、軟骨・新生骨面積および骨強度が上昇し、仮骨中の CD45CD31CD105+ MPC および Ki67+ 増殖細胞の割合と数が有意に増加した。以上から、骨折は老齢マウスの仮骨において著しい細胞老化を引き起こし、 TGF-β1 を発現することで MPC を抑制することが明らかになり、老化細胞除去剤や TGF-β 中和抗体は高齢者の高齢者の骨折修復を促進する治療法として使用できる可能性が示された。

    IL-17

    IL-17誘導性のHIFαは線維芽細胞による免疫排除を介して抗PD-L1療法に対する抵抗性を発揮する

    原題:

    IL-17–induced HIF1α drives resistance to anti–PD-L1 via fibroblast-mediated immune exclusion

    著者:

    Xing Chen, Junjie Zhao, Tomasz Herjan, Lingzi Hong, Yun Liao, Caini Liu, Kommireddy Vasu, Han Wang, Austin Thompson, Paul L Fox, Brian R Gastman, Xiao Li, Xiaoxia Li

    雑誌:

    J. Exp. Med., 219 (6): e20210693 (2022)

    POINT!

    IL-17は固形腫瘍の予後不良に関連する因子の一つである。IL-17は、組織再生過程などでは炎症を惹起する。近年、腫瘍の微小環境ではこのサイトカインが免疫抑制的に作用することが明らかになった。皮膚腫瘍形成モデルのDMBA/TPA塗布マウスでは、腫瘍細胞は主に腫瘍関連線維芽細胞 (CAF) が形成する間質に被包される。著者らがこの腫瘍間質の解析を行ったところ、中にIL-17産生細胞が認められた。そこで、Il17rcf/fCol1a2CreERT2マウスに腫瘍を誘導した後にタモキシフェンを投与し、腫瘍におけるIL-17の意義を検討した。このマウスの腫瘍中では線維形成が減少し、抗PD-L1抗体への感受性が増加した。また、腫瘍内部へのグランザイムB+CD8+T細胞の浸潤は亢進していた。Il17rcf/fCol1a2CreERT2マウスのCD8+T細胞を中和抗体で除去すると、抗PD-L1抗体による治療効果は消失した。Il17rcf/fCol1a2CreERT2マウスに形成された腫瘍の解析の結果からHIF1αの発現低下に着目した。IL-17によるCAF刺激はAct1を介してHIF1αタンパク質を増加させた。Hif1aのmRNAにはAct1結合領域が存在し、これらの結合によりHIF1αタンパク質の翻訳が促進されることが示された。Hif1aアプタマーを作出し、腫瘍モデルマウスに投与したところ、アプタマー単独での腫瘍抑制効果は限定的であったものの、抗PD-L1抗体と共に投与された場合は腫瘍の増大を強力に抑制した。以上より、腫瘍内のIL-17シグナルはHIF1αを介して腫瘍間質を成長させ、さらにCD8+T細胞の浸潤を阻害することで病態を悪化させることが示された。

    ミクログリア

    ミクログリアによるCRH産生ニューロンの興奮性シナプスの刈り込みは生後間もない時期のストレスで阻害され成熟後の異常なストレス反応の原因となる

    原題:

    Early stress-induced impaired microglial pruning of excitatory synapses on immature CRH-expressing neurons provokes aberrant adult stress responses

    著者:

    Jessica L. Bolton, Annabel K. Short, Shivashankar Othy, Cassandra L. Kooiker, Manlin Shao, Benjamin G. Gunn, Jaclyn Beck, Xinglong Bai, Stephanie M. Law, Julie C. Savage, Jeremy J. Lambert, Delia Belelli, Marie-Eve Tremblay, Michael D. Cahalan, and Tallie Z. Baram

    雑誌:

    Cell Rep., 38, 110600 (2022)

    POINT!

    若年期に苦境におかれると、神経回路の発達に異常をきたし、青年期以降に異常なストレス反応を主徴とする精神・神経疾患を発症するリスクが高まる。しかし、若齢期のストレス環境 (ELA) が神経回路形成を制御するメカニズムは不明である。著者らは、新生仔マウスを巣材の少ない環境で飼育することによってストレスに晒した。これにより、視床下部室傍核の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (CRH)+細胞において興奮性シナプス (vGlut2+シナプス) が増加し、自発的な活動電位の発生が認められた。二光子顕微鏡を用いてシナプス刈り込みを行う細胞であるミクログリアを解析したところ、CRH+ニューロン近傍のミクログリア数はELAにより変化しなかったが、細胞突起の長さや運動性が低減した。電子顕微鏡観察により、ELAマウスではシナプスの貪食が減少することが明らかになった。このELAに伴う貪食像の減少はCRH+ニューロン特異的なイベントであった。次に、ミクログリアの貪食制御機構を検討した。貪食作用にはAxlやMerといった受容体型チロシンキナーゼが関与する。Ex vivoの実験でMer阻害剤UNC2025を加えた際、対照群の脳組織ではCRH+ニューロンの興奮性シナプスが増加した一方、ELAマウスの脳組織ではそのような増加は見られなかった。この結果から、ELAマウスの脳組織ではMer活性が既に低下していたためと考えられた。ELAマウスのミクログリアをGq-designer receptors exclusively activated by designer drugs (DREADD) 法により活性化すると、CRH+ニューロンの興奮性シナプスは減少した。ELAでは、副腎の重量が増すことがわかっているが、Gq-DREADD法によるミクログリアの活性化は、副腎重量増加を打ち消した。また、ELAマウスでは、成熟後もストレス反応が大きいが、Gq-DREADD法によりミクログリアを活性化することによって対照群と同等レベルに低減された。以上より、若齢期のストレス刺激はミクログリアの活性を抑制し、視床下部-副腎皮質系を活性化することで成熟後にも以上なストレス反応を引き起こすことが明らかになった。

    腸管免疫

    粘膜に常在する真菌は17型免疫応答を介して腸管のバリア機能と社会性を向上させる

    原題:

    Mucosal fungi promote gut barrier function and social behavior via Type 17 immunity

    著者:

    Irina Leonardi, Iris H. Gao, Woan-Yu Lin, Megan Allen, Xin V. Li, William D. Fiers, Meghan Bialt De Celie, Gregory G. Putzel, Rhonda K. Yantiss, Melanie Johncilla, Dilek Colak, and Iliyan D. Iliev

    雑誌:

    Cell, 185, 831-846 (2022)

    POINT!

    真菌は腸内微生物叢の重要な構成要素の一つであるとされているが、分布や機能には不明な点が多い。本研究で著者らは、まず、消化管の部位ごとに管腔中の常在真菌 (LUM) と粘膜に定着している真菌 (MAF) の解析をおこなった。胃、空腸、回腸、盲腸、結腸のいずれの部位でもLUMとMAFの構成は異なり、MAFの方が多様性に富んでいた。LUMには一過性と思われる菌種が多く、MAFには免疫原性の種、CandidaSaccharomycesSaccharomycopsisなどが多く認められ、腸管内で特定の免疫応答を誘導する菌種が腸管内に定着できると考えられた。DSS腸炎マウスにLUMまたはMAFを植菌したところ、LUMではマウスの致死率が改善しなかった一方でMAFでは改善が見られた。MAFを植菌したマウス (MUCマウス) の腸管上皮細胞では、免疫応答と細胞増殖に関わる遺伝子群が大きな変動を示し、バリア機能が向上することが確認された。MUCマウスの腸管粘膜固有層と腸間膜リンパ節ではTh17細胞が増加していた。このマウスのTh細胞ではIL-17A、IL-17F、IL-22の産生が増加していた。ILC3の数やサイトカイン産生には変化は見られなかった。これらの関与を確認するために、Il17a–/–マウスとIl22–/–マウスにDSSモデルとMAFの植菌を行なったところ、前者では対照群よりも生存率が微増した一方、後者では植菌によるバリア機能や生存率の上昇効果が認められなかった。IL-22産生Th17細胞のバリア機能への寄与を検証するために、Rag1–/–マウスにIl22+/–またはIl22–/–マウスのCD4+細胞を移入し、DSSモデルとMAFの植菌を行った。その結果、前者のマウスにおいて生存率が上昇したことから、これらの細胞の重要性が示唆された。著者らはこれらの真菌が感染防御に役立つかを検討した。MUCマウスではC. rodentium感染症が軽度であった。Il22–/–マウスで同様の感染実験をした場合はC. rodentiumの腸管への定着が多く感染症がより重度であった。腸管免疫と脳機能に相関があるという報告が近年あいついでなされていることから、MUCマウスの行動解析を行った。その結果、これらのマウスでは社会性が向上することが見出された。中枢神経系においてIL-17受容体は高いレベルで発現する一方、IL-22受容体の発現は高度ではなかった。MUCによる社会性の向上はIl22–/–マウスでも認められたが、神経特異的IL-17受容体欠損マウス (Il17raf/fBAF53b-Creマウス) では認められなかった。以上より、腸内真菌叢は、IL-22を介してバリア機能を、IL-17を介して社会性を向上させることが示された。

    FSH

    FSH阻害はアルツハイマー病マウスの認知機能を改善する

    原題:

    FSH blockade improves cognition in mice with Alzheimer’s disease

    著者:

    Jing Xiong, Seong Su Kang, Zhihao Wang, Xia Liu, Tan-Chun Kuo, Funda Korkmaz, Ashley Padilla, Sari Miyashita, Pokman Chan, Zhaohui Zhang, Pavel Katsel, Jocoll Burgess, Anisa Gumerova, Kseniia Ievleva, Damini Sant, Shan-Ping Yu, Valeriia Muradova, Tal Frolinger, Daria Lizneva, Jameel Iqbal, Ki A. Goosens, Sakshi Gera, Clifford J. Rosen, Vahram Haroutunian, Vitaly Ryu, Tony Yuen, Mone Zaidi, Keqiang Ye

    雑誌:

    Nature, 603, 470–476 (2022)

    POINT!

    高齢の女性ではアルツハイマー病(AD)の発症率が高く、認知機能は閉経移行期における内臓肥満蓄積やエネルギー代謝異常、骨量低下に伴って急激に悪化する。著者らは以前、抗体により卵胞刺激ホルモン(FSH)を阻害すると熱産生が促進され血清コレステロール値が低下して体脂肪が減少し、骨量が増加することを示した。本研究で著者らは、FSHがマウスの海馬や大脳皮質などの領域で神経細胞のFSH受容体に作用し、ADの特徴を引き起こすことを明らかにした。3種類のマウスモデル(Psen1M146Vノックイン変異とヒトAPPK670N/M671LおよびヒトMAPTP301Lのトランスジーンをホモ接合性に有する3xTgマウス、APPK670N/M671LPSEN1DE9からなるヒトのトランスジーンを持つAPP/PS1マウスおよびApp遺伝子に3つの変異(G601R、F606Y、R609H)がノックインされ、オリゴマー化しうるAβが発現するAPP-KIマウス)を用い、卵巣摘出やFSHリガンド投与によってADの特徴であるアミロイドβやタウの沈着、ニューロンのアポトーシス、認知機能低下などが誘導され、抗FSH抗体投与やAAV2-siFshrの定位注入による海馬選択的なFSH受容体発現抑制によってそれらの表現型が抑制されることを証明した。また、卵巣摘出は海馬ニューロンにおいて転写因子C/EBPβの発現を強く誘導し、それによりアミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断してアミロイドβを生成し、タウを切断して神経原線維変化を生じさせる酵素であるδ-セクレターゼであるアルギニンエンドペプチダーゼ(AEP)を活性化した。FSH抗体投与などによってFSHを阻害すると、卵巣摘出モデルマウスにおけるC/EBPβ-AEP/δセクレターゼ経路の活性化、APPとタウの切断、タウのリン酸化の増加が顕著に減少することが示された。以上の結果から、閉経期におけるADの増悪に血中FSHレベルの上昇が関与していることが示唆され、AD、肥満、骨粗鬆症、脂質異常症のすべてをFSH阻害剤で治療できる可能性が明らかにされた。

    肝性骨異栄養症

    肝-骨軸の異常が肝性骨異栄養症の進行に寄与する

    原題:

    Defects in a liver-bone axis contribute to hepatic osteodystrophy disease progression

    著者:

    Ke Lu, Tian-Shu Shi, Si-Yu Shen, Yong Shi, Hong-Liang Gao, Jing Wu, Xiang Lu, Xiang Gao, Huang-xian Ju, Wei Wang, Yi Cao, Di Chen, Chao-Jun Li, Bin Xue, Qing Jiang

    雑誌:

    Cell Metab, 34, 441–457 (2022)

    POINT!

    肝性骨異栄養症(HOD)は、原発性胆汁性肝硬変や原発性硬化性胆管炎などの慢性肝疾患に伴う代謝性骨疾患で、HOD患者の約75%が骨量減少をきたすことから、肝臓から骨への作用が示唆されているが、その詳しい分子機構は不明であった。HODの原因となるメカニズムを特定するために、著者らは質量分析法を用いてHODを伴う肝硬変患者と骨密度が正常な患者から得た肝臓組織で発現量を比較したところ、肝疾患の進行によりホスファターゼであるPP2Acのα触媒サブユニットの発現と活性が上昇することを見いだした。そこで、肝臓特異的PP2Acα欠損マウスを作製し、四塩化炭素(CCl4)投与による肝障害を誘発させたところ、PP2Acα欠損によりCCl4誘発性肝損傷に伴う骨形成低下および骨吸収上昇が抑制されることによって骨量が維持されることが明らかになった。肝損傷PP2Acα cKOマウスから血清を採取し、プロテオミクス解析により肝損傷によって発現変動する122のタンパク質が同定された。さらに、様々な観点から4つのタンパク質に絞られ、そのうちの1つであるレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)だけが肝臓由来であった。LCATはコレステロールを末梢組織から肝臓に戻す役割を担っているヘパトカインである。PP2Acα cKOマウスの骨量低下を防ぐためにLCATが必要かどうかをさらに調べるため、CCl4投与前にPP2Acα cKOマウスに肝臓を標的とするrAAV8-shLcatを注入したところ、コントロールマウスと同程度の骨量低下が観察された。すなわち、著者らのHODモデルにおいてPP2Acα欠損マウスのLCAT発現上昇が骨量低下の緩和に寄与していることが明らかとなった。実際にHOD患者の血清LCAT量と大腿骨頚部BMDの相関を調べたところ、血清LCAT量は大腿骨頚部BMDと正の相関を持つことが示唆された。また、リコンビナントLCATは骨芽細胞分化を促進し、破骨細胞分化を抑制する活性を示し、コレステロールを培地中に加えるとこの効果がキャンセルされた。以上の結果から、LCAT はコレステロール依存的に破骨細胞・骨芽細胞分化を制御することが示唆された。さらに、LCATによって骨組織から輸送されたコレステロールが損傷後の肝臓回復に関わることも明らかにされた。以上から、HODではPP2Acαの発現上昇によってLCATの発現低下が誘導されることで骨量減少や肝障害が進行することが示され、この経路を標的とすることで疾患の進行を改善できる可能性が示された。

    神経-骨細胞相互作用

    コリン作動性神経と骨格の相互作用は生後の成長と運動に伴う骨形成を促進する

    原題:

    A cholinergic neuroskeletal interface promotes bone formation during postnatal growth and exercise

    著者:

    Stephen Gadomski, Claire Fielding, Andrés García-García, Claudia Korn, Chrysa Kapeni, Sadaf Ashraf, Javier Villadiego, Raquel del Toro, Olivia Domingues, Jeremy N. Skepper, Tatiana Michel, Jacques Zimmer, Regine Sendtner, Scott Dillon, Kenneth E.S. Poole, Gill Holdsworth, Michael Sendtner, Juan J. Toledo-Aral, Cosimo De Bari, Andrew W. McCaskie, Pamela G. Robey, Simón Méndez-Ferrer

    雑誌:

    Cell Stem Cell, 29, 528–544 (2022)

    POINT!

    骨におけるコリン作動性シグナルの役割はほとんどわかっていなかった。交感神経と副交感神経は通常、神経伝達物質としてノルエピネフリンとアセチルコリン(ACh)をそれぞれ使用する。しかし、一部の胚性交感神経ニューロンはコリン作動性の特徴を示すが、その頻度は徐々に減少し、出生までに交感神経細胞の約4%になる。このような初期のコリン作動性交感神経ニューロンが、出生後にコリン作動性になる交感神経ニューロンと重なるかどうかは不明であった。この交感神経ニューロンの「コリン作動性スイッチ」は、マウスでは生後数週間の間に起こる。さらに、骨に対するコリン作動性神経線維の役割はほとんど不明であった。Neurturin(NRTN)のGDNFファミリー受容体α2(GFRα2)への結合は、コリン作動性神経細胞の発達と生存を促進することが知られていることから、著者らはGFRα2欠損マウスをコリン作動性神経欠損のモデルとして使用した。コリン作動性線維の起源を明らかにするために、新生児マウスに6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)を投与し、生後のコリン作動性スイッチの前に交感神経線維を消失させた。これらのマウスの成体では、大腿骨と頭蓋骨でノルアドレナリン作動性線維とコリン作動性線維が同様に減少した。すなわち、骨のコリン作動性線維が交感神経系に由来することを示唆している。また、これまでの研究でIL-6ファミリーがコリン作動性遺伝子発現を促進することが示唆されていた。著者らはin vivoでのIL-6の産生源とコリン作動性スイッチを活性化する可能性を検討するため、生後3日目の四肢における近接ライゲーションアッセイを行ったところ、骨膜付近の主に隣接する骨格筋に高いIL-6発現がみとめられた。生後6週間IL-6阻害剤を投与したマウスやIl6/マウスの大腿骨と頭蓋骨には、ノルアドレナリン作動性神経線維が正常に存在していた一方、コリン作動性神経線維が顕著に減少したことから、IL-6が生体内でコリン作動性スイッチを促進することが示唆された。また、骨芽細胞系列細胞は骨および骨髄においてコリン作動性神経シグナルを伝達し増幅している可能性も示された。さらに、Gfra2/マウスでは特にメスの脛骨において、皮質骨量、皮質骨厚および骨梁厚などが減少し、3点曲げ試験での剛性と強度も低下していた。これらのマウスでは骨形成が低下した一方、骨吸収は変化していなかった。これらのマウスの骨細胞は、細胞形態の異常や樹状突起の減少、骨細胞数の減少に加え、Mmp14発現低下とSost発現上昇を示し、トレッドミル運動によるSost発現低下に抵抗性を示した。トレッドミル運動を行ったGfra2/マウスのスクレロスチンを抗体により阻害すると、骨形成速度、骨強度、骨梁厚などが正常化したことから、Gfra2/マウスの骨減少症におけるスクレロスチンの重要性が明らかにされた。近接ライゲーションアッセイにより、骨のコリン作動性神経線維で最も高いNRTN発現が観察されたことから、これらの神経線維は骨細胞でNRTNシグナルを活性化し、その欠如が生体内のGFRα2発現骨細胞の異常を引き起こす可能性が示唆された。実際、新生仔での6-OHDA投与でも成体の骨細胞数および樹状突起が減少し、これはNrtn/マウスでも同様の表現型であったことから、NRTN-GFRα2シグナルが骨細胞の生存を促進していることが示唆された。次に著者らは、適度な運動によって骨髄のコリン作動性神経線維が顕著に増加し、海綿骨量などが上昇した一方、生後早期の交感神経遮断により運動に対する適応がキャンセルされることを示した。さらに、運動による交感神経コリン作動性活性がin vivoで骨芽細胞系列細胞に伝わるかどうかを検討したところ、運動したマウスではChATで標識される骨芽前駆細胞が増殖し、骨芽前駆細胞や骨細胞でACh濃度が増加したが、IL-6阻害したマウスではいずれも観察されなかった。適度な運動は野生型マウスの骨梁幅を上昇させたが、Gfra2/マウスやIL-6阻害を行ったマウスではキャンセルされた。これらの結果は、IL-6が生後発育期のコリン作動性スイッチを駆動するだけでなく、身体活動に応じて骨格のコリン作動性調節を強化する役割を担っていることを示唆している。これらの結果から、コリン作動性神経と骨細胞の相互作用が、骨同化作用を通じて骨格形成とターンオーバーを制御していることが明らかになった。

    骨折治癒

    仮骨の老化細胞から分泌されるTGF-β1により老齢マウスの骨折治癒が阻害される

    原題:

    Age-associated callus senescent cells produce TGF-β1 that inhibits fracture healing in aged mice

    著者:

    Jiatong Liu, Jun Zhang, Xi Lin, Brendan F. Boyce, Hengwei Zhang and Lianping Xing

    雑誌:

    J. Clin. Invest., 132: e148073 (2022)

    POINT!

    骨折治癒の初期〜中期において、損傷部位の周囲に線維軟骨と硝子軟骨から成るsoft callus (軟仮骨)が形成される。この時、mesenchymal progenitor cells (MPCs)が仮骨に集積・増殖し、骨軟骨細胞へ分化することにより骨折治癒が進行する。この研究では、仮骨中の老化細胞がMPCsの増殖を阻害し、骨折治癒を遅延させることを明らかにした。まず、4ヶ月齢の若齢マウスと20ヶ月齢の老齢マウスの骨折モデルにおいて、仮骨中の老化マーカーの変化をqPCRおよび組織染色にて解析し、老齢マウスでは損傷後3~14日の老化マーカーの発現が有意に上昇していることを見出した。そこで、骨折モデルにおいてダサチニブおよびケルセチン投与により老化細胞を除去すると、老齢マウスの骨折治癒が促進された。また、老齢マウス仮骨の培養上清をcallus-derived MPCs (CaMPCs)に添加したところ、CaMPCsの増殖が抑制された。筆者らは仮骨中のSASP (senescence-associated secretory phenotype)に注目し、仮骨に含まれるSASPをqPCRにて測定したところ、老齢マウスの仮骨ではTgfb1Il1aCxcl1が高発現しており、仮骨の培養上清にTGF-β中和抗体を添加すると、CaMPCsの増殖が回復することも明らかになった。さらに、骨折モデルにおいて損傷後3~14日の仮骨ではTGF-β1が増加しており、TGF-β中和抗体の投与により骨折治癒が促進されることを見出した。これらの結果から、老齢マウスではcallus中の老化細胞から分泌されるTGF-β1により、MPCsの増殖が抑制されていると結論づけられた。老化細胞を標的としたsenolytic drugs (老化細胞死誘導薬)は以前から注目されているが、細胞除去ではなく細胞による効果を減弱する効果ももたらすことがわかった。特に本研究においては高齢者の骨折修復の新たな標的として、TGF-β1シグナルが有効である可能性が示された。

    石灰化パラドックス

    加齢骨基質由来細胞外小胞は石灰化パラドックスのメッセンジャーとして作用する

    原題:

    Aged bone matrix-derived extracellular vesicles as a messenger for calcification paradox.

    著者:

    Zhen-Xing Wang, Zhong-Wei Luo, Fu-Xing-Zi Li, Jia Cao, Shan-Shan Rao, Yi-Wei Liu, Yi-Yi Wang, Guo-Qiang Zhu, Jiang-Shan Gong, Jing-Tao Zou, Qiang Wang, Yi-Juan Tan, Yan Zhang, Yin Hu, You-You Li, Hao Yin, Xiao-Kai Wang, Ze-Hui He , Lu Ren, Zheng-Zhao Liu, Xiong-Ke Hu, Ling-Qing Yuan, Ran Xu, Chun-Yuan Chen, Hui Xie

    雑誌:

    Nat Commun.,13: 1453, doi: 10.1038/s41467-022-29191-x. (2022)

    POINT!

    骨髄間葉系幹細胞(BMSCs)の脂肪細胞分化は、加齢や更年期による骨髄の脂肪化や骨粗鬆症に寄与している。また、血管石灰化は骨粗鬆症に伴って発症することが多く、その病態形成機序には骨形成との類似点も多いことが指摘されている。このように、骨と血管とのあいだでミネラル化が相反する現象は「石灰化パラドックス」と呼ばれているが、その詳細なメカニズムは不明であった。著者らは、まず、高齢者および若年者から単離した骨基質由来細胞外小胞(B-EV)の性状解析や、Dmp1iCre ; Cd63em(loxp-mCherry-loxp-eGFP)3マウスの骨および血管組織の解析から、B-EVの大部分は骨細胞由来であり、骨基質から血管に輸送されることを明らかにした。次に、BMSCおよび血管平滑筋細胞(VSMC)に、若齢マウス骨基質由来EV (YB-EVs)または老齢マウス骨基質由来EV(AB-EVs)を添加したところ、AB-EVsがBMSCに対しては脂肪形成を促進させ、血管平滑筋細胞に対しては石灰化形成を促進させることを明らかにした。マウスモデルを用いたin vivo実験では、AB-EV投与により骨形成が低下し骨髄の脂肪化が促進すること、ビタミンD3誘導性の血管石灰化が増悪することが示された。また、骨吸収阻害剤であるアレンドロン酸(ALE)を投与すると、AB-EVsの放出が抑制され、加齢や卵巣摘出による骨形成の低下や骨髄の脂肪化が改善することが明らかとなった。ビタミンD3を投与した老齢マウスでも、ALE投与によって、卵巣摘出術による血管石灰化が改善した。さらに、miRNAの網羅解析および機能解析により、AB-EVに濃縮されたmiR-483-5pとmiR-2861が、BMSCの脂肪細胞分化の促進、血管平滑筋細胞の石灰化の増悪にそれぞれ必須であることが明らかになった。最後に、miR-483-5pあるいはmiR-2861を阻害したAB-EVsを若齢マウスに移植することで、miR-483-5pが骨形成の低下および骨髄の脂肪化を促進させること、miR-2861が血管石灰化の増悪に関与させることが明らかになった。以上より、AB-EVを介した石灰化パラドックスの新たなメカニズムが解明された。

    Small osteoblast vesicles (SOVs)

    骨芽細胞由来の細胞外小胞は骨形成期から骨吸収期への転換を誘導する

    原題:

    Osteoblast-derived vesicles induce a switch from bone-formation to bone-resorption in vivo.

    著者:

    Maki Uenaka, Erika Yamashita, Junichi Kikuta, Akito Morimoto, Tomoka Ao, Hiroki Mizuno, Masayuki Furuya, Tetsuo Hasegawa, Hiroyuki Tsukazaki, Takao Sudo, Keizo Nishikawa, Daisuke Okuzaki, Daisuke Motooka, Nobuyoshi Kosaka, Fuminori Sugihara, Thomas Boettger, Thomas Braun, Takahiro Ochiya, Masaru Ishii

    雑誌:

    Nat. Commun., 13:1066, doi: 10.1038/s41467-022-28673-2. (2022)

    POINT!

    骨のリモデリングは、骨を吸収する破骨細胞と骨を形成する骨芽細胞によって制御されている。骨吸収と骨形成は、断続的にカップリングを行うことで恒常性を保っている。骨吸収から骨形成への移行に関連する因子はこれまで報告されているが、骨形成期から骨吸収期へ転換する分子機序の全容は解明されていない。著者らは多光子顕微鏡を用いた高解像度の生体内イメージングを行うことにより、マウスの骨芽細胞はSOVs(small osteoblasts vesicles)と呼ばれる細胞外小胞を分泌し、取り込むことを発見した。In vitroにおける骨芽細胞のSOVs処理は骨芽細胞分化を抑制し、さらにRANKLの発現を増強することで、破骨細胞の分化を促進した。SOVsが骨芽細胞分化を抑制する機序を明らかにするために、筆者らは次世代miRNAシークエンス解析を行い、SOVsはmiR-143-3pを豊富に持つことを示した。さらにMC3T3E1細胞へのmiR-143-3pの移入は骨芽細胞の転写因子であるRunx2Sp7の発現を抑制した。また、著者らは公共データベース(TargetScan)を用いて解析することで、miR-143-3pの標的遺伝子として、Runx2Sp7の発現を制御しているCbfb(core-binding factor b)を同定した。以上のことから、SOVsを介した細胞間の相互作用は、骨代謝における骨形成期から骨吸収期への移行に影響を与える重要な因子と考えられる。

    アセチルコリン

    B細胞由来のアセチルコリンが定常状態および緊急事態の造血を制限する

    原題:

    B lymphocyte-derived acetylcholine limits steady-state and emergency hematopoiesis

    著者:

    Maximilian J. Schloss, Maarten Hulsmans, David Rohde I-Hsiu Lee, Nicolas Severe, Brody H. Foy, Fadi E. Pulous, Shuang Zhang, Konstantinos D. Kokkaliaris, Vanessa Froderman, Gabriel Courties, Chongbo Yang, Yoshiko Iwamoto, Anders Steen Knudsen, Cameron S. McAlpine, Masahiro Yamazoe, Stephen P. Schmidt, Gregory R. Wojtkiewicz, Gustavo Santos Masson, Karin Gustafsson, Diane Capen, Dennis Brown, John M. Higgins, David T. Scadden, Peter Libby, Filip K. Swirski, Kamila Naxerova and Matthias Nahrendorf

    雑誌:

    Nat Immunol. 23: 605-618. (2022)

    POINT!

    自律神経は、交感神経と副交感神経を介して生体の機能を調整している。骨髄では、交感神経(アドレナリン作動性)は造血を促進するが、副交感神経(アセチルコリン作動性)と造血の関わりは不明であった。筆者らは、B細胞が副交感神経系の神経伝達物質であるアセチルコリンの重要な供給源であり、造血を抑制することを明らかにした。まず、アセチルコリン合成酵素choline acetyltransferase (Chat)を持つ骨髄細胞を調べると、ほぼB細胞であった。そこでB細胞特異的にChatを欠損したCd19creChatfl/flマウスを解析すると、B細胞のアセチルコリン分泌量が低下するとともに、白血球造血が上昇していた。次に、アセチルコリン受容体cholinergicα7 nicotinic receptor (Chrna7)を発現している細胞をシングルセルRNA-seqで検索すると、leptin receptor+ (LepR+)間質細胞などであり、間質細胞特異的にChrna7を欠損させたNestincreChrna7fl/flマウスは、Cd19creChatfl/flマウスと同様の所見が見られた。すなわち、B細胞由来のアセチルコリンが間質細胞に作用して造血を抑制していることが示された。さらに、動脈硬化や心筋梗塞などの心血管系疾患モデルでも、Cd19creChatfl/flマウスでは病変部の炎症性骨髄細胞が増加していた。加えて、心筋梗塞患者のコホートでは、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤であるドネペジル服用群で梗塞後の白血球の増加が少ないこと、またマウスの心筋梗塞モデルでも、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤投与により炎症性骨髄細胞の増加が抑えられることから、アセチルコリンは定常時のみならず緊急時にも造血を抑制しており、このメカニズムの解明は新たな治療法につながりうると考えられた。

    キメラ抗原受容体

    CD4陽性CAR T細胞は白血病寛解者で長期に維持される

    原題:

    Decade-long leukaemia remissions with persistence of CD4+ CAR T cells

    著者:

    J. Joseph Melenhorst, Gregory M. Chen, Meng Wang, David L. Porter, Changya Chen, McKensie A. Collins, Peng Gao, Shovik Bandyopadhyay, Hongxing Sun, Ziran Zhao, Stefan Lundh, Iulian Pruteanu-Malinici, Christopher L. Nobles, Sayantan Maji, Noelle V. Frey, Saar I. Gill, Lifeng Tian, Irina Kulikovskaya, Minnal Gupta, David E. Ambrose, Megan M. Davis, Joseph A. Fraietta, Jennifer L. Brogdon, Regina M. Young, Anne Chew, Bruce L. Levine, Donald L. Siegel, Cécile Alanio, E. John Wherry, Frederic D. Bushman, Simon F. Lacey, Kai Tan & Carl H. June

    雑誌:

    Nature. 602: 503-509. (2022)

    POINT!

    キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、次世代のがん治療法として注目され、2010年に実施された第一相試験において慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対し投与された。筆者らは、CAR T細胞治療を受け、寛解に至ったCLL患者2名を対象として、末梢血におけるCAR T細胞および免疫細胞の量的・質的変動を10年に渡り調査した。CAR T細胞の投与後3年目以降、B細胞はほとんど検出されなかった。CAR T細胞は生体内で10年間維持されていた。長期間維持されるCAR-T細胞の大部分は活性化CD4 T細胞であり、高い増殖能と細胞障害活性を持つことが示唆された。CAR T細胞移入後早期では、CD8陽性CAR T細胞だけでなく、CARを発現するγδT細胞の一過的な増殖が認められた。これらの予期しないCAR-T細胞集団の変遷と細胞特性から白血病の長期寛解に関する重要な示唆が与えられた。

    急性骨髄性白血病

    キヌレニンによる骨芽細胞のセロトニン受容体シグナルが急性骨髄性白血病を引き起こす

    原題:

    Subversion of serotonin-receptor signaling in osteoblasts by kynurenine drives Acute Myeloid Leukemia

    著者:

    Marta Galán-Díez, Florence Borot, Abdullah Mahmood Ali, Junfei Zhao, Eva Gil-Iturbe, Xiaochuan Shan, Na Luo, Yongfeng Liu, Xi-Ping Huang, Brygida Bisikirska, Rossella Labella, Irwin Kurland, Bryan L. Roth, Matthias Quick, Siddhartha Mukherjee, Raul Rabadán, Martin Carroll, Azra Raza, Stavroula Kousteni

    雑誌:

    Cancer Discov, doi: 10.1158/2159-8290.CD-21-0692. (2022)

    POINT!

     腫瘍細胞による微小環境のリモデリングは、がんの成長を促進する経路を活性化する。著者らはこれまでの研究で、セロトニンシグナル阻害による骨芽細胞数の維持がマウス白血病モデルにおける生存期間を延長させることを示していた。本研究では、マウスモデルや患者由来細胞の異種移植、急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)患者サンプルを用いて、AMLが末梢のセロトニンシグナルを利用して、骨内膜ニッチを有利に再構築していることを明らかにした。

     間歇PTH投与による骨芽細胞増殖促進ではマウスAMLモデルにおける致死率を改善させることができず、骨芽細胞数ではなくセロトニン受容体シグナルの重要性が明らかとなったことから、骨芽細胞で発現するセロトニン受容体HTR1Bに着目した。Htr1b–/–マウスや骨芽細胞特異的HTR1B欠損マウスではAMLモデルにおける病態進行が著明に改善した一方、選択的HTR1B受容体アンタゴニストSB224289投与では部分的な改善しかみとめられなかったことから、セロトニンとは異なるリガンドが骨芽細胞のHTR1B受容体に作用してAML進行に関わる可能性が示された。そこで著者らは、初代ヒト骨芽細胞とヒトAML細胞株の単独または共培養上清のメタボロームプロファイリングからキヌレニン(Kyn)を同定した。Kynはセロトニンと同様にトリプトファン(Trp)からIDO1などにより変換される。実際にMDSからAMLに進行した患者のそれぞれのステージおける骨髄中のKyn/Trp比や骨髄単核細胞でのIDO1発現はMDSからAMLへの疾患の重症度の進行に伴って上昇することが示された。また、KynはHTR1Bの部分アゴニストであり、HTR1Bシグナルを活性化できることも明らかにされた。さらに、白血病細胞においてIDO1を欠失させると、AMLモデルでの病態進行を著しく抑制し、血清Kynレベルを低下させ、生存期間を延長させた。さらに著者らは、AML細胞株と共培養したヒト初代骨芽細胞において単独培養と比較して発現が上昇した炎症性分子のうち、急性期タンパク質である血清アミロイドA1(SAA1)が、AML細胞株でのIDO1発現を上昇させることを同定した。Kyn刺激やAML細胞株共存培養はマウス骨芽細胞におけるSaa3(マウスSAA3はヒトSAA1のオルソログである)の発現を上昇させた一方、Htr1b–/–骨芽細胞ではSaa3発現を変化させなかったことから、AML細胞から分泌されるKynがHTR1B依存的に骨芽細胞のSAA発現を上昇させることが示された。さらに、NSGマウスに患者由来AML細胞を移植するモデルに対し、シタラビン(Ara-C)単独、IDO1選択的競合阻害剤エパカドスタット単独、両薬剤併用を3週間行った。治療開始後22日目の評価では、Ara-C単独もしくはエパカドスタット単独投与マウスでは病態が進行していたが、併用療法はAML細胞数を有意に減少させた。すなわち、IDO1阻害はこのモデルにおいてAra-Cに対する反応を増強することがわかった。

     以上の結果から、白血病細胞は骨芽細胞におけるセロトニンシグナルを操作し、Kyn-HTR1B-SAA-IDO1シグナルを利用して、自己増殖性の炎症性ニッチを誘導することが明らかとなった。この結果は、ニッチを標的としたAMLに対する治療法として、がん治療の新しい道を開くことが期待される。

    オステオカルシン

    胎生期のオステオカルシンシグナルがマウスの生涯における副腎ステロイド産生と恒常性を決定する

    原題:

    Embryonic osteocalcin signalling determines lifelong adrenal steroidogenesis and homeostasis in the mouse

    著者:

    Vijay K. Yadav, Julian M. Berger, Parminder Singh, Perumal Nagarajan, Gerard Karsenty

    雑誌:

    J Clin Invest, 132: e153752 (2021)

    POINT!

     グルココルチコイド(GC)は多様な臓器での遺伝子発現を制御することにより、多くの生理的プロセスに影響を与える生体恒常性の重要な調節因子である。オステオカルシンはGCによって転写抑制されることが知られており、GCが骨に与える影響はよく知られているが、骨が副腎機能を調節することは知られていなかった。本研究で著者らは、少なくともマウスとサルにおいて骨と副腎は骨から副腎へのフィードフォワード活性化と副腎から骨へのフィードバック阻害からなる古典的な内分泌系を構成し、オステオカルシンが副腎ステロイド産生を促進することを明らかにした。

     成体マウスやアカゲザルにオステオカルシンを投与すると、副腎皮質ホルモンの血中濃度が急速に上昇したことから、副腎における遺伝子発現を調べたところ、副腎ステロイド生成酵素だけでなく副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)受容体をコードするMc2rやアンジオテンシンII受容体遺伝子の発現が上昇し、オステオカルシンがACTHとアンジオテンシンのシグナル伝達を促進している可能性が示唆された。副腎におけるオステオカルシン受容体発現をqPCRやRNAscopeにより調べたところ、Gprc6aではなくGpr158が皮質全体に発現していることが示された。実際に、副腎皮質細胞を含むSf1発現細胞特異的Gpr158欠損(Gpr158Sf1–/–)マウスでは副腎皮質ホルモンレベルが低下しており、オステオカルシンを投与してもレスキューされなかった。一方、Ocn+/–母マウスから生まれたOcn–/–マウスはコントロールと比較して副腎皮質ホルモン値に変化はなかったが、Ocn–/–母マウスから生まれたOcn–/–マウスは、8、24、52のいずれの週齢でも副腎皮質ホルモン量が低く、副腎におけるステロイド生成酵素の発現が減少していた。さまざまな実験結果から、著者らは胎生期のオステオカルシンへの曝露が出生後の副腎皮質ホルモン産生に影響を与えることを明らかにした。さらに、成体では副腎のホルモンレベルが低下しただけでなく、副腎ステロイドによって制御されている生理的機能も同時に阻害されており、Gpr158Sf1–/–マウスやOcn–/–母マウスから生まれたOcn–/–マウスでは、血圧低下や血中K+濃度上昇が、逆に、血中低カルボキシル化オステオカルシン量が上昇する骨芽細胞特異的Esp欠損マウスでは血圧上昇と血中K+濃度低下が観察された。Gpr158Sf1–/–胚とOcn–/–母マウスのOcn–/–胚の副腎皮質では、細胞増殖の有意な低下や、E16.5での副腎重量低下、Sf1およびその標的遺伝子Cyp11b2Cyp11b1の発現低下が、逆に骨芽細胞特異的Esp欠損マウスでは副腎重量の上昇が確認された。以上の結果から、発生過程におけるオステオカルシンシグナルが副腎の成長に寄与し、その効果は成体期を通じて持続するとことがわかった。

     副腎皮質はACTHによって制御されていることから、著者らは、オステオカルシンが視床下部-下垂体-副腎系による制御とは無関係に副腎の発生とステロイド産生を制御する可能性を検討した。オステオカルシンを母マウスに投与したMc2r–/–胚の副腎はコントロールと比較してより大きく、出産時のMc2r–/–仔マウスの致死を部分的にレスキューできたことから、オステオカルシンがACTHシグナルとは無関係に、もしくはACTH受容体の下流で、副腎の発生と分化に対する機能を有していることが示唆された。以上から、骨由来のオステオカルシンが胎児の副腎の発生を調節するフィードフォワード活性化が明らかになった。

    ビスフォスフォネート

    窒素含有ビスフォスフォネートは肺に作用し、肺胞マクロファージにおけるメバロン酸経路を阻害する

    原題:

    Bisphosphonate drugs have actions in the lung and inhibit the mevalonate pathway in alveolar macrophages

    著者:

    Marcia A Munoz, Emma K Fletcher, Oliver P Skinner, Julie Jurczyluk, Esther Kristianto, Mark P Hodson, Shuting Sun, Frank H Ebetino, David R Croucher, Philip M Hansbro, Jacqueline R Center, Michael J Rogers

    雑誌:

    Elife, 10: e72430 (2021)

    POINT!

     ビスフォスフォネート系薬剤は骨を標的とし、骨吸収抑制薬として世界的に使用されている。窒素含有ビスフォスフォネートは破骨細胞のメバロン酸経路を阻害することで作用するが、これまでの研究で肺炎による死亡リスクも減少させることが示唆されていた。本研究で著者らは、蛍光標識したゾレドロン酸がin vivoで肺胞マクロファージや腹腔マクロファージに取り込まれることを明らかにした。さらに、マウスにゾレドロン酸を500 µg/kgで単回投与し48時間後に解析すると、肺胞マクロファージや腹腔マクロファージのメバロン酸経路が阻害され、メバロン酸経路代謝物の蓄積とタンパク質のプレニル化阻害が誘導されることがわかった。ゾレドロン酸の単回投与により、LPS刺激によって誘導される気管支肺胞液中のサイトカインとケモカイン産生量が上昇したが、著者らはタンパク質プレニル化の低下により、NLRP3インフラマソームの形成が促進されたことが原因であると考えている。以上の結果は窒素含有ビスフォスフォネートが骨にのみ作用するという長年の通説を覆し、肺における感染に対する免疫反応を高める可能性が示唆された。

    Rubicon

    骨芽細胞におけるオートファジーの活性化によるNOTCH細胞内ドメインの分解は、骨芽細胞の分化を促進し骨粗鬆症を軽減する

    原題:

    Degradation of the NOTCH intracellular domain by elevated autophagy in osteoblasts promotes osteoblast differentiation and alleviates osteoporosis

    著者:

    Gota Yoshida, Tsuyoshi Kawabata, Hyota Takamatsu, Shotaro Saita, Shuhei Nakamura, Keizo Nishikawa, Mari Fujiwara, Yusuke Enokidani, Tadashi Yamamuro, Keisuke Tabata, Maho Hamasaki, Masaru Ishii, Atsushi Kumanogoh, Tamotsu Yoshimori

    雑誌:

    Autophagy, doi: 10.1080/15548627, (2022)

    POINT!

    オートファジーは、細胞が持つ細胞内のたんぱく質を分解するための機構であり、生体内の恒常性維持に必須である。また、オートファジーは骨芽細胞や破骨細胞の分化や分泌を制御することで骨代謝に関わっており、この機能不全は骨代謝の破綻につながる可能性がある。しかし、オートファジーと骨関連疾患との関係は不明であった。筆者らは、オートファジーの抑制因子であるRubiconを骨芽細胞特異的に欠損させたマウス(rubcnflox/flox; Sp7/Osterix-Cre)を作製し、骨芽細胞におけるオートファジーの活性化が骨形成を促進することを見出した。rubcnflox/flox; Sp7/Osterix-Creマウスは大腿骨の海綿骨量が増加しており、骨粗鬆症モデルでは骨粗鬆症が改善した。この所見と一致して、骨芽細胞におけるRubiconの欠損は分化とミネラル化を促進し、Runx2Bglap/Osteocalcinといった骨芽細胞の機能に関わる重要な転写因子の発現は上昇した。さらに、骨芽細胞におけるRubiconの欠損により、NOTCH細胞内ドメイン(NICD)のオートファジー分解が促進し、骨芽細胞の分化を負に制御するNOTCHシグナル伝達経路が抑制されることがわかった。以上の知見から、RubiconやNICDのオートファジー分解を標的とした薬剤が、加齢に伴う骨粗鬆症や骨折に対する新規治療につながる可能性が示された。

    セプトクラスト

    間葉系ストロマ細胞由来セプトクラストは、発生期骨形成および骨折治癒時における軟骨吸収を担う

    原題:

    Mesenchymal stromal cell-derived septoclasts resorb cartilage during developmental ossification and fracture healing

    著者:

    Kishor K. Sivaraj, Paul-Georg Majev, Hyun-Woo Jeong, Backialakshmi Dharmalingam, Dagmar Zeuschner, Silke Schröder, M. Gabriele Bixel, Melanie Timmen, Richard Stange, Ralf H. Adams

    雑誌:

    Nat. Commun., 13: 571, (2022)

    POINT!

    骨の発生、リモデリング、そして骨折治癒時には、細胞の残骸および細胞外マトリックスが適切に除去される必要がある。骨基質の吸収は破骨細胞が担うが、軟骨基質の吸収を担う細胞種に関しては議論があり、統一した見解が得られていない。本論文で著者らは、間葉系ストロマ細胞に由来するfatty acid binding protein 5 (FABP5)陽性の「セプトクラスト」が、軟骨基質の分解と軟骨細胞の貪食に寄与する可能性を見出した。セプトクラストの存在は以前から形態学者らによって報告されていたが、著者らはFABP5陽性細胞のシングルセル解析をおこなうことで、はじめてセプトクラストの遺伝子発現情報を取得し、実体のある1つの細胞種として提示した。細胞系譜解析の結果から、セプトクラストは血球系でなく間葉系由来であることが示された。セプトクラストの分化には血管内皮細胞由来のNotchリガンドDelta-like 4 (DLL4)が必須であり、血管内皮特異的DLL4欠損マウスではセプトクラストの数が減少し、軟骨の吸収障害が生じた。セプトクラストの数は加齢に伴い減少したが、骨折時には血管新生に伴い再出現し、骨折治癒に寄与した。以上より、間葉系由来セプトクラストが、発生期骨形成および骨折治癒時に軟骨吸収を担う細胞種である可能性が示唆された。

    Auto-GVHD

    免疫回復途上の胸腺における髄質の再生不全は免疫寛容の喪失を引き起こし、レシピエントのauto-GVHD発症の引き金となる

    原題:

    Failures in thymus medulla regeneration during immune recovery cause tolerance loss and prime recipients for auto-GVHD

    著者:

    Abdullah S. Alawam, Emilie J. Cosway, Kieran D. James, Beth Lucas, Andrea Bacon, Sonia M. Parnell, Andrea J. White, William E. Jenkinson, Graham Anderson

    雑誌:

    J. Exp. Med., 219: e20211239, (2022)

    POINT!

    胸腺はT細胞の負の選択を介して免疫寛容に重要な役割を担う。骨髄移植ではHLA型が一致する場合でもauto-GVHDと呼ばれる自己免疫病態を呈することがある。そこで、auto-GVHDの病態に胸腺が果たす役割を調べるため、マウスの骨髄移植モデルを用いて、T細胞産生の回復と中枢性免疫寛容の回復をそれぞれ評価した。その結果、移植後の胸腺では、T細胞全体の産生は早期に回復する一方で制御性T細胞の産生は長期にわたって回復しないこと、T細胞の負の選択が阻害され、産生されたT細胞には自己反応性を示すものが存在することが判明した。さらに、骨髄移植は胸腺髄質上皮細胞(mTEC)および樹状細胞に長期的かつ深刻なダメージを与えることが明らかになった。移植後に産生されたT細胞の免疫寛容は必ずしも担保されないため、骨髄移植後のT細胞産生能力の回復と中枢性寛容の回復は別々に考察すべきである。以上より胸腺髄質の免疫回復期における重要性および骨髄移植後のauto-GVHD治療標的としての可能性が浮き彫りになった。

    宇宙貧血

    長期宇宙滞在における貧血には赤血球溶血が関与している

    原題:

    Hemolysis contributes to anemia during long-duration space flight

    著者:

    Guy Trudel, Nibras Shahin, Timothy Ramsay, Odette Laneuville, Hakim Louati

    雑誌:

    Nat Med, 28: 59-62, (2022)

    POINT!

    長期間宇宙に滞在した宇宙飛行士は「宇宙貧血」といわれる貧血を経験することが知られている。今後、宇宙産業の進展に伴って長期間宇宙に滞在する機会が増えると考えられ、滞在時に宇宙貧血に適切に対処する必要がある。しかしながら、宇宙貧血の詳細なメカニズムは明らかになっていない。そこで、宇宙貧血の本態に迫るべく、筆者らは国際宇宙ステーションに約6ヶ月間滞在した14人の宇宙飛行士から飛行前・宇宙滞在中・帰還後における呼気ならびに血液を採取し、解析した。その結果、ヘモグロビンの代謝産物である呼気中COおよび血清鉄の濃度が宇宙滞在中継続的に上昇していることが判明し、宇宙貧血の本態は溶血性貧血であることが明らかになった。また、興味深いことに帰還1年後においても、呼気中CO濃度が高い状態に維持されており、帰還後も溶血が遷延していることが判明した。この発見は、宇宙貧血の病態を明らかにするのみならず、寝たきり等の抗重力運動が減弱した患者における貧血の病態解明にも寄与する可能性がある。しかしながら、溶血が起きる解剖学的部位およびメカニズムは依然として明らかではなく、今後の解析が望まれる。

    腸内細菌叢

    腸内細菌叢が鉄代謝を介して骨髄内造血幹細胞の運命決定を制御する

    原題:

    The microbiota regulates hematopoietic stem cell fate decisions by controlling iron availability in bone marrow

    著者:

    Dachuan Zhang, Xin Gao, Huihui Li, Daniel K. Borger, Qiaozhi Wei, Eva Yang, Chunliang Xu, Sandra Pinho, Paul S. Frenette

    雑誌:

    Cell Stem Cell, 29: 232-247, (2022)

    POINT!

    近年、腸内細菌叢と骨髄のクロストークが血液細胞の産生を制御していることが明らかになりつつある。しかし、腸内細菌叢が造血幹細胞へどのような影響を及ぼしているかは不明であった。本論文で著者らは、腸内細菌叢を欠損させたマウスの骨髄では、化学療法後の血液再構築時に造血幹細胞の自己複製が亢進し、血液細胞への分化が障害されていることを発見した。腸内細菌叢を欠くマウスの骨髄内の鉄量が減少していたため赤血球にGFPを発現させマクロファージによる貪食量を比較した。すると、腸内細菌叢欠損マウスでは骨髄マクロファージによる赤血球の貪食が障害されており、これによって鉄量が減少していることがわかった。そこで鉄欠乏食やCD169+マクロファージ除去実験により鉄量を低下させたところ、腸内細菌叢欠損マウスと同様に造血幹細胞の自己複製が亢進した。これにより血液再構築時には腸内細菌叢が鉄代謝を介して骨髄内造血幹細胞の自己複製や分化を制御することが明らかになった。本論文によって腸内細菌叢が造血幹細胞を制御する仕組みが新たに解明されただけでなく、腸内細菌叢と骨髄造血、マクロファージ、鉄代謝といった複雑なクロストークが骨髄環境を制御していることが明らかになった。

    CD169陽性マクロファージ

    リンパ節および脾臓に局在するCD169陽性マクロファージの分化にはRANKシグナリングとLTβRシグナリングの両者が必須である

    原題:

    CD169+ macrophages in lymph node and spleen critically depend on dual RANK and LTbetaR signaling

    著者:

    Abdouramane Camara, Alice C. Lavanant, Jun Abe, Henri Lee Desforges, Yannick O. Alexandre, Erika Girardi, Zinaida Igamberdieva, Kenichi Asano, Masato Tanaka, Thomas Hehlgans, Klaus Pfeffer, Sebastien Pfeffer, Scott N. Mueller, Jens V. Stein, Christopher G. Mueller

    雑誌:

    Proc Natl Acad Sci U S A, 18: e2108540119, (2022)

    POINT!

    CD169陽性マクロファージはリンパ節や脾臓に存在し病原体に対する免疫学的な防御に関係すると考えられている。筆者らは以前の報告でリンパ節の辺縁洞に局在するCD169陽性マクロファージ(Subcapsular sinusoidal macrophage: SSM)の分化には辺縁細網細胞(Marginal reticular cell: MRC)に発現しているRANKLが必須であることを示した(Camara, Immunity, 2019)。今回、筆者らはCd169-cre Ltbrfl/fl (Ltbr cKO)マウスを解析することでLTβRシグナリングもRANKシグナリング同様にSSMの分化に必須であることを示した。さらに脾臓の辺縁帯に局在するCD169陽性マクロファージであるMarginal metallophilic macrophage (MMM)もリンパ節のSSMと同様にRANKシグナルとLTβRシグナルの両者が分化に必須であることを証明した。筆者らはRANKL reporter mouseを新たに作製し、Ltbr cKOを解析することで、MMMの分化には脾臓のMRCに発現しているRANKLが必須であることを示した。さらにLtbr cKOにおけるMMMの消失はウイルス特異的CD8T細胞の増加を阻害することを確認した。これらの結果により生体では免疫応答が必要な部位に適切にCD169陽性マクロファージが局在するよう、厳密な制御機構が働いていることが示唆された。

    強直性脊椎炎

    強直性脊椎炎における骨癒合を予防するための軟骨細胞への着目

    原題:

    Targeting chondrocytes for arresting bony fusion in ankylosing spondylitis

    著者:

    Fenli Shao, Qianqian Liu, Yuyu Zhu, Zhidan Fan, Wenjun Chen, Shijia Liu, Xiaohui Li, Wenjie Guo, Gen-Sheng Feng, Haiguo Yu, Qiang Xu & Yang Sun

    雑誌:

    Nat. Commun., 12:6540 (2021)

    POINT!

    強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis: AS)は主に軸骨格に影響する血清反応陰性の慢性関節炎である。異所性骨形成による骨癒合はASに特徴的であるが機序については不明であった。Ptpn11遺伝子にコードされているSHP2はユビキタスに発現しており、細胞の生存、増殖、分化を制御する。軟骨前駆細胞のSHP2を欠損させるとIndian hedgehogと Parathyroid hormone-related proteinの発現が上昇し、メタコンドロマトーシス(多発性の内軟骨腫と骨軟骨腫)が誘導されることが報告されていた。筆者らは偶然にCD4-Cre;Ptpn11f/f (CD4-CKO)の成体マウスで後弯症、関節炎、および骨癒合といったASの病態生理学的特徴を示すことを発見した。このCD4-CKOマウスでは組織学的に成長板軟骨層の肥厚が確認された。CD4細胞はヘルパーT細胞の膜タンパクとして知られているため、当初はT細胞の機能異常がAS様症状を誘導していると考えられていたが、CD4-CKOマウス由来T細胞移入実験やLck-Cre; Ptpn11f/fではAS様症状が再現されなかった。一方で野生型マウスの骨髄をCD4-CKOマウスに移入することで、AS様症状を示したことから、免疫系細胞の関与は否定的となった。次に筆者らは成体マウスでは成長板軟骨の前肥大・肥大軟骨細胞層においてCD4の発現があること、CD4-CKOマウスの前肥大・肥大軟骨細胞ではSHP2が欠損していることを免疫組織学的に証明した。さらにSHP2を欠損した軟骨細胞は増殖と分化が誘導されることで成長板軟骨層が増大することを示した。同様の現象は付着部炎関連関節炎の若年患者でも成長板軟骨層の肥厚として確認された。これらのことから成長板軟骨細胞の異常がASの進展に関係していることが示唆された。次に筆者らはSHP2-knockdownの培養軟骨細胞ではBMP6の発現が上昇していること、その培養上清はマウス骨髄間葉系幹細胞(Mouse bone mesenchymal stem cells: mBMSC)のSmad1/5のリン酸化を誘導することを示した。さらにSHP2-knockdownの培養軟骨細胞とmBMSCの共存培養では骨芽細胞分化が促進されることを示した。以上よりCD4-CKOマウスの成長板軟骨細胞は、BMP6/pSmad1/5 signalingを介して異所性骨形成を促進していることが示唆された。最後にHedgehog signaling阻害剤であるソニデギブの投与によって成長板軟骨を減少させるとCD4-CKOマウスのAS様症状が抑制されることを示した。これらの結果はソニデギブがASの有望な治療選択となる可能性を示唆している。

    骨折治癒

    損傷した脳は骨芽前駆細胞を標的とする小型細胞外小胞を放出することを介し骨折治癒を促進する

    原題:

    Damaged brain accelerates bone healing by releasing small extracellular vesicles that target osteoprogenitors

    著者:

    Wei Xia, Jing Xie, Zhiqing Cai, Xuhua Liu, Jing Wen, Zhong-Kai Cui, Run Zhao, Xiaomei Zhou, Jiahui Chen, Xinru Mao, Zhengtao Gu, Zhimin Zou, Zhipeng Zou, Yue Zhang, Ming Zhao, Maegele Mac, Qiancheng Song, Xiaochun Bai

    雑誌:

    Nat. Commun., 12:6043 (2021)

    POINT!

    外傷性脳損傷(traumatic brain injury, TBI)は、交通事故、転倒などでよく見られ、しばしば体の骨折が伴う。TBIを合併した骨折患者は、単純な骨折の患者よりも骨折の治癒時間が短いことが知られているが、そのメカニズムは不明である。著者らは、TBI患者の臨床検体とTBI骨折ラットモデルの血漿を調べたところ、小型細胞外小胞(small extracellular vesicles, sEV)が顕著に増加したことを見出した。sEVに対しmiRNA-seqを行い、骨形成を促進するmiR-328a-3pやmiR-150-5pが高発現していることがわかった。In vitroで骨髄間葉系幹細胞(BMSC)とマウス頭蓋冠由来細胞(MC3T3-E1)にmiR-328a-3pやmiR-150-5pを発現させたところ、骨芽細胞分化が促進された。さらに、sEVのプロテオミクス解析を行った結果、神経損傷と関連するA2Mタンパク質が増加したことから、TBI患者及びTBI骨折ラットモデルの血漿中で増加したsEVsは損傷した神経に由来することが示唆された。また、sEVの膜タンパク質fibronectin 1 (FN1)を阻害すると、sEVの骨折部位における集積が抑制されたことから、FN1はsEVを骨折部位へ遊走させる重要な因子であることが示唆された。最後に、miR-328a-3pを含むヒドロゲルをラットの骨折部位に移植した結果、骨折治癒が促進された。以上から、神経損傷による誘発されたsEVが骨折の早期治癒に寄与することがわかった。

    Physioxia

    破骨細胞はDNAの脱メチル化を介して生理的環境下の酸素分圧の変化に適応する

    原題:

    Osteoclasts adapt to physioxia perturbation through DNA demethylation

    著者:

    Keizo Nishikawa, Shigeto Seno, Toshitada Yoshihara, Ayako Narazaki, Yuki Sugiura, Reito Shimizu, Junichi Kikuta, Reiko Sakaguchi, Norio Suzuki, Norihiko Takeda, Hiroaki Semba, Masamichi Yamamoto, Daisuke Okuzaki, Daisuke Motooka, Yasuhiro Kobayashi, Makoto Suematsu, Haruhiko Koseki, Hideo Matsuda, Masayuki Yamamoto, Seiji Tobita, Yasuo Mori, Masaru Ishii

    雑誌:

    EMBO Rep. 22: e53035 (2021)

    POINT!

    酸素は生命の営みにとって多様かつ重要な役割を果たしている。しかし、生体内の酸素分圧の定量化は困難であり、生理的環境下での酸素分圧(physioxia)の範囲や、酸素分圧の変動に対する各細胞の応答は明らかになっていない。そこで、筆者らは2光子励起顕微鏡を活用し、生体マウスの骨組織に存在する破骨細胞のphysioxiaの計測に成功した。生体の破骨細胞のphysioxiaは17.4〜36.4 mmHgであり、これはそれぞれ2〜5%の酸素濃度に対応している。この生理的な範囲内では、酸素濃度の低下によって破骨細胞の形成が阻害され、骨量が増加した。さらに、この機構は低酸素誘導因子のHIFからは独立しており、低酸素によってメチル化DNAの酸化反応を担う酵素Ten-eleven translocation (TET)の活性が低下することにより制御されていることがわかった。以上のことから、骨は他の組織とは異なる代謝経路で酸素分圧の変化に対応していることが判明した。本研究のように生体内の分子の濃度から生体の仕組みを理解することで、生体の恒常性の乱れや疾患発症を予測する医療技術の開発につながることが期待される。

    Dnmt3a

    Dnmt3a-mutated clonal hematopoiesis promotes osteoporosis

    原題:

    Dnmt3a-mutated clonal hematopoiesis promotes osteoporosis

    著者:

    Peter Geon Kim, Abhishek Niroula, Veronica Shkolnik, Marie McConkey, Amy E Lin, Mikołaj Słabicki, John P Kemp, Alexander Bick, Christopher J Gibson, Gabriel Griffin, Aswin Sekar, Daniel J Brooks, Waihay J Wong, Drew N Cohen, Md Mesbah Uddin, Wesley J Shin, James Pirruccello, Jonathan M Tsai, Mridul Agrawal, Douglas P Kiel, Mary L Bouxsein, J Brent Richards, David M Evans, Marc N Wein, Julia F Charles, Siddhartha Jaiswal, Pradeep Natarajan, Benjamin L Ebert

    雑誌:

    J. Exp. Med. 218: e20211872 (2021)

    POINT!

    骨粗鬆症は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランスの破綻により起こる加齢性疾患である。骨粗鬆症の病態には、造血細胞を含む骨髄の微小環境が関与する。加齢による遺伝子変異を伴うクローン造血はあるものの血液学的異常が認められないクローン性造血CHIP(clonal hematopoiesis of indeterminate potential)は、体細胞の突然変異に起因する。CHIPは高齢者において頻度が高く、造血器腫瘍のリスクとして知られている。筆者らは、UKバイオバンクにおけるコホートデータベースを解析することで、CHIPが骨粗鬆症における発症率の増加と骨密度の低下に関連していることを示した。CHIPで最も多く変異するDnmt3aを造血特異的に欠損したマウス(Dnmt3afl/flVav1-Creマウス)では、破骨細胞数が増加し、骨量が低下していた。Dnmt3afl/flVav1-Creマウスの血清を野生型マウスと比較すると、IL-20の発現量が高く、Dnmt3aが欠損した破骨細胞におけるゲノムワイドCRISPRスクリーニングでは、IL-20受容体の破骨細胞分化への関与が示された。さらにDnmt3aの変異における破骨細胞の形成は、Irf3-NF-kBのシグナルを介したマクロファージが発現するIL-20により誘導された。骨粗鬆症薬であるアレンドロネートやIL-20阻害は、Dnmt3aの変異により誘導された破骨細胞形成を抑制した。以上より、造血系におけるDnmt3aの変異は骨粗鬆症を引き起こすことが明らかになった。

    DCIR (Dendritic cell immunoreceptor)

    DCIRとそのリガンドであるアシアロ二本鎖N結合型糖鎖は樹上細胞の機能と破骨細胞分化を制御する

    原題:

    DCIR and its ligand asialo-biantennary N-glycan regulate DC function and osteoclastogenesis.

    著者:

    Kaifu T, Yabe R, Maruhashi T, Chung SH, Tateno H, Fujikado N, Hirabayashi J, Iwakura Y.

    雑誌:

    J. Exp. Med., 218: e20210435. (2021)

    POINT!

    Dendritic cell immunoreceptor(DCIR)は糖鎖認識部位と免疫受容抑制性チロシンモチーフを持つC型レクチン受容体である。著者らのグループは、Dcir–/–マウスが自己免疫腱付着部炎と唾液腺炎を自然発症することを以前に報告している。本研究では、DCIRが破骨細胞と樹状細胞で発現しており、アシアロ二本鎖N結合型糖鎖(NA2)に結合することを報告している。Dcir–/–細胞では破骨細胞分化が亢進しており、NA2は野生型破骨細胞分化を阻害することがわかった。シアル酸残基を加水分解できるノイラミニダーゼを作用させることで二本鎖N結合型糖鎖のアシアロ化を誘導すると、in vitroにおいて破骨細胞分化を抑制し、樹状細胞の抗原提示機能を抑制することができた。マウスにノイラミニダーゼを投与すると、コラーゲン誘導性関節炎や多発性硬化症モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎症状がDCIR依存性に軽減された。これらの結果はDCIR活性が二本鎖N結合型糖鎖のシアル酸修飾によって調節されていることを明らかにし、自己免疫疾患や骨疾患において、DCIRあるいはNA2が新規治療標的となることが期待される。

    骨髄微小環境

    がん細胞による骨髄血管微小環境リモデリングが骨転移を促進する

    原題:

    Mammary tumour cells remodel the bone marrow vascular microenvironment to support metastasis

    著者:

    Raymond K H Yip, Joel S Rimes, Bianca D Capaldo, Francois Vaillant, Kellie A Mouchemore, Bhupinder Pal, Yunshun Chen, Elliot Surgenor, Andrew J Murphy, Robin L Anderson, Gordon K Smyth, Geoffrey J Lindeman, Edwin D Hawkins, Jane E Visvader

    雑誌:

    Nat. Commun., 12:6920 (2021)

    POINT!

    原発巣から播種された腫瘍細胞(disseminated tumor cells; DTCs)は骨髄に到達後、骨髄ニッチに生着し長期生存することが過去に報告されているが、その正確な位置やメカニズムは明らかになっていなかった。著者らは、骨髄の厚切り切片を免疫染色し3D再構成する技術を用いて、骨転移初期におけるDTCsの分布および増大に伴う血管微小環境の変化を観察した。乳腺への同所性移植により自然に骨転移する乳がん細胞株4T1.2をBALB/cマウスに移植し、原発巣切除後3週のマウス骨髄を観察したところ、DTCsが骨髄のType H vesselsの近傍に局在していることがわかった。さらに進行した骨転移巣では、血管が曲がりくねり、血管内皮細胞の突起 (vascular sprout)が多い構造をしていた。著者らは骨転移巣の血管内皮細胞に注目し、骨転移巣および転移のない骨髄の血管内皮細胞における遺伝子発現を調べたところ、骨転移巣の血管内皮細胞では血管新生や免疫細胞の遊走に関連する遺伝子が高発現していた。また、がん細胞の既存のデータから、骨転移の頻度が高い4T1, 4T1.2細胞株では骨転移の頻度が低い67NR, 66cl4細胞株と比較してCsf3 (G-CSF)の発現量が高いことがわかった。そこで、G-CSFの発現量が低い乳がん細胞株であるEMT6.5にG-CSFを過剰発現させたところ、G-CSFの過剰発現により骨転移巣が増大し、vascular sproutが増加した。さらに、G-CSFによる血管再構成における血球系細胞の寄与を調べるため、リンパ球、好中球、マクロファージ除去モデルを用いた検討を行ったが、骨転移巣の増大やvascular sprout形成に影響はなかった。最後に、G-CSFの阻害が骨転移の新規治療標的となる可能性を考え、4T1.2の骨転移モデルにおいてanti-G-CSFRの投与実験を行った。その結果、転移早期にanti-G-CSFR投与すると、骨転移は有意に抑制され、vascular sproutの形成が阻害された。以上により、DTCs由来のG-CSFが血球系細胞とは独立したメカニズムにより血管をリモデリングし、骨転移の増大に有利な血管微小環境を構築していることが明らかになった。

    Piezo1

    メカノセンサーのPiezo1は矯正学的歯の移動を制御する

    原題:

    Mechanosensitive Piezo1 in Periodontal Ligament Cells Promotes Alveolar Bone Remodeling During Orthodontic Tooth Movement

    著者:

    Yukun Jiang, Yuzhe Guan, Yuanchen Lan, Shuo Chen, Tiancheng Li, Shujuan Zou, Zhiai Hu and Qingsong Ye

    雑誌:

    Front. Physiol., 12:767136 (2021)

    POINT!

    矯正学的歯の移動は、メカニカルストレスによる骨リモデリングの一例として知られている。矯正力は、歯根と歯槽骨を繋ぎ留める結合組織、歯根膜を介して歯槽骨へ伝達され骨リモデリングを誘導し歯の移動を引き起こす。歯根膜は力の伝達に重要である他、近年では矯正力に応答してサイトカインの分泌などを行い、歯の移動に関わっていると考えられている。著者らは、メカノセンサーの一つ、Piezo1が矯正学的歯の移動に関わると仮定した。矯正学的歯の移動モデルラットの免疫組織学的解析から、Piezo1が牽引側 (歯が移動するのと逆側) の歯根膜で発現することを見出した。Piezo1阻害剤の腹腔内投与により全身的にPiezo1を不活性化し、矯正モデルを実施したところ、歯の移動が抑制された。組織学的には、牽引側における骨形成と骨吸収が抑制されていた。以上より、Piezo1を介した力学刺激は歯の移動に影響することが明らかになった。なお、Piezo1は骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞など他の様々な細胞で発現しており、阻害剤の全身投与ではタイトルにあるような「歯根膜のPiezoシグナルによる骨リモデリング制御」の証明とならないことには留意されたい。また、多くのデータがパラフィン切片の免疫組織染色法に基づいているが、歯根膜が非特異的に抗体を結合しやすいことは多くの研究者が認めるところである。矯正力が歯槽骨リモデリングを誘導するメカニズムを解明するためには、より詳細な検討が必要である。

    骨形成不全症

    WNT1G177C変異は骨組織を標的とし骨形成不全症XV型を引き起こす

    原題:

    The WNT1G177C mutation specifically affects skeletal integrity

    著者:

    Nele Vollersen, Wenbo Zhao, Tim Rolvien, Fabiola Lange1, Felix Nikolai Schmidt, Stephan Sonntag, Doron Shmerling, Simon von Kroge, Kilian Elia Stockhausen, Ahmed Sharaf, Michaela Schweizer, Meliha Karsak, Björn Busse, Ernesto Bockamp, Oliver Semler, Michael Amling, Ralf Oheim, Thorsten Schinke and Timur Alexander Yorgan

    雑誌:

    Bone Res., 9:48 (2021)

    POINT!

    骨形成不全症 (OI) には21の類型があり、主にコラーゲン合成系に関わる遺伝子の変異が報告されている。15型のOI (OI-XV) 患者においては、WNT1G177C変異が報告されている。In silico解析から、この変異によりWNT1の安定性が損なわれることが予想されていた。WNT1G177Cを強制発現させたST2細胞では、野生型WNT1発現細胞とは異なり骨芽細胞分化の促進効果が認められず、この変異が機能喪失型の変異であることがわかった。そこで、この変異を有する遺伝子改変マウスを作出したところ、このマウスでは高頻度の骨折を認めた。椎骨の骨形態計測法による解析の結果、海綿骨と皮質骨の両方でWNT1G177Cマウスにおける骨形成の低下に伴う骨量減少を認めた。OI-XV患者にはビスホスホネート製剤が奏功しないことから、他の治療オプションが望まれている。PTH投与はWNT1G177Cマウスに対して治療効果を発揮したが、副作用の問題から小児への投与や長期投与は推奨されない。WNT受容体LRP5の変異体でスクレロスチンに対する親和性の低いもの (LRP5A213V) を利用した治療を着想し、WNT1G177CLRP5A213Vの両方の変異を有するマウスを作出したところ、WNT1G177Cマウスと比べて骨のパラメーターが改善した。このことから、LRP5はOI-XV治療の標的となると考えられた。

    IL-33

    IL-33はILC2を増やすことにより子宮内膜症発症を誘導する

    原題:

    IL-33 activates group 2 innate lymphoid cell expansion and modulates endometriosis

    著者:

    Jessica E. Miller, Harshavardhan Lingegowda, Lindsey K. Symons, Olga Bougie, Steven L. Young, Bruce A. Lessey, Madhuri Koti, and Chandrakant Tayade

    雑誌:

    JCI Insight. 6(23): e149699 (2021)

    POINT!

    子宮内膜症は、子宮内膜様の組織が異所性に発育する疾患であり、罹患率の高さや悪性転化率の高さから、臨床的にも社会的にも問題となっている。子宮内膜症病変部ではtype IIの免疫細胞の増加が認められることから、病態形成への関与が指摘されていた。著者らは過去にtype II炎症反応に重要なIL-33が腹腔液や子宮内膜症病変部に多いことを見出した。Type II innate lymphoid cell (ILC2) はIL-33により活性化される比較的新しい免疫細胞で、子宮内膜症への関与は不明であった。本研究において、著者らは子宮内膜症患者の腹腔液中にILC2 (CD45+LinCD127+CD294+ST2+細胞) を見いだした。病変部の解析から、IL-33は上皮細胞と間質細胞で発現することが確認された。野生型マウスに対するIL-33投与は腹腔液におけるtype IIサイトカイン産生や、好酸球とILC2の割合を増加させた。さらに、細胞増殖の促進、血管新生に関わる遺伝子の発現上昇、神経の増加、線維化の亢進が認められた。ILC2がIL-33の標的となりうるかを、Rag2–/–Il2rg–/–マウスと抗CD90.2抗体を投与したRag2–/–マウスを用いて検討したところ、これらのマウスはコントロールのRag2-/–マウスと比較してIL-33誘導性の炎症反応が認められず、免疫細胞の浸潤も低下していた。さらに、細胞増殖と線維化も抑制された。以上より、子宮内膜症におけるIL-33誘導性の病態形成へのILC2の関与が示された。

    骨細胞分化

    Sp7とその標的遺伝子osteocrinによる骨細胞樹状突起形成の制御

    原題:

    Control of osteocyte dendrite formation by Sp7 and its target gene osteocrin

    著者:

    Jialiang S. Wang, Tushar Kamath, Courtney M. Mazur, Fatemeh Mirzamohammadi, Daniel Rotter, Hironori Hojo, Christian D. Castro, Nicha Tokavanich, Rushi Patel, Nicolas Govea, Tetsuya Enishi, Yunshu Wu, Janaina da Silva Martins, Michael Bruce, Daniel J. Brooks, Mary L. Bouxsein, Danielle Tokarz, Charles P. Lin, Abdul Abdul, Evan Z. Macosko, Melissa Fiscaletti, Craig F. Munns, Pearl Ryder, Maria Kost-Alimova, Patrick Byrne, Beth Cimini, Makoto Fujiwara, Henry M. Kronenberg & Marc N. Wein

    雑誌:

    Nat Commun, 12, 6271 (2021)

    POINT!

    骨芽細胞は骨基質内に埋め込まれて樹状突起を有する骨細胞に分化するが、この過程の分子機構は十分に理解されてはいなかった。本研究で著者らは、Dmp1-CreによりSp7(Osterix遺伝子)を欠損させると、皮質骨の多孔化、骨塩量の低下、皮質骨内の異常な骨リモデリングに加え、骨細胞のアポトーシス増加と樹状突起の異常が誘導されることを明らかにした。Sp7ノックダウンおよび過剰発現Ocy454細胞のRNA-seq解析やSp7のChIP-seq解析により、骨細胞特異的なSp7標的遺伝子は骨芽細胞特異的標的遺伝子とは異なり、Dlxファミリー転写因子ではなくAP1ファミリー転写因子が結合する細胞突起形成や神経細胞の発生に関連する遺伝子が濃縮されていることが示された。また、RNA-seqとChIP-seq解析で共通して同定された77の骨細胞特異的Sp7標的遺伝子のうち、著者らは分泌型タンパク質をコードするOstn(Osteocrin遺伝子)に着目した。Ostnの強制発現はin vitroでもin vivoでもSp7欠損による骨細胞の樹状突起の異常をレスキューし、in vivoでは骨細胞のアポトーシスや皮質骨多孔化なども抑制したことから、骨細胞の樹状突起形成/維持を促進する分泌因子であることが明らかになった。さらに、著者らはDmp1-Cre; Ai14マウスを用い、酵素消化により骨基質から骨細胞を回収してソーティングし、シングルセルRNA-seq解析を行うことで骨細胞分化過程の詳しい細胞集団を調べた。その結果、8つのポピュレーションとそれらに特徴的な遺伝子が同定され、擬時間解析による分化経路推定により骨芽細胞から成熟骨細胞へは2つの経路を介する可能性が示された。Sp7欠損マウスで同様の解析を行ったところ、分化途中クラスターのうち、片側の経路の相対的割合が増加し成熟骨細胞クラスターが減少していたことから、Sp7非存在下ではこの分化プロセスに欠陥があることが明らかにされた。また、ヒトにおける骨細胞SP7の役割を調べたところ、SP7依存的な骨細胞遺伝子ネットワークはヒトの骨格系疾患と関連しており、骨形成不全症を示すSP7R316C変異を持つヒトの骨細胞は樹状突起の長さと数が減少していることを示した。以上の結果から、Sp7は骨細胞分化過程で細胞の形態形成を促進する中心的な役割を担っていることが明らかになった。

    clusterin

    エクササイズ血漿はclusterinを介して記憶力を増強し脳の炎症を抑える

    原題:

    Exercise plasma boosts memory and dampens brain inflammation via clusterin

    著者:

    Zurine De Miguel, Nathalie Khoury, Michael J. Betley, Benoit Lehallier, Drew Willoughby, Niclas Olsson, Andrew C. Yang, Oliver Hahn, Nannan Lu, Ryan T. Vest, Liana N. Bonanno, Lakshmi Yerra, Lichao Zhang, Nay Lui Saw, J. Kaci Fairchild, Davis Lee, Hui Zhang, Patrick L. McAlpine, Kévin Contrepois, Mehrdad Shamloo, Joshua E. Elias, Thomas A. Rando & Tony Wyss-Coray

    雑誌:

    Nature, 600, 494–499 (2021)

    POINT!

    エクササイズは一般的に、ヒトや動物の健康のあらゆる側面に有益であり、認知機能の老化や神経変性を遅らせることが知られている。運動による認知機能の向上は、海馬内の可塑性の増加や炎症の抑制と関連しているが、これらの効果に関わる因子やメカニズムについてはほとんど分かっていなかった。本研究で著者らは、28日間自発的にランニングホイールで走る環境で過ごしたマウスから採取した血漿を通常のマウスに投与すると、通常マウス血漿と比較して海馬の神経増殖を促進し、文脈的学習・記憶および空間的学習・記憶を高めることを明らかにした。海馬のRNA-seq解析から、エクササイズ血漿の投与により学習・記憶に関わる遺伝子に加え、神経炎症性遺伝子発現が低下し、LPS投与により実験的に誘導した脳内炎症モデルマウスの炎症が軽減することが示された。血漿プロテオーム解析の結果、エクササイズにより特に凝固系や補体系が変化しており、この解析で同定されたエクササイズにより誘導される血中分子の上位4つをそれぞれ抗体により除去することで比較したところ、補体カスケード抑制因子clusterin(CLU)がエクササイズ血漿による抗炎症作用に関わる主な因子であることが明らかにされた。CLUは主に肝細胞や心筋細胞で発現しており、リコンビナントCLUを投与すると脳血管内皮細胞に結合し急性脳炎モデルおよびアルツハイマー病モデルマウスにおける神経炎症性遺伝子発現を低下させることが確認された。さらに、マウスで得られた結果と同様に、認知機能障害患者でも6ヶ月間の運動で介入前と比較してCLUを含む補体系や凝固系因子の血漿中濃度が変化した。これらの知見は、運動によって誘導され、脳血管系を標的とする投与可能な抗炎症性の因子が、エクササイズを行うヒトに存在することを示している。

    組織マクロファージ

    マウス造血組織から調整した単一細胞の解析では組織常在マクロファージの分離時に生じるフラグメンテーションが解析の障害になる

    原題:

    Fragmentation of tissue-resident macrophages during isolation confounds analysis of single-cell preparations from mouse hematopoietic tissues

    著者:

    Susan M. Millard, Ostyn Heng, Khatora S. Opperman, Anuj Sehgal, Katharine M. Irvine, Simranpreet Kaur, Cheyenne J. Sandrock, Andy C. Wu, Graham W. Magor, Lena Batoon, Andrew C. Perkins, Jacqueline E. Noll, Andrew C.W. Zannettino, David P. Sester, Jean-Pierre Levesque, David A. Hume, Liza J. Raggatt, Kim M. Summers, and Allison R. Pettit

    雑誌:

    Cell Rep, 37, 110058 (2021)

    POINT!

    組織にはマクロファージが豊富に存在し、組織の発生、恒常性維持、再生、病態形成などに関与している。多くの組織常在マクロファージ集団は、単離されex vivoでプロファイリングされているが、その収量はin situでの存在量に比べて低いことが多く、in vivoに存在する多様なマクロファージが網羅的にサンプリングされているかは不明であった。骨髄などの組織常在マクロファージを同定するために一般的に使用されているフローサイトメトリーでは、骨髄内にF4/80を発現する多くの細胞が存在し、これらの約3分の1は組織常在マクロファージマーカーCD169と成熟マーカーVCAM-1を発現している。しかし、骨髄F4/80+CD169+VCAM-1+細胞のイメージングサイトメトリー解析では、CD11bの染色パターンが細胞膜全体に均一に分布しているのに対し、F4/80、CD169、VCAM-1の染色パターンは点状でそれぞれ重複して分布し、明視野画像で明らかな細胞境界を超えて存在していた。Csf1r-EGFPやSiglec1Cre; R26ZsGreenマウスから採取した細胞をLineage markerでネガティブセレクションして得られた推定マクロファージでも、F4/80は極性化した点状の染色パターンを示し、多くのGFPやZsGreenはF4/80と共局在して点状の蛍光を示し、インタクトなマクロファージは存在しなかった。これらの結果は、従来のフローサイトメトリーでは組織常在マクロファージと解釈される細胞が、細胞調製中に破壊されたマクロファージ断片をまとった非マクロファージ細胞であることを示唆している。さらに、マクロファージ残骸は、骨髄や脾臓の赤芽球、B細胞、T細胞、好中球などの成熟した造血系細胞と結合しており、その結合プロファイルはin vivoでのマクロファージと他の細胞との相互作用を反映していた。また、Siglec1DTR/+マウスを用いてCD169+マクロファージをin vivoで除去すると、F4/80+残骸の付着が解消されることや、マクロファージ残骸には細胞質だけでなくマクロファージのmRNAが含まれ、造血幹前駆細胞を含む非マクロファージ細胞で誤って検出されてしまうことも示された。Csf1r-EGFPマウス骨髄細胞を従来の方法で選別したマクロファージとされる集団のRNA-seq解析では、単球/マクロファージではなく顆粒球に特徴的な遺伝子が濃縮されており、一般に公開されているデータセットでも、マクロファージの断片化により造血組織のRNA-seq解析やシングルセル解析においてマクロファージ残骸由来のmRNAが他の細胞に誤って帰属しており、このことは一般的な現象であることが明らかにされた。造血組織マクロファージの断片化は、ex vivoにおけるマクロファージの分子プロファイリングの正確性を損なうことから、十分な注意が必要であることが示された。

  • 骨-血管連関

    骨から分泌されたPDGF-BBが動脈壁硬化を促進する

    原題:

    Skeleton-secreted PDGF-BB mediates arterial stiffening

    著者:

    Lakshmi Santhanam, Guanqiao Liu, Sandeep Jandu, Weiping Su, Bulouere P. Wodu, William Savage, Alan Poe, Xiaonan Liu, Lacy M. Alexander, Xu Cao, and Mei Wan

    雑誌:

    J Clin Invest., DOI: 10.1172 (2021)

    POINT!

    骨粗鬆症と心血管疾患との関連性は様々な研究により明らかになっているが,その詳しい分子メカニズムは未だ不明である。本研究は、骨構成細胞から分泌される血小板由来成長因子-BB(PDGF-BB)が、加齢や代謝ストレスに応じて動脈壁硬化を引き起こす重要なメディエーターであることを示した。老齢マウスおよび高脂肪食を与えたマウスは、若齢マウスおよび普通食を与えたマウスに比べて,血清PDGF-BB濃度が高く、骨量減少と動脈壁硬化が進行した。著者らは以前、生理的な濃度のPDGF-BBは骨形成を促進することを示したが、高濃度のPDGF-BBは逆に骨形成を抑制する可能性が示唆された。老齢マウスおよび高脂肪食マウスにおいて、骨組織に存在するTRAP陽性破骨前駆細胞がPDGF-BBを高発現していた。試験管内での実験により、破骨前駆細胞が産生するPDGF-BBは,血管平滑筋細胞の増殖と遊走を促進することがわかった。さらに,PDGF-BBを破骨前駆細胞で過剰発現させたマウスは,血清中のPDGF-BB濃度が野生型と比較して3倍高く、若齢期においても骨量減少および動脈壁硬化・血管石灰化といった血管症状を呈した。一方、破骨前駆細胞でPDGF-BBを選択的に欠損したマウスでは,高脂肪食による骨量減少と動脈硬化が抑制された。以上から、加齢や代謝ストレスといった因子は、破骨前駆細胞のPDGF-BB産生を亢進し、血管壁硬化を促進する可能性が示唆された。

    肥満、皮脂、TSLP

    胸腺ストローマリンフォポエチンは皮脂分泌を促進し、肥満を改善する

    原題:

    Thymic stromal lymphopoietin induces adipose loss through sebum hypersecretion

    著者:

    Ruth Choa, Junichiro Tohyama, Shogo Wada, Hu Meng, Jian Hu, Mariko Okumura, Rebecca M. May, Tanner F. Robertson, Ruth-Anne Langan Pai, Arben Nace, Christian Hopkins, Elizabeth A. Jacobsen, Malay Haldar, Garret A. FitzGerald, Edward M. Behrens, Andy J. Minn, Patrick Seale, George Cotsarelis, Brian Kim, John T. Seykora, Mingyao Li, Zoltan Arany, Taku Kambayashi

    雑誌:

    Science, 373: eabd2893 (2021)

    POINT!

    肥満は慢性的な炎症を誘導し、二型糖尿病や脂肪肝の原因となる疾患である。2型免疫細胞は脂肪の燃焼を促進し、肥満を改善する作用がある。また、非免疫細胞が産生するサイトカインであるThymic stromal lymphopoietin (TSLP)は、2型免疫応答を誘導することが知られている。そこで、著者らはマウスをモデルとしてTSLPが肥満を改善できるかを検証した。肥満モデルマウスにTSLPを過剰に発現させた結果、体重の減少や脂肪組織量の低下が認められ、肥満に付随する代謝異常が改善された。遺伝子改変マウスを用いた解析からTSLP誘導性の体重減少にT細胞が必要であることが明らかにされた。TSLP過剰発現マウスでは、皮脂の分泌が増加し、これが体重減少の要因であることが示された。これは、体内に備蓄された脂肪が代謝され、皮脂として体外に分泌されたことを意味する。TSLP受容体を欠損するマウスは、皮脂の分泌が減少することから、TSLPは定常状態における皮脂の量を制御することが明らかにされた。TSLPは肥満治療薬としての可能性を秘めており、さらなる研究が切望される。

    Nasal chondrocyte–based tissue-engineered cartilage (N-TEC)

    鼻腔軟骨由来の組織工学的軟骨を用いた変形性関節症の膝軟骨欠損に対する治療

    原題:

    Engineered nasal cartilage for the repair of osteoarthritic knee cartilage defects

    著者:

    Lina Acevedo Rua, Marcus Mumme, Cristina Manferdini, Salim Darwiche, Ahmad Khalil, Morgane Hilpert, David A. Buchner, Gina Lisignoli, Paola Occhetta, Brigitte von Rechenberg, Martin Haug, Dirk J. Schaefer, Marcel Jakob, Arnold Caplan8, Ivan Martin, Andrea Barbero, Karoliina Pelttari

    雑誌:

    Sci Transl Med, 609: eaaz4499 ( 2021)

    POINT!

    変形性関節症(Osteoarthritis: OA)は、最も頻度の高い関節疾患であり、主に高齢者に痛みや運動障害をもたらすが、若年層にも少なからず影響をおよぼす。治療は、抗炎症剤による症状の緩和か、末期には人工関節置換術に限られている。そこで、筆者らは鼻腔軟骨由来の組織工学的軟骨(N-TEC)を用いて、変性欠損した関節軟骨の修復の可能性を検討した。N-TECは、in vitroではOAに特有の炎症環境下でも軟骨の特性を維持し、OAの関節から採取した細胞の炎症プロファイルを改善した。この効果は、sFRP1(secreted frizzled-related protein-1)を介したWNT(wingless/ integrated)シグナルの抑制によってもたらされていた。またN-TECは、ヒトOAの骨関節環境を異所性に再現したマウスモデルや、ヒツジのOAモデルの関節軟骨欠損部においても、生体内で生存・生着した。さらに、N-TECを2人の進行した膝OA患者(Kellgren and Lawrence Grade 3および4)の関節軟骨欠損の治療に使用すると、いずれも痛みと関節機能が改善し、副作用は認めなかった。これらのことから、OAの関節軟骨修復に対するN-TECの有効性が示され、今後は大規模な臨床試験が望まれる。

    加齢性骨粗鬆症

    老化免疫細胞はグランカルシンを分泌し骨の老化を促進する

    原題:

    Senescent immune cells release grancalcin to promote skeletal aging

    著者:

    Chang-Jun Li, Ye Xiao, Yu-Chen Sun, Wen-Zhen He, Ling Liu, Mei Huang, Chen He, Min Huang, Kai-Xuan Chen, Jing Hou, Xu Feng, Tian Su, Qi Guo, Yan Huang, Hui Peng, Mi Yang, Guang-Hui Liu, and Xiang-Hang Luo

    雑誌:

    Cell Metab., 33: 1957-1973 (2021)

    POINT!

    老化に伴い、骨では骨形成・骨吸収の代謝回転低下および骨髄内脂肪組織の増加が見られる。著者らは、質量分析法により若齢ラットおよび老齢ラットの骨髄中タンパク質を解析し、老齢ラットの骨髄で増加している分泌因子としてグランカルシン(GCA)を同定した。マウスにrGCAを投与したところ、骨形成の低下および骨髄内脂肪細胞の増加が見られたため、骨髄内におけるGCA増加が骨の老化を引き起こすことが示唆された。マウス骨髄細胞のsingle cell RNA-seq解析データから、GCAは骨髄マクロファージ、好中球から分泌されていることが考えられた。遺伝子改変マウスを用いた解析により、単球/マクロファージ、好中球においてGCAを欠損するマウス(Gca-Lyz2-CKO)では、野生型マウスと比較して加齢による骨量減少が抑制され、骨形成が増加し、骨髄内脂肪細胞が少ないことが示された。また、液体クロマトグラフィー/質量分析法および免疫沈降により、GCAが結合する膜タンパク質の探索を行い、plexin-B2(Plxnb2)が同定された。骨髄間葉系細胞特異的にPlxnb2を欠損するマウス(Prrx1Plxnb2-/+)およびGCA欠損マウスとのダブルノックアウトマウス(Gca-KO; Prrx1Plxnb2-/+)では、GCA欠損マウスにおける骨量増加が完全に打ち消された。これらの結果から、骨髄マクロファージおよび好中球から分泌されたGCAが骨髄間葉系細胞のPlxnb2に結合することにより、骨芽細胞分化を抑制し脂肪細胞分化を促進することが明らかになった。さらに、老齢マウスに対するGCA中和抗体投与により、骨量が増加し、骨髄中脂肪細胞が減少した。以上により、GCAが加齢性骨粗鬆症における新規治療標的となる可能性が示された。

    骨格前駆細胞

    生後の骨形成における骨格前駆細胞の系譜解析

    原題:

    Tracing the skeletal progenitor transition during postnatal bone formation

    著者:

    Hui Sophie Shu, Yiming Liam Liu, Xinyu Thomas Tang, Xinyi Shirley Zhang, Bin Zhou, Weiguo Zou, Bo O. Zhou

    雑誌:

    Cell Stem Cell 2021 28, 1–15, December 2. DOI:10.1016/j.stem.2021.08.010.

    POINT!

    骨組織には軟骨、骨髄、骨膜にそれぞれ異なるタイプの骨格前駆細胞が存在しており、そのうち軟骨前駆細胞と骨髄前駆細胞が内軟骨性骨化に寄与すると考えられている。しかしながら、軟骨前駆細胞と骨髄前駆細胞の階層的な関係性や機能的差異に関しては不明な点が多い。本論文で著者らは、軟骨前駆細胞と骨髄前駆細胞をそれぞれ時期特異的に標識するAcan-CreERマウス、LepR-CreERマウスに加え、軟骨前駆細胞と骨髄前駆細胞の系譜を同時に追跡可能なデュアルリコンビナーゼシステム(Acan-CreER; LepR-DreER; R26LSL-ZsGreen; R26RSR-tdTomato)を駆使することで、この2種類の骨格前駆細胞のヒエラルキーと役割分担を解析した。出生後の骨芽細胞は、思春期以前は主に軟骨前駆細胞から、思春期以降は骨髄前駆細胞から供給されていた。この骨芽細胞供給源の移行は、思春期の骨幹部(diaphysis)で起こり、徐々に骨端部(metaphysis)へと広がっていった。また骨髄前駆細胞は、主に胎児期の軟骨前駆細胞に由来していた。骨芽細胞分化に必須の転写因子であるRunx2を、周産期の軟骨前駆細胞あるいは成獣期の骨髄前駆細胞で欠損させると、それぞれ骨の長軸成長と短軸成長が阻害された。マウスを強制的にランニングさせる実験系では、周産期の軟骨前駆細胞からの骨芽細胞供給は増加したが、成体の骨髄前駆細胞からの骨芽細胞供給は増加しなかった。以上の結果から、発達期の一過性の軟骨前駆細胞が生後の骨髄前駆細胞の由来であること、軟骨前駆細胞と骨髄前駆細胞は時期特異的にそれぞれ骨組織の成長と維持に寄与することが示された。

    変形性関節症メタ解析

    変形性関節症における大規模GWASメタ解析

    原題:

    Deciphering osteoarthritis genetics across 826,690 individuals from 9 populations

    著者:

    Cindy G. Boer, Konstantinos Hatzikotoulas, Lorraine Southam, Lilja Stefánsdóttir, Yanfei Zhang, Rodrigo Coutinho de Almeida, Tian T. Wu, Jie Zheng, April Hartley, Maris Teder-Laving, Anne Heidi Skogholt, Chikashi Terao, Eleni Zengini, George Alexiadis, Andrei Barysenka, Gyda Bjornsdottir, Maiken E. Gabrielsen, Arthur Gilly, Thorvaldur Ingvarsson, Marianne B. Johnsen, Helgi Jonsson, Margreet Kloppenburg, Almut Luetge, Sigrun H. Lund, Reedik Mägi, Massimo Mangino, Rob R.G.H.H. Nelissen, Manu Shivakumar, Julia Steinberg, Hiroshi Takuwa, Laurent F. Thomas, Margo Tuerlings, arcOGEN Consortium, HUNT All In Pain, ARGO Consortium, Regeneron Genetics Center, George C. Babis, Jason Pui Yin Cheung, Jae Hee Kang, Peter Kraft, Steven A. Lietman, Dino Samartzis, P. Eline Slagboom, Kari Stefansson, Unnur Thorsteinsdottir, Jonathan H. Tobias, Andre´ G. Uitterlinden, Bendik Winsvold, John-Anker Zwart, George Davey Smith, Pak Chung Sham, Gudmar Thorleifsson, Tom R. Gaunt, Andrew P. Morris, Ana M. Valdes, Aspasia Tsezou, Kathryn S.E. Cheah, Shiro Ikegawa, Kristian Hveem, Tõnu Esko, J. Mark Wilkinson, Ingrid Meulenbelt, Ming Ta Michael Lee, Joyce B.J. van Meurs, Unnur Styrkársdóttir, and Eleftheria Zeggini

    雑誌:

    Cell, 184: 4784-4818 (2021)

    POINT!

    変形性関節症(Osteoarthritis; OA)は最も頻度の高い骨・関節疾患であり、世界各国で個別にゲノムワイド関連解析(GWAS)が複数行われていた。今回はアジアを含む9つの集団からなる13の国際GWASコホートを統合し大規模なメタ解析を行った報告である。100ヶ所の独立したリスクバリアントが同定され、そのうち52ヶ所は過去に報告のない新規の遺伝子座であった。さらに各種層別化解析を行い、部位(荷重/非荷重関節)、性別、早期発症OA特異的な遺伝子座を特定した。特に表現型別(膝関節、股関節、手関節、脊椎などの罹患部位や手術歴等で11に分類)での解析は初めてであり、表現型特異的・横断的な一塩基多型を同定した。また、OAの主症状である痛みに関連した表現型との遺伝的相関も示された。今回の成果はOAの病因病態解明に寄与するだけでなく、治療開発という観点からも大きな一歩となるであろう。

    腸内細菌叢

    3型自然リンパ球の機能不全は大腸がんの進行と免疫療法抵抗性を誘導する

    原題:

    Dysregulation of ILC3s unleashes progression and immunotherapy resistance in colon cancer

    著者:

    Jeremy Goc, Mengze Lv, Nicholas J. Bessman, Anne-Laure Flamar, Sheena Sahota, Hiroaki Suzuki, Fei Teng, Gregory G. Putzel, JRI Live Cell Bank, Gerard Eberl, David R. Withers, Janelle C. Arthur, Manish A. Shah, Gregory F. Sonnenberg

    雑誌:

    Cell, 184: 5015–5030 (2021)

    POINT!

    近年、免疫チェックポイント阻害剤(Immune Checkpoint Inhibitor: ICI)の効果と、がん患者の腸内細菌叢と間に相関関係があることが注目されている。また3型自然リンパ球(Innate Lymphoid Cell type3: ILC3)はCD4T細胞を制御することで、腸内細菌叢の構成を保つことが報告されている。そこで筆者らはILC3による腸内細菌叢の制御が、がんの進展やICIの効果に影響していると仮説をたてて検証した。まず大腸がん組織ではILC3が減少していることをヒト由来サンプル、およびマウス大腸がんモデル双方で確認した。ヒト腫瘍組織におけるILC3のRNA-seqではILC3関連遺伝子の発現が低下しており、機能に障害があることが示唆された。実際に腫瘍組織ではMHCII発現ILC3に対するCD4T細胞の比率が増加しており、ILC3によるCD4T細胞の制御に障害が起きていると考えられた。またMHCII陽性ILC3を欠損させたマウス(MHCΔILC3マウス)ではTh1細胞が減少し、腸内細菌叢が変化していた。この腸内細菌叢の変化はMHCΔILC3マウス由来のCD4T細胞の移入実験によって再現されたため、ILC3によるCD4T細胞の制御が腸内細菌叢に影響することが示された。さらにMHCΔILC3マウスでは大腸がんの悪性度が増すこと、ICIに抵抗性が示されることが示された。ICIへの抵抗性はMHCΔILC3由来の腸内細菌叢を野生型マウスに移植することによっても再現された。これらの結果より、ILC3はCD4T細胞を制御することで腸内細菌叢の恒常性を保ち、腫瘍免疫に関わるTh1細胞を維持していることが判明した。

    筋修復

    生理的損傷からの筋修復は細胞再構築のために核の移動を必要とする

    原題:

    Muscle repair after physiological damage relies on nuclear migration for cellular reconstruction

    著者:

    William Roman, Helena Pinheiro, Mafalda R. Pimentel, Jessica Segalés, Luis M. Oliveira, Esther García-Domínguez, Mari Carmen Gómez-Cabrera, Antonio L. Serrano, Edgar R. Gomes, Pura Muñoz-Cánoves

    雑誌:

    Science, 374, 355–359 (2021)

    POINT!

    骨格筋損傷ではサテライト細胞を介した筋再生が必要であることがよく知られているが、軽度の筋損傷などおけるサテライト細胞の活性化に依存しない筋線維の自己修復に関しては不明な点が多く残されていた。本研究で著者らは、培養筋管細胞を用いて細胞修復を評価したところ、局所的な筋損傷がカルシウム、Cdc42、PKC依存的なシグナル伝達経路を活性化し、筋管の細胞核が微小管やダイニンを介して損傷部位に引き寄せられることを発見した。この細胞核の移動により筋損傷部位に隣接して翻訳ホットスポットが形成され、損傷部位に細胞再構築のためのフィラミンCやHsp27などをコードするmRNAを局所的に供給し、迅速なタンパク質産生と修復に必要なmRNAの送達によりサルコメアの修復を促進する。実際の運動後に単離した筋線維でも翻訳ホットスポットやフィラミンCなどをコードするmRNAの損傷部位での増加が観察された。以上の結果から、筋線維がサテライト細胞非依存的な自己修復機構によっても維持されていることが明らかにされた。

    骨折治癒

    マクロファージはマウスの骨再生におけるtype H血管新生に必須である

    原題:

    Macrophages are requisite for angiogenesis of type H vessels during bone regeneration in mice

    著者:

    Yukihiro Kohara, Riko Kitazawa, Ryuma Haraguchi, Yuuki Imai, Sohei Kitazawa

    雑誌:

    Bone,154: 116200. doi: 10.1016/j.bone.2021.116200. Online ahead of print. (2021)

    POINT!

    マクロファージは骨折治癒の早期〜晩期にかけて骨折部位局所に認められ、再生過程を制御する。M1、M2などの種々のサブセットの関与や、機能性分子として炎症性サイトカインやLRP1などを産生することが報告されているが、報告されている以外にも多くの機能を有していると多くの研究者は考えている。著者らは、クロドロネートリポソームを使用して、ドリリングによる骨損傷部位からマクロファージを除去したところ、骨芽細胞による骨形成が著しく抑制されることを見出した。このとき、EndomucinおよびCD31をマーカーとするtype H血管が減少していた。そこで、骨損傷部位のマクロファージに由来する血管新生を誘導しうる因子の遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、血管新生や創傷治癒に関わる遺伝子群 (Ngptl4, Ccl12, Ccl2, Tgfbi, Plau (uPA), B4galt1, Tnc, Tgfb1) の発現がマクロファージの除去によって低下することが示された。この中で、Tgfbi, Plau, Tgfb1 (TGF-β1) の発現は骨の細胞の中ではマクロファージにおいて高いことから、これらの分子がマクロファージ由来の骨再生誘導因子であることが示唆された。uPA阻害剤またはTGF-β1受容体阻害剤を投与したところ、骨再生は遅延した。以上より、骨折部位に出現するマクロファージはuPAやTGF-β1により血管新生や骨形成を誘導することで骨折治癒を促進すると考えられた。

    IL-17A産生γδT細胞

    IL-17A産生γδT細胞はアルツハイマー病初期のシナプス形成障害と認知機能障害を引き起こす

    原題:

    IL-17 triggers the onset of cognitive and synaptic deficits in early stages of Alzheimer’s disease

    著者:

    Helena C. Brigas, Miguel Ribeiro, Joana E. Coelho, Rui Gomes, Victoria Gomez-Murcia, Kevin Carvalho, Emilie Faivre, Sara Costa-Pereira, Julie Darrigues, Afonso Antunes de Almeida, Luc Buee, Jade Dunot, Helene Marie, Paula A. Pousinha, David Blum, Bruno Silva-Santos, Luısa V. Lopes, Julie C. Ribo

    雑誌:

    Cell Rep., 36, 109574 (2021)

    POINT!

    近年、アルツハイマー病 (AD) における神経炎症が注目されている。免疫細胞は脳実質だけではなく、髄膜にも見出されておりその機能の解析が行われている。加齢やADにおいて髄膜のリンパ管に異常が見られ、マウスにおけるリンパ管の欠損はADを悪化させる。著者らは以前に髄膜に含まれるIL-17A産生γδT細胞が海馬の神経細胞に作用し、記憶機能を向上させることを示した。そこで、本論文ではこの細胞がADにどのように関与するかを検討した。3xTg-ADモデルマウスを解析したところ、生後約半年以降で髄膜のIL-17Aが増加すること、それらは主にγδT細胞に由来することを見出した。これらの細胞のTCRγδ鎖のレパトア解析の結果、Vγ1およびVγ4の両方が陰性であることから、神経炎症およびその他の様々な炎症過程でIL-17Aを産生するVγ6陽性細胞であることが示唆された。IL-17Aの中和抗体を3xTg-ADマウスの脳内に生後3.5ヶ月より持続的に投与したところ、記憶機能が改善した。このマウスの神経を評価したところ、IL-17A中和によるアミロイド前駆体やtauタンパク質の蓄積の改善はなかったものの、EPSPや長期増強などのシナプス機能の指標となるパラメーターの改善が見られた。以上より、IL-17A産生γδT細胞はアルツハイマー病の病態下では、定常状態とは異なり、シナプス機能を抑制し、記憶機能を低下させると考えられる。

    幹細胞

    線維芽細胞における持続的なJunB活性化は幹細胞ニッチの相互作用を妨げ皮膚を老化させる

    原題:

    Persistent JunB activation in fibroblasts disrupts stem cell niche interactions enforcing skin aging

    著者:

    Pallab Maity, Karmveer Singh, Linda Krug, Albert Koroma, Adelheid Hainzl, Wilhelm Bloch, Stefan Kochanek, Meinhard Wlaschek, Marina Schorpp-Kistner, Peter Angel, Anita Ignatius, Hartmut Geiger, and Karin Scharffetter-Kochanek

    雑誌:

    Cell Rep., 36 109634 (2021)

    POINT!

    線維芽細胞は生体内の結合組織に豊富に存在する細胞であり、様々なサブセットが存在し、その機能にはまだ不明な点が多く残されている。近年、線維芽細胞は老化に伴い炎症性サイトカインの産生増加などの細胞老化関連分泌現象 (SASP) を示すようになる他、IGF-1などの成長因子の産生が減少することが明らかになった。線維芽細胞のミトコンドリアによるスーパーオキシドアニオン除去の不全は皮膚をはじめとした様々な臓器の萎縮に繋がり、Superoxide dismutase (SOD)2欠損マウスでも同様の所見が確認されている。Col1a2–Creマウスを用いて線維芽細胞特異的にSOD2を欠損させたところ、コラーゲン合成が低下し皮膚組織が菲薄化した。このマウスでは高齢マウスと同様に、皮膚組織や毛包で幹細胞が減少していた。SOD2欠損皮膚線維芽細胞および高齢マウスの皮膚線維芽細胞の遺伝子発現を網羅的に解析したところ、細胞周期チェックポイント、細胞老化、酸化ストレス、細胞外基質の分解に関わる遺伝子発現の上昇を認めた。一方、細胞外基質の合成、IGF-1シグナル、糖・脂質代謝、リボソーム関連遺伝子の発現は低下していた。さらに、SOD2欠損皮膚組織では、サイクリンD1タンパク質量やRBタンパク質のリン酸化が低下しており、細胞増殖の抑制性の変化が示唆された。一方、CDK阻害因子p16INK4Aが増加していたことから、老化状態にあると考えられた。組織レベルでも、IGF-1および受容体の減少や粗面小胞体の減少を認めた。SOD2欠損皮膚線維芽細胞をロテノン処理し、活性酸素種 (ROS) を増加させたところp16INK4Aが増加した。また、これらの細胞ではIGF-1発現が低レベルであった。SOD2を過剰発現させた細胞ではIGF-1の発現は増加した。皮膚線維芽細胞におけるROSの増加またはSOD2欠損はJunB/AP1シグナルを増強した。JunBはp16およびIgf1のプロモーターに結合した。SOD2とJunBの両方を線維芽細胞特異的に欠損するマウスを作出したところ、皮膚の萎縮や幹細胞の減少といった老化所見は認められなかった。また、SOD2欠損マウスにIGF-1を投与したところ、同様の治療効果が得られた。以上より、SOD2減少によるROSの上昇はJunBを介してp16INK4A増加とIGF-1低下を誘導し、皮膚の老化を誘導することが明らかになった。

    成長板休止細胞層

    成長板休止細胞層の軟骨細胞はWnt阻害環境で維持される

    原題:

    Chondrocytes in the resting zone of the growth plate are maintained in a Wnt-inhibitory environment

    著者:

    Shawn A Hallett, Yuki Matsushita, Wanida Ono, Naoko Sakagami, Koji Mizuhashi, Nicha Tokavanich, Mizuki Nagata, Annabelle Zhou, Takao Hirai, Henry M Kronenberg, Noriaki Ono

    雑誌:

    eLife, 10: e64513(2021)

    POINT!

    成長板休止細胞層(Resting zone of the gowth plate: RZ)の軟骨細胞は細胞周期が長いことを特徴とし、副甲状腺関連タンパク(PTHrP)を発現している骨格系幹細胞(Skeletal stem cell: SSC)を含む。このRZに存在するSSCは増殖層軟骨細胞の供給源であるうえに、増殖層軟骨細胞の増殖能を維持するPTHrPを産生することで成長板の長軸方向の伸長に貢献する。これまでのところRZの軟骨細胞がどのように維持されているのかは不明であった。著者らは新規作製したCol2a1発現細胞特異的にtetracycline-controlled transactivator (tTA)を発現するマウス(Col2a1-tTA)とtTAによって核内にEGFPが発現するマウス(TRE-H2B-EGFP)を交配しChondrocyte-specific Tet-Off systemを確立した。Chondrocyte-specific Tet-Off system ではdoxycycline投与によって核内へのEGFPの集積が停止するため分裂後の細胞ではEGFPの発現が希釈される。筆者らはEGFPの発現が強い細胞(Label-retaining chondrocyte: LRC)=分裂していない細胞がRZに局在していることを蛍光顕微鏡で確認した。またEGFPの発現が弱い細胞(non-LRCs)に比べLRCの方がEdU陽性細胞の頻度が少ないことから細胞周期が長いことを確認した。筆者らはLRCsとnon-LRCsのRNA-seqを行い発現遺伝子を比較した。その結果LRCsではWnt signalingのinhibitor (Sfrp1, Sfrp5, Dkk2, Wif1, Notum, Fzd6) がnon-LRCsではWnt signalingのactivator(Rspo3, Rspo4 , Wnt10b)の発現が増加していることがわかった。このことからRZの軟骨細胞の維持にはWnt signalingの阻害が必要であることが示唆された。次にWnt signalingがどのようにRZを制御しているかを解明するために、RZのSSC特異的にWnt/β-catenin シグナルを活性化するPthlh-creERT; APC flox/+マウスを解析した。このマウスではSSCであるPTHrP陽性細胞が減少し、さらに軟骨柱の形成も阻害されていた。これらの結果からRZの維持と分化にはWnt signaling阻害が必須であることが示された。

    骨折リスク

    RSPO3はマウスとヒトの海綿骨と骨折リスクに重要である

    原題:

    RSPO3 is important for trabecular bone and fracture risk in mice and humans

    著者:

    Karin H Nilsson, Petra Henning, Maha El Shahawy, Maria Nethander, Thomas Levin Andersen, Charlotte Ejersted, Jianyao Wu, Karin L Gustafsson, Antti Koskela, Juha Tuukkanen, Pedro P C Souza, Jan Tuckermann, Mattias Lorentzon, Linda Engström Ruud, Terho Lehtimäki, Jon H Tobias, Sirui Zhou, Ulf H Lerner, J Brent Richards, Sofia Movérare-Skrtic, Claes Ohlsson

    雑誌:

    Nat. Commun., 12: 4923, doi: 10.1038/s41467-021-25124-2 (2021)

    POINT!

    高齢化に伴い、世界各国が骨粗鬆症性骨折の増加という問題に直面している。RSPO3遺伝子座は骨折との遺伝的関連性が報告されているが、その原因遺伝子やメカニズムは不明である。本研究では、筆者らはヒトの遺伝学的解析とマウスの機能解析によってRSPO3の骨代謝と骨折における働きを明らかにした。ヒトの大規模遺伝子解析において、RSPO3遺伝子座の骨折抑制アレルはmRNAおよびたんぱく質レベルでのRSPO3発現、海綿骨骨密度の増加、前腕骨遠位部の骨折リスクの低下と関連していた。ヒトとマウスの骨組織では、骨芽細胞前駆細胞と骨芽細胞がRSPO3を発現していた。筆者らはRunx2-creRspo3flox/floxマウス、Dmp1-creRspo3flox/floxマウス、CAGGCre-ER-Rspo3flox/floxマウスをそれぞれ作製し、マイクロCTや骨形態の評価によってRunx2-creRspo3flox/floxマウスとタモキシフェンを投与したCAGGCre-ER-Rspo3flox/floxマウスで著明に海綿骨量が減少することから、骨芽細胞が骨におけるRSPO3の主要な供給源で、成獣マウスの椎体海綿骨量と骨強度の重要な制御因子であることを示した。さらに、マウス骨芽細胞の培養実験により、骨芽細胞から分泌されたRSPO3が骨芽細胞の分化と増殖を促進することも明らかにした。以上のことから、RSPO3はマウスの椎体海綿骨骨量と骨強度、そしてヒトの骨折リスクを制御していると考えられる。

    骨髄微小環境

    鎌状赤血球症では、骨髄間葉系幹細胞(MSC)の造血幹細胞維持能力が減弱している

    原題:

    Murine bone marrow mesenchymal stromal cells have reduced hematopoietic maintenance ability in sickle cell disease

    著者:

    Alice Tang, Ana Nicolle Strat, Mahmudur Rahman, Helen Zhang, Weili Bao, Yunfeng Liu, David Shi, Xiuli An, Deepa Manwani, Patricia Shi, Karina Yazdanbakhsh, Avital Mendelson

    雑誌:

    Blood, doi: 10.1182/blood.2021012663 (2021)

    POINT!

    鎌状赤血球症(SCD)は、溶血性貧血・血管閉塞を特徴とした先天性の血液疾患である。重度の貧血や血管閉塞は組織の低酸素化を引き起こし、多臓器障害の原因となりうる。SCDの治療選択肢の1つに造血幹細胞(HSC)移植があるが、HSCの生着には適正な骨髄微小環境が必要である。しかし、SCDでは、HSCのホメオスタシスを厳密に制御する骨髄間葉系幹細胞(MSC)にScf、Cxcl12遺伝子の発現低下(いずれもHSC維持に関与する遺伝子)が見られることが知られている。このことがSCDにおけるHSC生着率の低下に関与している可能性が考えられるが、SCDにおけるMSCの機能は明らかになっていない。そこで著者らは、SCDモデルマウスを使用し、SCDにおけるMSCの機能・HSCとの関連性に解析した。まず、SCDマウスにおける特徴として、MSCにおけるScfOpn遺伝子発現減少、骨髄中HSC数減少、末梢血中HSC数増加が見られることを確認した。この結果から、SCDでは、MSCによるHSCの維持能力が低下していることが示唆された。次に、先行研究(赤血球から遊離したヘムが血管内皮細胞のTLR4シグナルを活性化することにより、血管収縮・炎症反応亢進が誘発される)を元に、ヘム、TLR4に着目し、これらとMSCの関連性を検討した。WTマウスへのヘミン(ヘムの一種)投与、SCDマウスへのTLR4阻害剤投与実験を実施し、MSCにおけるヘムと、それに伴うTLR4シグナル活性化がMSCのHSC維持能力の低下に寄与していること明らかにした。以上より、SCDではMSCの機能的特性が損なわれている。従って、SCDにおける骨髄移植では造血幹細胞の生着を最適化するために、TLR4経路の抑制が治療ターゲットとなりうる可能性が示された。

    がん性疼痛

    STINGは免疫および神経の調整を介して骨転移巣の疼痛を緩和する

    原題:

    STING suppresses bone cancer pain via immune and neuronal modulation

    著者:

    Kaiyuan Wang, Christopher R. Donnelly, Changyu Jiang, Yihan Liao, Xin Luo, Xueshu Tao, Sangsu Bang, Aidan MvGinnis, Michael Lee, Matthew J. Hilton & Ru-Rong Ji

    雑誌:

    Nat. Commun. 12: 4558 (2021)

    POINT!

    骨転移は強い疼痛をもたらすことが知られており、効果的な治療法の開発が重要な課題となっている。筆者らは、新規治療薬の候補としてSTING (stimulator of interferon genes)に注目した。STINGは小胞体局在の4回膜貫通性タンパク質で、感染などにより細胞質に異種の二本鎖DNAが出現すると活性化されtype-I IFN (IFN-I)合成を促進する。2021年に、筆者らはSTINGの活性化によるIFN-I分泌促進が生理的・病的状態における痛覚を抑制することをNatureに報告した。しかし、骨転移の疼痛に対する効果は不明であった。筆者らはマウス肺がん細胞株LLCを大腿骨骨髄腔へ移入するモデルを用いて、STING agonistの投与により骨転移モデルマウスにおける足の疼痛反応および運動機能障害が改善することを示した。また、STING agonistの投与は骨転移巣における骨量低下を抑制した。これらの効果は、Ifnar1 KOマウスにおいては見られなかったことから、STINGの活性化によるIFN-Iの増加が関与していることが考えられた。続いて、感覚神経への影響を詳細にみるためにマウスのL3-L5 DRGをex vivoで解析したところ、骨転移モデルマウスではナイーブマウスと比較して過興奮状態にあり、STING agonistの投与により過興奮状態は抑制された。一方で感覚神経特異的にIfnar1を欠損させたマウスではSTING agonistの投与による疼痛抑制が打ち消され、IFN-Iシグナルによる直接的な感覚神経の抑制が示された。さらに、腫瘍免疫への影響をみたところ、STING agonist投与により骨髄中のCD8+ T細胞の割合が増加し、腫瘍の進展も抑制されていた。骨解析を行ったところ、STING agonist投与は骨転移巣における破骨細胞の増加を抑制することが示され、in vitroでの検討によりIFN-Iシグナルが破骨細胞分化を抑制することが示された。以上の結果により、STINGによるIFN-Iシグナルの活性化は、骨転移巣において感覚神経の興奮を直接抑制するだけでなく、CD8+ T細胞の活性化および破骨細胞の抑制を介して、腫瘍の進展と骨破壊を抑制し、痛覚刺激性メディエーターの分泌を抑制していることが明らかになった。STING agonistは複合的な作用により骨転移の疼痛を緩和する新規治療薬となる可能性が示された。

    免疫不全症

    ヒトAIOLOS変異はIKAROSに干渉し、獲得免疫系を撹乱する

    原題:

    A variant in human AIOLOS impairs adaptive immunity by interfering with IKAROS

    著者:

    Motoi Yamashita, Hye Sun Kuehn, Kazuki Okuyama, Satoshi Okada, Yuzaburo Inoue, Noriko Mitsuiki, Kohsuke Imai, Masatoshi Takagi, Hirokazu Kanegane, Masahiro Takeuchi, Naoki Shimojo, Miyuki Tsumura, Aditya K. Padhi, Kam Y. J. Zhang, Bertrand Boisson, Jean-Laurent Casanova, Osamu Ohara, Sergio D. Rosenzweig, Ichiro Taniuchi, Tomohiro Morio.

    雑誌:

    Nat. Immunol., 22: 893-903 (2021)

    POINT!

    IKAROS zinc-finger (IKZF)ファミリーは、造血に不可欠な転写因子群である。AIOLOS(IKZF3)はIKALOS(IKZF1)と会合し、ゲノムに結合することで遺伝子発現を制御している。本研究において、筆者らは免疫不全症の家系からAIOLOSのアミノ酸置換を伴う変異を同定した。変異型AIOLOSを導入にしたマウスでは、B細胞の分化障害が観察されたが、二量体化に関わるドメインを欠損させることで、B細胞分化の回復が認められた。変異型AIOLOSとIKALOSのヘテロダイマーは、適切なゲノム領域に結合することがでず、IKALOSの機能を阻害することでリンパ球の分化を障害することが示された。以上より筆者らは、免疫不全症が生じる新規分子メカニズムを解明し、その治療戦略を示した。

    アルツハイマー病

    アストロサイト由来のIL-3はミクログリアに作用しアルツハイマー病を抑制する

    原題:

    Astrocytic interleukin-3 programs microglia and limits Alzheimer’s disease

    著者:

    Cameron S McAlpine, Joseph Park, Ana Griciuc, Eunhee Kim, Se Hoon Choi, Yoshiko Iwamoto, Máté G Kiss, Kathleen A Christie, Claudio Vinegoni, Wolfram C Poller, John E Mindur, Christopher T Chan, Shun He, Henrike Janssen, Lai Ping Wong, Jeffrey Downey, Sumnima Singh, Atsushi Anzai, Florian Kahles, Mehdi Jorfi, Paolo Fumene Feruglio, Ruslan I Sadreyev, Ralph Weissleder, Benjamin P Kleinstiver, Matthias Nahrendorf, Rudolph E Tanzi, Filip K Swirski

    雑誌:

    Nature, 595, 701-706. (2021)

    POINT!

    脳組織には神経細胞を上回る数のグリア細胞が存在し、生理的・病理的条件下で様々な機能を発揮する。しかし、代表的な神経疾患であるアルツハイマー病 (AD) におけるグリア細胞の機能には不明な点が多い。IL-3は血液幹細胞の増殖因子と考えられていたが、その他にも神経細胞のアポトーシス抑制など、多様な機能を有するサイトカインである。マウスにおいて、IL-3は血清よりも脳脊髄液で4倍の濃度を示したことから、IL-3は脳内で産生され、神経保護作用を発揮することが示唆された。そこで、IL-3を欠損するADモデルマウス (Il3–/–5xFADマウス) の解析を行ったところ、短期記憶と空間記憶機能の障害を見出した。IL-3レポーター/folxマウス (Il3GFPf/fマウス) の脳組織の解析から、アストロサイトの4%がIL-3陽性であった一方、ミクログリアや他の非血球系細胞はIL-3陰性であることが分かった。ADモデルマウスの脳組織におけるIL-3発現はコントロールマウスと同程度であったことから、IL-3はアストロサイトで恒常的に発現すると考えられた。IL-3Rα発現細胞を探索し、ミクログリアがIL-3に応答しうることが見出された。老齢マウスでは約半数のミクログリアがIL-3Rα陽性であった。これらの細胞はアミロイド斑周辺に存在しており、アミロイドを除去している可能性が示唆された。TREM2/DAP12複合体は脳内ではミクログリアで発現し、ミクログリア機能に重要であることが知られている。Trem2−/5xFADマウスではAD発症に伴うIl3raの発現上昇が減弱していた。これらの結果から、ミクログリアのIL-3応答性はTREM2/DAP12シグナル依存的であると考えられた。ヒトの脳組織においても、IL-3はアストロサイトで発現すること、ADの有無によらずIL-3は一定レベルの発現を示すこと、IL-3RαはAD患者のミクログリアで発現が高いことが確認された。ADのリスク因子として知られるAPOE4遺伝型のサンプルでは特にIL-3Rαが高発現を示した。次に、ミクログリアの活性化状態とアミロイド斑除去能を透明化ホールマウント法により評価した。5xFADマウスではミクログリアはアメボイド型 (活性化状態) を呈し、アミロイド斑の凝集像が認められた。一方、Il3–/–5xFADマウスではミクログリアはラミファイド型 (定常状態) で散在しており、アミロイドの凝集も認められなかった。マイクロ流路を用いた実験により、IL-3によってヒトiPS細胞由来のミクログリアがヒトアミロイドβやリン酸化タウタンパク質に向かって遊走することが示された。アストロサイト特異的Il3欠損ADモデルマウス (タモキシフェン投与Il3GFPfl/flAldh1l1CreERT25xFADマウス) およびミクログリア特異的IL-3Rα欠損ADモデルマウス (タモキシフェン投与Il3rafl/flCx3cr1CreERT25xFADマウス) では、アミロイド斑の沈着が増加し記憶機能の低下が認められた。一方、5xFADマウスの側脳室にIL-3を継続的に投与したところ、記憶機能の改善が見られた。以上より、ADで活性化したミクログリアはIL-3Rαを高発現し、アストロサイトが恒常的に発現するIL-3に対する応答性が高まり、アミロイド斑が除去され記憶低下が防がれることが示された。さらに、IL-3投与がAD治療に有効である可能性が示された。

    腸内細菌

    腸内細菌は腸上皮細胞が細胞死に伴い放出する栄養を利用する

    原題:

    Microbes exploit death-induced nutrient release by gut epithelial cells

    著者:

    Christopher J. Anderson, Christopher B. Medina, Brady J. Barron, Laura Karvelyte, Tania Løve Aaes, Irina Lambertz, Justin S. A. Perry, Parul Mehrotra, Amanda Gonçalves, Kelly Lemeire, Gillian Blancke, Vanessa Andries, Farzaneh Ghazavi, Arne Martens, Geert van Loo, Lars Vereecke, Peter Vandenabeele, Kodi S. Ravichandran

    雑誌:

    Nature, 596 262–267 (2021)

    POINT!

    「制御された細胞死」は様々な組織で見られる現象で、生体の発生や恒常性の維持に重要である。腸管上皮のターンオーバーはその代表例である。腸管には多数の細菌が存在し、腸管上皮死細胞と何らかの関係があると古くから指摘されているが、直接的な関係は証明されていなかった。著者らはまず、腸管の組織片を摘出し、ex vivoでスタウロスポリンまたはドキソルビシンによりアポトーシスを誘発した。死細胞の上清をSalmonellaに添加したところ、細菌の増殖活性が上昇した。Vil-cre+/Casp3/7fl/flマウスを用いることにより腸管上皮細胞でアポトーシスが抑制される条件で同様の実験を行ったところ、Salmonellaの増殖促進は認められなかったことから、腸管上皮死細胞より放出される成分が重要であることが示された。RIPK1、MLKL、GasD、Caspase1、Caspase11といったネクロプトーシスやパイロプトーシスに必須の分子を欠く条件ではコントロールと同様に細菌増殖を認めたことから、Caspase3/7依存的なアポトーシスが増殖に必要であることが明らかになった。また、K. pneumoneaeE. coliもアポトーシス細胞の上清により増殖したことから、多くの細菌で普遍的にな現象であることが示唆された。アポトーシス細胞の上清の分子量による分画、加熱処理や酵素処理の実験の結果、細菌増殖活性を有するのは、3 kDa未満の低分子であると考えられた。著者らは、アポトーシスに伴う栄養の放出現象をDINNRと名付けた。次に、DINNRで増殖を誘導した細菌の遺伝子発現を網羅的に解析し、抽出された増殖に関与しうる遺伝子をノックアウトした。その結果、ピルビン酸ギ酸リアーゼのpflBを欠損するSalmonellaはDINNR誘導性の増殖が認められなかった。アポトーシス細胞からはピルビン酸が多く含まれ、ピルビン酸キナーゼ阻害剤シコニンはDINNR誘導性細菌増殖を阻害したことから、ピルビン酸が特に重要であることが示された。細胞膜チャネル分子Panx1のドミナントネガティブ体を発現する細胞はDINNR誘導性細菌増殖を誘導しないことから、Panx1は細菌増殖因子の放出に寄与することが示された。細菌の競合感染アッセイの結果、pflBを欠損するSalmonellaは野生型に比べ定着能が低かった。Vil-cre+/Casp3/7fl/flマウスでは、野生株/PflB欠損株比が小さいことから、PflBによる生存はアポトーシス依存的であることが生体レベルで示された。癌化学療法は、腸管内のProteovbacteria増加を引き起こすことが知られている。化学療法に伴う腸管上皮のアポトーシスが細菌の増加に寄与するかを検討するために、マウスにドキソルビシンを投与した。これにより、腸管におけるSalmonellaは増加した。Vil-cre+/Casp3/7fl/flマウスにドキソルビシンを投与し、Salmonella野生株/PflB欠損株競合アッセイを行ったところ、これらのマウスでは野生株/PflB欠損株比は低かった。Panx1–/–マウスにドキソルビシンを投与し、同様のアッセイを行ったところ、野生株/PflB欠損株比は低かった。以上より、腸管上皮細胞のアポトーシスによりPanx1より放出される低分子は、腸内細菌に利用され、増殖活性を増大させることが示された。

    筋萎縮

    筋萎縮におけるKLF5依存性経路の発見とKLF5を標的とした筋萎縮治療薬の開発

    原題:

    Identification of a KLF5-dependent program and drug development for skeletal muscle atrophy

    著者:

    Liu L, Koike H, Ono T, Hayashi S, Kudo F, Kaneda A, Kagechika H, Manabe I, Nakashima T, Oishi Y

    雑誌:

    Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 118(35), e2102895118 (2021)

    POINT!

    Krüppel-like factor 5 (KLF5) は細胞の増殖や分化を幅広く制御する転写因子である。著者らは、過去にこの分子が筋細胞分化の過程でMyoDやMef2と協調して分化を制御することを明らかにした。今回、著者らは筋萎縮の過程でもKLF5が機能しうるかを検討した。筋芽細胞株C2C12細胞の筋線維への分化系に対してデキサメタゾン (Dex) を添加することで筋萎縮を誘導したところ、Klf5遺伝子およびKLF5タンパク質の発現が速やかに誘導された。骨格筋特異的Klf5欠損マウス (CkmCre Klf5f/fマウス) を解析したところ、定常状態では腓腹筋の筋線維径や筋機能に有意な変化は認められなかった。このマウスに対してKLF5発現上昇を伴うin vivoの筋萎縮モデルとして尾部懸垂モデルを実施した。これにより後肢への荷重を除去したところ、対照群マウスの腓腹筋やヒラメ筋の筋量およびMyl2発現が減少したのに対して、CkmCre Klf5f/fマウスではそのような変化は認められなかった。以上より、KLF5は筋萎縮時に誘導され萎縮を進行させる機能を有することが示された。このマウスより得られた初代培養筋衛星細胞 (SC) に対してDexを添加したところ、コントロールマウス由来のSCと比べ萎縮が著しく抑制されていた。Dex処理SCの遺伝子発現の網羅的解析から、筋萎縮に伴い発現変動する遺伝子群のうち、特に代謝に関わる遺伝子の多くがKLF5依存的であることが見出された。ChIP-Seq解析およびルシフェラーゼアッセイの結果、筋萎縮時にはKLF5はFoxo1と協調してFbxo32発現を誘導することが明らかになった。KLF5の筋萎縮誘導能が示されたことから、著者らはKLF5阻害による筋萎縮治療法の確立を試みた。レチノイン酸受容体アゴニストのAm80 (タミバロテン) はKLK5の発現と活性を抑制することが知られている。これをin vitroおよびin vivoの筋萎縮モデルに投与したところ、Fbxo32のプロモーター活性が低下し、筋萎縮が抑制された。In vivoでの筋萎縮抑制作用は、尾部懸垂が14日という長期間に及んだ場合でも認められた。サルコペニア治療の実臨床においてもKLF5が治療標的となりうるか検討するために、ヒトを対象としたRNA-Seq公共データベースを用いた解析を行なった。寝たきりや加齢といった条件下でKLF5発現は上昇し、また、KLF5発現はFBXO32TRIM63の発現と相関していた。このことから、ヒトの場合においてもAm80による筋萎縮抑制が可能と考えられる。Am80は急性前骨髄球性白血病治療薬として使用されている実績があることから、新薬を開発する場合と比較して低コスト、短期間でサルコペニア治療の臨床に用いられることが期待できる。

    骨格幹細胞老化

    老化した骨格幹細胞は炎症性変性ニッチをつくる

    原題:

    Aged skeletal stem cells generate an inflammatory degenerative niche

    著者:

    Thomas H. Ambrosi, Owen Marecic, Adrian McArdle, Rahul Sinha, Gunsagar S. Gulati, Xinming Tong, Yuting Wang, Holly M. Steininger, Malachia Y. Hoover, Lauren S. Koepke, Matthew P. Murphy, Jan Sokol, Eun Young Seo, Ruth Tevlin, Michael Lopez, Rachel E. Brewer, Shamik Mascharak, Laura Lu, Oyinkansola Ajanaku, Stephanie D. Conley, Jun Seita, Maurizio Morri, Norma F. Neff, Debashis Sahoo, Fan Yang, Irving L. Weissman, Michael T. Longaker & Charles K. F. Chan

    雑誌:

    Nature, doi: 10.1038/s41586-021-03795-7 (2021)

    POINT!

    老化は細胞内因性の変化によって引き起こされるが、細胞外因性の因子もその開始や進行に関わることが知られている。本研究で著者らは、マウス骨格幹細胞(SSC)自体が加齢することで骨髄ニッチでのシグナル伝達が変化して骨と血球系の分化が偏り、骨の脆弱化が誘導されることを明らかにした。免疫不全NSGマウスの腎被膜下移植実験から、加齢したSSCは骨軟骨形成能力が低下する一方で、炎症性サイトカインや骨吸収促進サイトカインを高レベルで発現する間質細胞により分化しやすくなることが明らかになった。老齢マウスと若齢マウスとの並体結合(ヘテロクロニック)実験では、老齢マウス側SSCの骨軟骨形成能の低下は回復せず、老齢マウス側の骨量や骨折再生実験における仮骨BMDやSSCの頻度およびin vitro骨軟骨分化能も改善しなかった。対照的に、ヘテロクロニック並体結合における若齢マウス側のBMDとSSC頻度は、若齢マウス同士の並体結合と比較して有意に低下し、骨折再生実験における破骨細胞活性が上昇した。また、造血幹細胞(HSC)加齢の特徴としてミエロイド系分化への偏りが知られているが、2ヶ月齢マウスから採取したHSCを2ヶ月齢または24ヶ月齢のマウスに移植したところ、ドナー由来末梢血細胞および骨髄細胞の組成は24ヶ月齢マウスでミエロイド系に偏っていた。次に、24ヶ月齢マウスのSSC由来間質細胞と共培養したHSCを移植すると、2ヶ月齢マウスSSC由来間質細胞を用いた場合と比較して、末梢血中および骨髄中のミエロイド系細胞の割合が増加した一方、リンパ系細胞は減少した。これらの結果から、老化SSC由来細胞が加齢に伴う造血系のミエロイド系分化への偏りを促進し、SSCの老化が造血系の老化のドライバーになっていることが示唆された。さらに、3日齢、2ヶ月齢、24ヶ月齢マウスの長管骨由来SSCのシングルセルRNA-seq解析から、加齢マウスにおけるSSCの機能低下とトランスクリプトーム多様性の低下が関連しており、加齢SSCが骨形成能を失う一方で造血系細胞との相互作用が増加し、これが骨髄ニッチの変化に寄与している可能性が示された。また、経時的なSSC、BCSP、Thy1+および6C3+細胞(著者らが以前同定したSSC系列細胞ポピュレーション)のトランスクリプトーム解析の結果、RANKLは2ヶ月齢から高いレベルで発現していたのに対し、CSF1は24ヶ月齢マウスでの上昇が顕著であったことから、著者らはCSF1に着目した。加齢SSCにおける骨軟骨形成能低下と破骨細胞分化促進ニッチ形成能上昇を制御するため、BMP2、CSF1抗体、2つの組み合わせ、またはPBSを含むハイドロゲルを24ヶ月齢マウスの骨折モデル局所に投与した。その結果、BMP2とCSF1抗体の組み合わせにより加齢したSSCを再活性化させ、同時に炎症や破骨細胞形成を促進する環境を抑制することで、若齢と同等レベルに戻すことが可能であった。また、高用量のCSF1抗体とBMP2の組み合わせは骨折修復後の力学的強度改善能が低かったことから、健康的な骨リモデリングと骨再生のためには、SSC系列細胞から分泌されるCSF1の量が厳密にコントロールされている必要があることが示唆された。以上から、本研究は骨格の老化の原因となっている複雑で多因子性のメカニズムを明らかにし、老化した骨格を若返らせることができる可能性を示した。

    骨間質細胞

    骨格形成における骨間質細胞の部位特異的な専門化および運命決定

    原題:

    Regional specialization and fate specification of bone stromal cells in skeletal development

    著者:

    Kishor K. Sivaraj, Hyun-Woo Jeong, Backialakshmi Dharmalingam, Dagmar Zeuschner, Susanne Adams, Michael Potente, and Ralf H. Adams

    雑誌:

    Cell Rep, 36, 109352 (2021)

    POINT!

    骨間質は、骨形成や造血の制御だけでなく骨折の治癒や病気の進行にも寄与している。骨間葉系間質細胞(BMSC)は、分子的・機能的に異なる特性を持つ様々なサブポピュレーションを含む不均一な細胞集団である。BMSCのサブセット間の関係性や、その制御機構についてはよくわかっていなかった。本研究で著者らは、Pdgfra-GFPマウスやHey1-GFPマウスを用いることで、骨幹端のPDGFRa+b+Hey1+ BMSC(mpMSC)と骨幹のPDGFRa+b+Hey1 BMSC(dpMSC)が異なる性質をもつことを発見した。これらの細胞のRNA-seq解析や培養実験によって、dpMSCと比べてmpMSCはBMSCマーカー遺伝子や血管・骨格発生に関連する遺伝子発現が高く、コロニー形成能や骨、脂肪、軟骨の各系統への分化能も有意に高かった。また、Pdgfrb-CreERT2Lepr-CreERT2およびGli1-CreERT2のそれぞれのマウスを Rosa26-mTmGレポーターマウスと交配してタモキシフェン投与により行った系統追跡実験とシングルセルRNA-seq解析により、レプチン受容体陽性細網細胞を含むdpMSCと骨芽細胞系列細胞は骨幹端においてmpMSCから発生することが示された。骨形成におけるPDGFRb+ BMSCの機能を調べるため、Pdgfrb-CreERT2 R26-DTAマウスにタモキシフェンを投与することでこの細胞集団を除去したところ、大腿骨長の短縮や骨幹端におけるCD31hiEmcnhiのH型血管、Osx+骨芽前駆細胞が著しく減少し、海綿骨量と皮質骨厚の顕著な低下が観察された。また、AP-1ファミリー転写因子JunBは脂肪細胞や骨芽細胞分化を制御することが知られており、mpMSCで高発現していたことから、Pdgfrb-CreERT2 Junbflox/floxマウスにタモキシフェンを投与し解析したところ、骨幹端H型血管柱や、PDGFRa+およびPDGFRb+細胞数、Osx+骨芽前駆細胞が大幅に減少していた一方、ペリリピン陽性脂肪細胞数は増加していた。これらの結果からBMSCの運命はPDGFRbシグナルと転写因子JunBによって制御されていることが明らかになった。

    VEGF

    加齢に伴うVEGFシグナル伝達不足を改善することで健康的老化を促進し寿命を延長する

    原題:

    Counteracting age-related VEGF signaling insufficiency promotes healthy aging and extends life span

    著者:

    M. Grunewald, S. Kumar, H. Sharife, E. Volinsky, A. Gileles-Hillel, T. Licht, A. Permyakova, L. Hinden, S. Azar, Y. Friedmann, P. Kupetz, R. Tzuberi, A. Anisimov, K. Alitalo, M. Horwitz, S. Leebhoff, O. Z. Khoma, R. Hlushchuk, V. Djonov, R. Abramovitch, J. Tam, E. Keshet

    雑誌:

    Science, 373, eabc8479 (2021)

    POINT!

    加齢は血管疾患のリスクファクターとして確立されているが、加齢に伴う血管機能の低下自体が臓器の生理機能に影響を及ぼす可能性がある。本研究で著者らは、加齢に伴うVEGFシグナル伝達不全がデコイ受容体sFlt1の主に大動脈、肝中心静脈、肝類洞内皮、筋毛細血管における産生増加によって引き起こされ、複数の器官において老化を促進する可能性があることを明らかにした。著者らはLAP-tTA TRE-VEGF-A164およびCdh5-tTA TRE-sFlt1のそれぞれの2重Tgマウスを作製し、テトラサイクリン投与を中止することにより肝細胞からのVEGF、および血管内皮細胞からのsFlt1が血流を介して末梢組織に供給されるマウス(VEGFマウスおよびsFlt1マウス)を用いた。これらマウスの肝臓、筋肉、褐色および白色脂肪組織における微小血管密度を調べたところ、24ヶ月齢のマウスで観察された微小血管希薄化が、VEGFマウスでは顕著に抑制されていた一方、sFlt1マウスでは促進されていることが示された。さらに、VEGFマウスは雌雄ともに生存期間の中央値や最大寿命が長く、その生存曲線から健康寿命が延びている可能性が示唆された。これらのマウスにおける健康的な加齢は、炭水化物利用率が有意に高く、褐色脂肪組織およびベージュ脂肪細胞が維持されることによる代謝および体組成が若齢時に近いことや、脂肪肝、筋細胞の核が中心部に局在する老化に特徴的な現象やミトコンドリア数の低下によるサルコペニア、骨量減少や後弯症、inflammaging、腫瘍の増加などの加齢に伴う病理がすべて改善されていたことで証明された。また、VEGFマウスの代謝表現型はアデノ随伴ウイルスを用いたVEGF-A164の過剰発現マウスでも同様に観察された。これらの結果は、マウスにおいてVEGFシグナル不全が臓器老化に影響し、この経路を調節することで哺乳類の寿命を延ばし、全身の健康状態が改善される可能性を示唆している。

    髄膜

    頭蓋と脊椎の骨髄は髄膜・中枢神経系にミエロイド細胞を供給する

    原題:

    Skull and vertebral bone marrow aremyeloid cell reservoirs for the meninges and CNS parenchyma

    著者:

    Andrea Cugurra, Tornike Mamuladze, JustinRustenhoven, Taitea Dykstra, Giorgi Beroshvili, Zev J. Greenberg, Wendy Baker, ZachPapadopoulos, Antoine Drieu, Susan Blackburn, Mitsuhiro Kanamori, SimoneBrioschi, Jasmin Herz, Laura G. Schuettpelz, Marco Colonna, Igor Smirnov andJonathan Kipnis

    雑誌:

    Science, DOI: 10.1126/science.abf7844 (2021)

    POINT!

    髄膜(meninges)は中枢神経系を包む膜状の構造物であり、髄膜中には中枢神経系の免疫監視を司る多様な免疫細胞集団が含まれている。しかしながら、髄膜中の免疫細胞の由来に関しては未だ不明な点が多い。本論文で著者らは、パラバイオーシス、頭蓋骨の部分移植、ケモカイン受容体アンタゴニストの頭蓋骨髄への局所投与などの実験系を用いて、髄膜に存在するミエロイド系細胞は、血液ではなく隣接する頭蓋骨や椎骨の骨髄から直接的に供給されることを示した。脊髄損傷や神経炎症などの炎症条件下でも、中枢神経系に浸潤するミエロイド系細胞は近接骨髄に由来し、血中のミエロイド系細胞とは異なる遺伝子発現パターンを示していた。本研究のデータは、中枢神経系の傷害や自己免疫疾患の際に浸潤する免疫細胞の起源および侵入ルートの再考を促し、髄膜あるいは頭蓋・脊椎骨髄の免疫細胞を標的とした新規治療法の確立を目指す上で重要な知見と考えられる。

    遺伝子多型

    免疫関連疾患における免疫細胞ごとの遺伝子多型大規模データベースの構築

    原題:

    Dynamic landscape of immune cell-specific gene regulation in immune-mediated disease

    著者:

    Mineto Ota, Yasuo Nagafuchi, Hiroaki Hatano, Kazuyoshi Ishigaki, Chikashi Terao, Yusuke Takeshima, Haruyuki Yanaoka, Satomi Kobayashi, Mai Okubo, Harumi Shirai, Yusuke Sugimori, Junko Maeda, Masahiro Nakano, Saeko Yamada, Ryochi Yoshida, Haruka Tsuchiya, Yumi Tsuchida, Shuji Akizuki, Hajime Yoshifuji, Koichiro Ohmura, Tsuneyo Mimori, Ken Yoshida, Daitaro Kurosaka, Masato Okada, Keigo Setoguchi, Hiroshi Kaneko, Nobuhiro Ban, Nami Yabuki, Kosuke Matsuki, Hironori Mutoh, Sohei Oyama, Makoto Okazaki, Hiroyuki Tsunoda, Yukiko Iwasaki, Shuji Sumitomo, Hirofumi Shoda, Yuta Kochi, Yukinori Okada, Kazuhiko Yamamoto, Tomohisa Okamura and Keishi Fujio

    雑誌:

    Cell,184: 3006-3021 (2021)

    POINT!

    自己免疫疾患や自己炎症性疾患を含めた免疫関連疾患において、これまでゲノムワイド関連解析(GWAS)で疾患の発症と関わる多くの遺伝子多型が同定されてきたが、それらの遺伝子多型が発症に関わるメカニズムは明らかにされていなかった。今回筆者らは健常人と10種の免疫関連疾患患者の計416例を対象とし、末梢血中の免疫細胞を28サブセットに分類した大規模な免疫細胞の遺伝子発現解析と全ゲノム配列解析を行なった。このデータセットは過去のeQTL研究で得られた結果と高い一致率を示しただけでなく、既報のGWASと組み合わせることにより、各疾患の発症と関わる免疫細胞種を同定できたり、偽陽性を多く含むeQTL variantからさらに真のvariant候補を抽出したり(fine mapping)、plasmablastやpDCなどのminor populationにおいても免疫細胞特異的な遺伝子多型を検出したりすることができた。既存のデータベースと比較しても大規模かつ極めて詳細であり、さらに欧米における遺伝子多型解析が多かった中でアジア人種の日本人のデータが示されたことも特筆に値する。本データはImmunexUTにてウェブ上に公開されており、今後多くの免疫研究者にとって非常に有用なデータベースとなることであろう。

    前転移ニッチ

    転移における主要な免疫抑制機構を遺伝子編集ミエロイド細胞により調整する

    原題:

    Genetically engineered myeloid cells rebalance the core immune suppression program in metastasis

    著者:

    Sabrina Kaczanowska, Daniel W. Berry, Vishaka Gopalan, Arielle K. Tycko, Haiying Qin, Miranda E. Clements, Justin Drake, Chiadika Nwanze, Meera Murgai, Zachary Rae, Wei Ju, Katherine A. Alexander, Jessica Kline, Cristina F. Contreras, Kristin M. Wessel, Shil Patel, Sridhar Hannenhalli, Michael C. Kelly and Rosandra N. Kaplan

    雑誌:

    Cell, 184: 2033-2052 (2021)

    POINT!

    がんの転移において、臨床的に転移が診断される以前から遠隔臓器の微小環境の変化が起こることが知られている。この特殊な微小環境は前転移ニッチと呼ばれ、原発巣由来の液性因子や細胞外小胞の作用により、間質細胞の活性化、フィブロネクチン産生及びケモカイン分泌の増加、骨髄由来細胞の集積などが引き起こされ、転移がん細胞が生着・増殖しやすい環境が構築されている。そのため、前転移ニッチの制御によりがんの転移を抑制できる可能性が示唆されている。筆者らは、まずマウス横紋筋肉腫細胞M3-9-Mの同所性移植モデルを用いて肺の前転移ニッチにおける免疫細胞の網羅的解析を行なった。このモデルでは、移植後22日でがん細胞の肺への転移が確認されるため、移植後5~20日を「前転移」と定義した。がん細胞移植後15日以降において、移植マウスの肺では単球、マクロファージ、顆粒球、樹状細胞などのミエロイド系細胞が増加し、CD4+T細胞が有意に減少していることが明らかになった。また、移植から15日後の肺の網羅的遺伝子発現解析において、T細胞性免疫の抑制、ミエロイド細胞の活性化、免疫抑制性ミエロイドマーカーの上昇などがみられた。この結果から、前転移ニッチに集積するミエロイド細胞を標的とすることで、抑制的な免疫微小環境を調整することが可能ではないかと考えた。筆者らは、マウス骨髄細胞由来造血幹細胞・前駆細胞(HSPCs)にIL-12遺伝子を導入し、IL-12分泌ミエロイド細胞を作製した(IL12-GEMy)。M3-9-M移植から12日後にIL12-GEMyを静脈内投与したところ、肺に集積するCD4+およびCD8+T細胞の数が有意に増加した。また、IL12-GEMy投与から3日後の肺の網羅的遺伝子発現解析において、T細胞性免疫の活性化およびミエロイド細胞の抑制がみられた。さらに、がん細胞移植後22日における肺転移が有意に減少し、生存期間の延長が示された。抗原特異的T細胞移植療法または抗癌剤投与療法との併用療法を検証したところ、IL12-GEMy投与はそれらの治療の効果を増強することも明らかになった。筆者らは、遺伝子編集ミエロイド細胞の投与により前転移ニッチの免疫微小環境を調整し、がん転移を抑制するという新たな治療法の可能性を提示した。

    損傷修復

    人工膝関節置換術後の関節組織およびリンパ節における免疫・修復反応

    原題:

    Immune and Repair Responses in Joint Tissues and Lymph Nodes after Knee Arthroplasty Surgery in Mice

    著者:

    Yunwei Xia, Upneet K. Sokhi, Richard D. Bell, Tania Pannellini, Kathleen Turajane, Yingzhen Niu, Laura Frye, Max Chao, Ugur Ayturk, Miguel Otero, Mathias Bostrom, David Oliver, Xu Yang and Lionel B. Ivashkiv

    雑誌:

    J. Bone Miner. Res., DOI: 10.1002/jbmr.4381 (2021)

    POINT!

    損傷を受けた組織の修復は、好中球・単球等が異物除去を行うphase(炎症期)と、それに引き続いて組織をリモデリングするphase(組織修復期)から構成され、この両者のバランスは効果的な創傷治癒に重要である。人工膝関節全置換術後の重要な合併症の一つである関節線維症はこのバランスが破綻した状態と考えられているが、関節線維症の詳細な病態は明らかになっていない。そこで、筆者らは関節線維症の病態を明らかにすべく、脛骨にインプラントを挿入したマウスを用いて、関節組織内および所属リンパ節内における炎症反応の変化を解析した。その結果、インプラント挿入後、関節内では、まずIL-6やStat3等による急性期反応が惹起された後、一般的な創傷治癒で観察されるMacrophage type2 (M2)の活性化を介した組織修復がおきるのではなく、IFN-STAT-IRF signal pathway→NFκB/IL-1/PGE2 signal pathway→TGFβ/PDGF signal pathwayという独特な経路を介した組織修復がおきることを発見した。IFN系の発現が誘導される点が特徴的であり、IFNはIL-1やPGE2の繊維化促進を抑制しているものと考えられる。なお、後期(繊維化期)にはHOTAIR制御経路が活性化していることも特徴的で、このことはPRC2およびLSD1阻害剤が関節の線維化を予防に有用である可能性を示した。

    細胞老化

    乳腺上皮においてRANKは細胞老化と幹細胞性を誘導し、腫瘍発生を遅延させる一方で腫瘍悪性度を増強させる

    原題:

    RANK links senescence to stemness in the mammary epithelia, delaying tumor onset but increasing tumor aggressiveness

    著者:

    Sandra Benítez, Alex Cordero, Patricia G.Santamaría, Jaime Redondo-Pedraza, Ana S. Rocha, Alejandro Collado-Solé, MariaJimenez, Adrian Sanz-Moreno, Guillermo Yoldi, Juliana C. Santos, Ilaria DeBenedictis, Clara Gómez-Aleza, Sabela Da Silva-Álvarez, Kevin Troulé , GonzaloGómez-López, Noelia Alcazar, Ignacio Palmero, Manuel Collado, Manuel Serrano,and Eva Gonzalez-Suarez

    雑誌:

    Developmental Cell, 56: 1-15(2021)

    POINT!

    ストレスによって誘導される細胞老化は腫瘍抑制性であると考えられてきたが、近年では腫瘍促進の一面もあることが報告されている。本論文ではRANKが乳腺上皮の細胞老化を誘導し、腫瘍の発生を遅延させるが結果的には悪性度を増強させていることを示している。筆者らは、乳がん自然発症モデル(Neu+/- or  PyMT+/- background)において、RANKを過剰発現しているマウス(RANK+/tg)では乳腺上皮の細胞老化が誘導されること、また乳がんの発症が遅延することを発見した。これを裏付けるためにRANK ligandの投与によって乳腺上皮の細胞老化が誘導されることをin vivo, in vitro両方の系で確認した。さらに、このRANK誘導性の細胞老化がp16/p19を介していることをRANK+/tg; p16/p19-/-マウスを用いて証明した。RANK+/tgマウスでの細胞老化はRANKを高発現している管腔細胞に限定される一方で幹細胞性は基底細胞と管腔細胞両方に認めることがRNA-seqの解析で示された。これは老化細胞からAutocrineまたはParacrineの機序で幹細胞性が誘導されるためと考えられる。Navitoclax(老化細胞除去薬剤)を使用するとRANK誘導性の老化細胞は消失し、さらに幹細胞性を示すMammosphereの形成も著減することが示された。これらのことからRANKに誘導される細胞老化は幹細胞性の形成に必須であることが示唆された。以上の結果よりRANKが乳がんの幹細胞性を増強することが予想された。実際にRANK+/tgマウスでは乳がんの進展が早く、肺転移も起こりやすいことが証明された。公開されているヒト乳がんのデータベース(TCGA dataset)を解析したところ、乳がん細胞(luminal subtype)のRANK発現と細胞老化関連遺伝子発現との間に相関を認めた。したがって臨床的にもRANKの発現と細胞老化と幹細胞性には関連があることが示唆された。本論文はRANKシグナルによる乳腺発達、がん発生、がん転移に新たな知見を加えるものであり、がんの予防や治療につながる可能性がある。

    セレノプロテイン

    セレノプロテインWは破骨細胞の過活性を阻害することで生理学的な骨リモデリングを確保する

    原題:

    Selenoprotein W ensures physiological bone remodeling by preventing hyperactivity of osteoclasts

    著者:

    Hyunsoo Kim, Kyunghee Lee, Jin Man Kim, Mi Yeong Kim, Jae-Ryong Kim, Han-Woong Lee, Youn Wook Chung, Hong-In Shin, Taesoo Kim, Eui-Soon Park, Jaerang Rho, Seoung Hoon Lee, Nacksung Kim, Soo Young Lee, Yongwon Choi and Daewon Jeong

    雑誌:

    Nat. Commun., 12: 2258 (2021)

    POINT!

    セレノシステインの形でをセレンを含んでいるセレノプロテインは骨リモデリングに重要であるがそのメカニズムの詳細は不明であった。RANKL誘導性破骨細胞のGeneChip解析を行いセレノプロテインW(SELENOW)を同定した。筆者らは破骨細胞前駆細胞にSELENOWが発現しているが、RANKLによる刺激後に発現が低下することを見出した。SELENOWのノックアウトマウスおよびLysM-Creによってマクロファージ系列特異的にSELENOWを特異的に欠失させたマウスでは破骨細胞分化が阻害され骨量が増加した一方で、SELENOWを高発現させたマウスでは破骨細胞分化が亢進し骨粗鬆症の表現型を示した。いずれのマウスでも骨芽細胞数はコントロールと変わらなかった。構成的にSELENOWを発現させると、破骨細胞の骨吸収活性は上昇しアポトーシスは抑制された。さらに破骨細胞成熟のために重要な細胞融合を刺激した。これらの結果により、RANKL刺激後に観察されるSELENOWの発現減少は、破骨細胞が過剰に活性化することを防ぎ、骨粗鬆症を抑えていると考えられる。彼らの報告により、セレンが骨代謝に重要な役割を果たすことがわかった。

    IL-17A

    抗IL-17A抗体の局所への持続的な投与はマウス歯周炎モデルにおける炎症性骨破壊を抑制する

    原題:

    Local Sustained Delivery of Anti-IL-17A Antibodies Limits Inflammatory Bone Loss in Murine Experimental Periodontitis

    著者:

    Cinthia M. F. Pacheco, Katia L. M. Maltos, Mostafa S. Shehabeldin, Laura L. Thomas, Zhe Zhuang, Sayuri Yoshizawa, Konstantinos Verdelis, Sarah L. Gaffen, Gustavo P. Garlet, Steven R. Little, Charles Sfeir

    雑誌:

    J. Immunol., 206(10): 2386-2392 (2021)

    POINT!

    IL-17Aは、感染防御を担うサイトカインであるが、破骨細胞分化を促進する作用もあるため、歯周炎においては病態の改善と悪化の両方に関与しうる。著者らは、歯周炎に対する抗IL-17A療法の有効性を検討した。マウス臼歯の絹糸結紮モデルに対して、乳酸-グリコール酸共重合体の微小粒子 (PLGA-MP) を用いた抗IL-17A抗体 (抗IL-17A MP) の歯周組織局所への持続的なドラッグデリバリーを行なった。歯周炎の誘導に伴い組織中のIl17a発現は上昇するが、抗IL-17A MP投与によって抗体の血中濃度は持続的に上昇したため、治療効果が期待された。このマウスの歯槽骨をμCTにて評価したところ、対照群と比較して有意に骨吸収が抑制された。また、組織学的解析の結果、歯槽骨における破骨細胞の形成も抑制されていた。歯周炎局所の遺伝子発現解析の結果、抗IL-17A MP投与により歯周炎誘導後早期のIl6発現が抑制された。細菌学的な解析はなされていないものの、歯周炎に対する抗IL-17A療法の有効性が示唆された。

    カルシトニン

    視索前野中央部におけるカルシトニン受容体シグナルにより母マウスは危険を冒して育児を行う

    原題:

    Calcitonin receptor signaling in the medial preoptic area enables risk-taking maternal care

    著者:

    Chihiro Yoshihara, Kenichi Tokita, Teppo Maruyama, Misato Kaneko, Yousuke Tsuneoka, Kansai Fukumitsu, Eri Miyazawa, Kazutaka Shinozuka, Arthur J. Huang, Katsuhiko Nishimori, Thomas J. McHugh, Minoru Tanaka, Shigeyoshi Itohara, Kazushige Touhara, Kazunari Miyamichi, Kumi O. Kuroda

    雑誌:

    Cell Rep., 35(9): 109204 (2021)

    POINT!

    未成熟な個体を守り育てる育児行動は、時として親個体の生存に不利に働くことがある。種の保存のためには、そういった危険な状況でも子育ての意欲を失わない必要がある。母性行動には内側視索前野 (cMPOA) が重要であることが分かっている。著者らは、育児行動中の母マウスの脳組織を詳細に観察し、cMPOAおよび前交連核 (ACN) でカルシトニン受容体 (Calcr) 陽性細胞が活性化することを発見した。ウイルスベクターを用いた神経細胞の標識によって、Calcr陽性cMPOAニューロンへの投射経路が処女マウスと母マウスでは大きく異なり、後者では側坐核からの入力が多いことがわかった。また、Calcr陽性cMPOAニューロンは処女マウスでは主にグルタミン作動性である一方、母マウスではGABA作動性であるなど、このニューロンの性質は出産に伴い大きく変わることが見出された。このニューロンの育児行動における機能を明らかにするために、CalcrCreマウスのcMPOAにCre依存的にテタヌス毒素を発現するウイルスベクターを投与した。これらのマウスは産仔数に異常はないものの、育児行動に異常をきたしたため仔の生存率が低下した。DREADD法により育児未経験のオスのマウスのCalcr陽性cMPOAニューロンを活性化した際には同居させた仔マウスの食殺が減少した。Calcrは、カルシトニン以外にもCGRPファミリー分子を結合することが知られている。脳内ではカルシトニンが発現せず、他の部位で産生されたカルシトニンが血液脳関門を超えて脳に移行することはできないため、脳内にカルシトニン以外のCalcrリガンドが存在すると考え、探索を行なった。その結果、MPOAにおいてCalcr陽性ニューロンとは異なるニューロンが、Calcrリガンドの一つamylinを発現することを見出した。Amylinの遺伝子発現は周産期に増加し、amylin陽性ニューロンは仔マウスとの接触によってエストロゲンおよびプロラクチン依存的に活性化した。Amylin欠損マウスは正常に妊娠、出産、育児を行なったが、高架式十字迷路を利用した危険な状況でのレトリービング実験ではレトリービング行動に変化が見られた。以上より、視床下部におけるカルシトニン受容体シグナルは強いストレス下での育児行動を制御することが明らかになった。

    骨形成不全症

    TENT5AによるmRNAのポリアデニル化は正常な骨形成に必要である

    原題:

    Cytoplasmic polyadenylation by TENT5A is required for proper bone formation

    著者:

    Olga Gewartowska, Goretti Aranaz-Novaliches, Pawel S. Krawczyk, Seweryn Mroczek, Monika Kusio-Kobialka, Bartosz Tarkowski, Frantisek Spoutil, Oldrich Benada, Olga Kofronova, Piotr Szwedziak, Dominik Cysewski, Jakub Gruchota, Marcin Szpila, Aleksander Chlebowski, Radislav Sedlacek, Jan Prochazka, Andrzej Dziembowski

    雑誌:

    Cell Rep, 35(3): 109204 (2021)

    POINT!

    骨形成不全症は、骨基質分子であるコラーゲン線維の合成に異常が起こる骨系統疾患である。現在、臨床的には21の病型に分類されているが、近年18型骨形成不全症の原因遺伝子としてTENT5Aが発見された。同じTENT5ファミリー分子のTENT5Cについては、ポリアデニル化を介したmRNAの安定化が報告されているものの、TENT5Aの機能は不明である。そこで、著者らはTent5a欠損マウスを作出・解析した。このマウスの体長は短く、骨や軟骨の低形成、肋骨の自然骨折が見られた。TENT5Aのレポーターマウスを作出したところ、骨芽細胞で高い発現を認めたため、この分子の骨芽細胞における機能の解析を行なった。Tent5a欠損骨芽細胞では、分化や石灰化の低下が見られた。また、DirectRNA sequencing (DRS) 法により、骨基質分子の合成に関わる遺伝子のpolyA長の短縮が認められた。組織学的解析により、Tent5a欠損マウスでは、コラーゲン原線維の形成不全が認められた。TENT5Aの指向性を解析したところ、比較的短くGCリッチで3’UTRが短いmRNAが標的となる傾向が見出された。以上より、18型骨形成不全症の原因遺伝子TENT5Aの機能が明らかになった。

    骨転移

    骨微小環境は骨に転移したがん細胞を活性化し、さらなる転移を促す

    原題:

    The bone microenvironment invigorates metastatic seeds for further dissemination

    著者:

    Weijie Zhang, Igor L. Bado, Jingyuan Hu, Ying-Wooi Wan, Ling Wu, Hai Wang, Yang Gao, Hyun-Hwan Jeong, Zhan Xu, Xiaoxin Hao, Bree M. Lege, Rami Al-Ouran, Lucian Li, Jiasong Li, Liqun Yu, Swarnima Singh, Hin Ching Lo, Muchun Niu, Jun Liu, Weiyu Jiang, Yi Li, Stephen T.C. Wong, Chonghui Cheng, Zhandong Liu, and Xiang H.-F. Zhang

    雑誌:

    Cell, 184, 2471–2486(2021)

    POINT!

    近年の研究の結果、多くの転移が他の転移巣からのさらなる転移によって開始されることが示唆されていたが、そのメカニズムは解明されていなかった。著者らは選択的に後肢の骨に転移させる方法としてMDA-MB231、MCF7、PC3などのがん細胞を外腸骨動脈へ注入する方法と、先に静脈から全身へ回る外腸骨静脈へ注入する方法などを比較し、骨転移からの二次転移はより早く、広範囲に他臓器へ転移する能力が高まる可能性を示した。この現象をさらに確認するため、ドキシサイクリンによって誘導されるCas9によりランダムな遺伝子変異をgRNAに蓄積させ、遺伝子バーコードとして解析可能なシステムを導入して乳腺脂肪体に移植し、腫瘍が1 cm3に達した時点で切除し、ドキシサイクリンでCas9発現を誘導した。この方法によって転移を追跡し、原発巣、骨髄、他臓器でのクローン多様性を調べたところ、ほとんどの転移はマルチクローナルであり、骨の微小環境が乳がんや前立腺がんの細胞をさらに転移させ、他の遠隔臓器への二次転移を引き起こすことが示された。さらに著者らはMDA-MB-231細胞由来クローンで非転移性のSCP21細胞を用い、乳腺脂肪体、肺、後肢骨に注入し腫瘍を形成させた。6週間後、これらの臓器からがん細胞を採取して左心室に注入すると、骨微小環境に置かれたSCP21細胞は遠隔臓器でのコロニー形成能が高く、複数の部位に非常に大きな腫瘍を形成することが示された。著者らの研究で骨微小環境のがん細胞でのヒストンメチル基転移酵素EZH2の重要性が明らかにされていることから、この分子に着目した。骨微小環境に置かれたSCP21細胞と他の細胞を比較したところ、骨に取り込まれた細胞ではEZH2活性が高く、骨微小環境に置かれたSCP21細胞を左心室注入前にEZH2阻害剤EPZ011989で一時的にin vitroで処理すると、転移の促進能が顕著に低下した。さらに誘導性にEZH2がノックダウン可能なMDA-MB-231細胞を作製し骨に注入後EZH2をノックダウンすると、骨での増殖には変化がなかった一方、他臓器への二次転移を減少させた。以上から、本研究は骨微小環境が転移の進展に果たす役割を明らかにするとともに、多臓器転移を引き起こすエピジェネティックなリプログラミングの過程を解明した。

    骨細胞トランスクリプトーム

    骨細胞のトランスクリプトームマッピングにより同定された骨格恒常性と骨格疾患への感受性を制御する分子の全体像

    原題:

    Osteocyte transcriptome mapping identifies a molecular landscape controlling skeletal homeostasis and susceptibility to skeletal disease

    著者:

    Scott E. Youlten, John P. Kemp, John G. Logan, Elena J. Ghirardello, Claudio M. Sergio, Michael R. G. Dack, Siobhan E. Guilfoyle, Victoria D. Leitch, Natalie C. Butterfield, Davide Komla-Ebri, Ryan C. Chai, Alexander P. Corr, James T. Smith, Sindhu T. Mohanty, John A. Morris, Michelle M. McDonald, Julian M. W. Quinn Nenad Bartonicek, Matt Jansson, Konstantinos Hatzikotoulas Ana Beleza-Meireles, Fernando Rivadeneira, Emma Duncan, Amelia R. McGlade, Melita D. Irving, J. Brent Richards, David J. Adams, Christopher J. Lelliott, Robert Brink, Tri Giang Phan, John A. Eisman, David M. Evans, Eleftheria Zeggini, Paul A. Baldock, J. H. Duncan Bassett Graham R. Williams, and Peter I. Croucher

    雑誌:

    Nat Commun, 12, 2444 (2021)

    POINT!

    骨細胞は骨格を制御する重要な細胞である。著者らは、この複雑な細胞ネットワークを制御する遺伝子と分子プログラムを明らかにするために、マウス骨細胞のトランスクリプトーム解析を行った。4、10、16、26週齢のオスおよびメスマウス上腕骨のRNA-seq解析を行ったところ、骨細胞が積極的に発現する遺伝子の総数は骨格の成熟に伴って増加し、81%の遺伝子が雌雄の全ての週齢で共通して発現していた。週齢間での遺伝子発現の比較から、成長期に発現する骨細胞のトランスクリプトームは成体骨格とは異なることが示された。また、雌雄間では成熟した骨格では違いが観察されたが、4週齢および10週齢では有意な違いはなかった。次に、骨髄や骨ライニング細胞を除去した骨とそれらを残した骨とを比較・解析し、1777遺伝子を同定した。さらに、骨髄や血液、筋肉などで発現する538遺伝子を除外し、骨細胞で有意に発現する1239遺伝子を他の細胞と区別する骨細胞トランスクリプトームシグネチャーとして定義した。これらには、SostDkk1MepeDmp1Tnfrsf11bWnt1Fgf9Irx5など、骨格での機能が確立されている遺伝子が含まれていた。また、Tnfsf11は骨細胞で発現はしていたが、骨細胞トランスクリプトームシグネチャーには含まれていなかった。さらに、これらのうち78%はこれまでに骨格における役割が示されておらず、細胞間神経ネットワークの形成を制御する遺伝子が豊富に含まれていた。また、骨細胞トランスクリプトームシグネチャー遺伝子が骨格において機能的な役割を果たしているかどうかを確認するために、OBCDデータベースで骨格表現型が解析された733のノックアウトマウス系統のうち、64の骨細胞トランスクリプトームシグネチャー遺伝子ノックアウトマウスを調べたところ、Daam2などの機能既知遺伝子や、Auts2Dact3Ldlrad4などの骨における機能が報告されていない遺伝子を含む26系統で(41%)で骨格の構造的もしくは機能的な表現型が確認された。最後に著者らは、骨細胞トランスクリプトームシグネチャー遺伝子とヒト疾患の関係性を検討したところ、骨形成不全症などの単一遺伝子性の骨格疾患を引き起こすヒトオルソログが多く含まれることや、多遺伝子性疾患である骨粗鬆症や変形性関節症と関連していることがわかった。以上の結果から、本研究は骨細胞のネットワークと機能を制御する分子プログラムの全体像を明らかにし、ヒト骨格疾患における骨細胞の重要性が証明された。

    RANKL

    RANKLは男性生殖機能を制御する

    原題:

    RANKL regulates male reproductive function

    著者:

    Martin Blomberg Jensen, Christine Hjorth Andreassen, Anne Jørgensen, John Erik Nielsen, Li Juel Mortensen, Ida Marie Boisen, Peter Schwarz, Jorma Toppari, Roland Baron, Beate Lanske, and Anders Juul

    雑誌:

    Nat Commun, 12, 2450 (2021)

    POINT!

    男性不妊の原因となる精子濃度の低下、運動性の低下、精子形態の異常などのメカニズムは完全には解明されてはいないが、セルトリ細胞の機能が重要な役割を果たす。Runx2やOsterix、オステオカルシンは精巣でも発現していることから、骨関連分子の中には性腺で局所的に作用し、精巣機能に影響を与えるものがあることが示唆されていた。本研究で著者らは、マウスとヒトの精巣においてRANKLシグナルが活性化していることを明らかにした。RANKL発現はセルトリ細胞や一部の精母細胞、精子細胞にみられ、RANKは生殖細胞に発現しており、精原細胞と精子細胞で最も顕著に発現していた。一方、OPGは精原細胞、一部の精細管周囲細胞、精細管周囲細胞と精原細胞の境界、多くの精母細胞と精子細胞で発現していた。また、精巣では可溶型RANKL(sRANKL)と膜型RANKLがともに発現していた。マウスにOPGを投与すると精巣重量および精子数が一時的に増加し、RANKLを全身またはセルトリ細胞特異的に欠損したマウスでは、コントロールマウスと比較して精子数が多く、雄性生殖能力が高かった。ヒト精液中のsRANKL濃度は血清中と比較して100倍程度高く、さらに不妊男性は健常男性よりも精液中sRANKL濃度が高く、血清中sRANKL濃度は低かった。精液中sRANKL濃度は、全精子数よりも高い特異性で健常男性と不妊男性を区別することができる可能性が示された。不妊男性にデノスマブを1回投与すると、精液中sRANKL濃度が低下し、血中インヒビンBおよび抗ミューラー管ホルモン濃度が上昇したが、総精子数や精子濃度などには変化がみとめられなかった。一方で、前進運動能をもつ精子数は一部のグループ(投与前の血中OPG濃度が高いグループ)でのみ上昇することが明らかにされた。以上から、RANKLシグナルは精液の質や男性の生殖能力に影響を及ぼす男性生殖機能の調節因子であることが示唆された。

    関節リウマチ

    形質細胞は関節リウマチの傍関節性骨粗鬆症を誘導する

    原題:

    Plasma cells promote osteoclastogenesis and periarticular bone loss in autoimmune arthritis

    著者:

    Noriko Komatsu, Stephanie Win, Minglu Yan, Nam Cong-Nhat Huynh, Shinichiro Sawa , Masayuki Tsukasaki, Asuka Terashima, Warunee Pluemsakunthai, George Kollias, Tomoki Nakashima and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    J. Clin. Invest., 131: e143060. (2021)

    POINT!

    関節リウマチでは関節破壊だけでなく、炎症関節の近傍や全身性の骨粗鬆症も誘導される。傍関節性骨粗鬆症は関節の臨床所見が現れる前に発症するがそのメカニズムは不明な点が多い。筆者らは炎症関節近傍の骨の骨髄に存在する抗体を産生する形質細胞が高いRANKLを発現しており、B細胞と比較して強力な破骨細胞誘導能をもつことを見出した。また関節の腫脹に先立って傍関節骨粗鬆症の発症とともに炎症関節近傍の骨の骨髄中の形質細胞の細胞数の増加が認められた。さらにコラーゲン誘導性関節炎感受性のDBA1/J背景のB細胞系列特異的RANKL欠損マウスを樹立し、B細胞系列由来のRANKLが傍関節性骨粗鬆症をひきおこすことを明らかにした。関節においては滑膜線維芽細胞が主要なRANKL 発現細胞として関節破壊に関わることを生体レベルで実証することに成功した。本研究により関節リウマチにおける傍関節性骨粗鬆症の新しいメカニズムを解明するとともに形質細胞が治療標的になりうることが示された。

    骨髄微小環境

    骨形成とリンパ球新生のための機械感受性細動脈周囲ニッチ

    原題:

    A mechanosensitive peri-arteriolar niche for osteogenesis and lymphopoiesis

    著者:

    Bo Shen, Alpaslan Tasdogan, Jessalyn M. Ubellacker, Jingzhu Zhang1, Elena D. Nosyreva, Liming Du, Malea M. Murphy, Shuiqing Hu, Yating Yi, Nergis Kara1, Xin Liu, Shay Guela, Yuemeng Jia, Vijayashree Ramesh, Claire Embree, Evann C. Mitchell, Yunduo C. Zhao, Lining A. Ju, Zhao Hu, Genevieve M. Crane, Zhiyu Zhao, Ruhma Syeda and Sean J. Morrison

    雑誌:

    Nature, 591: 438–444 (2021)

    POINT!

    レプチン受容体(LEPR)を発現する成獣骨髄のストローマ細胞は、造血幹細胞および早期の血球系前駆細胞を維持するための、幹細胞因子(SCF)を含む成長因子の重要な供給源だと知られている。LEPR+細胞は、骨格幹細胞や骨形成および脂肪生成前駆細胞を含む不均一だが、これらのサブセットを区別したり、それらの機能を比較したりするために利用できるマーカーがほとんどないという問題がある。筆者らは、細動脈周囲LEPR+細胞の一部にオステオレクチンが発現しており、オステオレクチン陽性LEPR+細胞は骨形成の前駆細胞を、オステオレクチン陰性LEPR+細胞は脂肪細胞の前駆細胞を多く含むことを示した。また、この細動脈周囲オステオレクチン陽性細胞は加齢とともに減少することもわかった。成獣マウスにおいて誘導的にオステオレクチン陽性細胞特異的にSCFを欠損させる(OlniCreER/+; Scffl/flマウス)と、造血幹細胞や大部分の前駆細胞の維持には影響しなかったが、リンパ球共通前駆細胞の割合が減少し、リンパ球形成、細菌クリアランス、および急性細菌感染後の生存率が低下することがわかった。興味深いことに細動脈周囲のオステオレクチン陽性細胞とリンパ球共通前駆細胞の割合は自発走運動で増加したが、尾部懸垂による後肢非荷重では減少した。筆者たちはオステオレクチン陽性細胞特異的に機械感受性イオンチャネルPIEZO1を欠失させる(OlnmT/iCreER;Piezo1fl/flマウス)と、オステオレクチン陽性細胞およびリンパ球共通前駆細胞が共に減少することを示し、細動脈周囲のオステオレクチン陽性細胞の維持には機械的刺激が必要であると報告した。このOlnmT/iCreER;Piezo1fl/flマウスは感染時の細菌クリアランス能もコントロールと比べて低下していた。以上のように、骨髄の骨形成およびリンパ球形成のための動脈周囲のニッチは機械的刺激によって維持されており、加齢に伴い減っていくことが報告された。

    ドラッグデリバリー

    関節リウマチ滑膜中のマクロファージと破骨細胞特異的なアポトーシス促進は進行期の関節炎にも有用である

    原題:

    Targeted apoptosis of macrophages and osteoclasts in arthritic joints is effective against advanced inflammatory arthritis

    著者:

    Caifeng Deng, Quan Zhang, Penghui He, Bin Zhou, Ke He, Xun Sun, Guanghua Lei, Tao Gong and Zhirong Zhang

    雑誌:

    Nat. Commun., 12: 2174 (2021)

    POINT!

    関節リウマチ患者の滑膜では、マクロファージおよび破骨細胞のアポトーシスが抑制されており、そのことが持続的な炎症・骨破壊に寄与していることが知られている。本研究では、アポトーシスを誘発する薬剤であるcelastrol(CEL)を、これらの細胞特異的にdeliverする方法を見出した。著者らは、drug deliveryのための担体として既に広く使用されているPLGA nano particle (NPs)にCELを付与し (CEL-NPs)、PEG鎖とRGD配列を付加した。さらにoff targetな作用を減らすため、PEG鎖にMMP9 cleavable peptideを挿入し、MMP9存在下でPEG鎖が切断されることで、RGD配列が露出し、マクロファージおよび破骨細胞表面に発現するαvβ3インテグリンを介して細胞内に取り込まれるような酵素反応性のnano particle(CEL-PRNPs)を作製した。筆者らはまず、CEL-PRNPsがin vitroにおいて、RA患者PBMCs・ラットBMCs由来のLPS刺激活性化マクロファージおよび破骨細胞に効果的に取り込まれ、これらのアポトーシスを促進することを確認した。次に、AIAラットでの投与実験を実施し、CEL-PRNPsが肝臓や脾臓等の他臓器のマクロファージを障害することなく、関節炎症部位のマクロファージおよび破骨細胞のみにアポトーシスが誘導することで、炎症を軽減することを証明した。驚くべきことに、骨破壊が既に進行した関節炎発症後期(関節炎誘発17日後)からCEL-PRNPsを投与開始した実験では、炎症改善はもちろん、健常関節と比較して遜色ない程度に骨・軟骨再生がしていた。以上から、CEL-PRNPsによる関節リウマチ滑膜中のマクロファージ・破骨細胞特異的なアポトーシスの誘導は、進行した炎症性関節炎の炎症寛解のみならず、骨・軟骨の修復、二次性骨粗鬆症の予防にもつながることが示唆された。

    gdT細胞

    gdT細胞による栄養素の感知

    原題:

    gdT cells regulate the intestinal response to nutrient sensing

    著者:

    Zuri A. Sullivan, William Khoury-Hanold, Jaechul Lim, Chris Smillie, Moshe Biton, Bernardo S. Reis, Rachel K. Zwick, Scott D. Pope, Kavita Israni-Winger, Roham Parsa, Naomi H. Philip, Saleh Rashed, Noah Palm, Andrew Wang, Daniel Mucida, Aviv Regev and Ruslan Medzhitov

    雑誌:

    Science, 371:eaba8310 (2021)

    POINT!

    腸は外界からのバリア機能を維持しつつも栄養素を取り込む機能をもつ。小腸における、栄養取り込みがどのように制御されているのかを検証するため、筆者らは、主要栄養素の配合比率が異なる餌をマウスに給餌し、腸管上皮細胞の遺伝子発現変化を解析した。炭水化物を多量に含む餌を与えた結果、これらを消化する酵素群やトランスポーターの遺伝子発現が上昇した。このような”on demand”な遺伝子発現制御は、gdT細胞が3型自然リンパ球から産生されるIL-22の発現を抑制することで制御されていることが示された。また、gdT細胞の局在と遺伝子発現は腸の栄養状態によって変化することも示された。さらに、餌に含まれる栄養素によって、腸管上皮を構成する細胞群のリモデリングが生じることがわかった。以上の結果より、gdT細胞が栄養状態の感知に関与することを同定した。

    自然リンパ球

    Interleukin-17DはCD93との結合を介して3型自然リンパ球の機能を制御する

    原題:

    Interleukin-17D regulates group 3 innate lymphoid cell function through its receptor CD93

    著者:

    Jinling Huang, Hae-youn Lee, Xiaohong Zhao, Jinyi Han, Yang Su, Qinli Sun, Jing Shao, Jiwan Ge, Yuxi Zhao, Xue Bai, Yi He, Xinquan Wang, Xiaohu Wang and Chen Dong

    雑誌:

    Immunity, 54: 673-686 (2021)

    POINT!

    IL-17 familyは生体防御や自己免疫疾患の発症に関与することが知られているが、IL-17Dに関しては理解が少ない。筆者らは腸管上皮由来のIL-17Dが3型自然リンパ球(ILC3: group3 innate lymphoid cell)の機能を制御し、腸管恒常性を維持していることをこの論文で示した。まず、筆者らは全身の臓器のIl17dの発現を Real-time RT-PCR法で評価し、大腸で特に発現が高いことを見出した。次にIl17d欠損マウスではDSS誘導性大腸炎が悪化することを示した。また大腸炎モデルでは血球系細胞ではなく、腸管上皮細胞がIL-17Dを産生していることがわかった。さらにIl17d欠損マウスでは大腸におけるIl22や抗菌ペプチドであるReg3b, Reg3gの発現が低下していた。一方、IL-17Dの投与はIl17d欠損マウスの大腸炎の症状が改善させた。さらにIl17d欠損マウスでは粘膜固有層に存在するIL-22産生をするILC3が減少していることを示した。便中の16S rRNA sequencingの結果から、Il17d欠損マウスでは腸内細菌叢の多様性が減少していることが示唆された。筆者らはタンパク精製手法を駆使して既知のIL-17受容体ではなく、成熟したILC3表面に発現する糖タンパク、CD93がIL-17Dの受容体であることを証明した。最後に筆者らはILC3特異的Cd93欠損マウス(RorccreCd93flox/flox)ではIl17d欠損マウス同様にIL-22産生が低下し大腸炎が増悪することを示した。以上よりIL-17D-CD93 axisはILC3の機能を制御し腸管恒常性を維持することが判明した。

    破骨細胞分裂

    破骨細胞はRANKL刺激による骨吸収においてosteomorphを経由してリサイクルする

    原題:

    Osteoclasts recycle via osteomorphs during RANKL-stimulated bone resorption

    著者:

    Michelle M. McDonald, Weng Hua Khoo, Pei Ying Ng, Ya Xiao, Jad Zamerli, Peter Thatcher, Wunna Kyaw, Karrnan Pathmanandavel, Abigail K. Grootveld, Imogen Moran, Danyal Butt, Akira Nguyen, Sean Warren, Maté Biro, Natalie C. Butterfield, Siobhan E. Guilfoyle, Davide Komla-Ebri, Michael R.G. Dack, Hannah F. Dewhurst, John G. Logan, Yongxiao Li, Sindhu T. Mohanty, Niall Byrne, Rachael L. Terry, Marija K. Simic, Ryan Chai, Julian M.W. Quinn, Scott E. Youlten, Jessica A. Pettitt, David Abi-Hanna, Rohit Jain, Wolfgang Weninger, Mischa Lundberg, Shuting Sun, Frank H. Ebetino, Paul Timpson, Woei Ming Lee, Paul A. Baldock, Michael J. Rogers, Robert Brink, Graham R. Williams, J.H. Duncan Bassett, John P. Kemp, Nathan J. Pavlos, Peter I. Croucher, Tri Giang Phan

    雑誌:

    Cell, 184, 1330–1347 (2021)

    POINT!

    破骨細胞は、単球・マクロファージ由来の前駆細胞が融合して形成される大型で多核の細胞で、骨吸収が完了するとアポトーシスを起こすと考えられていた。本研究で著者らはLysMCre/+ tdTomatoLSL/LSLとBlimp1Egfp/+ Rag1–/–もしくはCsf1rEgfp/+マウス由来骨髄細胞を混合した骨髄キメラマウスを作製し、脛骨の生体内イメージングを行った。EGFP+tdTomato+の破骨細胞は骨内膜上の多核巨大細胞で、蛍光ラベルされたビスホスホネート取り込み能を有し、多数の細胞突起により近傍細胞と相互作用する細胞として観察された。可溶型RANKL投与によって破骨細胞を活性化すると運動性が上昇し、投与後20分以内に細胞突起が消失してさらに細胞融合が誘導された。また、長時間の観察で巨大な破骨細胞が運動性を有する小さな娘細胞に分裂する様子が観察された。これらの娘細胞は、驚くべきことに元の破骨細胞から離れて移動するだけでなく、隣接する破骨細胞と再度融合し、場合によっては娘細胞同士が融合することも観察されたことから、この現象はアポトーシスとは異なることが示され、著者らはこの破骨細胞からの分裂によって生じた娘細胞をosteomorphと名付けた。OPG-FcによるRANKL阻害はこの細胞リサイクルを阻害し、osteomorphの蓄積に至った。シングルセルRNA-seq解析の結果、osteomorphは破骨細胞やマクロファージとはmRNAレベルで異なる細胞状態であり、多くのnon-canonicalな破骨細胞遺伝子を発現していることがわかった。これらの遺伝子のうち、40遺伝子のそれぞれのノックアウトマウスを解析したところ、17のノックアウトマウスで骨の表現型が観察された。さらに、ヒトにおけるosteomorph遺伝子の一部の変異は単一遺伝子性の骨格障害を引き起こし、また骨密度と関連していることも明らかにされた。以上から、破骨細胞は骨吸収制御に関わる新たな細胞状態であるosteomorphを介してリサイクルされ、骨格疾患の治療の標的となる可能性が示された。

    IL–19

    骨細胞は好中球減少症を治療できるサイトカインであるIL–19を介して好中球の分化を制御する

    原題:

    Osteocytes regulate neutrophil development through IL-19: A potent cytokine for neutropenia treatment

    著者:

    Min Xiao, Wuju Zhang, Wen Liu, Linlin Mao, Jincheng Yang, Le Hu, Sheng Zhang, Yaling Zheng, Anling Liu, Qiancheng Song, Yuhua Li, Guozhi Xiao, Zhipeng Zou, Xiaochun Bai

    雑誌:

    Blood, doi.org/10.1182/blood.2020007731 (2021)

    POINT!

    骨細胞は骨に最も多く存在する細胞であり、造血の重要な制御因子として注目されているが、好中球の形成における骨細胞の役割とそのメカニズムは不明であった。Dmp1-Creを用いて骨細胞におけるTsc1を欠損させることでmTORC1シグナルを恒常的に活性化させたマウスでは前骨髄球・骨髄球の増殖が観察された。一方、骨細胞でRhebを欠損させることでmTORC1を不活性化させたマウスでは好中球数が減少した。著者らはRNA-seq解析によって好中球形成を活性化する骨細胞由来分子としてIL–19を同定した。実際に、mTORC1活性化マウスではNF-kBの活性化を介してIL–19発現が劇的に上昇し、免疫染色などにより骨細胞が主な産生源であることを見出した。好中球はその前駆細胞段階からIL–19受容体であるIL–20Rbを発現しており、IL–19はこの受容体からSTAT3を活性化してその増殖と好中球形成を促進した。さらに、IL–19の投与により好中球分化を促進できる一方、IL–19に対する中和抗体投与やIL–20Rbに対するsiRNAの骨髄腔への投与により、好中球形成が抑制されることも示された。重要なことに、低用量のIL–19投与はG–CSFよりも効率よく化学療法(シタラビン)、放射線照射、クロラムフェニコールによる好中球減少症を回復させた。以上の結果から、IL–19は好中球の発生に重要な役割を担っており、好中球減少症治療のための強力なサイトカインである可能性が示唆された。

    メカニカルストレス

    破骨細胞におけるJAK2-IGF1シグナルはマウス出生後の成長を制御する

    原題:

    JAK2-IGF1 axis in osteoclasts regulates postnatal growth in mice

    著者:

    David W. Dodington, Jenalyn L. Yumol, Jiaqi Yang, Evan Pollock-Tahiri, Tharini Sivasubramaniyam, Sandra M. Sacco, Stephanie A. Schroer, Yujin E. Li, Helen Le, Wendy E. Ward, and Minna Woo

    雑誌:

    JCI Insight, 6, e137045. (2021)

    POINT!

    JAK2はサイトカインや成長因子のシグナル伝達に重要な役割を果たしているが、その破骨細胞における役割はいまだ不明であった。著者らは、破骨細胞におけるJAK2の役割を明らかにするため、CtskCreマウスを用いて破骨細胞特異的JAK2欠損(Oc-JAK2–KO)マウスを作製した。Oc-JAK2–KOマウスは出生後に著しい成長障害を示したが、骨密度や骨構造、骨強度にはあまり変化がなかったことから、成長障害は通常の破骨細胞機能異常によるものではない可能性が示された。JAK2はIGF1発現制御因子として知られていることからIGF1発現を調べたところ、Oc-JAK2–KOマウスでは破骨細胞特異的なIGF1の発現が低下しており、身体のサイズ決定に破骨細胞由来IGF1が関与している可能性が示唆された。破骨細胞由来のIGF1の役割を直接評価するために、破骨細胞特異的なIGF1欠損マウスを作製したところ、Oc-JAK2–KOマウスと同様の成長障害を示した。さらに、TtrプロモーターによりヒトIGF1を過剰発現させると、Oc-JAK2–KOマウスの成長障害が回復した。以上の結果から、破骨細胞におけるJAK2とIGF1は破骨細胞の骨吸収機能とは独立して、身体サイズの決定に役割を果たしている可能性が示された。

    PTH

    SLPIはPTH誘導性骨形成制御の重要なメディエーターである

    原題:

    SLPI is a critical mediator that controls PTH-induced bone formation

    著者:

    Akito Morimoto, Junichi Kikuta, Keizo Nishikawa, Takao Sudo, Maki Uenaka, Masayuki Furuya, Tetsuo Hasegawa, Kunihiko Hashimoto, Hiroyuki Tsukazaki, Shigeto Seno, Akira Nakamura, Daisuke Okuzaki, Fuminori Sugihara, Akinori Ninomiya, Takeshi Yoshimura, Ryoko Takao-Kawabata, Hideo Matsuda & Masaru Ishii

    雑誌:

    Nat Commun, 12, 2136 (2021)

    POINT!

    破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成は、骨代謝において密接に関連している。骨同化作用を有するPTHは、骨吸収優位の状態から骨形成優位の状態へとバランスを変化させるが、この過程がPTHによってどのように協調的に調整されているかは不明であった。本研究で著者らは、PTH投与後にCol2.3-ECFPマウスからソートした骨芽細胞における遺伝子発現の網羅的解析を行い、セリンプロテアーゼ阻害剤であるSLPI (secretory leukocyte protease inhibitor) が、PTHによる骨量上昇に関わる重要な因子であることを同定した。SlpiはPTHによって骨芽細胞で強く発現し、Slpi欠損マウスではPTH間欠投与による骨形成促進効果が著しく阻害され、骨吸収が上昇した。Slpiを過剰発現する骨芽細胞は分化能が上昇し、Slpi過剰発現細胞で発現変化するタンパク質の質量分析法による網羅的解析によってSLPIによる分化促進は-cateninを介している可能性が示唆された。SLPIの骨吸収に対する影響は直接的な作用ではなく、骨芽細胞と破骨細胞の接触を促進することで骨吸収が抑制され、さらに骨形成が促進されることが示された。また、マウス頭蓋骨の生体イメージングによりCol2.3-ECFP/TRAP-tdTomatoマウスでの破骨細胞と骨芽細胞の相互作用を解析したところ、Slpi欠損によりPTH投与下で促進される骨芽細胞と破骨細胞の細胞間相互作用が阻害された。以上の結果から、SLPIは骨芽細胞と破骨細胞のコミュニケーションを制御し、PTHによる骨同化作用を促進することが明らかになった。

    造血幹細胞分化

    IL-22阻害はストレス誘導性の貧血における赤血球機能不全を回復させる

    原題:

    Blockade of IL-22 signaling reverses erythroid dysfunction in stress-induced anemias

    著者:

    Authors Mahesh Raundhal, Shrestha Ghosh, Samuel A Myers, Michael S Cuoco, Meromit Singer, Steven A Carr, Sushrut S Waikar, Joseph V Bonventre, Jerome Ritz, Richard M Stone, David P Steensma, Aviv Regev, Laurie H Glimcher

    雑誌:

    Nat Immunol, 22(4): 520–529 (2021)

    POINT!

    骨髄異形成症候群(MDS)は、増血の異常により貧血、出血傾向、易感染など様々な症状を呈する疾患である。貧血は5番染色体長腕の欠失との関連が古くから知られている。Gene Expression Commons (https://gexc.riken.jp) を用いた遺伝子発現のデータベース解析の結果、5q15に位置するセリン-スレオニンキナーゼRight open-reading-frame kinase 2 (RIOK2) が幼弱な赤芽球コロニーで高い発現を認めた。そこで、Riok2f/+Vav1creマウスを作出したところ、これらのマウスではRBC、Hb、HCTの低下といった貧血所見が認められた。赤血球分化(RI〜RIV)の解析の結果、アポトーシス増加を伴う各段階の前駆細胞の減少を認めた。フェニルヒドラジン誘導性の溶血による赤血球新生を誘導するモデルにより、RIOK2のストレス下での造血能への寄与を検討した。Riok2f/+Vav1creマウスでは対照群のマウスと比較してRIIIおよびRIV赤芽球の減少に経発する高度の貧血と回復の遅延が認められた。したがって、RIOK2は赤血球分化を制御することが示された。RIOK2の作用機序を解明するためにマススペクトロメトリー解析を行ったところ、RIOK2欠損細胞ではS100A8、S100A9、CAMP、NGPといったアラーミンの上昇が見出された他、免疫応答のパスウェイ遺伝子発現にも変化が見出された。Riok2f/+Vav1creマウス由来のTH細胞ではIL-22産生能が上昇していた。RIOK2欠損によるIL-22産生亢進のメカニズムをRNA-Seq法により解析し、p53経路の活性化を見いだした。ChIP法によりp53のIl22プロモーターへの結合が示された。P53遺伝子(Trp53)の欠損により、Riok2欠損によるIL-22産生亢進はキャンセルされた。したがって、p53はRiok2によるIL-22産生制御仲介することが明らかになった。Riok2f/+Il22+/Vav1creマウスはRiok2f/+Il22+/+Vav1creマウスと比べ末梢血中のRBC、Hb、HCTが高値であり、RIOK2欠損による貧血はIL-22を介することがわかった。赤血球前駆細胞がIL-22受容体(IL-22RA1)を発現すること、IL-22の中和抗体投与やIL-22RA1欠損によってIL-22の作用が消失することから、IL-22はサイトカイン作用によって赤血球前駆細胞を標的とし、貧血を誘導することが示された。貧血は慢性腎疾患(CKD)の主症状の一つであるが、CKD患者の血清においてIL-22が高い値を示したことから、IL-22はMDSのような遺伝子変異以外の要因で生じる貧血にも関係する可能性が示唆された。

    IL-4

    IL-4により誘導されるミクログリアはBDNF依存性の神経新生を介してストレス耐性を制御する

    原題:

    IL4-driven microglia modulate stress resilience through BDNF-dependent neurogenesis

    著者:

    Jinqiang Zhang, Peijing Rong, Lijuan Zhang, Hui He, Tao Zhou, Yonghua Fan, Li Mo, Qiuying Zhao, Yue Han, Shaoyuan Li, Yifei Wang, Wan Yan, Huafu Chen, Zili You

    雑誌:

    Sci Adv. 7(12): eabb9888 (2021)

    POINT!

    海馬の歯状回は、成体における神経新生の場であり、神経新生の活性はストレスなどによって変動しうる。グリア細胞の一つ、ミクログリアは神経系の維持に重要であるが、ストレス下での神経新生におけるミクログリアの機能には不明な点が多い。絶食、絶水、拘束などのストレッサーに暴露するモデル(chronic mild stress: CMSモデル)に対して感受性の高いマウスと低いマウスの海馬と前頭前皮質の解析により、低感受性群におけるIl4発現が認められた。In situハイブリダイゼーション法により、Il4はニューロンとミクログリアに認められた。低感受性群ではSTAT6活性化も認められたことから、IL-4シグナルがストレスに関係すると考えられた。ストレス低感受性マウスではミクログリアにおける形態変化やArg1陽性細胞の増殖も認められたことから、著者らはIL-4-ミクログリアを軸としたストレス抵抗性に着目した。アデノ随伴ウイルスによりCMSマウスの海馬でIl4を過剰発現させたところ、顕著なArg1 (M2ミクログリアマーカー)発現上昇とNos2 (iNOS遺伝子、M1ミクログリアマーカー)発現低下を認めた。組織学レベルでは、Il4過剰発現マウス海馬においてArg1陽性ミクログリアが増加し、ミクログリアは活性化していた。フローサイトメトリー解析により、同部位ではCD86およびCD206二重陽性細胞が増加していた。ミクログリアにおけるIL-4作用を解析するために、CX3CR1Cre/ERT2マウスの海馬にLoxP-CMV-EGFP-LoxP-IL4Rα-shRNAコンストラクトを有するレンチウイルスを投与し、海馬のミクログリア特異的なIL-4受容体のノックダウンを行った。その結果、これらのマウスでは、CMSモデルの実施により、Arg1陽性ミクログリアの減少を伴う鬱様行動が見られた。CMS高感受性マウスでは神経新生の低下を認めた。Il4過剰発現により神経新生に関わる遺伝子群の発現が変動し、ミクログリア特異的Il4raノックダウンにより神経新生が低下したことから、IL-4がミクログリアを介して神経新生を誘導することが示された。Il4過剰発現マウスより単離したミクログリアの培養上清を神経幹細胞に添加したところ、増殖と分化が促進された。Il4過剰発現マウスの海馬ではミクログリアによるBDNF産生が増加し、ミクログリア特異的Il4raノックダウンマウスでは低下した。BDNF受容体TrkBのシグナルをK252aで遮断したところ、IL-4による神経新生の促進効果は消失した。以上より、ストレス下において、ミクログリアはIL-4によりBDNFを産生し、神経新生を誘導することでストレスに抵抗していることが示された。

    RANK

    RANKは胸腺制御性T細胞を流産と妊娠糖尿病にリンクさせる

    原題:

    RANK links thymic regulatory T cells to fetal loss and gestational diabetes in pregnancy

    著者:

    Magdalena Paolino, Rubina Koglgruber, Shane J. F. Cronin, Iris Uribesalgo, Esther Rauscher, Jürgen Harreiter, Michael Schuster, Dagmar Bancher-Todesca, Blanka Pranjic, Maria Novatchkova, Juan P. Fededa, Andrea J. White, Verena Sigl, Sabine Dekan, Thomas Penz, Christoph Bock, Lukas Kenner, Georg A. Holländer, Graham Anderson, Alexandra Kautzky-Willer, Josef M. Penninger

    雑誌:

    Nature, 589, 442–447 (2021)

    POINT!

    妊娠が成功するかどうかは、免疫系の著しい変化を含む母体の適応に依存している。胸腺が妊娠中に著しく変化することは以前から知られていたが、このプロセスの分子的基盤や重要性についてはほとんど不明のままであった。本研究で著者らは、胸腺髄質上皮細胞におけるRANK発現依存的に、妊娠マウスの制御性T(Treg)細胞が胎盤に遊走してクローン増殖し、流産を防ぐことを明らかにした。胸腺上皮細胞でRank遺伝子を欠失させると、妊娠中の雌マウスにおける胸腺の退縮が抑制され、内在性Treg細胞の増殖が低下した。プロゲステロンは、AIRE+胸腺髄質上皮細胞依存的にRANKを介して胸腺Treg細胞の発生を促進した。また、マウス胸腺上皮におけるRank欠損により胎盤中の内在性Treg細胞の蓄積が減少し、流産の数が増加するだけでなく、内臓脂肪組織におけるTreg細胞の蓄積も減少させ、妊娠糖尿病の重要な特徴である脂肪細胞肥大化、組織炎症、巨大仔、グルコース恒常性の世代を超えた長期的な異常などが誘導された。さらに、胸腺上皮Rank欠損マウスへの野生型妊娠マウス由来の内在性Treg細胞移植により、流産や母体の耐糖能障害、巨大仔がレスキューされた。ヒトの妊娠においても、妊娠糖尿病は胎盤におけるTreg細胞数の減少と相関していることが明らかにされた。以上の知見から、RANKが妊娠中に女性ホルモンによる胸腺Treg細胞の発生を促進することが明らかにされ、母体Treg細胞の機能が妊娠糖尿病の発症と世代を超えた耐糖能異常にも及ぶことを示している。

    IL-28

    間葉系幹細胞由来のIL-28はアポトーシス抵抗性骨転移性前立腺がんの選択を促進する

    原題:

    Mesenchymal stem cell-derived interleukin-28 drives the selection of apoptosis resistant bone metastatic prostate cancer

    著者:

    Jeremy J. McGuire, Jeremy S. Frieling, Chen Hao Lo, Tao Li, Ayaz Muhammad, Harshani R. Lawrence, Nicholas J. Lawrence, Leah M. Cook, Conor C. Lynch

    雑誌:

    Nat Commun, 12, 723 (2021)

    POINT!

    骨転移性前立腺がんは間葉系幹細胞(MSC)のリクルートと骨芽細胞への分化を促進することが知られている。しかしながら、骨髄由来MSCが骨転移性前立腺がん細胞に及ぼす影響については、あまり研究されていなかった。本研究で著者らは、MSC由来のIL-28がIL-28Rα-STAT1シグナル伝達を介して前立腺がん細胞のアポトーシスを誘発することを見出した。その一方で、MSCへの慢性的な曝露は、IL-28誘導性アポトーシスやドセタキセルのような治療薬に抵抗性を示す前立腺がん細胞の選択を促進した。また、MSCに選択されたIL-28抵抗性の前立腺がん細胞は、骨髄中で高い増殖能を示した。アポトーシスに対して獲得した抵抗性は、骨転移性前立腺がん細胞内因性で、IL-28Rαシグナル伝達下流で活性化される転写因子がSTAT1からSTAT3へシフトとすることと関連する可能性が示された。さらに、STAT3の欠失またはSTAT3阻害剤S3I-201の投与はMSCへの慢性的曝露によって選択された前立腺がん細胞の増殖および生存能を失わせることが明らかにされた。以上から、骨髄MSCにより誘導される治療抵抗性の骨転移性前立腺がんの出現はSTAT3を標的とすることで無効化することが可能であることが示唆された。

    メカニカルストレス

    力学的刺激によるTNFαのエンドサイトーシスが間葉系幹細胞の恒常性を司る

    原題:

    Mechanical force-driven TNFα endocytosis governs stem cell homeostasis

    著者:

    Wenjing Yu, Chider Chen, Xiaoxing Kou, Bingdong Sui, Tingting Yu, Dawei Liu, Runci Wang, Jun Wang, Songtao Shi

    雑誌:

    Bone Res, 8, 44 (2020)

    POINT!

    間葉系幹細胞(MSC)は免疫系と密接に相互作用し、ストレス刺激に反応して炎症性サイトカインを分泌することが知られているが、MSC由来の炎症性サイトカインの生物学的機能については未だ解明されていなかった。本研究で著者らは、生理的条件下でもMSCが低レベルのTNFαを産生・放出しており、このTNFαはオートクライン・パラクラインシグナル伝達を介してMSCの自己複製や骨芽細胞への分化を維持するために必要であることを明らかにした。著者らは、生理的レベルのTNFαがTNF受容体非依存的にメカニカルストレスによるエンドサイトーシスを介してMSCの恒常性を維持し、エンドサイトーシスされたTNFαがmTORC2に結合してmTORシグナル伝達を抑制することを発見した。ラパマイシンによるmTORシグナル伝達の阻害は、TNFα欠損や後肢免荷による骨量低下を抑制する骨同化作用を示すことが明らかにされた。以上の結果から、MSCと骨の恒常性を司るTNFαによるmTORシグナルの生理的機序が明らかにされた。

    骨髄ニッチ

    血管内皮由来の間質細胞は骨髄ニッチの形成に寄与する

    原題:

    Endothelium-derived stromal cells contribute to hematopoietic bone marrow niche formation

    著者:

    Keane Jared Guillaume Kenswil, Paola Pisterzi, Gonzalo Sánchez-Duffhues, Clairevan Dijk, Andrea Lolli, Callie Knuth, Byambasuren Vanchin, Adrian Christopher Jaramillo, Remco Michiel Hoogenboezem, Mathijs Arnoud Sanders, Jacqueline Feyen, Tom Cupedo, Ivan G. Costa, Ronghui Li, Eric Moniqué Johannes Bindels, Kirsten Lodder, Bianca Blom, Pieter Koen Bos, Marie-José Goumans, Peterten Dijke, Eric Farrell, Guido Krenning, Marc Hermanus Gerardus Petrus Raaijmakers

    雑誌:

    Cell Stem Cell. 2021 Feb 1;S1934-5909(21)00006-0.

    POINT!

    造血幹細胞の維持や再生医療の観点から、近年骨髄間質細胞の重要性が注目されている。しかし、骨髄間質細胞の起源については特にヒトについては不明な点が多い。著者らは新生児骨髄や化学療法からの回復時 (hREC) にのみ存在し、健常成人の骨髄には存在しないLNGFR+細胞に着目した。LNGFR+細胞はCD34などの血管内皮細胞マーカーを発現していた。組織学的解析により、CD31+CD105+LNGFR+細胞は海面骨梁付近の洞様毛細血管に多く見出された。内皮細胞と間質細胞のマーカーを共発現することからこの細胞は内皮-間葉転換(EndoMT)を行っている可能性が想定された。網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、LNGFR+ hRECでは対照群の骨髄間質細胞と比較してCDH5 (VE-Cadherin)などの血管内皮マーカーの発現が認められ、LNGFR hRECと比較して、骨芽細胞マーカー高い発現が認められた。また、LNGFR+ hRECでは上皮-間葉転換(EMT)やEndoMTに関わる遺伝子群も高い発現を認めた。さらなる解析により、これらの細胞はコロニー形成能や造血幹細胞の維持能、軟骨細胞や骨芽細胞への分化能など、間葉系幹細胞の性質も見出された。著者らは過去にIL-33がEndoMTが活発に起こる発生および修復過程において骨髄血管内皮細胞に発現することを見出しており、IL-33によるLNGFR+細胞のEndoMT誘導の可能性を着想した。IL-33の添加により血管内皮マーカー発現は低下し、骨芽細胞分化の亢進が認められた。以上より、血管内皮由来のIL-33はEndoMTを誘導し、骨髄環境の構築・再構築に関わることが示された。

    組織再生

    毛包再生能を有する上皮幹細胞の同定と増幅法の開発

    原題:

    Expansion and characterization of epithelial stem cells with potential for cyclical hair regeneration

    著者:

    Makoto Takeo, Kyosuke Asakawa, Kohei Toyoshima, Miho Ogawa, JingJing Tong, Tarou Irié, Masayuki Yanagisawa, Akio Sato, Takashi Tsuji

    雑誌:

    Sci Rep. 11: 1173. (2020)

    POINT!

    毛包は生体において再生力の高い組織である。また、成長期と休止期(毛周期)を繰り返すことも毛包の特徴として知られている。毛包には様々な性質を有する細胞が含まれるが、これらの細胞が毛包再生や毛周期を制御するメカニズムには不明な点が多く、毛髪再生療法開発における壁の一つであった。著者らは生涯にわたる毛包再生を可能にする毛包幹細胞ポピュレーションの探索を行った。まず、毛包より単離した細胞を増殖させたり、毛隆起の上部や下部の細胞に分化させるために220を超える培養条件を試みた。その結果、Noggin、FGF-7、FGF-10、Shhアゴニスト、EGF(NFFSE)をアテロコラーゲンゲルに含浸させた三次元培養系において、幹細胞マーカーCD34とCD49fを共発現する細胞の増殖を誘導することを見出した。この培地からEGFを除去したNFFS培地やWntリガンド、Notchリガンド、TGF-β阻害剤を添加したNFFSWN培地では増殖能が低下し、毛隆起の上部や下部のマーカーの発現を誘導した。これらの培地で誘導された細胞がもう周期や毛包再生に寄与するかを検討した。培養毛包上皮細胞と培養毛乳頭細胞を上記の培地で培養して得られた毛包の元基をヌードマウスの背部皮膚に移植したところ、NFFSE培地を用いた場合において、発毛が確認された上に、高い割合で三回以上の毛周期が認められ、NFFSE誘導性の毛包幹細胞の毛包再生への寄与が示唆された。そこで、これらの細胞の表面マーカーをさらに解析し、CD34+CD49f+Itgβ5+細胞に富むことを見出した。フローサイトメトリー法によりCD34+CD49f+細胞集団からItgβ5+のポピュレーションを除去したところ、毛包再生の回数が減少したことから、Itgβ5の重要性が示された。Itgβ5+細胞は毛隆起上部のテネイシン発現部位に一致しており、この部分が発毛ニッチである可能性が示唆された。

    神経-免疫連関

    痛覚神経は造血幹細胞の遊走を制御する

    原題:

    Nociceptive nerves regulate haematopoietic stem cell mobilization

    著者:

    Xin Gao, Dachuan Zhang, Chunliang Xu, Huihui Li, Kathleen M. Caron, Paul S. Frenette

    雑誌:

    Nature. 589: 591-596. (2021)

    POINT!

    近年、骨髄における造血幹細胞(HSC)ニッチ研究が大きく進展した。それにより、HSCニッチとしての神経系の重要性が広く認められるようになったが、感覚神経のニッチ機能はよくわかっていない。著者らは痛覚神経のニッチ機能を明らかにするために、レシニフェラトキシン(RTX)をマウスに全身投与し、痛覚神経の除神経を行った。このマウスにG-CSFを投与することで末梢へのHSC遊走を促したところ、コントロールマウスと比較してHSCの動員が抑制された。この際、骨髄中のHSC数には有意な差は認められなかった。G-CSF処理で動員された末梢血細胞を用いたreconstitution assayの結果、RTXにより痛覚神経を除去したマウス由来の血球細胞の割合はコントロールと比べて低値であった。感覚神経由来ペプチドのCGRPを投与したところ、除神経マウスの場合でもG-CSF誘導性の末梢HSCが増加した。CGRP受容体構成要素の一つRAMP1を欠損するRamp1–/–マウスでは、骨髄内のHSC数に変化がない一方、G-CSF誘導性の末梢HSCが減少した。以上より、感覚神経がCGRP–RAMP1を介してHSCの末梢への動員を誘導すると考えられた。CGRPの標的細胞を明らかにするために、Ramp1–/–マウスとコントロールマウスに放射線を照射し、骨髄キメラマウスを作製・解析した。移入したHSCが野生型の場合はG-CSFによるHSCの末梢への動員が見られた一方、Ramp1–/–HSCを移入した場合は末梢への動員が抑制されたことから、CGRPはHSCに作用して末梢への動員を促進することがわかった。CGRPシグナルをさらに詳細に解析するために、Ramp1–/–HSCの遺伝子発現を網羅的に解析し、その結果、Gαs–アデニリルサイクラーゼ–cAMP経路の遺伝子発現の低下を見出した。Ramp1–/–HSCをホルスコリン(FSK)処理しアデニリルサイクラーゼを活性化したところ、G-CSFによるHSCの末梢への動員が回復した。痛覚神経の刺激がHSCを末梢に動員したことから、食餌によるHSC動員が可能であるかを検討した。カプサイシン含有飼料で飼育したマウスでは、G-CSFによるHSC末梢動員が増加し、この効果はRTX投与により消失した。以上により、痛覚刺激は痛覚神経と神経ペプチドCGRPを介してHSCを抹消に動員することが示された。痛み刺激によるHSC末梢動員は、組織損傷を起こしうる刺激に対して、損傷の規模を抑えたり再生を早めるという生理的意義があると考えられる。

    骨髄微小環境

    In situ マッピングによる骨髄系造血を制御する血管ニッチの同定

    原題:

    In situ mapping identifies distinct vascular niches for myelopoiesis

    著者:

    Jizhou Zhang, Qingqing Wu, Courtney B. Johnson, Giang Pham, Jeremy M. Kinder, Andre Olsson, Anastasiya Slaughter, Margot May, Benjamin Weinhaus, Angelo D’Alessandro, James Douglas Engel, Jean X. Jiang, J. Matthew Kofron, L. Frank Huang, V. B. Surya Prasath, Sing Sing Way, Nathan Salomonis, H. Leighton Grimes & Daniel Lucas

    雑誌:

    Nature, 590: 457-462. (2021)

    POINT!

    骨髄は造血幹細胞を維持し、単球や顆粒球などの骨髄系細胞やリンパ球など、様々な造血系細胞の発生・分化の場として機能する。しかしながら、骨髄内の解剖学的特性が、造血系細胞の分化及び系統決定に与える影響に関しては未だ不明な点が多い。本論文において著者らは、マウス胸骨を用いたホールマウント免疫染色のプロトコルを確立することで、骨髄系細胞(顆粒球、単球、樹状細胞)の増殖分化を組織学的に解析し、顆粒球系と単球・樹状細胞系の前駆細胞はそれぞれ解剖学的に異なる部位で増殖分化することを見出した。単球・樹状細胞前駆細胞の増殖分化はM-CSFを発現する血管の周囲に局在して観察されたが、この構造は血管内皮細胞特異的にM-CSFを欠損したマウスでは認められなかった。リステリア菌の感染に伴う急性ストレスに伴い、顆粒球系および単球・樹状細胞系前駆細胞は骨髄内における解剖学的な局在を保ったまま増殖した。また、血管内皮細胞が産生するM-CSFは、感染に伴う単球・樹状細胞系前駆細胞の増殖にも必要であることが示された。以上より、生理的及び病的環境下において、骨髄造血は解剖学的局在の異なる血管により空間的な制御を受けている可能性が示唆された。

    頭蓋縫合早期癒合症

    頭蓋骨縫合の再生は、 頭蓋骨縫合早期癒合症に伴う神経認知機能障害を改善する

    原題:

    Cranial Suture Regeneration Mitigates Skull and Neurocognitive Defects in Craniosynostosis

    著者:

    Mengfei Yu, Li Ma, Yuan Yuan, Xin Ye, Axel Montagne, Jinzhi He, Thach-Vu Ho, Yingxi Wu, Zhen Zhao, Naomi Sta Maria, Russell Jacobs, Mark Urata, Huiming Wang, Berislav V Zlokovic, Jian-Fu Chen, Yang Chai

    雑誌:

    Cell, 184: 243-256. (2021)

    POINT!

    頭蓋は脳の成長に連動して拡大する必要があり、頭蓋骨縫合とそこに含まれる間葉系幹細胞が頭蓋骨の拡大に重要な役割を担う。頭蓋骨縫合の早期癒合は、Saethre-Chotzen症候群を含むいくつかの先天性疾患に随伴することが知られており、頭蓋の形態異常、頭蓋内圧の上昇に伴う脳の発達障害と精神発達遅延の原因となる。しかしながら、頭蓋骨縫合早期癒合の動物モデルはこれまで存在せず、有効な治療法の開発を妨げる要因の一つとなっていた。本論文において著者らは、ヘリックス-ループ-ヘリックス型の転写因子であるTwist1遺伝子のヘテロ欠損マウスが頭蓋骨縫合早期癒合に伴う頭蓋内圧上昇と認知障害を呈し、Saethre-Chotzen症候群のモデルとなることを見出した。このマウスの頭蓋骨縫合部を外科的に切離し、切離部にGli1陽性間葉系幹細胞を含む生体分解性キャリアを移植すると、頭蓋骨縫合が再構築され、頭蓋骨変形や認知機能の改善が認められることが明らかとなった。以上より、間葉系幹細胞の移植療法が、頭蓋骨縫合早期癒合の新たな治療戦略として有用である可能性が示唆された。

    異所性骨化

    Activin Aはマウスにおける獲得性異所性骨化の進行を促進し、病状緩和の有効なターゲットである。

    原題:

    Activin A promotes the development of acquired heterotopic ossification and is an effective target for disease attenuation in mice

    著者:

    Christina Mundy, Lutian Yao, Sayantani Sinha, Juliet Chung, Danielle Rux, Sarah E Catheline, Eiki Koyama, Ling Qin, Maurizio Pacifici

    雑誌:

    Sci. Signal., 14: eabd0536. (2021)

    POINT!

    異所性骨化は、筋肉などの軟組織に形成し、組織損傷に伴う炎症によって引き起こされることが知られている。現在異所性骨化に対する有効な治療法はまだ確立されていない。TGF (transforming growth factor)-bスーパーファミリーに属するactivin Aは、活性化したマクロファージなどの炎症細胞から産出され、SMAD2/3を介したシグナルを伝達する。また、異所性骨化の発症は炎症から始まることと、SMAD2/3シグナルは軟骨形成に関与することから、筆者らはActivin Aの異所性骨化への作用を調べた。マウスにBMP (bone morphogenic protein) 2を含むマトリゲルを筋肉に移植すると、異所性骨化が見られたが、Activin Aの中和抗体 (10 mg/kg)を週2回投与することによって異所性骨化が顕著に抑制された。また、病変部のシングルセルRNA-seqを行った結果、Activin A中和抗体を投与したマウスでは、Sox9+骨化前駆細胞の集積が減少し、その多くはActivin Aの発現が認められた。In vitroではActivin Aは軟骨細胞分化を促進することが示された。以上から、Activin Aは異所性骨化進行の上流刺激因子として働き、有効な治療ターゲットになりうることが示唆された。

    オートファジー

    増強されたBMPシグナルはオートファジー依存性のβ-catenin分解を抑制することで頭蓋神経堤細胞を軟骨細胞分化に誘導する

    原題:

    Augmented BMP signaling commits cranial neural crest cells to a chondrogenic fate by suppressing autophagic β-catenin degradation

    著者:

    Jingwen Yang, Megumi Kitami, Haichun Pan, Masako Toda Nakamura, Honghao Zhang, Fei Liu, Lingxin Zhu, Yoshihiro Komatsu, Yuji Mishina

    雑誌:

    Sci. Signal., 14: eaaz9368 (2021)

    POINT!

    頭蓋神経堤細胞は発生時に頭蓋顔面部の骨や軟骨に分化する多分化能幹細胞の一種である。BMPシグナルとオートファジーは、それぞれ幹細胞の恒常性に関与していることが知られていた。ヒトではBMPの受容体であるACVR1の恒常的活性化を引き起こす変異は進行性骨化性線維異形成症(FOP)を引き起こすことが知られている。FOPは体幹結合組織の異所性軟骨化と異所性骨化を特徴とするが、一部の患者では異所性頭蓋顔面骨化をきたす。筆者らは神経堤細胞に特異的にACVR1を活性化させたマウス(ca-Acvr1mutant mice: P0-Cre ca-Acvr1 flox/+)では頭蓋顔面の欠損および異所性軟骨形成を認めることを示した。さらに胎仔のSOX9の発現解析やフェイトマッピングによって、増強されたBMPシグナルは細胞増殖や遊走へは影響を与えずに、頭蓋神経堤細胞を軟骨細胞形成の方向へ決定づけることを示した。続いてca-Acvr1 mutant mice では軟骨の異常形成と一致してmTORC1シグナルが活性化していることを示した。同様にβ-cateninやWnt-β-cateninシグナルの標的遺伝子も発現が上昇していることを示した。最後にca-Acvr1 mutant miceではオートファジーが抑制されていること、またオートファジーの標的はβ-cateninであることを示した。以上の結果から、BMPシグナルとオートファジーが協調的にβ-catenin活性を調節して発生時における頭蓋神経堤細胞の軟骨細胞への分化を調整することを証明した。このことはFOP患者の異所性顔面軟骨形成の予防にオートファジー促進剤やWnt阻害剤が有望な治療法になる可能性を示すものである。

    中枢神経線維芽細胞

    中枢神経線維芽細胞は免疫細胞の浸潤に応答して線維性瘢痕を形成する

    原題:

    CNS fibroblasts form a fibrotic scar in response to immune cell infiltration

    著者:

    Cayce E Dorrier, Dvir Aran, Ezekiel A Haenelt, Ryan N Sheehy, Kimberly K Hoi, Lucija Pintarić, Yanan Chen, Carlos O Lizama, Kelly M Cautivo, Geoffrey A Weiner, Brian Popko, Stephen P J Fancy, Thomas D Arnold, Richard Daneman

    雑誌:

    Nat. Neurosci., 24: 234-244. (2021)

    POINT!

    線維化は、炎症に対する一般的な病理学的反応である。しかし、中枢神経での神経炎症に対する線維化に関してはその程度や疾患との関わりなど不明な点が多い。本論文で、著者らは多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて、系統追跡実験とシングルセル解析を行い、神経炎症に応答して中枢神経に線維性瘢痕が形成され、その大部分は周皮細胞や骨髄由来細胞でなく、増殖した中枢神経線維芽細胞に由来することを見出した。ヘルペスチミジンキナーゼを使用して増殖する線維性細胞を除去すると、炎症病変内で髄鞘形成機能を有する希突起膠細胞系細胞が増加し、運動障害が改善した。さらに、中枢神経線維芽細胞ではIFN-γ経路の遺伝子発現が亢進しており、線維芽細胞特異的にIfngr1(インターフェロンガンマ受容体1)を欠損させたところ、EAEの中枢神経線維性瘢痕は減少した。以上により、中枢神経での神経炎症に対する瘢痕形成における中枢神経線維芽細胞の役割の一端が明らかとなり、今後の治療標的となる可能性が示唆された。

    認知機能

    ミエロイド細胞のメタボリズム回復は加齢における認知機能低下を逆転させる

    原題:

    Restoring metabolism of myeloid cells reverses cognitive decline in ageing

    著者:

    Paras S. Minhas, Amira Latif-Hernandez, Melanie R. McReynolds, Aarooran S. Durairaj, Qian Wang, Amanda Rubin, Amit U. Joshi, Joy Q. He, Esha Gauba, Ling Liu, Congcong Wang, Miles Linde, Yuki Sugiura, Peter K. Moon, Ravi Majeti, Makoto Suematsu, Daria Mochly-Rosen, Irving L. Weissman, Frank M. Longo, Joshua D. Rabinowitz & Katrin I. Andreasson

    雑誌:

    Nature, 590: 22-128. (2021)

    POINT!

    加齢により発生頻度が増すアテローム性動脈硬化やメタボリックシンドローム、がんやフレイルは慢性炎症が寄与すると考えられている。老化した脳も炎症に対して脆弱であると考えられ、認知機能低下やアルツハイマー病は加齢とともに有病率が上昇する。全身性に循環する炎症性因子は認知機能の低下を促進しうるが、加齢に伴い炎症が開始し持続する根本的なメカニズムはよくわかっていない。筆者たちは老化したマウスにおいて、炎症の主要なモジュレーターである脂質メッセンジャー、プロスタグランジンE2(PGE2)によるシグナル伝達に応答してミエロイド系細胞の生体エネルギーが抑制されることが認知機能低下に繋がることを示した。ヒト単球由来マクロファージから産生されるPGE2を35歳以下と65歳以上で比べると、65歳以上で有意に高かった。さらにヒト単球由来マクロファージをPGE2で刺激すると濃度依存的に解糖能とミトコンドリア酸素消費速度が低下した。そこで、PGE2の受容体であるEP2をミエロイド系細胞特異的にノックアウトしたマウス(CD11bCre;EP2lox/loxマウス)を解析したところ、老齢であっても代謝系が若いマウスと同程度であり、血清および海馬の炎症性因子もコントロールと比べ低下していることがわかった。また、老齢CD11bCre;EP2lox/loxマウスの認知機能テストのパフォーマンスは若いマウスと同程度であった。老化したマクロファージやミクログリアでは、PGE2の受容体であるEP2を介したPGE2シグナリングがグルコースのグリコーゲンへの合成を促進しており、グルコース代謝フラックスとミトコンドリア呼吸を減弱させていた。実際に65歳以上のヒト単球由来マクロファージでグリコーゲン合成酵素をノックダウンすると、解糖系とミトコンドリア呼吸が回復し、炎症性マーカーも減少した。老化した細胞にEP2の阻害剤作用させると解糖系とミトコンドリア呼吸が若い細胞のレベルにまで回復し、in vivoにおいても認知機能を回復することができた。この研究により認知的老化は不可逆的なものではなく、ミエロイド系におけるグルコース代謝を調節することにより逆転させることも可能であることが示された。

  • スクレロスチン

    スクレロスチンは2つのLRP6細胞外ドメインとのタンデムな相互作用によってWntシグナルを抑制する

    原題:

    Sclerostin inhibits Wnt signaling through tandem interaction with two LRP6 ectodomains

    著者:

    Jinuk Kim, Wonhee Han, Taeyong Park, Eun Jin Kim, Injin Bang, Hyun Sik Lee, Yejing Jeong, Kyeonghwan Roh, Jeesoo Kim, Jong-Seo Kim, Chanhee Kang, Chaok Seok, Jin-Kwan Han, Hee-Jung Choi

    雑誌:

    Nat. Commun., 11: 5357 (2020)

    POINT!

    LRP6は古典的Wntシグナル伝達経路の共受容体であり、LRP6の細胞外ドメインはWntタンパク質やスクレロスチン(SOST)などのWnt阻害因子と結合する。LRP6の細胞外ドメイン1(E1)はSOSTと相互作用することが知られているが、SOSTがLRP6のE1ドメイン単独よりも高い親和性でE1E2ドメインに結合する理由など、いくつかの未解決の疑問が残されている。本研究で著者らは、2つの相互作用部位がタンデムに配置されたLRP6 E1E2-SOST複合体の結晶構造を解析し、SOSTのC末端とLRP6 E2ドメインの間に新たな結合部位を同定した。in vitroでの機能解析から、同定された結合部位がSOSTによるWntシグナルの完全な抑制活性に重要であり、またSOSTのホモログであるSOSTDC1のC末端もSOSTと同様にLRP6との相互作用に関わっている可能性も示された。さらに、4細胞期のアフリカツメガエル胚にWnt1やSOSTをコードするmRNAを注入することで誘導される異所性の神経管様構造形成による解析から、in vivoでも同様の相互作用の重要性が示唆された。これらの結果から、SOSTによるWntシグナル伝達阻害の詳細なメカニズムが明らかにされた。

    α-ケトグルタル酸

    α-ケトグルタル酸はヒストンメチル化の制御によって加齢性骨粗鬆症を改善する

    原題:

    Alpha-ketoglutarate ameliorates age-related osteoporosis via regulating histone methylations

    著者:

    Yuan Wang, Peng Deng, Yuting Liu, Yunshu Wu, Yaqian Chen, Yuchen Guo, Shiwen Zhang, Xiaofei Zheng, Liyan Zhou, Weiqing Liu, Qiwen Li, Weimin Lin, Xingying Qi, Guomin Ou, Cunyu Wang, Quan Yuan

    雑誌:

    Nat. Commun., 11: 5596 (2020)

    POINT!

    加齢性骨粗鬆症は、加齢に伴う骨髄間葉系間質・幹細胞(MSC)の機能不全などにより骨量や骨強度が低下することを特徴とする。α-ケトグルタル酸(αKG)はTCAサイクルに必須の中間体であり、線虫の寿命を延ばし、胚性幹細胞の多能性を維持することが明らかにされてきた。本研究で著者らは、αKGの飲水からの摂取で高齢マウスの骨量が増加し、加齢に伴う骨量減少が抑制され、高齢ラットの骨再生が促進されることを明らかにした。αKGは老齢マウス由来の骨髄MSCの増殖、コロニー形成、遊走、骨形成能を促進するだけでなくγ-H2AXレベルやSA-β-gal活性などを低下させた。機能的解析から、αKGがH3K9me3とH3K27me3の蓄積を減少させ、BMPリガンドとNanog発現を上昇させることが明らかにされた。本研究によりαKGがMSCの若返りや加齢性骨粗鬆症の改善に果たす役割が示され、加齢性疾患の治療法としての応用が期待される。

    骨髄線維化

    骨髄間質前駆細胞は創薬標的となりうるalarminシグナルを介して骨髄線維化を促進する

    原題:

    Heterogeneous bone-marrow stromal progenitors drive myelofibrosis via a druggable alarmin axis

    著者:

    Nils B. Leimkühler, Hélène F.E. Gleitz, Li Ronghui, Inge A.M. Snoeren, Stijn N.R. Fuchs, James S. Nagai, Bella Banjanin, King H. Lam, Thomas Vogl, Christoph Kuppe, Ursula S.A. Stalmann, Guntram Büsche, Hans Kreipe, Ines Gütgemann, Philippe Krebs, Yara Banz, Peter Boor, Evelyn Wing-Yin Tai, Tim H. Brümmendorf, Steffen Koschmieder, Martina Crysandt, Eric Bindels, Rafael Kramann, Ivan G. Costa, Rebekka K. Schneider

    雑誌:

    Cell Stem Cell, 28: 1–16 (2020)

    POINT!

    骨髄増殖性腫瘍(MPN)患者の骨髄線維化症(MF)に対する骨髄微小環境における個々の細胞の機能的寄与は十分に理解されてはいなかった。本研究で著者らは、マウスモデルと患者サンプルにおけるMPN/MF間質細胞の1細胞レベルでの包括的な解析を行い、線維化促進性細胞として2つの間葉系間質細胞(MSC)サブセットを同定した。これらのサブセットはLepRおよびCxcl12を発現し、これまでに脂肪細胞分化性および骨芽細胞分化性の造血幹細胞ニッチ構成MSCとして報告されているサブセットと類似すると考えられる。MSCは前駆細胞性の喪失、前線維化細胞への分化開始、さらに線維化段階で線維化促進性および炎症性の表現型を獲得するなど、分化段階依存的に機能的にリプログラムされた。また、MSCにおけるalarmin複合体S100A8/S100A9の発現は、マウスモデルおよび患者の骨髄間質および血漿における線維化への進行との相関を示した。S100A8/S100A9シグナル伝達を阻害する低分子Tasquinimodは、JAK2V617F変異マウスモデルにおいてMPNの表現型と線維化を有意に改善したことから、S100A8/S100A9がMPNの重要な治療標的であることが明らかにされた。

    皮膚線維芽細胞

    Prrx1陽性線維芽細胞はマウス腹部真皮における瘢痕形成に寄与する

    原題:

    Prrx1 Fibroblasts Represent a Pro-fibrotic Lineage in the Mouse Ventral Dermis

    著者:

    Tripp Leavitt, Michael S Hu, Mimi R Borrelli, Michael Januszyk, Julia T Garcia, Ryan C Ransom, Shamik Mascharak, Heather E desJardins-Park, Ulrike M Litzenburger, Graham G Walmsley, Clement D Marshall, Alessandra L Moore, Bryan Duoto, Sandeep Adem, Deshka S Foster, Ankit Salhotra, Abra H Shen, Michelle Griffin, Ethan Z Shen, Leandra A Barnes, Elizabeth R Zielins, Zeshaan N Maan, Yuning Wei, Charles K F Chan, Derrick C Wan, Hermann P Lorenz, Howard Y Chang, Geoffrey C Gurtner, Michael T Longaker

    雑誌:

    Cell Rep., 33: 108356 (2020)

    POINT!

    線維芽細胞は性質の異なる複数の細胞集団からなることが知られている。皮膚線維芽細胞は創傷治癒に重要であるが、その性質には不明な点が多い。近年、皮膚線維芽細胞に転写因子Prrx1を発現する集団(PPF)が見出され、組織損傷に伴い増加することが指摘された。そこで著者らはPPFの機能を解析した。まず、Prrx1CreR26mTmGマウスを用いてGFP+のPPFとtdTomato+のPrrx1線維芽細胞(PNF)の標識を行い、腹部の真皮組織よりフローサイトメトリー法によりこれらを分取、解析した。PPFはE16.5より出現し徐々にその割合が増加した。PPFはコラーゲン高産生性であった。そこで、急性(手術による皮膚の全層欠損モデル)および慢性(腫瘍の間質形成モデルと放射線照射モデル)の線維化モデルを施したところ、PPFは線維化組織の線維芽細胞の大部分を占めることが明らかになった。創傷治癒時の瘢痕形成が少量である口腔に腹部真皮由来のPPFを移植したところ、移植したPPFとコラーゲンに高い共局在が認められたことから、線維形成能はPPFの細胞内在性の性質であることが示唆された。PPFが線維形成能を発揮するメカニズムを解析するために、PPFおよびPNFを分取し、scRNA-Seq解析を行った。その結果、FAK-PI3K-Akt-mTor経路およびHIF1A経路の遺伝子群がPPFで高発現することが見出された。PPFの急性線維化への寄与を明らかにするために、Prrx1CreR26mTmG/iDTRマウスを作出し、皮膚損傷を施したのちにジフテリア毒素によりPPFを除去した。このマウスでは、創傷治癒自体は遅延しなかったものの、コラーゲン形成の低下による瘢痕組織の顕著な減少を認めた。再生組織の強度は、通常損傷前と比べて低下するが、PPFを除去した場合は有意な強度低下を認めなかった。また、PPFの慢性線維化への寄与を明らかにするために、このマウスにB16-F10メラノーマ細胞を移植したところ、腫瘍形成が抑制された。以上により、PPFは急性および慢性線維化に大きく寄与し、創傷治癒促進や抗腫瘍療法における標的となる可能性が示唆された。

    グリア細胞

    炎症に伴う神経変性に対してミクログリアのp21-Nrf2経路は防御的に機能する

    原題:

    Therapeutics potentiating microglial p21-Nrf2 axis can rescue neurodegeneration caused by neuroinflammation

    著者:

    A Nakano-Kobayashi, A Fukumoto, A Morizane, D T Nguyen, T M Le, K Hashida, T Hosoya, R Takahashi, J Takahashi, O Hori, M Hagiwara

    雑誌:

    Sci. Adv., 6: eabc1428 (2020)

    POINT!

    近年、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性性疾患における炎症に際して、ミクログリアが異常に活性化することが明らかになり、治療標的として注目されている。著者らは、過去にドラッグスクリーニングによりチロシンキナーゼDyrk1Aの阻害剤ALGERNON(ALG)による神経新生の増加を報告している。今回、著者らは同様の性質を示す新規化合物ALGERNON2(ALG2)を発見した。MPTPによりドーパミン作動性ニューロンを変性させるパーキンソン病モデルマウスに対してALG2を予防投与したところ、神経変性の有意な防止が認められ、パーキンソン病モデルで見られる運動機能の低下も緩和された。次に、ALG2の作用メカニズムを解明するために、この薬物による培養神経細胞の細胞死を検討したところ、抑制作用が見られなかった。神経細胞とグリア細胞の共培養系では神経保護作用が認められ、シトシンアラビノシドによりグリア細胞を除去したところこの作用は消失した。したがって、ALG2の神経作用はグリア細胞を介すると考えられた。著者らは過去にALGがcyclin D1を安定化させることを見出した。Cyclin D1と複合体を形成するp21はALGにより刺激したCD11b+ミクログリアで高度に発現していた。P21はNrf2分解を抑制することが知られている。グリア細胞のNrf2タンパク質はALG2刺激によって増加した。パーキンソン病モデルマウスのミクログリアは細胞突起を伸長し、活性化状態にあったが、ALG2投与により活性化ミクログリアは減少していた。Nrf2はマクロファージによるサイトカイン産生を抑制することが報告されているが、ALG2はミクログリアがLPSに応答して産生する炎症性サイトカインやケモカイン、iNOSを減少させた。iPS細胞による神経再生療法にALG2を併用したところ、治療効果が増加した。以上より、ALG2はp21、Nrf2を介してミクログリアによる神経炎症を抑制し、神経細胞を保護することが示された。

    筋再生

    マクロファージ由来のグルタミンは筋衛星細胞を活性化し筋再生を誘導する

    原題:

    Macrophage-derived glutamine boosts satellite cells and muscle regeneration

    著者:

    Min Shang, Federica Cappellesso, Ricardo Amorim, Jens Serneels, Federico Virga, Guy Eelen, Stefania Carobbio, Melvin Y Rincon, Pierre Maechler, Katrien De Bock, Ping-Chih Ho, Marco Sandri, Bart Ghesquière, Peter Carmeliet, Mario Di Matteo, Emanuele Berardi, Massimiliano Mazzone

    雑誌:

    Nature, 587: 626–631(2020)

    POINT!

    筋再生において、マクロファージは炎症状態をコントロールし、筋衛星細胞の増殖や分化の活性化を制御し、再生プロセスを正常に進めるために必須であることがよく知られている。しかし、この制御におけるアミノ酸代謝には不明な点が多い。筋代謝にはグルタミンが重要であること、マクロファージはグルタミンを産生することから、著者らはマクロファージ由来のグルタミンが筋再生に寄与する可能性を考えた。そこで、グルタミン酸受容体をマクロファージ特異的に欠損するマウス(タモキシフェンを投与したGlud1f/fCsf1rCreERTマウス)にカルディオトキシン(CTX)を投与して筋損傷を誘導した。このマウスの筋では、筋細胞の壊死~再生のピークが早まり、細胞増殖や分化マーカーの発現も高レベルであることが明らかになった。ホイールを用いた自発走行試験により、これらのマウスでは運動機能の回復も早まることがわかった。さらなる解析により、M2マクロファージの減少が認められ、組織損傷後の炎症相が早期に誘導される可能性が示唆された。Glud1f/fCsf1rCreERTマウスのマクロファージでは、グルタミンの酸化の抑制、グルタミンシンターゼ(GS)の活性化に伴うグルタミンの増加などのグルタミン代謝の変調が確認された。放射性同位体標識したグルタミンを含む培地を用いた取り込み実験により、C2C12細胞をGlud1欠損マクロファージと共培養すると、野生型マクロファージを用いた場合と比較して、C2C12細胞によるグルタミンの総取り込み量が高値であった。一方、標識されたグルタミンの量には有意差を認めないことから、Glud1欠損マクロファージ内で多量に合成されたグルタミンが筋細胞に取り込まれると考えられた。マクロファージ特異的GS欠損マウス(タモキシフェンを投与したGlulf/fCsf1rCreERTマウス)では筋損傷後の再生が障害されたことから、マクロファージは筋再生時のグルタミン供給源であることがわかった。Glud1欠損マクロファージと共培養したC2C12細胞は野生型マクロファージを用いた場合よりも太い筋線維に分化した。グルタミンを取り込むSlc1a5をノックダウンしたC2C12細胞を用いた結果、Glud1欠損マクロファージによる分化促進効果は消失した。Glud1欠損マクロファージを移入したマウスでは筋損傷からの回復が促進したが、アデノ随伴ウイルスを用いて筋衛星細胞特異的にSlc1a5をノックダウンしたマウスに同様の処置を行なっても促進効果は認められなかった。マクロファージ特異的Glud1欠損は、加齢個体における筋量の維持にも繋がった。GLUD1阻害剤のR162の投与においても上記の効果が認められた。以上より、GLUD1阻害を介した組織中のグルタミン増加により筋が増強されることが示された。

    破骨細胞

    シングルセル解析による破骨細胞運命決定機構の解明

    原題:

    Stepwise cell fate decision pathways during osteoclastogenesis at single-cell resolution

    著者:

    Masayuki Tsukasaki, Nam Cong-Nhat Huynh, Kazuo Okamoto, Ryunosuke Muro, Asuka Terashima, Yoshitaka Kurikawa, Noriko Komatsu, Warunee Pluemsakunthai, Takeshi Nitta, Takaya Abe, Hiroshi Kiyonari, Tadashi Okamura, Mashito Sakai, Toshiya Matsukawa, Michihiro Matsumoto, Yasuhiro Kobayashi, Josef M. Penninger and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Nat. Metab., 2: 1382–1390 (2020)

    POINT!

    破骨細胞は骨代謝において中心的な役割を担う細胞だが、その過剰な活性化は様々な疾患に伴う病的骨破壊の原因になる。骨破壊性疾患の病態を理解し、治療法の開発を目指す上で、破骨細胞形成機構の全容解明が重要な課題であるが、その詳細なメカニズムに関しては未だ不明な点が多い。本研究で著者らは、破骨細胞の分化培養系をシングルセルRNA-seq技術を用いて解析した。得られた1細胞ごとの全遺伝子発現データを用いて、機械学習アルゴリズムによる細胞分化経路の予測をおこない、破骨細胞前駆細胞があるステージで一過的に樹状細胞関連遺伝子(細胞表面マーカーであるCD11cや、抗原提示に関わる遺伝子群など)を発現することを見出した。実際に、CD11c-Cre依存的にRANKを除去したマウスでは破骨細胞の数が減少し骨量が顕著に増加することが明らかとなり、コンピューターにより予測された破骨細胞分化経路の生物学的妥当性が生体レベルで示された。更に著者らは、破骨細胞の分化経路に伴い発現が顕著に変化する転写因子・転写調節因子を探索し、破骨細胞分化のマスター転写因子であるNfatc1と同じ発現変動パターンを示す因子として、Cited2を同定した。RANK-Cre依存的にCited2を除去したマウスでは、増殖期の破骨細胞前駆細胞から細胞周期の停止した前破骨細胞への移行が阻害されることで、試験管内および生体内において破骨細胞の数が減少することが示された。以上より、破骨細胞の運命決定を司る多段階的な分化プロセスの詳細が1細胞レベルで解明され、各ステージ間の進行が遺伝子レベルで厳密に制御されていることが明らかとなった。

    MALPs

    骨髄脂肪生成系列前駆細胞(marrow adipogenic lineage precursors : MALPs)が骨リモデリングおよび病的な骨量低下における破骨細胞分化を促進する

    原題:

    Bone marrow adipogenic lineage precursors (MALPs) promote osteoclastogenesis in bone remodeling and pathologic bone loss

    著者:

    Wei Yu, Leilei Zhong, Lutian Yao, Yulong Wei, Tao Gui, Ziqing Li, Hyunsoo Kim, Nicholas Holdreith, Xi Jiang, Wei Tong, Nathaniel Dyment, Xiaowei S. Liu, Shuying Yang, Yongwon Choi, Jaimo Ahn, Ling Qin

    雑誌:

    J. Clin. Invest., doi: 10.1172/JCI140214 (2020)

    POINT!

    骨の恒常性は、骨芽細胞や骨細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収の協調により維持されている。この協調が崩れると、骨粗鬆症のような病的な骨量低下につながる。骨形成細胞がRANKLの産生を介して破骨細胞分化をサポートするということはよく知られている。筆者らが最近同定した骨髄間葉系細胞の一種であるmarrow adipogenic lineage precursors (MALPs)は骨中で多次元の細胞間ネットワークを形成しており、RANKLを含む破骨細胞の調節因子を高く特異的に発現して、単球・マクロファージ系細胞と最も強く相互作用することがわかった。脂肪細胞特異的なAdipoq-Creを用いて作製したMALPs特異的にRANKLを欠損したマウス(RANKL CKOAdipoqマウス)はマウス、1ヶ月齢から長管骨や椎骨の海綿骨量の顕著な増加を示した。皮質骨には異常は認められなかった。このマウスでは海綿骨表面の破骨細胞が減少し、骨形成も減弱していた。また、LPS投与による頭蓋冠の溶骨性病変を認めなかった。さらに、RANKL CKOAdipoqマウスでは卵巣摘出による骨吸収の増強が部分的に抑制された。以上の結果から、MALPsはRANKL依存的に、生理的条件下の骨リモデリングにおいても病的な骨量低下においても重要な役割を果たしていることが示唆された。

    単核(sn)RNA-seq

    単核(sn)RNA-seqにより多核の骨格筋線維における転写的多様性が確認された

    原題:

    Single-nucleus RNA-seq identifies transcriptional heterogeneity in multinucleated skeletal myofibers

    著者:

    Michael J. Petrany, Casey O. Swoboda, Chengyi Sun, Kashish Chetal, Xiaoting Chen, Matthew T. Weirauch, Nathan Salomonis & Douglas P. Millay

    雑誌:

    Nat. Commun., doi: 10.1038/s41467-020-20063-w. (2020)

    POINT!

    生体を構成する細胞の多くは単細胞であるが、破骨細胞や筋繊維のような多核化を必要とする細胞も存在する。多核化することによって核ごとに異なる機能を果たせるという利点がある一方、細胞質を共有するため網羅的な遺伝子発現の解析は難航していた。今回、筆者らは単核RNA-seq (single-nucleus RNA-sequencing)を駆使し、5ヶ月齢のマウスの前脛骨筋を用い、多核の筋繊維における遺伝子発現の多様性を調べた。Unbiased clusteringを行った結果、筋性細胞核はType IIb myonuclei (Myh4), Type IIx myonuclei (Myh1), 神経筋接合部 (Chrne), 筋腱接合部(Col22a1)と4つのクラスターに分かれた。筋組織は生後より発達、成熟、老化という過程を辿ることが知られている。そこで、筆者らは異なる時期におけるクラスターの構成に変化が生じるかについて、5月齢マウスの他、生後10日目(P10)、P21、24月齢、30月齢マウスを用い、snRNA-seqを行った。その結果、時期特異的なクラスターが認められた。本研究は多核の筋繊維は遺伝子発現の多様性をも有することを示し、筋繊維の遺伝子発現を解析する新たな分子基盤を提供した。

    腫瘍免疫

    乳がんにおけるRANK signaling阻害はCD8陽性T細胞による抗腫瘍免疫反応を促進する

    原題:

    Inhibition of RANK signaling in breast cancer induces an anti-tumor immune response orchestrated by CD8+ T cells.

    著者:

    Clara Gomez-Aleza, Bastien Nguyen, Guillermo Yoldi, Marina Ciscar, Alexandra Barranco, Enrique Hernandez-Jimenez, Marion Maetens, Roberto Salgado, Maria Zafeiroglou, Pasquale Pellegrini, David Venet, Soizic Garaud, Eva M. Trinidad, Sandra Benitez, Peter Vuylsteke, Laura Polastro, Hans Wildiers, Philippe Simon, Geoffrey Lendeman, Denis Larsimont Gert Van den Eynden, Chloe Velghe, Francoise Rothe, Karen Willard-Gallo, Stefan Michiels, Purificacion Munoz, Thierry Walzer, Lourdes Planelles, Josef Penninger, Hatem A.Azim Ju, Sherene Loi, Martine Piccart, Christos Sotiriou & Eva Gonzalez-Suarez.

    雑誌:

    Nat. Commun., 11:6335 (2020)

    POINT!

    乳がんは免疫細胞の浸潤が少なく、免疫療法に対する反応性が低いことが知られている。著者らは、ルミナール型乳がんのモデルであるPyMT腫瘍モデルを用いて、がん細胞でRANKを欠損させることにより、腫瘍浸潤リンパ球およびCD8陽性T細胞が増加することを見出した。また、RANK欠損がん細胞を移植したマウスにおいてCD8陽性T細胞を欠損させたところ、腫瘍形成が有意に阻害された。RANK欠損がん細胞とRANK発現がん細胞を用いて、腫瘍組織内のmRNAレベルで遺伝子発現を比較したところ、RANK発現がん細胞由来腫瘍ではIL-1bやCaspase-4などが上昇しているとともに、好中球刺激関連遺伝子であるs100a9の上昇傾向がみられた。好中球によるT細胞性免疫抑制機構が報告されていることから、RANK発現がん細胞移植モデルにおいて抗体投与により好中球を除去したところ、腫瘍浸潤リンパ球の増加および腫瘍関連マクロファージの減少がみられ、腫瘍形成は有意に阻害された。さらに、RANK発現がん細胞移植モデルにおいて抗RANKL抗体と抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体の併用により腫瘍形成が有意に抑制された。また、閉経前早期乳がん患者を対象とした臨床試験の解析から、術前単剤デノスマブ投与により、腫瘍浸潤リンパ球およびCD8陽性T細胞が増加することが明らかになった。以上の結果により、がんの免疫回避におけるRANK signalingの関与が明らかになり、RANKL阻害がルミナール型乳がんの免疫療法の効果を促進する可能性が示された。

    マラリア原虫感染

    骨髄ニッチの操作はマラリア感染時の造血幹細胞へのダメージを制限する

    原題:

    Manipulating niche composition limits damage to haematopoietic stem cells during Plasmodium infection

    著者:

    Myriam L. R. Haltalli, Samuel Watcham, Nicola K. Wilson, Kira Eilers1, Alexander Lipien, Heather Ang, Flora Birch, Sara Gonzalez Anton, Chiara Pirillo, Nicola Ruivo, Maria L. Vainieri, Constandina Pospori, Robert E. Sinden, Tiago C. Luis, Jean Langhorne, Ken R. Duffy, Berthold Göttgens, Andrew M. Blagborough and Cristina Lo Celso

    雑誌:

    Nat. Cell. Biol., 22: 1399–1410 (2020)

    POINT!

    重篤な感染症は造血への大きなストレスの一つであり、造血幹細胞にも影響をあたることが近年明らかになってきている。造血幹細胞の機能は複雑な骨髄ニッチ機能に大きく依存している。しかしながら、造血幹細胞への感染の影響を媒介するという点において、骨髄微小環境がどのような役割を果たしているのかの詳細は不明であった。筆者たちはマラリア感染マウスモデルを使用し、シングルセルRNAシーケンス、数理モデル、移植実験、生体イメージングを組み合わせて解析することにより、感染時に造血が再プログラムされることを明らかにした。マラリア感染が起きると造血幹細胞分画が定常状態よりも大幅に速く代謝し、HSC機能が損なわれることがわかった。マラリア感染時には、インターフェロン産生が上昇し、生体防御にも働く一方で宿主にダメージを与えることも報告されている。また、IFN応答は造血および間葉系骨髄細胞の両方に影響を与えることがわかっているが、彼らのデータからは間葉系細胞側の反応がIFN応答後のHSC増殖に必要であることを示唆した。また、筆者たちはマラリア感染時に見られる骨芽細胞の劇的な欠失と内皮細胞機能の変化に注目した。骨形成を促す副甲状腺ホルモン(PTH)の投与は、感染誘導性のHSC増殖を抑制し、活性酸素種の失活と関連して、HSC機能を部分的にレスキューできることを見いだした。今後は重度な感染時の治療法としてHSCや骨髄ニッチ機能を維持するというアプローチの有効性を検証していく必要があるだろう。

    RANK

    B細胞における病的RANKシグナルは自己免疫や慢性リンパ性白血病を引き起こす

    原題:

    Pathological RANK signaling in B cells drives autoimmunity and chronic lymphocytic leukemia

    著者:

    Begüm Alankus, Veronika Ecker, Nathalie Vahl, Martina Braun, Wilko Weichert, Stephan Macher-Goppinger, Torben Gehring, Tanja Neumayer, Thorsten Zenz, Maike Buchner, and Jürgen Ruland

    雑誌:

    J.Exp.Med., 218: e20200517 (2021)

    POINT!

    RANKシグナルの異常はB細胞関連の自己免疫疾患や悪性腫瘍に重要であると知られていたが、そのメカニズムは不明だった。本研究で著者らはB細胞でヒトリンパ腫由来の過活性化RANKK240Eを発現するマウス(RANKK240E CD19-Creマウス)を作製した。RANKK240E CD19-Creマウスでは異常なRANKシグナルがB細胞の自己寛容を阻害し、全身性エリテマトーデス(SLE)様の疾患や慢性リンパ性白血病(CLL)を引き起こす事を示した。またRANKK240E発現CLL細胞、マウス及びヒト由来のCLL細胞の生存は微小環境中のRANKLに依存している事が示された。更に抗RANKL抗体を用いてRANKL-RANKシグナルを阻害すると、マウス及びヒト由来のCLL細胞において細胞死を起こすことが明らかになった。以上の成果により、B細胞における病的RANKシグナルがB細胞関連の自己免疫疾患や悪性腫瘍を引き起こす潜在的な要因の1つであり、臨床で使われているRANKL阻害剤がCLLの治療薬になりうる可能性が示された。

    OPG

    OPG産生は、それが起こった場所で重要

    原題:

    OPG production matters where it happened

    著者:

    Masayuki Tsukasaki, Tatsuo Asano, Ryunosuke Muro, Nam Cong-Nhat Huynh, Noriko Komatsu, Kazuo Okamoto, Kenta Nakano, Tadashi Okamura, Takeshi Nitta and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Cell Rep 32: 108124 (2020)

    POINT!

    RANKLは破骨細胞、胸腺髄質上皮細胞、腸管M(microfold)細胞の分化に必須のサイトカインであり、その作用はデコイ受容体であるOPG(osteoprotegerin)によって負に制御されている。OPGは血中を循環している可溶性因子であり、OPGの血中濃度は骨疾患や心疾患、炎症性腸疾患と相関することが報告されている。しかしながら生体内におけるOPGの産生源は未知であり、単一臓器由来のOPGが全身を循環し、骨、胸腺、腸管においてRANKLの機能を制御しているのか、あるいはそれぞれの臓器で局所的に産生されるOPGがRANKL制御に重要なのかは不明であった。本研究で著者らはOPGのfloxマウスを作出し、骨、胸腺、腸管におけるOPGの産生源を探索した。シングルセルRNA-seq解析およびOPGコンディショナル欠損マウスの表現型解析の結果から、骨においては骨芽細胞、胸腺においては胸腺髄質上皮細胞、腸管においてはM細胞がOPGの主要な産生源であることが明らかとなった。興味深いことに、骨芽細胞、胸腺上皮細胞、腸管上皮細胞で特異的にOPGを欠損したマウスでは、それぞれ骨、胸腺、腸管において顕著な表現型を呈する一方、いずれのマウスにおいても血中OPG濃度は正常に保たれており、循環OPGは骨および免疫組織の恒常性に寄与しないことが示された。以上から、血中OPGでなく局所で産生されたOPGこそが骨免疫システム制御に重要であり、RANKLの多彩な機能は局所的に厳密に制御されていることが明らかとなった。

    OPG

    骨芽細胞によるOPGの局所産生は骨吸収を抑制する

    原題:

    Local Production of Osteoprotegerin by Osteoblasts Suppresses Bone Resorption

    著者:

    Keisha M. Cawley, Nancy Cecile Bustamante-Gomez, Anveshi G. Guha, Ryan S. MacLeod, Jinhu Xiong, Igor Gubrij, Yu Liu, Robin Mulkey, Michela Palmieri, Jeff D. Thostenson, Joseph J. Goellner, Charles A. O’Brien

    雑誌:

    Cell Rep 32: 108052 (2020)

    POINT!

    Osteoprotegerin(OPG)はRANKLのおとり受容体であり、RANKLシグナルを抑制することで、破骨細胞の分化、成熟、機能を抑制する。RANKLコンディショナルノックアウトマウスを用いた研究によって、骨代謝調節におけるRANKLの産生源は骨芽細胞、軟骨細胞、骨細胞であることが明らかにされていたが、OPGを産生する細胞は明らかではなかった。本研究では、OPGのfloxマウスを作出し、OPG産生細胞の同定および機能解明を試みた。過去の報告では、B細胞、骨細胞、骨芽細胞がOPGの産生源である可能性が示唆されていたが、B細胞および骨細胞特異的なOPG欠損マウスでは骨量に変化が認められず、B細胞と骨細胞はOPGの主要な産生源ではないことが示された。対照的に、骨芽細胞特異的にOPGを欠損したマウスでは、OPGのグローバルノックアウトマウスと同等の骨量減少を示したことから、骨芽細胞がOPGの主要な産生源であることが示された。興味深いことに、骨芽細胞特異的OPG欠損マウスでも血中OPG濃度は正常に保たれており、血中OPGのソースは骨芽細胞ではないこと、そして血中OPGは骨代謝制御に寄与しないことが明らかとなった。以上より、骨芽細胞が局所的に産生するOPGが骨恒常性に必須の役割を持つことが示された。

    組織再生

    脊椎動物において再生応答性エンハンサーの変化が再生能力を形づくる。

    原題:

    Changes in regeneration-responsive enhancers shape regenerative capacities in vertebrates

    著者:

    Wei Wang, Chi-Kuo Hu, An Zeng, Dana Alegre, Deqing Hu, Kirsten Gotting, Augusto Ortega Granillo, Yongfu Wang, Sofia Robb, Robert Schnittker, Shasha Zhang, Dillon Alegre, Hua Li, Eric Ross, Ning Zhang, Anne Brunet, Alejandro Sánchez Alvarado

    雑誌:

    Science 369: eaaz3090 (2020).

    POINT!

    疾病や損傷により失われた組織を再生する能力は、脊椎動物の中で種によって大きく異なる。例えば、硬骨魚類は高い組織再生能力を有しており、付属肢(鰭)、心室、脊髄など多種の器官を再生できるのに対し、哺乳類は一般的に組織再生能力が低いと言われている。しかし、この再生能力の違いを生むメカニズムは不明であった。本研究でWangらは進化的に離れたゼブラフィッシュとメダカを用い、ChIP-seq、RNAs-seq及びシングルセルRNA-seqの結果から、種を越えて保存された再生応答性エンハンサー(RRE)を見つけた。RREは尾鰭の切断によって活性化され、下流のInhba (activin A)の発現を制御する。Inhba-RREの欠損は尾鰭及び心臓の再生を阻害した。Inhba-RREには機能的に重要なAP-1結合モチーフがあり、損傷応答と再生応答を起こす。一方、ヒトもAP-1結合モチーフのあるInhba RREのオルソログを持っている。しかし、ヒトRREをRRE欠損メダカに導入してもメダカの再生能力が回復しないことから、ヒトRREは再生応答を誘発できないことがわかった。以上から、進化の過程でのRREの変化が再生能力に影響していることが明らかとなった。

    実験的自己免疫性脳脊髄炎

    腸内細菌が神経性炎症を増悪化する仕組み

    原題:

    Gut microorganisms act together to exacerbate inflammation in spinal cords

    著者:

    Eiji Miyauchi, Seok-Won Kim, Wataru Suda, Masami Kawasumi, Satoshi Onawa, Naoko Taguchi-Atarashi, Hidetoshi Morita, Todd D. Taylor, Masahira Hattori, Hiroshi Ohno

    雑誌:

    Nature 581: 102-106 (2020)

    POINT!

    多発性硬化症罹患者では、腸内細菌叢に特徴がある。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、多発性硬化症モデルとして広く用いられる疾患モデルであり、神経性炎症の重症度に腸内細菌が関与していることが知られている。しかし、腸内細菌がどのようにして遠隔臓器である神経系の炎症を誘導しているのかは不明であった。筆者らは、独立した2種の腸内細菌が病原性を有するミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)特異的なT細胞の分化を腸内にて誘導することを示した。様々な抗生剤を単剤で投与したマウスにEAEを誘導した結果、EAEの発症はアンピシリン投与によって抑制された。アンピシリン投与マウスの腸内では、Erysipelotrichaceae科の細菌(OTU0002)が減少していた。OTU0002は腸内にてTh17細胞を分化誘導し、EAEの発症に十分であることが示されたが、EAEの重症度は、比較的軽微であり、他の細菌がEAEの発症に関与することが示唆された。筆者らは、shotgun sequence 法により腸内細菌の遺伝情報を解析した結果、MOGと類似したペプチドを持つLactobacillus reuteriを同定した。L. reuteriのUvrAにコードされるペプチドは、交差性にMOG特異的T細胞の活性を誘導した。また、OTU0002とL. reuteriを無菌マウスに移入することでEAEの症状が増悪した。以上より、L. reuteriがMOG特異的なT細胞の活性化を誘導し、OTU0002が病原性を付与することで、EAEの増悪化を引き起こすことが明らかにされた。

    骨格幹細胞

    骨格幹細胞の活性化による関節軟骨の再生

    原題:

    Articular cartilage regeneration by activated skeletal stem cells

    著者:

    Matthew P. Murphy, Lauren S. Koepke , Michael T. Lopez, Xinming Tong, Thomas H. Ambrosi, Gunsagar S. Gulati , Owen Marecic, Yuting Wang, Ryan C. Ransom, Malachia Y. Hoover, Holly Steininger, Liming Zhao, Marcin P. Walkiewicz , Natalina Quarto, Benjamin Levi, Derrick C. Wan, Irving L. Weissman , Stuart B. Goodman, Fan Yang, Michael T. Longaker and Charles K. F. Chan

    雑誌:

    Nat. Med. 26: 1583–1592(2020)

    POINT!

    変形性関節症は、関節軟骨の不可逆な破壊が進行する変性疾患である。変形性関節症の病因は複雑であり、遺伝体質や外傷、慢性炎症などの様々な要因が絡んでいる。筆者らは骨格幹細胞における軟骨再生と年齢との関連、および変形性関節症への寄与について検討した。筆者らは加齢に伴い骨格幹細胞が喪失すること、ヒトおよびマウスの関節で軟骨形成が減少することを示した。これまでMF手術(microfracture surgery)を施すことによる再生誘導刺激により、成人マウスの関節軟骨の表面において、局所の骨格幹細胞を増加させることが示されている。MF手術によって活性化した骨格幹細胞は通常、線維組織を形成する傾向にあったが、MF手術部位をBMP2と可溶性VEGFR1(VEGF受容体阻害因子)を含んだハイドロゲルで処理するにより骨格幹細胞は関節軟骨に分化する傾向にあった。これらの知見は骨格幹細胞はMF手術に続き、変形性関節症の限局した軟骨病変の軟骨再生治療に寄与する可能性を示している。

    骨髄脂肪細胞

    成体マウスにおける脂肪細胞の除去は著しい骨量増加を引き起こす

    原題:

    Ablation of fat cells in adult mice induces massive bone gain

    著者:

    Wei Zou, Nidhi Rohatgi, Yongjia Li, Ruteja A. Barve, Eric Tycksen, Jonathan R. Brestoff, Yung Kim, Matthew J. Silva, Steven L. Teitelbaum

    雑誌:

    Cell Metab. 32: 1-13 (2020)

    POINT!

    脂肪細胞が骨量を制御することは知られているが、そのメカニズムには不明な点が多い。著者らは、脂肪細胞特異的にDTRを発現するマウス(DTRADQマウス)を作製し、成体マウスにおける脂肪細胞の除去が骨に与える影響を検証した。8週齢のDTRADQマウスにDTまたはPBSを投与したところ、DT投与群では、皮下白色脂肪組織、精巣上体周囲白色脂肪組織、褐色脂肪組織および骨髄脂肪組織の減少が確認された。DT投与開始から10日後の大腿骨および脊椎の解析において、コントロールと比較して1000%もの骨量の増加がみられた。DT/DTRADQマウスは耐糖能異常を示すが、野生型マウス由来白色脂肪組織を移植したところ、耐糖能異常は改善された一方で骨量増加に変化はなかった。DTRADQマウスと野生型マウスのparabiosisにおいて、野生型マウスまたはDTRADQマウスにDTを投与したところ、DTRADQマウスのみで骨量の増加がみられたことから、脂肪細胞除去による骨量増加に寄与しているのは末梢の脂肪組織ではなく、骨髄脂肪組織であることが示された。また、DT/DTRADQマウスの骨髄細胞ではChrdl1Grem1の低下およびWisp1の上昇がみられ、BMPR signalingが亢進していることが明らかになった。DT/ DTRADQマウスへのBMPR inhibitorの投与によって、骨量増加は抑制された。さらに、DT/ DTRADQマウスにおいてEGFR signalingがBMPR signalingに協調的に働き、EGFR inhibitorの投与により骨量増加が抑制されることも示された。以上により、骨髄脂肪細胞による骨量制御メカニズムが明らかになった。

    IL-17

    IL-17と免疫系により誘導された老化は変形性関節症への応答を調節する

    原題:

    IL-17 and immunologically induced senescence regulate response to injury in osteoarthritis

    著者:

    Heather J Faust, Hong Zhang, Jin Han, Matthew T Wolf, Ok Hee Jeon, Kaitlyn Sadtler, Alexis N Peña, Liam Chung, David R Maestas Jr, Ada J Tam, Drew M Pardoll, Judith Campisi, Franck Housseau, Daohong Zhou, Clifton O Bingham 3rd, Jennifer H Elisseeff

    雑誌:

    J Clin Invest 130(10):5493-5507 (2020)

    POINT!

    老化組織では実質細胞と共に免疫細胞の機能にも変化がおこり、これらが複合的に組織再生に影響する。関節組織の老化は、外傷後の変形性関節症(PTOA)発症の原因となる。本研究において、著者らは細胞老化とPTOAにおける免疫系の関係に着目した。OAを模倣する前十字靭帯切断(ACLT)モデルマウスの関節組織を解析したところ、受傷後早期にCD8+T細胞とγδT細胞の細胞数増加、およびIL-17A産生CD4+T細胞とIL-17F産生γδT細胞の割合の増加を認めた。その後、所属リンパ節(鼠径リンパ節)ではI型およびIII型自然リンパ球(ILC)も出現した。損傷関節では、老化細胞の特徴であるCdkn1aCdkn2aの持続的発現上昇が見られた。老齢マウスの所属リンパ節では若齢マウスよりもIL-17A発現率が高値であった。老化細胞の除去(senolysis)がOAに与える影響を解析するために、senolysis誘導薬のUBX0101とNavitoclaxを投与した。老化細胞を除去したマウスでは、Th17細胞数やIl117aIl17f発現が減少し、関節組織にも改善が見られた。老化と17型炎症反応の関係をさらに検討するために、IL-17A中和抗体を関節腔投与したところ、Cdkn1aの発現低下を伴う関節症状の寛解が認められた。In vitroの実験では、老化を誘導した線維芽細胞はTGF-β存在下で共培養したナイーブT細胞によるIL-17産生増加を誘導した。一方、Th17細胞は共培養した線維芽細胞のIL-6産生を促進した。損傷関節では組織修復に関わるIL-4が発現したが、この発現は老化細胞の除去やIL-17中和抗体の投与によって促進した。Il4r–/–マウスにACLTを行ったところ、老化細胞の除去によるOA治療効果は認められなかった。以上より、IL-17は関節組織の細胞老化によるPTOA増悪において中心的な役割を果たすことが明らかになった。

    BDNF

    STAT3-BDNF-TrkBシグナルは肺損傷後の肺胞上皮の再生を促進する

    原題:

    STAT3–BDNF–TrkB signalling promotes alveolar epithelial regeneration after lung injury

    著者:

    Andrew J Paris, Katharina E Hayer, Joseph H Oved, Daphne C Avgousti, Sushila A Toulmin, Jarod A Zepp, William J Zacharias, Jeremy B Katzen, Maria C Basil, Madison M Kremp, April R Slamowitz, Sowmya Jayachandran, Aravind Sivakumar, Ning Dai, Ping Wang, David B Frank, Laurence C Eisenlohr, Edward Cantu 3rd, Michael F Beers, Matthew D Weitzman, Edward E Morrisey, G Scott Worthen

    雑誌:

    Nat Cell Biol 22(10):1197-1210 (2020)

    POINT!

    気道上皮前駆細胞の中で、II型肺胞上皮細胞(AT2)は様々な病態からの組織再生に重要であることが近年相次いで報告された。AT2は定常状態では肺サーファクタントの分泌細胞として機能することから、著者らは肺障害における上皮の喪失がAT2機能を変化させ、幹細胞に変容させると考えた。酸の吸入により無菌性肺損傷を惹起したマウスよりAT2を単離し、ATAC-seq解析を行ったところ、非損傷組織と損傷組織とではAT2オープンクロマチン領域は大きく異なっており、STAT3、ELK4、TBX5、SPIBの結合モチーフが抽出された。肺胞灌流液中にIL-6が見出されたことから、これらの転写因子のうちSTAT3に着目した。肺損傷モデルマウスやびまん性肺胞障害のヒト患者の肺組織ではSTAT3リン酸化が見出された。AT2特異的にSTAT3を欠損するSftpcCreERT2Stat3f/fマウスでは、肺損傷後の組織再生が著しく障害され、肺胞還流液中にはタンパク質の漏出が多く認められた。さらに、このマウスのAT2の増殖活性は低下していた。急性期にはコントロールマウスの肺組織との差異に乏しかったことから、肺損傷時のAT2において、STAT3は亜急性期〜慢性期に重要と考えられた。STAT3の標的遺伝子を明らかにするために単細胞RNA-seq解析を行った。肺損傷により分化転換しているクラスターで高発現し、STAT3結合配列を有する遺伝子として、Bdnfが抽出された。実際、SftpcCreERT2Stat3f/fマウスの肺胞や肺胞還流液ではBDNF発現が低下していた。BDNFはAT2と肺の間葉系細胞の共培養におけるオルガノイド形成を促進したことから、BDNFの肺胞再生促進作用が示唆された。AT2特異的にBDNFを欠損するSftpcCreERT2Bdnff/fマウスでは肺損傷からの回復が障害され、タンパク質の漏出増加やAT2の増殖活性の低下が認められた。BDNF受容体TrkBはAT2ではなく、肺胞ニッチ細胞(MANC)とよばれる間葉系細胞で発現していた。間葉系細胞でTrkBを欠損するPdgfraCreERT2Ntrk2f/fマウスでは、肺損傷後の回復が障害された。FGF7はMANC由来の重要なサイトカインとされているが、SftpcCreERT2Stat3f/fマウス、SftpcCreERT2Bdnff/fマウス、PdgfraCreERT2Ntrk2f/fマウスではFGF7産生レベルは低値であった。FGF7は肺胞オルガノイド形成を促進した。TrkBアゴニストの7,8-DHFを投与したところ、肺胞組織の回復が促進された。以上より、肺胞損傷時にはAT2でSTAT3–BDNF–TrkB経路を介してFGF7産生が促進され、組織再生が誘導されることが明らかになった。

    神経-免疫クロストーク

    自然免疫系の過剰な活性化はTLR2とIL33を介した神経-免疫クロストークによって疼痛を惹起する

    原題:

    Hyperactivity of Innate Immunity Triggers Pain via TLR2-IL-33-Mediated Neuroimmune Crosstalk

    著者:

    Junting Huang, Maria A Gandini, Lina Chen, Said M'Dahoma, Patrick L Stemkowski, Hyunjae Chung, Daniel A Muruve, Gerald W Zamponi

    雑誌:

    Cell Rep 33(1):108233 (2020)

    POINT!

    感染に伴い自然免疫系が活性化されると疼痛が惹起されるが、自然免疫と感覚神経をつなぐメカニズムには不明な点が多い。著者らは、持続する疼痛を伴う慢性炎症を引き起こす完全フロイントアジュバント(CFA)をマウスの足底部に注射し、神経-免疫クロストークを解析した。CFA注射による接触過敏の誘導に伴い、脊髄背側ではTLR1/2/6の、後肢ではTLR2/6の発現が上昇した。Tlr2–/–マウスでは、CFA投与による機械的刺激や温熱刺激に対する過敏は見られなかったため、TLR2はCFAによる疼痛反応に関与することが示された。Tlr6に対するsiRNAの足底部投与は疼痛を緩和したため、TLR6もCFA誘導性の疼痛の発現に寄与すると考えられた。TLR2/6ヘテロダイマーのアゴニストであるFSL1の投与は痛覚過敏を惹起し、この時投与部には白血球の浸潤が起きていた。また、後根神経節(DRG)ではグルタミン合成酵素(GS)陽性グリア細胞でTLR2発現が上昇した。TLRシグナル下流ではインフラマソームが活性化されるが、インフラマソームの疼痛への影響には不明な点が多い。FSL1刺激によりNlrp3発現が上昇したことから、TLR誘導性疼痛へのインフラマソームの関与が示唆された。Nlrp3–/–マウスやNLRP3阻害剤MCC950を投与したマウスでは、FSL1誘導性の疼痛が大きく緩和された。NLRP3がTLR2による疼痛反応を仲介するメカニズムを明らかにするために、DRG中のサイトカインとケモカインを解析したところ、FSL1投与でIL-33が上昇したが、その上昇効果はNlrp3–/–マウスやTlr2–/–マウスでは限定的であった。このとき、IL-33はDRGでは神経細胞近傍に存在するサテライトグリア細胞によって、後肢ではケラチノサイトによって産生された。IL-33受容体のST2は神経細胞で発現しており、ST2中和抗体の投与は機械的刺激や熱刺激による疼痛を軽減した。以上より、末梢組織で発生したTLRシグナルはインフラマソームを介して末梢組織と神経節でIL-33を誘導し、痛覚を生じることが示された。

    B-ALL

    B細胞性急性リンパ芽球性白血病細胞はRANK-RANKL依存性骨破壊に関わる

    原題:

    B cell acute lymphoblastic leukemia cells mediate RANK-RANKL–dependent bone destruction

    著者:

    Sujeetha A. Rajakumar, Eniko Papp, Kathy K. Lee, Ildiko Grandal, Daniele Merico, Careesa C. Liu, Bedilu Allo, Lucia Zhang, Marc D. Grynpas, Mark D. Minden, Johann K. Hitzler, Cynthia J. Guidos, Jayne S. Danska

    雑誌:

    Sci Transl Med, 12, eaba5942 (2020)

    POINT!

    多くのB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)患者は骨減少症や骨壊死など、治療に関連した長期的な健康問題を経験することが多い。ALLと診断された時点で骨折を発症している患者もいることから、著者らは白血病B細胞が骨の病理に直接寄与している可能性を検討した。B-ALLに起因する骨破壊メカニズムを明らかにするため、自然発症B-ALLモデルのp53–/–; Rag2–/–; Prkdcscid/scid三重変異(TM)マウスとp53–/–; Prkdcscid/scid二重変異(DM)マウスが使用された。TM白血病細胞はRANKLを強く発現しており、TM白血病細胞を含む脾臓細胞を放射線照射したRag2–/–マウスに移植すると、顕著な海綿骨量減少が生じた一方、DM細胞細胞の移植では骨量の変化は誘導されなかった。ヒトB-ALL診断時に回収したヒトB-ALL細胞でもRANKLが発現していたことから、これらの細胞をNOD. Prkdcscid/scidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスへ移植して骨への影響を観察したところ、特に骨幹端においてRANKL発現細胞が多く観察され、多核破骨細胞の増加や骨破壊の誘導により海綿骨減少がもたらされた。これらのマウスにリコンビナントOPG-Fcを投与したところ、骨破壊が抑制された。著者らのデータは、B-ALLによって誘導される骨破壊の原因となるRANK-RANKLシグナルの重要性を示しており、これらの患者に対するRANKLを標的とした治療の有効性が示唆された。

    OSCAR

    OSCAR阻害は軟骨細胞のアポトーシス制御を介して関節軟骨破壊を抑制する

    原題:

    Osteoclast-associated receptor blockade prevents articular cartilage destruction via chondrocyte apoptosis regulation

    著者:

    Doo Ri Park, Jihee Kim, Gyeong Min Kim, Haeseung Lee, Minhee Kim, Donghyun Hwang, Hana Lee, Han-Sung Kim, Wankyu Kim, Min Chan Park, Hyunbo Shim, Soo Young Lee

    雑誌:

    Nat Commun, 11, 4343 (2020)

    POINT!

    変形性関節症(OA)の進行を制御するプロセスについて十分に解明されてはいないのが現状である。本研究で著者らは、OAと免疫グロブリン様コラーゲン認識受容体であるosteoclast-associated receptor(OSCAR)発現上昇との関連を明らかにした。OSCAR欠失マウスで半月板不安定化によりOAを誘導すると、野生型と比較して関節軟骨の破壊、軟骨下骨の骨硬化、硝子軟骨の喪失などのOAの症状が抑制されていた。RNA-seqなどの解析から、これらの現象は関節軟骨におけるTRAIL発現の低下及びOPG発現の上昇に起因していることが明らかにされた。また、マウス関節軟骨の初代培養細胞において、IL-1bとコラゲナーゼ刺激によりOSCAR発現が上昇し、アポトーシスが促進されることも示された。さらに、OAモデルマウスに対するヒトOSCAR-Fc融合タンパク質の投与により関節軟骨細胞のアポトーシスが抑制され、OA症状が改善された。以上から、OSCAR阻害がOA治療の標的となる可能性が示唆された。

    Cre-loxPシステム

    Cre発現マウスによる神経系特異的遺伝子ターゲティングの最適化: 生殖細胞系列での組換えとそれらに影響する因子

    原題:

    Optimizing Nervous System-Specific Gene Targeting with Cre Driver Lines: Prevalence of Germline Recombination and Influencing Factors

    著者:

    Lin Luo, Mateusz C. Ambrozkiewicz, Fritz Benseler, Cui Chen, Emilie Dumontier, Susanne Falkner, Elisabetta Furlanis, Andrea M. Gomez, Naosuke Hoshina, Wei-Hsiang Huang, Mary Anne Hutchison, Yu Itoh-Maruoka, Laura A. Lavery, Wei Li, Tomohiko Maruo, Junko Motohashi, Emily Ling-Lin Pai, Kenneth A. Pelkey, Ariane Pereira, Thomas Philips, Jennifer L. Sinclair, Jeff A. Stogsdill, Lisa Traunmuller, Jiexin Wang, Joke Wortel, Wenjia You, Nashat Abumaria, Kevin T. Beier, Nils Brose, Harold A. Burgess, Constance L. Cepko, Jean-Francois Cloutier, Cagla Eroglu, Sandra Goebbels, Pascal S. Kaeser, Jeremy N. Kay, Wei Lu, Liqun Luo, Kenji Mandai, Chris J. McBain, Klaus-Armin Nave, Marco A.M. Prado, Vania F. Prado, Jeffrey Rothstein, John L.R. Rubenstein, Gesine Saher, Kenji Sakimura, Joshua R. Sanes, Peter Scheiffele, Yoshimi Takai, Hisashi Umemori, Matthijs Verhage, Michisuke Yuzaki, Huda Yahya Zoghbi, Hiroshi Kawabe, Ann Marie Craig

    雑誌:

    Neuron, 106, 37–65 (2020)

    POINT!

    Cre-loxPシステムは、マウスにおける遺伝子ノックアウト、ノックイン、リポーター発現の空間的・時間的制御に非常に有用である。しかしながら、神経系特異的遺伝子組換えのために設計された様々なCre発現マウスにおいて、異なる頻度で生殖細胞系列における遺伝子組換えが起こることが報告されている。著者らは、神経系で一般的に使用されている64のCre発現マウスの母方・父方の生殖細胞系列における遺伝子組換えデータを集約し、それらの半数以上(64.1%)で生殖細胞系列における組換えが起こることを示した。同じプロモーターによるCre発現マウスの異なる系統間でも、その設計により生殖細胞系列における組換え効率に違いがあった。また、標的遺伝子座ごとに組換え効率が異なり、レポーターマウスによる確認のみでは対象とする遺伝子座の組換えが起こっているかどうかの確認には不十分であることも明らかにされた。同様の現象は、他のFlp-frtやDre-roxなどの組換えシステムや遺伝子組換え生物にも適用されうると考えられる。著者らは、本論文でCre-loxPシステムの生殖細胞系列における組換えに注意を喚起し、Cre-loxPシステムを用いたマウス実験のガイドラインを提示する。

    口腔—腸連関

    共生細菌が引き起こす腸炎における口腔—腸連関の役割

    原題:

    The Intermucosal Connection between the Mouth and Gut in Commensal Pathobiont-Driven Colitis

    著者:

    Sho Kitamoto, Hiroko Nagao-Kitamoto, Yizu Jiao, Merritt G Gillilland 3rd, Atsushi Hayashi, Jin Imai, Kohei Sugihara, Mao Miyoshi, Jennifer C Brazil, Peter Kuffa, Brett D Hill, Syed M Rizvi, Fei Wen, Shrinivas Bishu, Naohiro Inohara, Kathryn A Eaton, Asma Nusrat, Yu L Lei, William V Giannobile, Nobuhiko Kamada

    雑誌:

    Cell, 182: 447-462 (2020)

    POINT!

    炎症性腸疾患と歯周炎には疫学的な相関が認められるが、そのメカニズムの詳細は不明であった。本論文で著者らは、マウスの歯の周囲に絹糸を結紮することで常在菌依存的な歯周炎を誘導すると、DSS(デキストラン硫酸ナトリウム)誘導性腸炎モデルが増悪することを見出した。歯周炎を誘導したマウスでは、歯周炎組織だけでなく腸管粘膜でもTh17細胞の数及び頻度が増加しており、これらは口腔細菌に対する抗原特異性を有していた。光変換蛍光タンパク質を発現するカエデマウスを用いた解析により、歯周炎組織で誘導されたTh17細胞が腸管粘膜へと遊走し、唾液と共に飲み込まれた口腔細菌を腸管で認識することで再活性化し、腸炎の増悪に寄与することが明らかとなった。以上より、口腔疾患と他臓器疾患の連関を説明するメカニズムとして、「口腔細菌とそれを認識する免疫細胞とが双方とも移動し、他臓器で再び遭遇することで炎症を引き起こす」という新たな可能性が提唱された。

    骨転移

    単球由来マクロファージが乳がん骨転移の進展を促進する

    原題:

    Monocyte-derived macrophages promote breast cancer bone metastasis outgrowth

    著者:

    Ruo-Yu Ma, Hui Zhang, Xue-Feng Li, Cheng-Bin Zhang, Cigdem Selli, Giulia Tagliavini, Alyson D Lam, Sandrine Prost, Andrew H Sims, Hai-Yan Hu, Tianlei Ying, Zhan Wang, Zhaoming Ye, Jeffrey W Pollard, Bin-Zhi Qian

    雑誌:

    J. Exp. Med. 217: e20191820 (2020)

    POINT!

    乳がんにおいて骨転移は主要な死因の一つであるが、その病態メカニズムは未だ不明な点が多い。著者らは、乳がん患者の骨転移検体およびマウスモデルにおいて、骨転移巣へのマクロファージの浸潤を明らかにした。続いて、乳がん細胞左心室内移入により骨転移が形成されたマウスに、clodronate liposomeを投与してマクロファージを枯渇させたところ、マクロファージ枯渇群で骨転移の進展が有意に抑制された。また、Lineage trackingにより、Ly6C+ CCR2+炎症性単球が骨転移巣のマクロファージの起源であることがわかった。骨転移巣および正常な骨組織のマクロファージをRNA-seqおよびフローサイトメトリーで解析したところ、骨転移巣のマクロファージではCD204およびIL-4Rが高発現していた。さらに、Il4ra–/–マウス由来の単球を移植したマウスでは、骨転移の進展が抑制された。以上の結果から、IL-4R依存的に骨転移を促進する単球由来マクロファージの存在が明らかになった。この研究により、IL-4Rおよびマクロファージの阻害が乳がん骨転移の新規治療標的となる可能性が示唆された。

    固有感覚神経

    固有感覚ニューロンに発現するPiezo2は骨格形成に必要不可欠である

    原題:

    Piezo2 expressed in proprioceptive neurons is essential for skeletal integrity

    著者:

    Eric Gracey, Dominika Hromadová, Melissa Lim, Zoya Qaiyum, Michael Zeng, Yuchen Yao, Archita Srinath, Yuriy Baglaenko, Natalia Yeremenko, William Westlin, Craig Masse, Mathias Müller, Birgit Strobl, Wenyan Miao,  Robert D. Inman

    雑誌:

    J. Clin. Invest., 1;130(4):1863-1878.  doi: 10.1172/JCI126567 (2020)

    POINT!

    ヒトにおいては、機械感受性イオンチャネルをコードしているPIEZO2遺伝子の変異により脊柱側弯症や股関節形成不全を含む骨格異常を呈することが知られている。筆者たちはマウスにおいて、固有感覚システム中のPiezo2欠失がヒトの骨格異常を再現することを見出した。四肢骨格形成に重要な間葉系細胞に発現するPrx-Cre、I型コラーゲンのCreマウス(Col1a1-Cre)やII型コラーゲンのCreマウス(Col2-Cre)でPiezo2を欠失してもヒトで見られるような骨格異常は引き起こされないにもかかわらず、神経系のGABA駆動性介在ニューロンに発現するパルブアルブミンのCreマウス(Pvalb-Cre)でPiezo2を欠失すると脊椎の配列異常や股関節形成不全を生じることがわかった。固有感覚系回路網を欠失するRunx3あるいはEgr3の変異マウスの表現型も確認したところ、股関節形成不全が見られた。Wnt1-Creで末梢神経系におけるRunx3を欠失してもEgr3欠損マウスと同様の関節異常を引き起こすことがわかった。しかし、骨格系(Col1a1-Cre、Col2-Cre)でRunx3を欠失しても股関節形成の異常は認められなかった。以上のことから、固有感覚システムが骨格への制御的役割を持つという新たな知見が得られた。

    肝臓—脳—腸連関

    肝臓―脳―腸連関による腸管制御性T細胞の維持

    原題:

    The liver–brain–gut neural arc maintains the Treg cell niche in the gut

    著者:

    Toshiaki Teratani, Yohei Mikami, Nobuhiro Nakamoto, Takahiro Suzuki, Yosuke Harada, Koji Okabayashi, Yuya Hagihara, Nobuhito Taniki, Keita Kohno, Shinsuke Sibata, Kentaro Miyamoto, Harumichi Ishigame, Po-Sung Chu, Tomohisa Sujino, Wataru Suda, Masahira Hattori, Minoru Matsui, Takaharu Okada, Hideyuki Okano, Masayuki Inoue, Toshihiko Yada, Yuko Kitagawa, Akihiko Yoshimura, Mamoru Tanida, Makoto Tsuda, Yusaku Iwasaki & Takanori Kanai

    雑誌:

    Nature, 182: 447-462 (2020)

    POINT!

    炎症性腸疾患と中枢神経疾患は臨床的、実験的な知見から関連があることが見出されてきたが、神経系が腸管免疫を制御する機構は十分に理解されていない。本研究にて筆者らは、肝臓―脳―腸連関を介した迷走神経反射によって腸管制御性T細胞(Treg)の分化と維持を制御していること示している。腸管固有粘膜層に存在する抗原提示細胞は神経伝達物質受容体を発現し、pTregの分化誘導を制御していることが示された。腸管と脳を結ぶ神経回路を探索した結果、肝臓と脳を結ぶ神経回路がTregの制御に関与し、当該神経回路の切断によって、誘導性腸炎が増悪することが示された。さらに、抗生物質やMyd88欠損マウスを用いた解析から、腸内細菌がこれら一連の経路のトリガーであることが明らかにされた。よって、腸内の情報が肝臓にて統合され、神経系を介し遠隔臓器へ情報が伝達されるという情報伝達機構の存在が証明された。

    サルコペニア

    RANKL阻害は筋力とインスリン感受性を改善し骨量を修復する

    原題:

    RANKL inhibition improves muscle strength and insulin sensitivity and restores bone mass

    著者:

    Nicolas Bonnet, Lucie Bourgoin, Emmanuel Biver, Eleni Douni, and Serge Ferrari

    雑誌:

    J Clin Invest. 129 :3214-3223. (2019)

    POINT!

    加齢に伴う骨格筋量の減少(サルコペニア)と骨粗鬆症はしばしば合併することが知られている。骨粗鬆症に対する治療薬は複数あるが、これまでのところサルペニアに有効な治療法は開発されていない。筆者らは骨粗鬆症の治療薬である抗RANKL抗体デノスマブの投与によって転倒頻度も低下することや、RANKLと拮抗するOPGの投与によって筋萎縮マウスモデルの筋力が回復することが報告されていることに注目した。筆者らはまず閉経後骨粗鬆症患者ではデノスマブの投与によって体肢除脂肪量と握力が上昇することを示した。次に筆者らはRANKL過剰発現マウスではミオスタチンなどの抗筋原性遺伝子および炎症性遺伝子の発現上昇を認め、筋量・筋力・筋細胞のグルコース取り込みが低下することを示した。またマウス横紋筋細胞株を用いてRANKLがNF-kBシグナルを介してインスリン抵抗性を促進することを示した。一方でOPGやデノスマブの投与によってRANKL過剰発現マウスの筋量・筋力・グルコース取り込みが回復することを示した。さらに筆者らは骨量低下・筋量低下・インスリン抵抗性を示すことが報告されているPparb欠損マウスを用いて、OPGの投与が骨格筋のインスリンシグナル伝達と炎症性遺伝子の発現を正常化させて筋量・筋力を回復することを示した。以上よりRANKLの阻害は骨粗鬆症マウス・患者の筋力やインスリン感受性を改善することが判明した。従ってデノスマブはサルコペニアの新たな治療アプローチになりうることが示された。

    Sclerostin

    海綿骨におけるSclerostinの発現は破骨細胞によって抑制される

    原題:

    Sclerostin expression in trabecular bone is downregulated by osteoclasts

    著者:

    Masanori Koide, Teruhito Yamashita, Kohei Murakami, Shunsuke Uehara, Keigo Nakamura, Midori Nakamura, Mai Matsushita, Toshiaki Ara, Hisataka Yasuda, Josef M. Penninger, Naoyuki Takahashi, Nobuyuki Udagawa and Yasuhiro Kobayashi

    雑誌:

    Sci Rep, 10: 13751 (2020)

    POINT!

    骨組織は、骨代謝の活発な海綿骨と不活発な皮質骨からなっているが、骨代謝率を決定するメカニズムは明らかになっていない。骨細胞はWnt/b-カテニンのアンタゴニストとして働くSclerostinを分泌し、骨形成を阻害できる。破骨細胞から分泌される白血病抑制因子(LIF)はSclerostinの発現を抑制することが報告されている。筆者らは、Sostレポーターマウスと培養破骨細胞を用いて、骨組織におけるSclerostinの発現と骨代謝との関係を検討した。マウスの骨組織では、Sclerostin陽性骨細胞は皮質骨に著明に多く、海面骨内に存在する破骨細胞の近傍の骨細胞にはSclerostinが発現していなかった。抗RANKL抗体を投与すると海綿骨の骨代謝が低下し、LIF陽性TRAP陽性破骨細胞が減少し、Sclerostin陽性骨細胞は増加した。RANKL+/−マウスでは、破骨細胞の減少は軽度であったが、LIF陽性破骨細胞が減少し、Sclerostin陽性骨細胞が増加しており、海綿骨の骨代謝は低下していた。また、培養破骨細胞ではRANKL濃度依存的にLif mRNA発現量が上昇した。本研究によって、海綿骨においてLIF陽性破骨細胞が骨細胞からのSclerostin発現を抑制し、骨代謝を制御しうることが示された。

    メカニカルストレス

    Gli1陽性の歯周組織幹細胞は骨細胞と咀嚼力により制御される

    原題:

    Gli1+ Periodontium Stem Cells Are Regulated by Osteocytes and Occlusal Force

    著者:

    Yi Men, Yuhong Wang, Yating Yi, Dian Jing, Wenjing Luo, Bo Shen, William Stenberg, Yang Chai, Woo-Ping Ge, Jian Q. Feng and Hu Zhao

    雑誌:

    Dev. Cell, 54, 1-16 (2020) Online ahead of print.

    POINT!

    歯槽骨や歯根膜などの歯周組織ではターンオーバーが起きているが、歯周組織幹細胞の実態はよく分かっていなかった。Gli1+細胞はマウスの切歯、頭蓋顔面の骨、長管骨の幹細胞であることが知られている。Gli1LacZマウスの解析により成獣マウスにおいてGli1+細胞がP21以降、徐々に根尖孔付近の歯髄さらには、根尖部の歯根膜腔に現局していくことが明らかになった。タモキシフェン処理した直後のGli1CreERT2Ai14マウスにおいて、Gli1+細胞は線維芽細胞、骨芽細胞、血管、神経とは異なる細胞であったが、血管や神経の近傍に存在することが示された。さらに、月単位での時間経過により、Gli1+細胞は歯根膜細胞、セメント芽細胞、歯槽骨骨細胞、歯髄細胞に分化することが明らかになった。EdUアッセイを行ったところ、Gli1+細胞はEdU陽性率が低値を示した。歯根分岐部を28G針で穿刺することにより歯周組織を損傷させ、組織再生を誘導したところ、EdU+Gli1+細胞は増加し、再生部位の骨形成に寄与した。タモキシフェン処理したGli1-CreERT2Ai14Axin2-LacZマウスの解析によりGli1+細胞の一部はAxin2を発現することが見出されたため、歯周組織幹細胞におけるWntシグナルの解析に着手した。タモキシフェン処理したGli1-CreERT2Ctnnb1f/fAi14マウスにおいては、著明な歯槽骨の欠損が認められ、これらの細胞におけるWntシグナルの重要性が示された。対合歯の抜去により咬合力負荷を減少させたところ、根尖部歯周組織ではGli1+細胞が減少していた。タモキシフェン処理したGli1-CreERT2Ai14Sost–/–マウスではこの効果がキャンセルされた。以上より、咬合力によるメカニカルストレスは歯槽骨のスクレロスチンを介してWntシグナルを調節し、Gli1+歯周組織幹細胞の活性を調節することが明らかになった。

    メカニカルストレス

    伸展に誘導される皮膚の上皮増殖メカニズムの一細胞解析

    原題:

    Mechanisms of stretch-mediated skin expansion at single-cell resolution

    著者:

    Mariaceleste Aragona, Alejandro Sifrim, Milan Malfait, Yura Song, Jens Van Herck, Sophie Dekoninck, Souhir Gargouri, Gaëlle Lapouge, Benjamin Swedlund, Christine Dubois, Pieter Baatsen, Katlijn Vints, Seungmin Han, Fadel Tissir, Thierry Voet, Benjamin D. Simons and Cédric Blanpain

    雑誌:

    Nature. 584, 268-273 (2020)

    POINT!

    伸展による皮膚の増殖は欠損の再建手術に利用されている現象であるが、そのメカニズムはようやく解明され始めた段階である。著者らは、マウスの背部に術後1日で4 mLに増大するハイドロゲルを埋入した。ハイドロゲルの膨張に伴い一過性に埋入部の上皮細胞の密度が低下したものの、速やかに細胞増殖がおこり、術後4日の時点で密度は回復した。このとき、細胞間接着分子の発現に変化はなかったものの、免疫染色法にてα-カテニンの張力感受性ドメインa18の蛍光輝度が増加したため、接着分子のリモデリングが起きていると予想された。Krt14–CreERRosaConfettiマウスを用いた上皮細胞のクローン増殖の解析から、基底細胞は自己増幅する幹細胞ポピュレーションと上層の細胞に分化するポピュレーションが存在するという、ニッチモデルの挙動をとることが示唆された。実際、皮膚伸展に伴いKrt14+Krt10幹細胞は増加した。進展誘導性の基底細胞増殖のメカニズムを明らかにするために遺伝子発現の網羅的解析を行った。その結果、接着分子、small GTPase、細胞骨格の遺伝子発現が上昇し、EGFRシグナル、MAPK経路、YAP経路の活性化も見出された。また、ATAC-SeqによりAP1ファミリー転写因子の活性化が見出された。さらに、pseudotime解析により、ストレス応答が惹起されることも明らかになった。上記の結果から、各種遺伝子改変マウスと阻害剤投与を行い、細胞骨格およびそのリモデリングに関わる分子、MAPK経路、YAP経路が伸展による上皮増殖に影響するかを解析した。その結果、Diaph3、Myh9、MEK–ERK–AP1経路、Yap1、MALの関与が示された。以上より、皮膚伸展によって上皮細胞では細胞接着分子や細胞骨格のリモデリングが起き、MAPK経路やYAP経路が駆動され細胞の増殖が起こることが明らかになった。

    IL-33

    ミクログリアによる細胞外基質のリモデリングはシナプス可塑性を制御する

    原題:

    Microglial Remodeling of the Extracellular Matrix Promotes Synapse Plasticity

    著者:

    Phi T. Nguyen, Leah C. Dorman, Simon Pan, Ilia D. Vainchtein, Rafael T. Han, Hiromi Nakao-Inoue, Sunrae E. Taloma, Jerika J. Barron, Ari B. Molofsky, Mazen A. Kheirbek, and Anna V. Molofsky

    雑誌:

    Cell. 182(2) 1-16. (2020)

    POINT!

    海馬におけるシナプスリモデリングは、経験したことを神経回路として記憶するために必須の機構である。ミクログリアは活性化に伴いシナプスを貪食したり、逆にシナプス形成を促進することで、記憶の制御に寄与する。しかし、ミクログリアの活性化メカニズムについて知られていることは少ない。著者らは近年、アストロサイト由来のIL-33が脊髄と視床におけるシナプス数調節に関わることを見出した(Science, 2018)。本研究において、著者らはIl33mCherry/+マウスの解析から、海馬ではNeuN+神経細胞が主たるIL-33産生細胞であることを見出した。海馬の歯状回領域では70%以上の神経細胞がIL-33+であり、特に顆粒細胞に認められた。IL-33発現が経験によって変動するかを検討するために、Il33mCherry/+マウスをenriched environment (EE: ラット用の大きなケージでホイールや玩具などが設置された環境) で飼育した。その結果、EE飼育マウスの海馬では有意なIL-33発現上昇を認めた。一方、隔離飼育した場合は歯状回のIL-33+細胞数が減少した。IL-33は神経新生の2~4週後に発現することがわかった。各々の細胞のIL-33発現強度には差が認められた。この強弱が神経機能に関わるかをscRNA-Seq法にて検討した。歯状回ニューロンは#0と#2の二つのクラスターに分かれたが、IL-33+細胞はクラスター#2と一致した。このクラスターでは細胞接着、シナプス形成・可塑性、カドヘリン、細胞外基質の合成・リモデリングに関わる遺伝子が高発現していた。また、IL-33の発現レベルはスパインの数とcFos(神経活動性の指標)の陽性率と相関していた。IL-33の標的細胞を探索したところ、ミクログリアがIL-33受容体のIL-1RL1を高発現することを見出した。ニューロン特異的にIL-33を欠損させたIl33f/fSyn1CreマウスとミクログリアでIL-1RL1を欠損するIl1rl1f/fCx3cr1CreER/+マウスの歯状回とCA1領域ではスパインが減少した。この時、ミクログリアの数には変化はなかったが形態が変化していた。Il33f/fSyn1Creマウスでは、歯状回顆粒細胞の活動性シナプス後電位の頻度の低下を認めた。Il1rl1f/fCx3cr1CreER/+マウスではEEモデルによるシナプス増加効果が消失した。これらのマウスでは、恐怖記憶の定着が障害された。Il33f/fSyn1Creマウスでは、ミクログリアによる細胞外基質分子アグリカンの貪食が減少し、アグリカンが海馬に多量に沈着していた。以上より、経験記憶のプロセスにおいて、ニューロン由来のIL-33はミクログリアによるシナプスリモデリングを活性化させることで記憶形成を促進することがわかった。

    Piezo1

    腸管のPiezo1によるRNAの感知は全身性セロトニン合成に必要不可欠である

    原題:

    RNA Sensing by Gut Piezo1 Is Essential for Systemic Serotonin Synthesis

    著者:

    Erika Sugisawa, Yasunori Takayama, Naoki Takemura, Takeshi Kondo, Shigetsugu Hatakeyama, Yutaro Kumagai, Masataka Sunagawa, Makoto Tominaga, and Kenta Maruyama

    雑誌:

    Cell, 182, 1–16 (2020)

    POINT!

    腸クロム親和性細胞は、セロトニン(5-HT)産生を介して消化管の運動や水・電解質輸送を調節している。近年、腸内細菌やその代謝産物がセロトニン産生を制御することが示されたが、その分子メカニズムは未解明であった。本研究で著者らは、機械刺激受容体として知られるPiezo1チャネルが腸管では一本鎖RNA(ssRNA)のセンサーとして機能し、それにより5-HT産生を制御していることを明らかにした。マウス腸管上皮特異的にPiezo1を欠損させると、腸蠕動運動が著しく減少し、DSS誘導性腸炎が抑制され血清中の5-HT量が減少した。さらに、5-HTの減少は骨形成や海綿骨量を上昇させた。特筆すべきことに、腸管上皮のPiezo1は機械的刺激では活性化されず、抗生物質により腸内細菌を減少させると腸管上皮のセロトニン産生が抑制されたことから、糞便中に含まれる様々な腸内細菌由来分子のスクリーニングを行った結果、糞便中のssRNAが天然のPiezo1リガンドとして同定された。ssRNA刺激による腸管5-HT合成は MyD88/TRIF非依存的に誘発され、RNase Aを大腸に4週間連日注入すると腸の運動性が改善され、さらに骨量が増加した。これらの結果から、腸内細菌由来のssRNAが全身の5-HT量を決定する因子で、ssRNA-Peizo1が腸で産生されるセロトニンの関連する様々な疾患の理解や治療標的となる可能性があることが示唆された。

    Mincle

    骨細胞のネクローシスはMincleを介して破骨細胞による骨量減少を惹起する

    原題:

    Osteocyte necrosis triggers osteoclast-mediated bone loss through macrophage-inducible C-type lectin

    著者:

    Darja Andreev, Mengdan Liu, Daniela Weidner, Katerina Kachler, Maria Faas, Anika Grüneboom, Ursula Schlötzer-Schrehardt, Luis E. Muñoz, Ulrike Steffen, Bettina Grötsch, Barbara Killy, Gerhard Krönke, Andreas M. Luebke, Andreas Niemeier, Falk Wehrhan, Roland Lang, Georg Schett, and Aline Bozec

    雑誌:

    J Clin Invest, doi: 10.1172/JCI134214 (2020)

    POINT!

    骨壊死や骨折などで骨細胞死の上昇が観察されるが、それらが破骨細胞による骨吸収を活性化するメカニズムは不明であった。本研究で著者らは、破骨細胞がネクローシスした骨細胞に曝露されるとマクロファージ誘導性C型レクチン(Mincle)発現を強力に活性化させ、それによりネクローシスした骨細胞から放出されるダメージ関連分子パターン(DAMP)を感知して破骨細胞分化が誘導され、骨量減少の引き金となることを明らかにした。RNA-seq解析と代謝解析により、Mincle活性化はカルシウムシグナルを介して破骨細胞分化を活性化し、さらに細胞内代謝を酸化的リン酸化へシフトさせていることが明らかにされた。Mincle欠損マウスでは骨細胞死誘導後の破骨細胞活性化や海綿骨量減少が抑制され、骨折修復の改善、血清移入関節炎モデルにおける炎症性骨量減少の抑制が観察された。さらに、ヒト大腿骨頭壊死や顎骨壊死でもMincleが高発現し、破骨細胞活性に関連する遺伝子発現との相関がみられた。以上より、骨細胞死に伴う破骨細胞の活性化にDAMP-Mincleを介したシグナルが関わることが示された。

    SOSTDC1

    SOSTDC1を産生するTFH細胞はTFR細胞分化を促進する

    原題:

    SOSTDC1-producing follicular helper T cells promote regulatory follicular T cell differentiation

    著者:

    Xin Wu, Yun Wang, Rui Huang, Qujing Gai, Haofei Liu, Meimei Shi, Xiang Zhang, Yonglin Zuo, Longjuan Chen, Qiwen Zhao, Yu Shi, Fengchao Wang, Xiaowei Yan, Huiping Lu, Senlin Xu, Xiaohong Yao, Lin Chen, Xia Zhang, Qiang Tian, Ziyan Yang, Bo Zhong, Chen Dong, Yan Wang, Xiu-Wu Bian, Xindong Liu

    雑誌:

    Science, 369, 984–988 (2020)

    POINT!

    胚中心反応は濾胞性制御性T(TFR)細胞の生成を増強する。しかしながら、TFR細胞形成を促進する分子メカニズムは不明であった。本研究で著者らは、濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞のサブポピュレーションとT/B細胞境界領域に多く局在する線維芽細胞様細網細胞から分泌されるスクレロスチンドメイン含有タンパク質1(SOSTDC1)が、TFR細胞の発生に必要であることを明らかにした。SOSTDC1はWNT/b-カテニンシグナルを阻害することで、TFR細胞の分化を促進する。レポーターマウスを用いた運命追跡法やトランスクリプトーム解析によって、SOSTDC1を発現するTFH細胞はSOSTDC1陰性TFH細胞の後に発生し、B細胞の抗体産生を刺激する能力を失った別のT細胞集団であることが明らかになった。特筆すべきことに、TFH細胞におけるSOSTDC1の欠失はTFR細胞を著しく減少させ、結果的に胚中心反応を上昇させた。これらの知見は自己免疫疾患に対する治療、ワクチン開発などに重要な影響を持つと考えられる。

    運動器免疫学

    IL-13は持久力トレーニングに必要なエネルギー代謝能を向上させる

    原題:

    Interleukin-13 drives metabolic conditioning of muscle to endurance exercise

    著者:

    Nelson H. Knudsen, Kristopher J. Stanya, Alexander L. Hyde, Mayer M. Chalom, Ryan K. Alexander, Yae-Huei Liou, Kyle A. Starost, Matthew R. Gangl, David Jacobi, Sihao Liu, Danesh H. Sopariwala, Diogo Fonseca-Pereira, Jun Li, Frank B. Hu, Wendy S. Garrett, Vihang A. Narkar, Eric A. Ortlund, Jonathan H. Kim, Chad M. Paton, Jamie A. Cooper, Chih-Hao Lee

    雑誌:

    Science 368(6490):eaat3987. doi: 10.1126/science.aat3987 (2020)

    POINT!

     運動の繰り返しは骨格筋のミトコンドリアによるエネルギー産生を向上させる。著者らは運動に伴い骨格筋でIL-13の発現が上昇することを見出し、この分子の機能を解析した。4週間の持久力トレーニングにより、マウス骨格筋ではILC2とIL-13産生ILC2の割合が増加した。Il13–/–マウスの解析を行ったところ、持久力の低下を認めた。これらのマウスと野生型マウスの腓腹筋の網羅的トランスクリプトーム解析をもとにジーンオントロジー解析を行った。野生型マウスと比較しIl13–/–マウスの筋では、ミトコンドリア機能に関わる遺伝子群の発現が低かった。Il13–/–マウスの酸素取り込みは低下しており、培養筋芽細胞へのrIL-13の添加はミトコンドリアの増加と酸素取り込みの増大を誘導した。一般的に、持久力トレーニングではoxidativeタイプの筋線維が増えglycolyticタイプは減少するが、Il13–/–マウスの筋ではこの変化が見られなかった。ACTA1-Creにより骨格筋特異的にIl13raStat3を欠損させたマウスでも運動機能の低下と脂肪酸酸化の低下が見られた。以上より、持久力トレーニングは骨格筋におけるIL-13発現を誘導し、IL-13はStat3を介して骨格筋細胞の代謝機能を調節し、運動機能を向上させることが示された。

    エクソソーム

    おとりエクソソームは細菌毒素に対する防御作用をもたらす

    原題:

    Decoy exosomes provide protection against bacterial toxins

    著者:

    Matthew D. Keller, Krystal L. Ching, Feng-Xia Liang, Avantika Dhabaria, Kayan Tam, Beatrix M. Ueberheide, Derya Unutmaz, Victor J. Torres, Ken Cadwell

    雑誌:

    Nature 579(7798):260-264 (2020)

    POINT!

    MRSAが産生するα-トキシンなどの毒素は、宿主細胞の細胞膜を穿孔することがよく知られている。しかしながら、そのような毒素に対する宿主の防御機構には不明な点が多く残されている。著者らは過去にオートファジータンパク質のATG16L1の低形成や欠損はα-トキシンに対する感受性が高いことを示した(Cell Host Microbe, 2015)。ATG16L1のノックダウンによってα-トキシン結合タンパク質ADAM10の細胞表面における発現は上昇したが、これはライソゾーム酸性化を介したものではなかった。ATGタンパク質には小胞輸送 (secretory autophagy) 機能があることが報告されている。ATG16L1ノックダウン細胞ではエクソソームが減少し、内包する成熟型ADAM10の減少も認められた。培養細胞にα-トキシンとともにエクソソームを添加したところ細胞死が抑制されたが、ATG16L1ADAM10のノックダウン細胞由来のエクソソームを用いた場合にはその抑制効果が見られなかった。α-トキシンはADMA10発現エクソソームと反応すると、その表面でオリゴマー化することが認められた。エクソソームはα-トキシンだけでなく、ジフテリア毒素に対する防御作用も発揮し、本研究で認められた作用はα-トキシン特異的なものではないことがわかった。以上より、オートファジータンパク質により放出を誘導されたエクソソームは細菌毒素に対するおとり受容体として機能し、感染防御に寄与することが示された。

    3型免疫応答

    TyK2の阻害は3型免疫応答を抑制し脊椎関節炎の進行を抑制する

    原題:

    TYK2 inhibition reduces type 3 immunity and modifies disease progression in murine spondyloarthritis

    著者:

    Eric Gracey, Dominika Hromadová, Melissa Lim, Zoya Qaiyum, Michael Zeng, Yuchen Yao, Archita Srinath, Yuriy Baglaenko, Natalia Yeremenko, William Westlin, Craig Masse, Mathias Müller, Birgit Strobl, Wenyan Miao,  Robert D. Inman

    雑誌:

    J. Clin. Invest., 1;130(4):1863-1878.  doi: 10.1172/JCI126567 (2020)

    POINT!

    近年、脊椎関節炎 (SpA) に対する治療薬の開発が進められているが、関節癒合を十分に防ぐことはできていない。SpA患者のGWAS解析からは、IL23R, IL6R, IL12B, JAK2, TYK2など、3型免疫応答に関わる遺伝子が見出され、治療標的として注目されている。多くの種類の経口JAK阻害剤が開発されたことから、著者らはTYK2阻害剤に着目した。特異性の高いTYK2阻害剤NDI-031407は、IL-1β, IL-6, IL-23で刺激されたCD4+T細胞によるIL-17A産生を濃度依存的に抑制した。このとき、STAT3リン酸化が抑制されていた。そこで、SpAモデルであるSKGマウスにSpA誘導1週間後からNDI-031407を100mg / kg、1日2回経口投与したところ、症状スコアと関節の組織所見が改善した。所属リンパ節中のCD4+T細胞においては、NDI-031407投与によりIL-17A, IL-22産生細胞やRORγt+細胞の割合も低下していた。SpAにおいてはRORγt+ CD4+T細胞の増殖が亢進するが、この化合物によって増殖活性は低下した。活性化マーカーのICOS発現は減少し、PD1の発現は上昇した。SpAの別のモデルであるIL-23 mini circle静脈注射モデルでも同様の治療効果が認められた。IL-23を耳介に局所注射した場合、γδT細胞によるIL-17A産生が増加するが、NDI-031407投与により減少した。また、TYK2の変異マウスにおいてもIL-23誘導性のIL-17A発現は抑制された。TYK2変異により、IL-23によるγδT細胞のSTAT3リン酸化は消失した。以上より、新規化合物NDI-031407はT細胞によるサイトカイン産生の抑制を介したSpA治療薬となることが示唆された。

    IL-33

    IL-33はトリプトファン水酸化酵素を誘導し炎症性ILC2の免疫応答を促進する

    原題:

    Interleukin-33 Induces the Enzyme Tryptophan Hydroxylase 1 to Promote Inflammatory Group 2 Innate Lymphoid Cell-Mediated Immunity

    著者:

    Anne-Laure Flamar, Christoph S N Klose, Jesper B Moeller, Tanel Mahlakõiv, Nicholas J Bessman, Wen Zhang, Saya Moriyama, Vladislava Stokic-Trtica, Lucille C Rankin, Gregory Garbès Putzel, Hans-Reimer Rodewald, Zhengxiang He, Lili Chen, Sergio A Lira, Gerard Karsenty, David Artis

    雑誌:

    Immunity, 52: 606-619.e6 (2020)

    POINT!

    ILC2には定常状態で存在するタイプと寄生虫感染に対する炎症時に機能するタイプの二種類が存在することが知られている。しかし、これら二種類のILC2が誘導され、組織や病態に応じた機能を発揮するメカニズムには不明な点が多い。著者らは2型炎症反応に重要なIL-33シグナルに着目した。定常状態の野生型マウスの腸間膜リンパ節にはLinKLRG1+CD25+ST2+ILC2 (ILC2NAT, ST2: IL-33受容体) が認められ、蠕虫N. brasiliensisを感染させた個体ではこれに加えLinKLRG1+CD25ST2ILC2 (ILC2INFLAM) が認められた。Il33–/–マウスで同様の感染実験を行ったところ、ILC2INFLAMの出現は著しく抑制され、虫体排除も障害された。IL-33をマウスに投与したところ、IL-25に効率は劣るものの、腸間膜リンパ節にILC2INFLAMが誘導された。培養ILC2にIL-33を単独で添加した場合はST2発現の抑制は部分的であったが、IL-25とともに加えた場合はほぼ完全に発現を消失させたことから、ILC2INFLAMの誘導にはこれらのサイトカインの両方が必要であることが示唆された。遺伝子発現解析の結果、N. brasiliensis感染やIL-33刺激によってILC2におけるtryptophan hydroxylase (Tph1) 発現が顕著に上昇することを認めた。Tph1は他の免疫細胞と比較して免疫細胞で高発現していた。そこで、Tph1flox/floxマウスを作出し、Il7rCre/+マウスと交配することによりILC2でTph1を欠損させるシステムを構築した。Il7rCre/+Tph1flox/floxマウスではN. brasiliensis感染に伴うILC2INFLAM誘導と寄生虫排除能の低下を認めた。Tph1Δ/ΔILC2のマーカー発現を解析したところ、ICOSを始めとした活性化マーカーの発現低下を認めた。以上より、IL-33はThp1を介してILC2を活性化し、寄生虫排除に寄与することが示された。

    IL-33

    IL-33は生体内で鉄リサイクルを担うマクロファージの分化を誘導する

    原題:

    Interleukin-33 Signaling Controls the Development of Iron-Recycling Macrophages

    著者:

    Yuning Lu, Gemma Basatemur, Ian C Scott, Davide Chiarugi, Marc Clement, James Harrison, Ravin Jugdaohsingh, Xian Yu, Stephen A Newland, Helen E Jolin, Xuan Li, Xiao Chen, Monika Szymanska, Guttorm Haraldsen, Gaby Palmer, Padraic G Fallon, E Suzanne Cohen, Andrew N J McKenzie, Ziad Mallat

    雑誌:

    Imunity. 52(5):782-793.e5. (2020)

    POINT!

    赤脾髄に存在するマクロファージ (RPM) は赤血球の維持と鉄のリサイクルに重要である。著者らはかつて、ヘムがSPI-C発現を誘導し、鉄リサイクルを行うマクロファージ分化を誘導することを示した(Haldar, Cell, 2014)。今回、IL-33がSpic発現を上昇させることに着目した。IL-33の作用メカニズムを明らかにするために、IL-33受容体IL-1RL1欠損マウスの解析を行った。Il1rl1–/–マウスでは生後6週以降でCD11cloLy6GloNK1.1loSSC-Alo細胞に占めるF4/80loCD11b+RPM前駆細胞の割合には有意な変化を認めなかったものの、F4/80hiCD11blo/–成熟RPMの割合は有意な減少を示した。また、soluble IL-1RL1を投与した場合も同様に成熟RPMの減少を認めた。このことから、IL-33はそのサイトカイン作用によりRPM分化を制御することが示された。これらのマウスでは、生後42週において脾臓の腫大が見られ、肝臓及び脾臓に過剰な鉄の沈着が見出された。IL-33受容体の下流シグナルを解析したところ、野生型RPMにおいてはIL-33刺激でERKのリン酸化が認められたがIl1rl1–/–マウスではこのリン酸化が認められなかった。網羅的遺伝子発現解析の結果、単球からRPM前駆細胞への分化課程にGATA2とETS1が関与することが示唆された。IL-33の産生源の探索により、赤血球中に31 kDaの完全長のIL-33を発見した。Il33–/–マウスに対する野生型赤血球の移入により、RPMの割合は増加した。したがって、赤血球中のIL-33はRPM分化に必要であることが示された。

    疾患バイオマーカー

    筋萎縮性側索硬化症 (ALS) における早期ライフステージにおける金属の異常沈着

    原題:

    Early life metal dysregulation in amyotrophic lateral sclerosis

    著者:

    Claudia Figueroa-Romero, Kristen A. Mikhail, Chris Gennings, Paul Curtin, Ghalib A. Bello, Tatiana M. Botero, Stephen A. Goutman1 Eva L. Feldman, Manish Arora, Christine Austin

    雑誌:

    Ann. Clin. Transl. Neurol., doi: 10.1002/acn3.51006. (2020)

    POINT!

    生体内の微量金属は酵素の活性中心などの重要な役割を有する。しかし、神経細胞への金属の異常な沈着はアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) などの発症につながる。こういった疾患の治療や早期診断という観点から、銅や鉄などの微量元素が着目されている。ALSの原因遺伝子として、SOD1, TDP43, FUSなどが明らかにされてきたが、大部分の患者において原因は不明であり、早期診断に有用なバイオマーカーの開発が望まれている。著者らは、ALS患者の遺体の歯および抜去歯(永久歯)に含まれる金属元素の解析をLA–ICP–MSにより行った。その結果、出生から15年以内に金属の異常な取り込みの増加が認められた(クロム: 10~15歳、マンガン: 0-6歳、ニッケル: 6–10歳、スズ: 0–2.5歳、亜鉛: 0–15歳)。ALS発症年齢が50~74歳(本邦)であることを考えると、極めて早期に疾患に繋がりうる異常の検出に成功したといえる。齲蝕や歯周炎により永久歯を抜去する機会は減少しているので、乳歯でも同様に金属の異常沈着を検出することができれば、侵襲の少ない早期診断が可能になると考えられる。

    IL-6

    筋肉由来のIL-6は骨芽細胞でのシグナル伝達により運動能力を上昇させる

    原題:

    Muscle derived interleukin-6 increases exercise capacity by signaling in osteoblasts

    著者:

    Subrata Chowdhury, Logan Schulz, Biagio Palmisano, Parminder Singh, Julian M. Berger, Vijay K. Yadav, Paula Mera, Helga Ellingsgaard, Juan Hidalgo, Jens Brüning, Gerard Karsenty

    雑誌:

    J Clin Invest, doi: 10.1172/JCI133572 (2020)

    POINT!

    血中IL-6レベルは運動中に急上昇しIL-6は運動能力を支持するが、運動中の血中IL-6の由来も、IL-6が運動能力を高めるメカニズムも未だ解明されてはいなかった。本研究で著者らは、運動中の血中IL-6の大部分が筋肉に由来し、IL-6が骨芽細胞を介して破骨細胞分化と血中への活性化型オステオカルシン放出を促進することを示した。さらに、骨芽細胞でIL-6受容体を欠損するマウスが筋肉でIL-6を欠損するマウスと同程度の運動能力の欠陥を示すことや、この欠陥がIL-6ではなく、オステオカルシンによって治療できることも示された。さらに著者らは筋肉由来のIL-6が運動中にオステオカルシン依存的に筋線維への栄養取り込みと異化を促進することを明らかにした。また、オステオカルシンとIL-6の間のクロストークがげっ歯類とヒトの間で保存されていることも示された。以上から本研究は、筋肉-骨-筋肉の内分泌軸が、運動中に筋肉の機能を高めるために必要であることを証明している。

    パネキシン1

    アポトーシス細胞から放出された代謝産物は組織伝達物質として機能する

    原題:

    Metabolites released from apoptotic cells act as tissue messengers

    著者:

    Christopher B. Medina, Parul Mehrotra, Sanja Arandjelovic, Justin S. A. Perry, Yizhan Guo, Sho Morioka, Brady Barron, Scott F. Walk, Bart Ghesquière, Alexander S. Krupnick, Ulrike Lorenz & Kodi S. Ravichandran

    雑誌:

    Nature, 580, 130–135 (2020)

    POINT!

    カスパーゼ依存性アポトーシスは、恒常性維持に関わる細胞ターンオーバーの約90%を占め、炎症、細胞増殖、および組織再生を制御する。アポトーシス細胞がどのようにこれらの多様な影響を及ぼすのかについて、完全には解明されていなかった。本研究で著者らは、アポトーシス細胞代謝産物セクレトームのプロファイリングを行い、アポトーシスを起こしたリンパ球とマクロファージは細胞膜を保持しながら特定の代謝産物を放出することが明らかとなった。これらの代謝産物のサブセット(スペルミジン、AMP、GMP、クレアチン、グリセロール3-リン酸、ATP)は、種々の刺激によって様々な初代細胞や細胞株でアポトーシスを誘導した後に放出される代謝産物と同様であった。さらに、アポトーシス代謝産物セクレトームは、単なる細胞内物質の受動的な排出によるものではなく、カスパーゼを介して細胞膜上でのパネキシン1チャネルが開くことで、代謝産物の選択されたサブセットの放出が促進されることが示された。また、特定の代謝経路(スペルミジン合成に関わる経路)はアポトーシスの間もアクティブで、放出される代謝産物は選択的であった。アポトーシス代謝産物セクレトームは、隣接する健康な細胞において炎症の抑制、細胞増殖、および創傷治癒を含む、特異的な遺伝子プログラムを誘導し、アポトーシス代謝産物のカクテル投与によって、炎症性関節炎や肺移植片拒絶を抑制することが明らかにされた。また、Cd4-creによりパネキシン1を欠損させたマウスではデキサメタゾン投与後の胸腺におけるアポトーシス胸腺細胞から周囲のミエロイド系細胞へのシグナルが著しく低下することも示された。これらの結果から、アポトーシス細胞が除去を待つ不活性な細胞ではなく、代謝物を‘good-bye’シグナルとして放出することで能動的に調節するという概念が示された。

    SOX9

    脂肪利用可能性がSOX9を介して骨格前駆細胞の運命を決定する

    原題:

    Lipid availability determines fate of skeletal progenitor cells via SOX9

    著者:

    Nick van Gastel, Steve Stegen, Guy Eelen, Sandra Schoors, Aurélie Carlier, Veerle W. Daniëls, Ninib Baryawno, Dariusz Przybylski, Maarten Depypere, Pieter-Jan Stiers, Dennis Lambrechts, Riet Van Looveren, Sophie Torrekens, Azeem Sharda Patrizia Agostinis, Diether Lambrechts, Frederik Maes, Johan V. Swinnen, Liesbet Geris, Hans Van Oosterwyck, Bernard Thienpont, Peter Carmeliet, David T. Scadden & Geert Carmeliet

    雑誌:

    Nature, 579, 111–117 (2020)

    POINT!

    軟骨は無血管という特有の性質をもつが、栄養供給欠如が軟骨形成制御に関わるかどうかということや、そのメカニズムは不明であった。本研究で著者らは、骨移植とフィルターによる血管侵入の阻害実験によって骨の治癒過程における血管侵入の阻害が、骨格前駆細胞の軟骨形成性分化を促進することを示した。また、in vitro実験からこの過程は細胞外脂質の低下によって引き起こされることが分かった。脂質が不足すると骨格前駆細胞においてFOXO転写因子が活性化され、それらがSox9プロモーターに結合してその発現を上昇させる。Sox9は軟骨形成の開始に加え、脂肪酸β酸化を抑制することによって細胞代謝の調節因子としても機能し、それにより細胞を無血管状態に適応させる。著者らの結果は、脂質欠乏が軟骨形成コミットメントの重要な決定要因であることや、脂質欠乏状態におけるFOXO転写因子の役割、さらにSox9が非常に重要な代謝メディエーターであることが明らかになった。これらのデータから、骨格系細胞の運命決定には微小環境の栄養状態が重要であることが示唆された。

    窒素含有ビスホスホネート

    ATRAIDは窒素含有ビスホスホネートの骨における作用を制御する

    原題:

    ATRAID regulates the action of nitrogen-containing bisphosphonates on bone

    著者:

    Lauren E. Surface, Damon T. Burrow, Jinmei Li, Jiwoong Park, Sandeep Kumar, Cheng Lyu, Niki Song, Zhou Yu, Abbhirami Rajagopal, Yangjin Bae, Brendan H. Lee, Steven Mumm, Charles C. Gu, Jonathan C. Baker, Mahshid Mohseni, Melissa Sum, Margaret Huskey, Shenghui Duan, Vinieth N. Bijanki, Roberto Civitelli, Michael J. Gardner, Chris M. McAndrew, William M. Ricci, Christina A. Gurnett, Kathryn Diemer, Fei Wan, Christina L. Costantino, Kristen M. Shannon, Noopur Raje, Thomas B. Dodson, Daniel A. Haber, Jan E. Carette, Malini Varadarajan, Thijn R. Brummelkamp, Kivanc Birsoy, David M. Sabatini, Gabe Haller, Timothy R. Peterson

    雑誌:

    Sci Transl Med, 12, eaav9166 (2020)

    POINT!

    窒素含有ビスホスホネート(N-BP)は、骨関連疾患に対して最も広く処方されている薬剤である一方、非定型大腿骨骨折や顎骨壊死などのリスクが問題となっている。N-BPはファルネシル二リン酸合成酵素の活性を阻害し、タンパク質のプレニル化を抑制するが、N-BPの薬理効果発揮のための他の細胞内因子については不明であった。本研究で著者らは、ヒトミエロイド系のハプロイド細胞株KBM7を用い、ジーントラップ法によってアレンドロネートに対する耐性が上昇する変異から、ATRAID遺伝子を同定した。ATRAID遺伝子欠損マウスでは骨量に差はなかったが、骨形成や骨強度の低下を示し、さらに閉経後及び老齢骨粗鬆症モデルの両方でアレンドロネートによる骨量回復効果が減少した。ATRAID欠損破骨細胞は、アレンドロネートによる細胞死とプレニル化阻害に対する耐性を示した。また、N-BPにより顎骨壊死を発症した多発性骨髄腫及び乳がん患者や、非定型大腿骨骨折を発症した骨粗鬆症患者のエクソームシークエンス解析を行ったところ、ATRAIDコード領域にレアな非同義置換が同定された。さらにデータベース解析により、N-BP治療を受けた患者のうち予後不良群ではATRAID発現がコントロール群と比較して50%程度であった。最後に著者らはHEK293T細胞を用いて、同定された非同義置換や50%程度の発現低下がアレンドロネートに対する感受性を上昇させる可能性を示した。以上から、N-BP治療の安全性を確保するためのATRAID遺伝子領域スクリーニングの必要性が示唆された。

    がん転移

    悪性黒色腫の転移能の差は代謝の不均質性によってもたらされる

    原題:

    Metabolic heterogeneity confers differences in melanoma metastatic potential

    著者:

    Alpaslan Tasdogan, Brandon Faubert, Vijayashree Ramesh, Jessalym M. Ubelacker, Bo Shen, Ashley Solmonson, Malea M. Murphy, Zhimin Gu, Wen Gu, Misty Martin, Stacy Y. Kasitinon, Travis Vandergriff, Thomas P. Mathews, Zhiyu Zhao, Dirk Schadendorf, Ralph J. DeBerardinis and Sean J. Morrison

    雑誌:

    Nature, 577: 115-120 (2020)

    POINT!

    がん転移過程において原発巣から播種されたがん細胞は、酸化的ストレスをはじめとした様々なストレスにさらされる。そのため、転移の成立にはがん細胞の代謝状態の変化が必須である。筆者らは、まず悪性黒色腫患者由来がん細胞を血液循環中がん細胞数および遠隔転移の有無により高転移性がん細胞と低転移性がん細胞の2群に分類した。それらを免疫不全マウスの皮下に移植し、[U-13C]glucoseを注入することにより腫瘍内の代謝を追跡したところ、高転移性がん細胞と低転移性がん細胞では取り込む栄養素に差があり、特に高転移性がん細胞では乳酸の取り込みが増加していることがわかった。続いて、高転移性がん細胞ではMCT1(Monocarboxylate Transporter 1)の発現量が高いことから、MCT1阻害剤であるAZD3965を投与したところ、腫瘍内の乳酸取り込み量が減少した。また、MCT1の阻害は原発性皮下腫瘍の増大にはほとんど影響がなかったが、血液循環中のがん細胞数を減少させ、転移巣を縮小させた。加えて、MCT1の阻害は酸化的ペントースリン酸経路を抑制して活性酸素を増加させ、抗酸化剤の併用投与により転移抑制効果は打ち消された。さらに、同じメラノーマ細胞から単離したMCT1high細胞とMCT1low細胞を比較したところ、皮下移植による腫瘍の形成は同程度であったが、静脈内注入によりMCT1high細胞はより多くの転移巣を形成した。以上の結果から、高転移性がん細胞ではMCT1依存性に酸化的ストレスを処理していることが示され、がん細胞間での代謝の差が転移能の差をもたらしていることが示唆された。

    リプログラミング

    大動脈瘤における平滑筋細胞リプログラミング

    原題:

    Smooth Muscle Cell Reprogramming in Aortic Aneurysms

    著者:

    Pei-Yu Chen, Lingfeng Qin, Guangxin Li, Jose Malagon-Lopez, Zheng Wang, Sonia Bergaya, Sharvari Gujja, Alexander W Caulk, Sae-Il Murtada, Xinbo Zhan, Zhen W Zhuang, Deepak A Rao, Guilin Wang, Zuzana Tobiasova, Bo Jiang, Ruth R Montgomery, Lele Sun, Hongye Sun, Edward A Fisher, Jeffrey R Gulcher, Carlos Fernandez-Hernando, Jay D Humphrey, George Tellides, Thomas W Chittenden, Michael Simons

    雑誌:

    Cell Stem Cell, 26: 542-557 (2020)

    POINT!

    大動脈瘤はアテローム性動脈硬化の患者で見られ、平滑筋細胞(SMC)におけるTGF-bシグナル異常が認められるが、病態との関連は不明だった。筆者らは、大動脈瘤の病態モデルApoe–/–マウスに平滑筋特異的(ミオシン重鎖Cre) TGF-b受容体を欠損させたマウス(TGFβR2iSMC-Apoe)を作製し、SMCにおけるTGF-bシグナルの大動脈瘤への関与を調べた。高コレステロール食を与え続けた場合、TGFβR2iSMC-ApoeマウスはコントロールApoe-/-マウスと比べ、動脈硬化プラーク進行と大動脈瘤形成が増悪した。TGFβR2iSMC-Apoeマウスの動脈平滑筋では、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、マクロファージ様細胞が多く認められた。また、TGFβR2iSMC-Apoeマウスでは間葉系幹細胞マーカーCD44とSca-1陽性細胞が顕著に増加したことから、TGF-b受容体欠損SMCはリプログラミングし、多分化能を獲得しているようであった。つまり、SMCがSMCではない細胞に分化転換してしまうことで大動脈瘤に繋がる可能性がある。TGFβR2iSMC-Apoeマウスにおける分化転換に重要なシグナルを調べるためにscRNA-seq解析を行うと、TGF-bシグナル下流のSMAD2/3に負に制御されるKLF4の発現がTGFβR2iSMC-Apoeマウスで増加したことがわかった。そこでTGFβR2iSMC-ApoeマウスにKLF4を欠損させると表現型がレスキューされた。平滑筋のTGF-bシグナル異常により誘発されたKLF4発現が平滑筋リプログラミングを促進することで動脈硬化が起きていることが示唆された。

    線維化

    非免疫系細胞におけるRbm7の発現制御異常は臓器線維症を引き起こす

    原題:

    Dysregulated Expression of the Nuclear Exosome Targeting Complex Component Rbm7 in Nonhematopoietic Cells Licenses the Development of Fibrosis

    著者:

    Fukushima K, Satoh T, Sugihara F, Sato Y, Okamoto T, Mitsui Y, Yoshio S, Li S, Nojima S, Motooka D, Nakamura S, Kida H, Standley DM, Morii E, Kanto T, Yanagita M, Matsuura Y, Nagasawa T, Kumanogoh A, Akira S.

    雑誌:

    Immunity 52: 542-556 (2020)

    POINT!

    線維症は、原因不明の不治の疾患である。筆者らは以前、Segregated-nucleus-containing atypical monocytes (SatM)が、肺線維症に中心的な役割を果たしていることを明らかにした。本研究において、筆者らは肺線維症の前段階でSatMが病変部位に動員されるメカニズムについて検討した。サイトカイン発現に基づくスクリーニングを実施した結果、SatMは細胞死を起こした非免疫細胞が産生するCxcl12によって病変部位へ動員されることがわかった。さらに、筆者らは肺繊維化に伴い、nuclear exosome targeting complexの構成要素であるRbm7が高発現することを見出した。Rbm7を欠損するマウスでは、ブレオマイシン誘導性の肺繊維化が抑制され、肺へのSatMの集積も認められなかった。より詳細な肺線維症の分子機序を解析した結果、Rbm7は非コードRNAであるNeat1の分解し、BRCA1の核内局在を変化させることで、細胞死を誘導することが明らかになった。以上の成果により、Rbm7は非免疫細胞の細胞死を誘導し、SatM動員することで肺線維症を促進することが示された。

    がん疼痛

    阻害は破骨細胞形成と骨転移に伴うがん疼痛を抑制する

    原題:

    PD-1 blockade inhibits osteoclast formation and murine bone cancer pain

    著者:

    Kaiyuan Wang, Yun Gu, Yihan Liao, Sangsu Bang, Christopher R. Donnelly, Ouyang Chen, Xueshu Tao, Anthony J. Mirando, Matthew J. Hilton, and Ru-Rong Ji

    雑誌:

    J. Clin. Invest., doi: 10.1172/JCI133334. (2020)

    POINT!

    抗PD-1抗体ニボルマブに代表される免疫チェックポイント阻害剤はがん治療を大きく発展させた。一方で末期がん患者は骨転移の結果引き起こされるがん疼痛に悩まされているが、これまでPD-1阻害がどのように疼痛に影響するか分かっていなかった。本研究ではLewis肺がん細胞大腿骨移植モデルにおける骨破壊と疼痛がPD-1欠損マウスでは抑えられることを示されている。またPD-1阻害による骨破壊と疼痛の抑制は野生型マウスへの抗PD-1抗体の投与によっても再現されている。これらのPD-1阻害は破骨細胞分化を抑制するが腫瘍の進展自体には影響していないことは注目すべき点である。骨髄の腫瘍微小環境において、腫瘍細胞はPD-L1を高発現し、さらには可溶型PD-L1分泌することが判明した。可溶型PD-L1は破骨細胞前駆細胞に発現しているPD-1と結合しJNK活性化とCCL2分泌を誘導することが示された。誘導されたCCL2は破骨細胞分化を促進する上に、脊髄後根神経節のCCR2を介してがん疼痛を悪化させるが判明した。これらのことから、抗PD-1治療は破骨細胞分化とCCL-CCR2を介した求心路を阻害することで骨転移に伴う骨破壊と疼痛を予防することができることが示唆された。

    オステオカルシン

    オステオカルシンはアパタイト結晶の配構成に重要だが、糖代謝、テストステロン合成、筋肉量には必要ない

    原題:

    Osteocalcin is necessary for the alignment of apatite crystallites, but not glucose metabolism, testosterone synthesis, or muscle mass

    著者:

    Takeshi Moriishi, Ryosuke Ozasa, Takuya Ishimoto, Takayoshi NakanoID, Tomoka Hasegawa, Toshihiro Miyazaki, Wenguang Liu, Ryo Fukuyama, Yuying Wang, Hisato KomoriID, Xin Qin, Norio Amizuka, Toshihisa Komori.

    雑誌:

    PLoS Genet., 16: e1008586 (2020)

    POINT!

    骨の強度は骨量と骨質に依存している。オステオカルシンは骨中で最も豊富な非コラーゲン性タンパク質で、骨芽細胞から産生されることで知られている。既報では、オステオカルシンは骨形成を阻害し、膵臓でのインスリン分泌や精巣でのテストステロン合成、筋肉量を調節するホルモンとして機能すると主張されていた。筆者たちは、BglapおよびBglap2遺伝子を欠失することにより独自にオステオカルシン欠損(Ocn–/–)マウスを樹立した。このOcn–/–マウスを解析したところ、骨量や糖代謝、テストステロン合成、筋肉量などは野生型と比べても正常であった。c-軸方向におけるコラーゲン細線維の配向度や生体アパタイト(BAp)結晶サイズも正常であった。しかしながら、普通ならコラーゲン細線維に対して平行であるc-軸の配向性が破綻しており、その結果骨強度が減少した。これらの結果は、オステオカルシンがアパタイト結晶c軸のコラーゲン線維に沿った配向性を制御することによって長軸方向の骨強度を維持することが明らかとなった。なお、オステオカルシンノックアウトマウスについては別のチームからも連報で論文が発表された(PLoS Genet., 16: e 1008361 (2020))。この論文でも上述の結果と一致してオステオカルシンがホルモンとして作用しているような所見はほぼ認めないことを報告している。

    骨髄微小環境

    シングルセルトランスクリプトームにより骨髄微小環境を制御するユニークな脂肪系列細胞が同定された

    原題:

    Single cell transcriptomics identifies a unique adipose lineage cell population that regulates bone marrow environment

    著者:

    Leilei Zhong, Lutian Yao, Robert J Tower, Yulong Wei, Zhen Miao, Jihwan Park, Rojesh Shrestha, Luqiang Wang, Wei Yu, Nicholas Holdreith, Xiaobin Huang, Yejia Zhang, Wei Tong, Yanqing Gong, Jaimo Ahn, Katalin Susztak, Nathanial Dyment, Mingyao Li, Fanxin Long, Chider Chen, Patrick Seale, Ling Qin

    雑誌:

    eLife 9:e54695 (2020)

    POINT!

    骨髄間葉系細胞は骨の恒常性や骨疾患に関わる様々な細胞を含む不均一な集団である。この集団は間葉系幹細胞を起源とすると想定されていたが、真の前駆細胞やどのように骨芽細胞や脂肪細胞に分岐しているのかについての詳細は不明であった。彼らはシングルセルトランスクリプトームを行うことでこれらを明らかにしようと試みた。異なる分化ステージでの間葉系前駆細胞を計算的に定義し、それらの二系統への分化経路を若齢、壮齢、老齢で調べた。すると脂肪細胞マーカーを発現するにもかかわらず脂肪滴を含んでいない特徴的な細胞を同定できた。脂肪細胞の非増殖性前駆細胞として、骨髄腔の内部と偏在する3Dネットワークを形成するストローマ細胞やペリサイトとして豊富に存在している。機能的には骨髄の血管を維持したり、骨形成を抑制していることがわかった。シングルセル解析によって、脂肪細胞系列前駆細胞が明らかになった。

    軟骨細胞

    グルタミン代謝は軟骨細胞の性質と機能を調節する

    原題:

    Glutamine Metabolism Controls Chondrocyte Identity and Function

    著者:

    Steve Stegen, Gianmarco Rinaldi, Shauni Loopmans, Ingrid Stockmans, Karen Moermans, Bernard Thienpont, Sarah-Maria Fendt, Peter Carmeliet, and Geert Carmeliet

    雑誌:

    Dev. Cell., 53: 1-15 (2020)

    POINT!

    軟骨細胞の正常な機能は、骨の長軸方向への成長や骨折修復に必須である。軟骨細胞は、無血管環境下で活発に増殖・機能するため、ユニークな代謝要求を有する可能性が示唆されるが、その実態は不明な点が多い。著者らは、軟骨細胞分化のマスター転写因子であるSox9が、軟骨細胞におけるグルタミナーゼ1(GLS1)の発現レベルを上昇させることで、グルタミン代謝を促進することを見出した。Col2-CreによりGLS1を軟骨細胞特異的に欠損したマウスの解析から、グルタミン代謝は、1) アセチルCoA合成を介したヒストンアセチル化による軟骨細胞特異的遺伝子の発現制御、2)アスパラギン酸合成を介した軟骨細胞の増殖とタンパク合成の支持 3)グルタチオン合成を介した活性酸素の除去と軟骨細胞の生存促進、の3つの経路を介して、軟骨細胞の性質と機能を制御することを明らかにした。以上から、グルタミンは軟骨細胞の恒常性を維持する重要な代謝調節因子であることが示された。

    滑膜線維芽細胞

    Notchシグナルは滑膜線維芽細胞の性質を制御し、関節炎病態に寄与する

    原題:

    Notch signaling drives synovial fibroblast identity and arthritis pathology

    著者:

    Kevin Wei, Ilya Korsunsky, Jennifer L. Marshall, Anqi Gao, Gerald F. M. Watts, Triin Major, Adam P. Croft, Jordan Watts, Philip E. Blazar, Jeffrey K. Lange, Thomas S. Thornhill, Andrew Filer, Karim Raza, Laura T. Donlin, Accelerating Medicines Partnership Rheumatoid Arthritis & Systemic Lupus Erythematosus (AMP RA/SLE) Consortium, Christian W. Siebel, Christopher D. Buckley, Soumya Raychaudhuri & Michael B. Brenner

    雑誌:

    Nature, doi: 10.1038/s41586-020-2222-z. (2020)

    POINT!

    関節リウマチにおいて、滑膜組織は著しい過形成を生じて侵襲的になり、炎症と関節破壊を引き起こす。関節滑膜を構成する滑膜線維芽細胞には、関節腔に近接する「ライニング層」と、血管周囲を取り囲む「サブライニング層」の2つのサブセットが存在することが示唆されている。最近、関節リウマチでは、サブライニング層の滑膜線維芽細胞サブセットが顕著に増殖し、関節炎の病態を増悪する可能性が示された。しかし、サブライニング層の滑膜線維芽細胞が分化・増殖する分子メカニズムは不明であった。著者らは、シングルセルRNAシークエンス解析と滑膜組織オルガノイド技術を用いて、血管内皮細胞から供給されるNotch3シグナルが、サブライニング層線維芽細胞の分化に重要な役割を果たすことを明らかにした。リウマチ滑膜では、Notch3シグナルおよびNotch標的遺伝子がサブライニング層の滑膜線維芽細胞において顕著に上昇していた。Notch3の遺伝子欠損や、抗体によるNotch3シグナル阻害は、関節炎を緩和し、関節破壊を抑制した。以上の結果から、サブライニング層滑膜線維芽細胞は血管内皮由来のNotchシグナルによって制御されており、この間質系細胞のクロストークが、関節炎の病態形成において重要な役割を果たす可能性が示された。

  • DPP4

    ヒト破骨細胞-骨芽細胞カップリング因子の同定により明らかにされた骨とエネルギー代謝の間の関連

    原題:

    Identification of osteoclast-osteoblast coupling factors in humans reveals links between bone and energy metabolism

    著者:

    Megan M. Weivoda, Chee Kian Chew, David G. Monroe, Joshua N. Farr, Elizabeth J. Atkinson, Jennifer R. Geske, Brittany Eckhardt, Brianne Thicke, Ming Ruan, Amanda J. Tweed, Louise K. McCready, Robert A. Rizza, Aleksey Matveyenko, Moustapha Kassem, Thomas Levin Andersen, Adrian Vella, Matthew T. Drake, Bart L. Clarke, Merry Jo Oursler and Sundeep Khosla

    雑誌:

    Nat Commun, 1: 87 (2020)

    POINT!

     骨リモデリングは破骨細胞による吸収とそれに続く骨芽細胞の形成によって行われ、破骨細胞は骨形成刺激因子を産生する。本研究で著者らは、閉経後女性におけるデノスマブ(DMAb)治療群の骨生検RNA-seq解析によって、プラセボ群と比較して破骨細胞遺伝子と骨芽細胞遺伝子の両者の発現低下を確認した。さらに、これらの解析結果とリベラーゼ処理による骨細胞濃縮画分、ALP陽性骨芽細胞濃縮画分および骨髄由来培養破骨細胞での発現との比較から破骨細胞分泌因子を特定し、LIFCREG2CST3CCBE1およびDPP4がヒト破骨細胞由来のカップリング因子である可能性を示した。骨髄血漿におけるDPP4タンパク質発現はプラセボ群と比較してDMAb治療群で低く、破骨細胞および骨芽細胞発現遺伝子セットと正の相関を示した。著者らはさらにDMAb治療群では血中GLP-1も有意に高く、また、DMAb治療を受けた2型糖尿病患者はビスホスホネートまたはカルシウム/ビタミンD治療を受けた患者と比較して、HbA1cの有意な減少を示すことも明らかにされた。以上の結果から、ヒトにおける複数の破骨細胞由来カップリング因子候補が同定され、破骨細胞由来のDPP4が骨リモデリングとエネルギー代謝の相互作用に関わる可能性が示唆された。

    血漿プロテオーム

    生涯にわたるヒト血漿プロテオームプロファイルの波状の変化

    原題:

    Undulating changes in human plasma proteome profiles across the lifespan

    著者:

    Benoit Lehallier, David Gate, Nicholas Schaum, Tibor Nanasi, Song Eun Lee, Hanadie Yousef, Patricia Moran Losada, Daniela Berdnik, Andreas Keller, Joe Verghese, Sanish Sathyan, Claudio Franceschi, Sofiya Milman, Nir Barzilai and Tony Wyss-Coray

    雑誌:

    Nat Med, 25, 1843–1850 (2019)

    POINT!

    老化は健康寿命を制限する慢性疾患の主要な危険因子である。これまで、並体結合実験で若いマウスからの血液は複数の組織に対する若返り効果と疾患治癒効果が示されたことから、血液の加齢関連分子変動が加齢関連疾患への新たな知見を提供できる可能性がある。本研究で著者らはSOMAScanとよばれるアプタマーを用いたタンパク質網羅的解析法を用いることで、4,263人の健常者(18歳から95歳まで)血漿中における2,925種類のタンパク質量を計測し、加齢に伴うヒト血漿プロテオームの顕著な非線形変化を明らかにする新しいバイオインフォマティクス手法を開発して、年齢に伴って発現量が変動する1,379種類のタンパク質を同定した。これらのうち、最も顕著に変化するタンパク質にはスクレロスチン、ARFIP2およびGDF15などが含まれていた。また、1,379種類のタンパク質のうち895種類は性差を示し、男性と女性の老化過程が異なることも示唆された。2,925種類のタンパク質量の変化は8群にクラスタリングされ、さらに年齢に対して非線形に変化するタンパク質を新たに開発した方法で解析すると、34歳、60歳および78歳の3つのピークが明らかにされ、それらの年齢で血漿プロテオームが急激に変動することが示された。これらの変化の波では異なるシグナル伝達経路に関連した変化が起きており、加齢関連疾患と表現型形質のゲノムとプロテオームとの差次的な関連が明らかされた。以上の結果から、加齢関連疾患の潜在的な治療標的となりうる可能性がある予想外の特徴的な遺伝子とシグナル伝達経路が同定された。

    骨髄ニッチ

    自然な状態の造血幹細胞および造血前駆細胞の生体イメージング

    原題:

    Live-animal imaging of native haematopoietic stem and progenitor cells

    著者:

    Constantina Christodoulou, Joel A. Spencer, Shu-Chi A. Yeh, Raphaël Turcotte, Konstantinos D. Kokkaliaris, Riccardo Panero, Azucena Ramos, Guoji Guo, Negar Seyedhassantehrani, Tatiana V. Esipova, Sergei A. Vinogradov, Sarah Rudzinskas, Yi Zhang, Archibald S. Perkins, Stuart H. Orkin, Raffaele A. Calogero, Timm Schroeder, Charles P. Lin and Fernando D. Camargo

    雑誌:

    Nature, 578, 278–283 (2020)

    POINT!

    これまでに、生きた動物の自然な状態のニッチにおける造血幹細胞(HSC)の可視化に関する報告はなく、HSCの動的な挙動の研究は非常に困難であった。本研究で著者らは、LT-HSC、ST-HSCおよび多能性前駆細胞サブセット(これらをまとめてHSPCとする)が標識されるMds1loxP-GFP-loxPマウスを作製し、さらにST-HSCからCreを発現するFlt3Creマウスを用いることでLT-HSCサブセット(MFG-HSC)に限定したラベリングを可能にした。これらのマウスを用い、頭蓋冠骨髄の生体イメージングを行うと、MFG-HSCは類洞血管と骨内膜表面の両方の近傍に存在し、細動脈近傍には存在しないことが明らかとなった。HSPCは骨内膜からの距離にばらつきがあり、類洞血管に加えてtransition zoneの血管に関連している可能性がより高かった。酸素センサーPtG4を用いて頭蓋骨髄内の酸素濃度を計測すると、MFG-HSCは最も低酸素な状態の骨髄ニッチには存在せず、HSPCと同程度の低酸素環境で観察された。また生体内タイムラプスイメージングにより、定常状態のMFG-HSCの運動性はわずかである一方、HSPCは比較的高い運動性を示すことがわかった。さらに、シクロホスファミド(Cy)/G-CSF刺激後のMFG-HSCは不均一な応答を示し、一部の細胞は類洞血管近傍の局在は維持しつつも非常に運動性が高くなったり、空間的に限定された領域内でクローン増殖したりすることが示された。これらの領域を解明するため、カルセインブルーもしくはテトラサイクリンとアリザリンレッドSを用いて二重標識し、骨リモデリング活性を可視化して骨形成性の領域、骨吸収性の領域および混合領域に分類したところ、定常状態では、MFG-HSCはすべてのタイプの領域で観察されたが、HSPCは混合型の領域に多く存在していた。また、Cy/GCSFによる刺激後、増殖したMFG-HSCは混合型領域の一部にほぼ限定して観察された。HSPCも刺激後に混合型領域で増殖するが、この特異性はMFG-HSCほど顕著ではなかった。対照的に、骨形成性の領域では増殖するMFG-HSCやHSPCはあまり観察されなかった。これらの知見は、骨髄微小環境内に、骨代謝回転の段階によって定められるこれまで知られていなかった不均一性があることを示している。著者らのアプローチによって、HSC挙動の直接的な可視化とHSCニッチの不均一性の解明が可能となった。

    JAK阻害剤

    JAK阻害は骨芽細胞の機能を活性化することにより定常状態で骨量を増加させ病的な骨量減少を改善する

    原題:

    JAK inhibition increases bone mass in steady-state conditions and ameliorates pathological bone loss by stimulating osteoblast function

    著者:

    Susanne Adam, Nils Simon, Ulrike Steffen, Fabian T. Andes, Carina Scholtysek, Dorothea I. H. Müller, Daniela Weidner, Darja Andreev, Arnd Kleyer, Stephan Culemann, Madelaine Hahn, Georg Schett, Gerhard Krönke, Silke Frey, Axel J. Hueber

    雑誌:

    Sci Transl Med, 12, eaay4447 (2020)

    POINT!

    JAKを介したサイトカインシグナル伝達は、関節リウマチ(RA)などの炎症性疾患の重要な治療標的として注目されており、JAK阻害剤としてトファシチニブ、バリシチニブおよびペフィシチニブが存在する。しかしながら、JAK阻害(JAKi)による免疫調節の側面は解明されてきたが、JAKiによる骨恒常性に対する影響については十分な解析が行われてこなかった。本研究で著者らは、トファシチニブとバリシチニブが定常状態や卵巣摘出、関節炎マウスの骨表現型に及ぼす影響を調べた。3つの全てのモデルにおいて、JAKiは骨量を増加させ血清中のRANKL/OPG比を減少させた。また、in vitroにおいてJAKiは骨芽細胞による骨形成を有意に上昇させたが、破骨細胞への直接的な影響は観察されなかった。JAKiによる骨芽細胞への影響をRNA-seqやIPAにより解析したところ、JAKiの骨同化作用はWntリガンド発現上昇及びb-カテニンの安定化によっていることが示された。さらに、2例のRA患者の結果から、JAKiは骨びらんを修復し骨同化作用を有する可能性が示唆された。以上から、JAKiが骨芽細胞機能と骨形成を上昇させる強力な治療法であることが支持された。

    骨髄間質細胞

    Wnt誘導性の骨髄間質細胞の形質転換は骨再生を制御する

    原題:

    A Wnt-mediated transformation of the bone marrow stromal cell identity orchestrates skeletal regeneration

    著者:

    Matsushita Y, Nagata M, Kozloff KM, Welch JD, Mizuhashi K, Tokavanich N, Hallett SA, Link DC, Nagasawa T, Ono W, Ono N.

    雑誌:

    Nat Commun. doi: 10.1038/s41467-019-14029-w. (2020)

    POINT!

    最近10~20年の間の一連の研究により、骨髄間質細胞(BMSC)は様々な性質の亜集団から成立すること、それらの一部が幹細胞能や造血幹細胞の支持能を有することが明らかになった。しかし、定常状態と骨再生時のBMSCの性質の違いには不明な点が多い。著者らはCxcl12GFP/+Cxcl12-creER R26RtdTomatoマウスを用いて骨再生におけるBMSCの解析を行った。タモキシフェン処理によってtdTomatoを発現した細胞はin vitroで増殖活性が低く、継代可能世代数が多く、多分化能を示した。このマウスに対して、タモキシフェン処理後に皮質骨損傷モデルを施したところ、tdTomato+細胞は増殖能を獲得し、再生部で骨芽細胞・骨細胞に分化した。同様に、骨髄損傷モデルを施した場合も、tdTomato+細胞は増殖能を獲得し骨芽細胞に分化した。Cxcl12-creER Rosa26lsl-tdTomato/iDTAマウスをタモキシフェン処理し、tdTomato+細胞を除去したところ骨再生が遅延したため、これらの細胞の骨再生への寄与が示された。骨髄損傷部の遺伝子発現のgene ontology解析の結果、Wntシグナルの関与が示唆され、タモキシフェン処理したCxcl12-creER Ctnnbfl/flR26RtdTomatoマウスでは骨再生が遅延したため、CXCL12+細胞におけるWntシグナルの骨再生への寄与が示された。以上より、CXCL12+骨髄間質細胞は、骨損傷に伴い活性化され、Wntシグナル依存的に骨再生を誘導することが明らかになった。

    OPG

    OPG依存的なM細胞の自己制御は腸管の感染と免疫を調節する

    原題:

    Osteoprotegerin-dependent M cell self-regulation balances gut infection and immunity

    著者:

    Kimura S, Nakamura Y, Kobayashi N, Shiroguchi K, Kawakami E, Mutoh M, Takahashi-Iwanaga H, Yamada T, Hisamoto M, Nakamura M, Udagawa N, Sato S, Kaisho T, Iwanaga T, Hase K

    雑誌:

    Nat Commun. doi: 10.1038/s41467-019-13883-y.

    POINT!

    M細胞は腸管管腔中の抗原を樹状細胞に受け渡す、腸管免疫に重要な細胞である。粘膜上皮細胞のM細胞分化にはRANKLが必須であるが、RANKLに暴露される全ての上皮細胞がM細胞に分化することはないため、何らかの調節機構の存在が示唆されていた。著者らは、デジタルRNA-Seq法により得られたM細胞の遺伝子発現データをKEGG pathwayを用いて解析し、"サイトカイン–サイトカイン受容体相互作用"と"破骨細胞分化"の2つのパスウェイの活性化を見出した。qRT-PCR法および免疫組織染色法により、濾胞上皮細胞層(FAE)やM細胞においてOPG(Tnfrsf11b)が遺伝子およびタンパク質レベルで高発現することが示された。OPG発現はM細胞の初期分化マーカーSpiBの発現と一致していた。GST-RANKLをマウスに投与するとM細胞が増加することが知られているが、このときTnfsfr11b発現も上昇していた。Tnfsfr11b–/–マウスではM細胞の増加を認めた。特に、cecal patchでは成熟M細胞が増加、抗原取り込み能も亢進し、その結果B細胞とIgAも増加を示した。このマウスはDSS腸炎には抵抗性を示したものの、M細胞に感染するS. Typhimurium aroA欠損株を多く取り込み野生型マウスよりも生存率が低下した。以上より、M細胞への分化を開始した細胞は、OPGによって他の上皮細胞がM細胞へ分化することを阻害し、M細胞が過剰になることを防ぎ、特定の病原体に対する感受性を低減していると考えられる。

    AHR

    細菌叢による神経のプログラミングは腸管運動を制御する

    原題:

    Neuronal programming by microbiota regulates intestinal physiology

    著者:

    Obata Y, Castaño Á, Boeing S, Bon-Frauches AC, Fung C, Fallesen T, de Agüero MG, Yilmaz B, Lopes R, Huseynova A, Horswell S, Maradana MR, Boesmans W, Vanden Berghe P, Murray AJ, Stockinger B, Macpherson AJ, Pachnis V

    雑誌:

    Nature 578(7794): 284-289 (2020)

    POINT!

    腸内細菌は免疫系の制御に関わるだけでなく、運動を含む腸管機能に影響を及ぼすことが知られている。しかし、細菌叢が神経機能を制御するメカニズムには不明な点が多い。著者らは、腸内細菌が蠕動運動を制御するメカニズムの解明に取り組んだ。まず、Camk2aプロモーター下にeGFP–KASHコンストラクトを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)をマウスに感染させ、腸管の筋層間神経叢よりeGFP+の神経細胞を分取する方法を確立した。無菌マウスとSPFマウスから得られたeGFP+細胞の遺伝子発現を網羅的に解析・比較したところ、発現が異なる複数の遺伝子を認めた。その中に、多くの細菌や食餌により活性が制御される転写因子Ahrが見出された。In situ hybridization法にてAhrの発現を評価したところ、網羅解析と同様、無菌マウスよりもSPFマウスの腸管神経細胞で高いシグナルが認められた。さらに、抗菌薬の投与でこの細胞におけるAhr発現は低下し、無菌マウスのコンベンショナル化によって上昇した。Ahrf/fマウスにCamk2a–Creを発現するAAVを投与することで神経特異的Ahrノックアウト(AhrEN–KO)マウスを作出した。このマウスの腸管の形態や神経の生存に明らかな異常は認められなかったが、カーミンレッド色素の大腸通過時間が延長しており、腸管の蠕動運動の障害が示唆され、ライブイメージングによって実際に蠕動運動の障害が認められた。Rosa26LSL-Cyp1a1マウスにCre発現AAVを投与することによりCyp1a1を過剰発現させ、それによりAHRリガンドの除去を促進したところ、大腸通過時間は延長した。以上より、腸内細菌叢由来の何らかのリガンドが腸管神経細胞のAHRを介して腸管の蠕動運動を促進することが明らかになった。

    胎児卵黄嚢マクロファージ由来破骨細胞

    胎児卵黄嚢マクロファージに由来する破骨細胞は骨折治癒に寄与する

    原題:

    Erythromyeloid progenitors give rise to a population of osteoclasts that contribute to bone homeostasis and repair.

    著者:

    Yasuhito Yahara, Tomasa Barrientos, Yuning J. Tang, Vijitha Puviindran, Puviindran Nadesan, Hongyuan Zhang, Jason R. Gibson, Simon G. Gregory, Yarui Diao, Yu Xiang, Yawar J. Qadri, Tomokazu Souma, Mari L. Shinohara & Benjamin A. Alman

    雑誌:

    Nature Cell Biology, 22: 49-59 (2020)

    POINT!

    近年、成体における破骨細胞は骨髄造血幹細胞由来の前駆細胞から供給される一方で、胎仔〜若齢期にかけては胎生期の卵黄嚢マクロファージから供給されることが示唆されている(Jacome-Galarza et al., Nature 2019)。しかしながら、生後の骨折治癒における卵黄嚢由来破骨細胞の寄与や、卵黄嚢マクロファージの局在などに関しては不明であった。本研究において著者らは、細胞系譜解析、パラビオーシス、脾臓摘出実験を組み合わせることで、卵黄嚢マクロファージが生後長期に渡って脾臓に存在すること、骨に損傷が起こると血流を介して損傷部位に遊走し破骨細胞へと分化することを見出した。以上から、生後の骨折修復における破骨細胞の一部は、脾臓にプールされている卵黄嚢マクロファージに由来することが明らかとなった。

    侵害受容器ニューロン

    腸管に分布する侵害受容器ニューロンはM細胞とSegmentous filamentous bacteriaの分布を制御しサルモネラ菌に対する宿主の防御を形成する

    原題:

    Gut-innervating nociceptor neurons regulate Peyer's patch microfold cells and SFB levels to mediate salmonella host defense

    著者:

    Nicole Y. Lai, Melissa A. Musser, Felipe A. Pinho-Ribeiro, Pankaj Baral, Amanda Jacobson, Pingchuan Ma, David E. Potts, Zuojia Chen, Donggi Paik, Salima Soualhi, Yiqing Yan, Aditya Misra, Kaitlin Goldstein, Valentina N. Lagomarsino, Anja Nordstrom, Kisha N. Sivanathan, Antonia Wallrapp, Vijay K. Kuchroo, Roni Nowarski, Michael N. Starnbach, Hailian Shi, Neeraj K. Surana, Dingding An, Chuan Wu, Jun R. Huh, Meenakshi Rao, and Isaac M. Chiu

    雑誌:

    Cell, 180: 33-49(2020)

    POINT!

    腸管に分布する侵害受容器ニューロンは有害な刺激に反応し疼痛や炎症と含む防御反応を誘導する。これまで侵害受容器ニューロンの腸管感染に関する役割は分かっていなかった。まず筆者らは既報の神経細胞シングルセル解析を再解析し、イオンチャネルであるNav1.8とTRPV1が後根神経節ニューロンに高発現していることを見出した。次にNav1.8やTRPV1を欠如させたマウスにサルモネラ菌を投与したところ、対照群よりも重症化することを示した。これらのマウスでは腸管細菌叢におけるSegmentous filamentous bacteria(SFB)の割合が顕著に減少しており、SFBの経口投与で重症化が軽減することを示した。またNav1.8やTRPV1を欠如させたマウスではパイエル板のM細胞が増加しており、サルモネラ菌の侵入門戸としてM細胞が標的となることを示した。さらにサルモネラ菌感染時に侵害受容器から放出されるCalcitonin gene-related peptideがM細胞数の抑制とSFB分布の維持を行うことで感染制御を行うことを示した。以上より、筆者らは後根神経節から腸管に分布する侵害受容器ニューロンがサルモネラ菌に対する感染防御において重要な役割を果たしていることを示した。

    破骨前駆細胞

    恒常状態において破骨細胞はCX3CR1+骨髄常在前駆細胞に由来する一方、骨折修復時においてはCX3CR1+循環骨髄系前駆細胞に由来する

    原題:

    Osteoclasts Derive Predominantly from Bone Marrow-Resident CX3CR1+ Precursor Cells in Homeostasis, whereas Circulating CX3CR1+ Cells Contribute to Osteoclast Development during Fracture Repair.

    著者:

    Sanja Novak, Emilie Roeder, Judith Kalinowski, Sandra Jastrzebski, Hector L. Aguila, Sun-Kyeong Lee, Ivo Kalajzic and Joseph A. Lorenzo

    雑誌:

    J Immunol, 204: 868-878 (2020)

    POINT!

    生後の破骨細胞はCX3CR1+骨髄常在前駆細胞とCX3CR1+循環骨髄系前駆細胞のいずれかに由来すると考えられるが、恒常的条件下と炎症条件下における破骨細胞の由来に関しては不明な点が多い。今回、筆者らはTRAP-tdTomatoマウス(CD45.2)と野生型マウス(CD45.1)をパラバイオーシスし、恒常状態及び炎症状態における破骨細胞の由来を検討した。その結果、CD45.2マウスの大腿骨には多数のtdTomato+細胞が見られた一方、野生型マウスの大腿骨にはtdTomato+細胞がほとんど見られなかった。また、CX3CR1+循環骨髄系前駆細胞をCX3CR1-EGFP/TRAP-tdTomatoマウスの血液より回収し、野生型マウスに移植した結果、恒常的条件下では大腿骨にEGFP+細胞とtdTomato+細胞が見られなかったのに対し、骨折修復時においてはEGFP+細胞およびtdTomato+細胞が認められた。以上から、恒常状態において破骨細胞は主にCX3CR1+骨髄常在前駆細胞に由来する一方で、骨折修復時の破骨細胞の一部はCX3CR1+循環骨髄系前駆細胞に由来することが示唆された。

    血清アミロイドアA, Th17細胞、炎症性疾患

    血清アミロイドAタンパク質は病原性Th17細胞を誘導し、炎症性疾患を促進する

    原題:

    Serum Amyloid A Proteins Induce Pathogenic Th17 Cells and Promote Inflammatory Disease

    著者:

    June-Yong Lee, Jason A. Hall, Lina Kroehling, Lin Wu,1Tariq Najar, Henry H. Nguyen, Woan-Yu Lin, Stephen T. Yeung, Hernandez Moura Silva, Dayi Li, Ashley Hine, P'ng Loke, David Hudesman, Jerome C. Martin, Ephraim Kenigsberg, Miriam Merad, Kamal M. Khanna, and Dan R. Littman

    雑誌:

    Cell, 180: 79–91 (2020)

    POINT!

    炎症性サイトカインであるIL-17を産生するリンパ球は細菌から粘膜組織の保護に重要であると同時に、炎症性疾患や自己免疫疾患の原因となる。Th17細胞は、腸管にて細菌との相互作用によってナイーブCD4T細胞から分化する。筆者らは以前、腸内細菌が腸管上皮細胞に作用して、血清アミロイドタンパク質(SAA)の産生を促すこと、また、それらはTh17細胞の機能を強化することを報告している。血清中のSAA濃度は炎症性疾患罹患者において上昇していることが知られており、長らくバイオマーカーとして利用されている。しかし、SAAが直接疾患に寄与しているかは不明である。本論文で筆者らはSSAがSTAT3活性化を誘導するサイトカインと協調的に働くことで、病原性Th17細胞の分化誘導プログラムを促進することを報告している。機能欠失および機能獲得マウスモデルを用いて、SSA1、SSA2およびSSA3は局所的なTh17細胞誘導性の炎症反応に必要性が異なっていることを示している。本研究はSAA制御下にあるT細胞シグナル経路が炎症性疾患の治療に役立つことを示唆している。

    骨髄腫

    骨髄腫bone-liningニッチのトランスクリプトーム解析から骨疾患を改善するためのBMPシグナル伝達阻害が見出された

    原題:

    Transcriptomic profiling of the myeloma bone-lining niche reveals BMP signalling inhibition to improve bone disease

    著者:

    Sarah Gooding, Sam W. Z. Olechnowicz, Emma V. Morris, Andrew E. Armitage, Joao Arezes, Joe Frost, Emmanouela Repapi, James R. Edwards, Neil Ashley, Craig Waugh, Nicola Gray, Erik Martinez-Hackert, Pei Jin Lim, Sant-Rayn Pasricha, Helen Knowles, Adam J. Mead, Karthik Ramasamy, Hal Drakesmith and Claire M. Edwards

    雑誌:

    Nat. Commun. 10: 4533 (2019)

    POINT!

     多発性骨髄腫では骨髄中にがん化したプラズマ細胞が観察され、骨格への障害や痛みを伴う。近年治療法が進歩しているものの完治が難しいがんの1つであり、骨髄腫により誘導される骨破壊にはまだ不明な点が多い。成人の骨内膜には休止しているbone-lining細胞と呼ばれる扁平な細胞が並んでいるが、多発性骨髄腫におけるこれらの細胞の関与は不明である。筆者らは、骨髄腫のマウスモデルを用いてbone-lining細胞のサブセットと骨髄細胞をソーティングし、トランスクリプトーム解析を行い比較した。発現変動解析とエンリッチメント解析を統合し、BMP経路に着目し解析を進めた。in vitroでBMPを阻害すると破骨細胞分化、骨芽細胞分化ともに減弱した。また、骨芽細胞株UMR-106.01を用いてBMPシグナルを阻害すると、DKK1とスクレロスチン発現が減少した。一方、in vivoにおいてBMPを阻害するとbone-lining細胞層が肥厚した。骨髄腫マウスモデルにおいてBMPシグナルをin vivoで阻害すると、骨髄腫が増加することなく骨髄腫によって誘導された骨量低下を阻止することができ、骨髄中のスクレロスチンレベルを抑えることができた。この報告は骨髄腫が誘導する骨疾患におけるBMP経路の新規の関与を提示したばかりか、新たな治療戦略を示すものである。

    制御性T細胞

    CDK8/19阻害による抗原特異的エフェクター/メモリーT細胞からFoxp3陽性制御性T細胞への分化転換

    原題:

    Conversion of antigen-specific effector/memory T cells into Foxp3-expressing Treg cells by inhibition of CDK8/19

    著者:

    Masahiko Akamatsu, Norihisa Mikami, Naganari Ohkura, Ryoji Kawakami, Yohko Kitagawa, Atsushi Sugimoto, Keiji Hirota, Naoto Nakamura, Satoru Ujihara, Toshio Kurosaki, Hisao Hamaguchi, Hironori Harada, Guliang Xia, Yoshiaki Morita, Ichiro Aramori, Shuh Narumiya and Shimon Sakaguchi

    雑誌:

    Science Immunology 4: eaaw2707 (2019)

    POINT!

    自己免疫疾患やアレルギーにおける理想的な治療戦略は、免疫応答を引きおこす抗原特異的なエフェクター/メモリーT細胞を制御性T(Treg)細胞に分化転換することである。著者らはサイクリン依存性キナーゼ8(CDK8)およびCDK19の阻害剤の使用、およびCDK8/19遺伝子のノックダウン/ノックアウトにより、抗原刺激をうけたエフェクター/メモリーT細胞、ナイーブCD4+およびCD8+T細胞のいずれにおいても、Treg細胞機能を制御する重要な転写因子であるFoxp3を誘導できることを示した。Foxp3の発現誘導は、STAT5の活性化と関連しており、TGF-b非依存性かつ炎症性サイトカインの影響を受けなかった。さらに、接触性過敏症と自己免疫疾患のマウスモデルにおいて、新しく開発されたCDK8 / 19阻害剤の投与と抗原免疫により、機能的に安定な抗原特異的Foxp3+Treg細胞の生成を介して疾患を効果的に抑制することに成功した。本研究成果はさまざまな疾患の治療法の開発に貢献するものと期待される。

    MAIT細胞

    細菌由来代謝産物が粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT細胞)の発生を制御する

    原題:

    Microbial metabolites control the thymic development of mucosal-associated invariant T cells.

    著者:

    François Legoux, Déborah Bellet, Celine Daviaud, Yara El Morr, Aurelie Darbois, Kristina Niort, Emanuele Procopio, Marion Salou, Jules Gilet, Bernhard Ryffel, Aurélie Balvay, Anne Foussier, Manal Sarkis, Ahmed El Marjou, Frederic Schmidt, Sylvie Rabot and Olivier Lantz

    雑誌:

    Science 366: 494-499. (2019)

    POINT!

    粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT細胞)は自然免疫型T細胞の一種であり、MHC-related 1(MR1)によって提示されるビタミンB2合成中間産物(5-OP-RU)を認識するTCRを発現している。無菌マウスではMAIT細胞の数が著しく減少することから、共生細菌がその発生に関与していると考えられてきたが、胸腺内で発生するMAIT細胞に共生細菌がどう作用しているのか、そのメカニズムは分かっていなかった。本論文にて筆者らは、共生細菌の産生する5-OP-RUが胸腺に輸送され、MR1を発現する抗原提示細胞を介してMAIT細胞の発生を制御していることを明らかにした。5-OP-RUを経口・経皮投与した5-OP-RU:MR1 TCR Tgマウスの胸腺おいて、約1時間後にT細胞活性化が見られたことから、5-OP-RUが体外から胸腺に輸送され、抗原提示細胞によって提示されていることを明らかにした。胸腺内の細胞の中でもとりわけダブルポジティブ胸腺細胞は5-OP-RU依存的にMAIT細胞を活性化できることもin vitroの実験で示している。また、5-OP-RU産生能のない大腸菌(ΔRibD)と産生できる大腸菌(ΔRibE)を無菌マウスに移植すると、ΔRibEでのみMAIT細胞の数が回復したことから、5-OP-RUがMAIT細胞の発生に関与していることが示された。しかし5-OP-RUのみを投与した際にはMAIT細胞の減少が見られたことから、MAIT細胞発生を促進するためには細菌の産生する他の因子も必要であると考えられる。この因子の同定には至っていない。

    腫瘍微小環境

    腫瘍微小環境の違いはヘルパーT細胞系列の極性化と免疫チェックポイント療法への反応に影響する

    原題:

    Differences in Tumor Microenvironment Dictate T Helper Lineage Polarization and Response to Immune Checkpoint Therapy

    著者:

    Shiping Jiao, Sumit K. Subudhi,Ana Aparicio, Zhongqi Ge,Baoxiang Guan, Yuji Miura,Padmanee Sharma

    雑誌:

    Cell 179: 1177–1190 (2019)

    POINT!

    免疫チェックポイント阻害剤による治療(immune checkpoint therapy: ICT)は転移性去勢抵抗性前立腺がん(metastatic castration-resistant prostate cancer: mCRPC)の治療に有効であるとされるが、骨転移群には十分な効果がない。筆者らはICT後の前立腺がん組織内のヘルパーT細胞に関する遺伝子発現プロファイルを調べたところ、既報通りTh1関連遺伝子発現が増加していた。一方、骨転移を認めるmCRPC患者の骨髄を調べると、ICT後にTh1細胞ではなくTh17細胞が増加していることがわかった。また動物実験でICTの効果を検証したところ、CRPC皮下移植モデルではTh1細胞が増加し生存率が上昇したが、CRPC骨内移植ではTh17細胞が増加し、抗腫瘍効果を示さないことが分かった。骨髄内では破骨細胞の骨吸収時に放出される TGF-β が Th 1細胞分化を抑制していると判明した。さらに筆者らはICTとTGF-β阻害を併用するとTh1サブセットを増加させ、さらにはCD8T細胞のクローン増殖を促進し、骨でのCRPCの退縮と生存率の向上を可能にすることを示した。

    骨膜幹細胞

    機能的に特徴的なMx1+aSMA+骨膜骨格幹細胞の同定

    原題:

    Identification of Functionally Distinct Mx1+αSMA+Periosteal Skeletal Stem Cells.

    著者:

    Laura Ortinau, Hamilton Wang, Kevin Lei, Lorenzo Deveza, Youngjae Jeong, Yannis Hara, Ingo Grafe, Scott B. Rosenfeld, Dongjun Lee, Brendan Lee, David T. Scadden, Dongsu Park

    雑誌:

    Nature. doi: 10.1038/s41586-019-1601-9 (2019)

    POINT!

    骨膜には骨格系幹細胞が存在し、皮質骨代謝や骨折治癒において重要な役割を果たすと考えられているが、その特性に関しては未だ不明な点が多い。著者らは、骨膜に存在する Mx1陽性aSMA陽性の細胞集団(以下 Mx1+aSMA+細胞)が、骨格系幹細胞としての性質を有することを明らかにした。細胞系譜解析により、 Mx1+aSMA+細胞は生理的条件下において、骨外膜の骨芽細胞や皮質骨の骨細胞へと分化することが明らかとなった。骨折に伴い Mx1+aSMA+細胞は増殖し、骨折治癒部位における骨芽細胞の主要な供給源となることが示された。 Mx1+aSMA+細胞はケモカイン受容体である CCR5を高発現しており、骨髄中の免疫細胞由来の CCL5に引き寄せられ、骨折部位へ遊走する可能性が示され、実際に CCL5や CCR5を欠損したマウスでは骨折治癒が遅延することが明らかとなった。以上より、 Mx1+aSMA+細胞は骨折治癒において重要な役割を果たす、ユニークな骨膜幹細胞サブセットであることが示唆された。

    MAIT細胞

    MAIT細胞は発達早期に微生物叢によって刷り込みを受け、創傷治癒を促進する

    原題:

    MAIT cells are imprinted by the microbiota in early life and promote tissue repair

    著者:

    Michael G. Constantinides, Verena M. Link, Samira Tamoutounour, Andrea C. Wong, P. Juliana Perez-Chaparro, Seong-Ji Han, Y. Erin Chen, Kelin Li, Sepideh Farhat, Antonin Weckel, Siddharth R. Krishnamurthy, Ivan Vujkovic-Cvijin, Jonathan L. Linehan, Nicolas Bouladoux, E. Dean Merrill, Sobhan Roy, Daniel J. Cua, Erin J. Adams, Avinash Bhandoola, Tiffany C. Scharschmidt, Jeffrey Aubé, Michael A. Fischbach and Yasmine Belkaid

    雑誌:

    Science 366, 445 (2019) DOI: 10.1126/science.aax6624

    POINT!

    微生物叢と宿主の免疫機構は互いに影響しあっており、とくに発達早期における微生物との接触は正常な免疫機構の発達に非常に重要であり、その後の宿主の健康をも左右すると考えられているが、その詳細は明らかになっていない。近年、粘膜組織に遺伝子再構成されたTCRα/β鎖を発現しながらもNK細胞のマーカーも発現するMAIT (Mucosal-associated invariant T)細胞が多く存在していることが明らかとなっており、細菌感染などの生体防御に関与することが示されている。今回筆者らは、マウスの皮膚のMAIT細胞の発達には若齢期の特定の時期にリボフラビン合成能をもつ細菌と接触する必要があり、この影響は成熟後にも残るということを示した。また成熟後皮膚のMAIT細胞は皮膚の常在菌が産生するリボフラビン合成中間体を抗原としてMHC class I様分子MR1を介して応答し、増殖やIL-17A産生が活性化されることも示した。また皮膚のMAIT cellは他の組織のMAIT細胞とは異なる遺伝子発現パターンを有しており、創傷治癒を促進することも示した。

    FoxM1

    FoxM1によって制御される関節炎に関連した新規破骨前駆マクロファージの同定

    原題:

    Identification of a novel arthritis-associated osteoclast precursor macrophage regulated by FoxM1

    著者:

    Tetsuo Hasegawa, Junichi Kikuta, Takao Sudo, Yoshinobu Matsuura, Takahiro Matsui,Szandor Simmons, Kosuke Ebina, Makoto Hirao, Daisuke Okuzaki, Yuichi Yoshida, Atsushi Hirao, Vladimir V. Kalinichenko, Kunihiro Yamaoka, Tsutomu Takeuchi and Masaru Ishii

    雑誌:

    Nat Immunol, 20, 1631–1643 (2019)

    POINT!

    破骨細胞は定常状態の骨リモデリングおよび関節炎の骨破壊において重要な役割を果たしている。これらの異なる状態における破骨細胞が同じ単球系の前駆細胞から生じるかどうかは不明であった。本研究で著者らは、パンヌスにおける破骨細胞は局所的に常在するマクロファージからではなく、もっぱら循環する骨髄由来細胞から発生することを明らかにした。さらに、マウスの炎症性滑膜における破骨前駆細胞を含む集団としてCX3CR1hiLy6CintF4/80+I-A+/I-E+マクロファージ(著者らは関節炎関連破骨細胞形成性マクロファージ(AtoMs)と名付けた)を特定した。これらの細胞は生理的な骨リモデリングにおける従来の破骨前駆細胞とは異なるサブセットを含み、RNA-seq解析によってAtoMsの破骨細胞分化能を制御する転写因子としてFoxM1が同定された。実際に、Foxm1を欠損させるとin vitroおよびin vivoにおけるAtoMsの破骨細胞分化能が抑制され、Foxm1欠損細胞は関節炎に伴う骨破壊能が低下していた。さらに、関節リウマチ患者の滑膜にはマウスAtoMsに相当するCX3CR1+HLA-DRhiCD11c+CD80CD86+細胞が含まれ、FoxM1阻害剤であるチオストレプトンによってこれら細胞のin vitroでの破骨細胞分化が阻害されたことから、AtoMsやFoxM1が関節リウマチの新たな治療標的となりうることが示された。

    腱幹細胞

    Tppp3+Pdgfra+腱幹細胞ポピュレーションは再生に寄与し、再生と線維化におけるPDGFシグナルの役割を明らかにする

    原題:

    ATppp3+Pdgfra+ tendon stem cell population contributes to regeneration and reveals a shared role for PDGF signalling in regeneration and fibrosis

    著者:

    Tyler Harvey, Sara Flamenco and Chen-Ming Fan

    雑誌:

    Nat Cell Biol, 21, 1490–1503 (2019)

    POINT!

    これまでの腱再生メカニズムの理解は不十分であり、腱の損傷は長期にわたる障害を引き起こす。本研究で著者らは成獣マウス膝蓋腱細胞のscRNA-seqを行い、tubulin polymerization-promoting protein family member 3(Tppp3)を発現する細胞集団が腱幹細胞としての能力を有することを同定した。細胞系譜追跡法によってこれらの細胞が損傷時に新しい腱細胞に分化し、自己再生できることが証明された。Tppp3+細胞の一部はPdfgraを発現しており、異所性にPDGF-AAで刺激すると新しい腱細胞の産生が誘導される一方で、Tppp3+細胞特異的にPdgfraを欠損させると腱再生が著しく抑制されたことから、Tppp3+Pdgfra+細胞に腱幹細胞が含まれる可能性が示された。また、Tppp3Pdgfra+のFAP(Fibro-adipogenic progenitor)が腱幹細胞ニッチに共存し、これらの細胞は線維化細胞を生じて腱治癒における線維性瘢痕形成前駆細胞となることも示唆された。これらの結果から、線維形成が負傷した腱で発生するメカニズムが明らかになり、PDGF-AAの臨床応用によって線維性瘢痕形成を防ぎ、腱再生を促進する可能性が示された。

    レプチン

    運動は造血系前駆細胞の調節を介して炎症性細胞産生や心血管系の炎症を低減する

    原題:

    Exercise reduces inflammatory cell production and cardiovascular inflammation via instruction of hematopoietic progenitor cells

    著者:

    Vanessa Frodermann, David Rohde, Gabriel Courties, Nicolas Severe, Maximilian J. Schloss, Hajera Amatullah, Cameron S. McAlpine, Sebastian Cremer, Friedrich F. Hoyer1, Fei Ji, Ian D. van Koeverden, Fanny Herisson, Lisa Honold, Gustavo Santos Masson, Shuang Zhang, Jana Grune, Yoshiko Iwamoto, Stephen P. Schmidt, Gregory R. Wojtkiewicz, I-Hsiu Lee, Karin Gustafsson, Gerard Pasterkamp, Saskia C. A. de Jager, Ruslan I. Sadreyev, Jean MacFadyen, Peter Libby, Paul Ridker, David T. Scadden, Kamila Naxerova, Kate L. Jeffrey, Filip K. Swirski and Matthias Nahrendorf

    雑誌:

    Nat Med, 25, 1761–1771 (2019)

    POINT!

    セデンタリーライフスタイル(ほとんど体を動かさないライフスタイル)や慢性炎症、白血球の増加は、アテローム性動脈硬化を増加させるが、定期的な運動が白血球産生に影響するかどうかは不明のままであった。本研究で著者らは、マウスの飼育環境にランニングホイールを設置し自発的な運動を促すと、6週間後に造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)数が低下することで炎症に関わる白血球数が低下することを見出した。運動により脂肪組織でのレプチン産生が減少し、その結果レプチン受容体陽性骨髄間質細胞におけるCXCL12などの静止期促進造血ニッチ因子発現を増加させ、造血幹細胞を静止期に留めることが明らかにされた。Prrx1-creERT2; Leprfl/flマウスでの誘導性レプチン受容体欠損の解析の結果、レプチンの骨髄ニッチ細胞に対する影響がHSPCの増殖や白血球産生、心血管の炎症とアウトカムを調節することが示された。ランニングホイールを撤去すると血中・骨中レプチン量が急速に非運動群と同等の範囲に戻るが、運動が白血球産生とHSPCのエピゲノムやトランスクリプトームに与えた効果は、多くの遺伝子プロモーター領域のクロマチン構造を閉鎖型に変化させたことにより、数週間持続することが示唆された。また、急性敗血症モデルでは運動による血中白血球数の低下の影響はなく、むしろ生存率が上昇することも示された。さらに、心筋梗塞や循環器疾患患者のコホートにおいて、定期的な運動を続けている人の白血球数やレプチン濃度は運動しない人より低いことも示された。以上から、運動が骨髄造血ニッチの調節を介してHSPCに影響し、炎症性白血球数を減少させることが示された。

    HDAC9

    HDAC9はアテローム動脈硬化の大動脈石灰化に関与し、血管平滑筋細胞の表現型に影響する

    原題:

    HDAC9 is implicated in atherosclerotic aortic calcification and affects vascular smooth muscle cell phenotype

    著者:

    Rajeev Malhotra, Andreas C. Mauer1, Christian L. Lino Cardenas, Xiuqing Guo, Jie Yao, Xiaoling Zhang, Florian Wunderer, Albert V. Smith, Quenna Wong, Sonali Pechlivanis, Shih-Jen Hwang, Judy Wang, Lingyi Lu, Christopher J. Nicholson, Georgia Shelton, Mary D. Buswell, Hanna J. Barnes, Haakon H. Sigurslid, Charles Slocum, Caitlin O' Rourke, David K. Rhee, Aranya Bagchi, Sagar U. Nigwekar, Emmanuel S. Buys, Catherine Y. Campbell, Tamara Harris, Matthew Budoff, Michael H. Criqui, Jerome I. Rotter, Andrew D. Johnson, Ci Song, Nora Franceschini, Stephanie Debette, Udo Hoffmann, Hagen Kälsch, Markus M. Nöthen, Sigurdur Sigurdsson, Barry I. Freedman, Donald W. Bowden, Karl-Heinz Jöckel, Susanne Moebus, Raimund Erbel, Mary F. Feitosa, Vilmundur Gudnason, George Thanassoulis, Warren M. Zapol, Mark E. Lindsay, Donald B. Bloch, Wendy S. Post and Christopher J. O'Donnell

    雑誌:

    Nat Genet, 51, 1580–1587 (2019)

    POINT!

    大動脈石灰化は、将来の心血管イベントの独立した予測因子として重要である。著者らは、腹部大動脈石灰化または胸部下行大動脈石灰化の程度に関連するSNPを決定するためにGWASのメタ解析を行った。HDAC9RAP1GAPの2つの遺伝子座は、ゲノムワイドレベルで腹部大動脈石灰化との有意な関連性が検出されたが、胸部大動脈石灰化に関連するSNPは検出されなかった。ヒト大動脈平滑筋細胞でHDAC9を強制発現させると石灰化が促進され、細胞収縮性が低下した一方、HDAC9の阻害剤添加やノックダウンは石灰化を低下させ、収縮性が促進された。血管石灰化モデルであるマトリックスGlaタンパク質欠損マウスでさらにHDAC9を欠損させると大動脈石灰化が40%減少し、生存率が上昇した。本研究によって、腹部大動脈石灰化に関連する遺伝子座が初めて同定され、これまでに未知であった血管石灰化発生におけるHDAC9の役割が明らかにされた。

    IL-17産生gdT細胞

    髄膜のIL-17産生gdT細胞はシナプス可塑性と短期記憶を制御する

    原題:

    Meningeal gdT cell–derived IL-17 controls synaptic plasticity and short-term memory

    著者:

    Miguel Ribeiro, Helena C. Brigas, Mariana Temido-Ferreira, Paula A. Pousinha, Tommy Regen, Cátia Santa, Joana E. Coelho, Inês Marques-Morgado, Cláudia A. Valente, Sara Omenetti, Brigitta Stockinger, Ari Waisman, Bruno Manadas, Luísa V. Lopes,Bruno Silva-Santos, Julie C. Ribot

    雑誌:

    Sci. Immunol. 4, eaay5199 (2019)

    POINT!

    中枢神経系は免疫特権部位であると考えられてきたが、近年の研究から定常状態でもリンパ球浸潤が起こることが示された。また、T細胞が記憶などの脳機能に重要であることも明らかにされつつある。著者らは髄膜に含まれるT細胞の解析を行い、abT細胞が生後徐々に集積する一方、Vg6+サブセットを主体とするgdT細胞は出生時に既に髄膜に存在し、維持されることを見出した。髄膜のgdT細胞は定常状態で活性化しており、高い増殖性を示した。これらの細胞の多くはIL-17産生型であり、また、同部位におけるIL-17の主たる産生源であった。Il17a–/–マウスやTcrd–/–マウス、抗IL-17抗体を投与したマウスの行動実験では、これらのマウスの短期記憶機能に障害が認められた。Il17a–/–マウス海馬の網羅的プロテオーム解析から、シナプス可塑性に関わるパスウェイの変化が認められた。電気生理学的解析により、このマウスの海馬では行動実験後の長期増強が抑制された。IL-17はグリア細胞におけるbrain–derived neurotropic factor (BDNF) の産生を促進した。Il17a–/–マウスやTcrd–/–マウスにBDNFを投与することにより短期記憶の改善が認められた。以上より、髄膜のIL-17産生gdT細胞の記憶機能における重要性が示された。

    CD4+T細胞

    ストレスに起因する末梢CD4+T細胞の代謝障害は不安様行動を惹起する

    原題:

    Stress-Induced Metabolic Disorder in Peripheral CD4+ T Cells Leads to Anxiety-like Behavior

    著者:

    雑誌:

    Cell, 179(4), 864-879 (2019)

    POINT!

    高頻度の心理的な負荷は不安や鬱の原因となる。ストレス刺激への暴露は末梢T細胞の機能障害につながることが知られているが、ストレス–T細胞–脳機能を結ぶメカニズムは不明である。著者らは、電気ショック誘導性の不安モデルマウスの解析を行った。抗体を用いたCD4+T細胞の除去により不安様行動が減少し、電気ショックを経験したマウスのCD4+T細胞のRag1–/–マウスへの移入で不安様行動の増加が見られたことから、CD4+T細胞がストレス下で脳機能を制御することが示された。不安モデルマウスのCD4+T細胞ではミトコンドリア関連遺伝子群の発現が変動し、ミトコンドリアの形態や糖代謝能に異常が認められた。不安モデルマウスの脳内ではロイコトリエンB4 (LTB4) の発現が高く、投与するとCD4+T細胞依存的に不安様行動が惹起された。LTB4に曝露されたCD4+T細胞ではMFN2やMIGA2の発現低下を伴うミトコンドリア断片化が認められた。Miga2–/–マウス、Miga2f/fCd4Creマウス、Mfn1f/fMfn2f/fCd4Creマウスでは不安様行動が認められた。Miga2欠損T細胞では糖代謝が低下する一方、プリン合成が亢進し、Miga2f/fCd4Creマウスの血清ではキサンチンなどのプリン代謝産物が大きく増加した。Miga2欠損によりCD4+T細胞ではIRF-1の蓄積が誘導され、IRF-1はプリン合成に関わる遺伝子のプロモーターに結合することが明らかになった。Irf1–/–Miga2f/fCd4Creマウスではこれらの遺伝子発現の上昇や不安様行動の大部分がキャンセルされた。不安に関わる左側扁桃体の解析を行ったところ、Miga2–/–マウスではオリゴデンドロサイトの増加を伴う同部位の肥大を認めた。これらの細胞はキサンチン受容体A1を発現し、Miga2–/–マウスではプリン代謝と細胞増殖に関わる遺伝子群の発現変動が認められた。Miga2–/–マウスやキサンチン投与マウスでは神経活動性の指標であるc-Fosの発現が上昇していた。以上より、ストレス刺激によりLTB4依存的にCD4+T細胞のミトコンドリア機能が障害されプリン合成が増加すること、プリン代謝産物のキサンチンはオリゴデンドロサイトの増殖を介して神経活動を亢進させ不安を誘導することが明らかになった。

    貪食

    遊走神経堤細胞は神経系の発生に伴い生じる死細胞を貪食する

    原題:

    Migratory Neural Crest Cells Phagocytose Dead Cells in the Developing Nervous System

    著者:

    Yunlu Zhu, Samantha C. Crowley, Andrew J. Latimer, Gwendolyn M. Lewis, Rebecca Nash, Sarah Kucenas.

    雑誌:

    Cell, 179(1): 74-89, (2019)

    POINT!

     神経系の発生に際して一部の神経細胞はアポトーシスに陥るが、死細胞が除去されるメカニズムは不明であった。著者らは各種遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いてこのメカニズムを解析した。脊髄中のアポトーシス細胞は神経堤細胞 (NCC)と近接することが示された。これらの NCCの RNA-Seqデータを用いた gene ontology解析と pathway解析の結果、小胞体、ライソゾーム、エンドソーム、 V-ATPaseなどアポトーシス細胞の除去に関わる遺伝子群が見出された。そこで、これらの細胞が実際に死細胞の処理に関わるか、継時的に挙動を観察した。背側の神経幹から離れた NCCは腹側へ移動し、その一部はアポトーシスに陥った。細胞死の後、生存 NCCが死細胞へ遊走を始めた。死細胞の断片は近傍の NCCに貪食され、貪食した細胞内ではファゴソームがライソゾームと融合し小胞内が酸性化した。貪食 NCCの動態をさらに詳細に解析したところ、貪食胞の有無により遊走パターンが異なることが見出された。 IL-1RAの投与により遊走が妨げられたことから、以上のプロセスに IL-1が関与することが示唆された。

    発癌

    毛包の再生はRas変異による腫瘍を抑制する

    原題:

    Hair follicle regeneration suppresses Ras-driven oncogenic growth

    著者:

    Pineda CM, Gonzalez DG, Matte-Martone C, Boucher J, Lathrop E, Gallini S, Fons NR, Xin T, Tai K, Marsh E, Nguyen DX, Suozzi KC, Beronja S, Greco V.

    雑誌:

    J. Cell Biol., doi: 10.1083/jcb.201907178, (2019)

    POINT!

    ある種の遺伝子変異は発癌の原因となるが、変異の存在が必ずしも腫瘍の発生に繋がるとは限らない。皮膚には変異細胞の排除機構が備わっているが、発癌回避が排除機構のみに依存するかは不明であった。著者らは、毛包幹細胞に変異 Hras(HrasG12V)をタモキシフェン誘導性に発現する皮膚癌モデルマウス (HrasG12V/+K19 Cre–ERマウス )と K14 –H2B–GFPマウス、 CAG–tdTomatoマウスを交配することにより、上皮組織における Hras変異毛包幹細胞のレポーターマウスを作出した。このレポーターマウスの解析から、 Hras変異細胞は上皮組織中に一年以上残存することが確認され、変異細胞の排除以外の発癌回避機構の存在が示唆された。 Hras変異細胞は毛周期において高い増殖能を示したが、それによる組織構造の崩壊は認められなかった。また、これらの細胞は毛周期の成長期に増殖、退行期にアポトーシスしており、停止期の短縮は認めるものの、腫瘍性の挙動を示さなかった。 Hras変異に加えて TGF-β欠損を組み合わせたところ、グルーミングなどで皮膚損傷を起こしやすい部位で Hras変異細胞が増殖し、皮膚癌が発生した。毛包〜毛乳頭を除去しても発癌には至らないことから、表皮の損傷と Hras変異、 TGF-β欠損が発癌に必要であることが示された。以上より、皮膚には腫瘍性の変異細胞を除去するだけでなく、共存させつつ発癌させない機構が備わっていることが示された。

    味覚

    末梢から中枢への味覚の神経回路の解明

    原題:

    Sour Sensing from the Tongue to the Brain

    著者:

    Zhang J, Jin H, Zhang W, Ding C, O'Keeffe S, Ye M, Zuker CS.

    雑誌:

    Cell, 179(2): 392-402 (2019)

    POINT!

    味覚は毒物や腐敗した食餌を回避し、糖やミネラルなどの栄養を判別する生存に必須の感覚である。味覚は甘味、塩味、苦味、酸味、うま味の基本味からなり、各々の基本味は異なる味細胞(TRC)により認識される。著者らは、酸味を司るTRCのシングルセルRNA-Seq(scRNA-Seq)解析を行い、酸味を生じる機能分子の探索を行った。候補分子の一つ、膜タンパク質Otop1欠損マウスでは酸味に対する鼓索神経や膝神経節の活動性が低下していた。また、甘味受容体T1R3の遺伝子座にOtop1をノックインしたマウスを解析したところ、甘味受容体が甘味と酸味の両方に反応していた。以上より、Otop1は酸味を生じるのに必要十分であることが示された。より中枢側の神経回路を検討するために、膝神経節細胞のscRNA-Seq解析を行い、7つのクラスターを見出した。各クラスターのマーカー遺伝子欠損マウスや、マーカー遺伝子を発現する神経細胞を麻痺させる遺伝子改変マウスを用いた解析から、酸味を司る膝神経節細胞はPenk遺伝子を発現することが明らかになった。味覚刺激が入力される孤束核吻側部の解析を行い、プロダイノルフィン(Pdyn)発現ニューロンが酸味刺激に特異的に応答することを見出した。シナプス間を伝達されるウイルスを用いたラベリングシステムより、Pdyn発現ニューロンは膝神経節のPenk発現ニューロンに投射することが示された。同定された神経回路の機能を検討するために、光遺伝学的にPdyn発現ニューロンを刺激したところ、酸味への嫌悪行動が誘発された。以上より、末梢〜中枢の各階層で酸味を司る特異的な細胞サブセットと機能分子、マーカー分子が明らかになった。

    FGF23

    FGF23の合成を制御するGタンパク質共役IP3/プロテインキナーゼC経路

    原題:

    A G protein–coupled IP3/protein kinase C pathway controlling the synthesis of phosphaturic hormone FGF23

    著者:

    Qing He, Lauren T. Shumate, Julia Matthias, Cumhur Aydin, Marc N. Wein, Jordan M. Spatz, Regina Goetz, Moosa Mohammadi, Antonius Plagge, Paola Divieti Pajevic, and Murat Bastepe

    雑誌:

    JCI Insight. 2019;4(17): e125007

    POINT!

    FGF23の異常はX染色体連鎖性低リン血症(XLH)などのいくつかの遺伝性疾患を引き起こす。FGF23は骨が主な産生源とされるが、その産生を制御する分子機構とシグナル伝達経路は不明であった。GNAS遺伝子はGsaとXLasをコードするが、本研究において著者らはXLasの欠損マウス(XLKO)が出生後早期にFGF23欠乏と高リン血症を呈することを発見した。XLKOマウスではPTH投与に応答したFGF23の上昇は正常であったが、骨でのPKCaやPKCdの発現は減少していた。骨細胞株Ocy454細胞でXLasを欠失させると、FGF23 mRNA発現量、イノシトール1,4,5-三リン酸産生量、およびPKCa/PKCdタンパク質量が低下した。PMA投与によってPKCを活性化すると、FGF23産生が上昇しXLKOマウスでの血中リン濃度が正常化した。Ocn-CreやDmp1-Creによって恒常的活性化型のGqa変異体であるGNAQG209Lin vivoで発現させることによっても、PKC活性化を介してFGF23産生が上昇した。また、PKC活性化によるFGF23の上昇はERKシグナル伝達に依存していることが示された。さらに、XLHのモデルであるHypマウスの骨ではPKC活性が上昇しており、HypとXLKOの二重変異マウスでは、Hypマウスに比べ血清中FGF23量や血中リン濃度は低かった。本研究によって、未同定のGPCRからのGq/11aやXLasを介したIP3-PKCによるFGF23産生経路が明らかにされた。

    人工サイトカイン

    デザイナーサイトカインIC7Fcによる2型糖尿病の治療

    原題:

    Treatment of type 2 diabetes with the designer cytokine IC7Fc

    著者:

    Maria Findeisen, Tamara l. Allen, Darren C. Henstridge, Helene Kammoun, Amanda E. Brandon, Laurie l. Baggio, Kevin I. Watt, Martin Pal, Lena Cron, Emma Estevez, Christine Yang, Greg M. Kowalski, Liam O'reilly, Casey Egan, Emily Sun, Le May Thai, Guy Krippner, Timothy E. Adams, Robert S. Lee, Joachim Grötzinger, Christoph Garbers, Steve Risis, Michael J. Kraakman, Natalie A. Mellet, James Sligar, Erica T. Kimber, Richard l. Young, Michael A. Cowley, Clinton R. Bruce, Peter J. Meikle, Paul A. Baldock, Paul Gregorevic, Trevor J. Biden, Gregory J. Cooney, Damien J. Keating, Daniel J. Drucker, Stefan Rose-John & Mark A. Febbraio

    雑誌:

    Nature. doi: 10.1038/s41586-019-1601-9 (2019)

    POINT!

    IL-6ファミリーサイトカインであるIL-6や毛様体神経栄養因子(CNTF)は、マウスやヒトでのインスリン感受性を改善するが、2型糖尿病に対する治療応用は実現していない。この問題を解決するため、著者らはIL-6のgp130結合部位の1つをCNTFのLIF受容体結合部位に置き換え、IgGのFcドメインと融合したIC7Fcという人工サイトカインを設計した。IC7Fcはgp130、IL-6受容体、LIF受容体に結合する。IC7Fcをマウスに投与すると、食欲を低下させインスリン分泌を促進することで耐糖能と高血糖を改善し、体重増加と脂肪肝を予防した。さらに、IC7Fcは転写調節因子YAP1の活性化により骨格筋量を維持することも明らかにされた。また、Alb-Creによる肝臓特異的なIC7Fcの過剰発現マウスでは高脂肪食によって誘導される肥満に抵抗性を示すだけでなく、大腿骨の海綿骨量も上昇していた。カニクイザルに対するIC7Fc投与で明らかな副作用の兆候が観察されなかったことから、IC7Fcは2型糖尿病と筋萎縮症の治療のための次世代生物学的薬剤となる可能性が示された。

    シュワン細胞

    下顎骨修復における骨格幹細胞-シュワン細胞回路

    原題:

    Skeletal Stem Cell-Schwann Cell Circuitry in Mandibular Repair

    著者:

    R. Ellen Jones, Ankit Salhotra, Kiana S. Robertson, Ryan C. Ransom, Deshka S. Foster, Harsh N. Shah, Natalina Quarto, Derrick C. Wan, and Michael T. Longaker

    雑誌:

    Cell Reports 28, 2757–2766 (2019)

    POINT!

    マウスの指先やサンショウウオの四肢などにおける組織再生は神経依存性を示すことが知られている。除神経は再生を障害し、形態学的異常を生じさせるが、このプロセスに関わる幹細胞や前駆細胞に対する神経支配の直接的な影響は不明であった。著者らは、下歯槽神経を除神経するとマウス骨格幹細胞(mSSC)の細胞数低下や骨形成能低下などの機能的異常により下顎骨の修復が著しく低下することを見出した。この過程でmSSCはシュワン細胞への依存性を示し、シュワン細胞移植によって除神経後の骨修復能が回復することや、この過程にシュワン細胞から分泌されるPDGF-AAやオンコスタチンMなどの因子が部分的に関与することが示された。以上から本研究によってmSSCの神経依存性や下顎骨修復を促進するためのmSSC-シュワン細胞回路の重要性が明らかになった。

    機械感覚

    PIEZO1による周期的な力の機械感覚は自然免疫に必要である

    原題:

    Mechanosensation of cyclical force by PIEZO1 is essential for innate immunity

    著者:

    Angel G. Solis, Piotr Bielecki, Holly R. Steach, Lokesh Sharma, Christian C. D. Harman,Sanguk Yun, Marcel R. de Zoete, James N. Warnock, S. D. Filip To, Autumn G. York, Matthias Mack, Martin A. Schwartz, Charles. S. Dela Cruz, Noah W. Palm, Ruaidhrí Jackson and Richard A. Flavell

    雑誌:

    Nature, 573: 69–74 (2019)

    POINT!

    自然免疫系細胞による病原体の直接的な認識は炎症応答に欠かせない。炎症応答において、体温、pH、酸素状態、栄養状態などの微小環境は激しく変動する。免疫系の細胞は特定の微小環境変化に対し適切な応答をするため、病原体の認識や活性化したパターン認識受容体(PRRs)を介してだけでなく、様々な微小環境へのセンサーも同時に使っている。ミエロイド系細胞のPRRシグナルへの応答や微小環境の変化の感知については研究が進んでいる一方で、「力と圧力」の自然免疫系への影響については、これらが免疫学的に重要な反応において細胞へのシグナル伝達を起こすにも関わらず、理解が進んでいなかった。今回筆者らは、呼吸により周期的な圧力が発生する肺などの臓器において、イオンチャネルであるPIEZO1がミエロイド系細胞の炎症性応答を惹起する周期的静水圧のセンサーとして機能することを明らかにした。マクロファージと単球に対する機械的刺激は、炎症性メディエーターや走化性因子の発現を誘導し、この炎症性機械感覚応答はPIEZO1に完全に依存していた。またミエロイド系細胞特異的にPIEZO1を欠損したマウスは緑膿菌の経鼻感染に対し高感受性となり、逆にミエロイド系細胞におけるPIEZO1シグナルの増強は肺線維症のマウスモデルの症状を悪化させた。これらの結果は、力と圧力が自然免疫系による炎症反応の主要な誘導因子であることを示している。

    再生

    骨再生のための骨格幹細胞、前駆細胞の活性化はPDGFRbシグナリングにより引き起こされる

    原題:

    Activation of Skeletal Stem and Progenitor Cells for Bone Regeneration Is Driven by PDGFRβ Signaling

    著者:

    Anna-Marei Böhm, Naomi Dirckx, Robert J. Tower, Nicolas Peredo, Sebastiaan Vanuytven, Koen Theunis, Elena Nefyodova, Ruben Cardoen, Volkhard Lindner Thierry Voet, Matthias Van Hul, Christa Maes

    雑誌:

    Dev Cell., 51: 1-19 (2019)

    POINT!

    骨の修復と再生には、骨形成能力のある骨格幹細胞および前駆細胞(SSPC)の活性化と遊走が必要である。本論文ではOsterix(Osx)を発現した経歴のある細胞が外傷に応じて骨格組織を修復するために、必要な一連の系列(骨芽細胞、軟骨形成細胞、および線維芽細胞)に分化できることを示した。これはOsx発現履歴のある細胞がSSPCである、あるいはSSPCを含んでいることを示唆するものである。コンディショナルノックアウトマウスの実験により、PDGFRβを欠損すると骨再生に必要なSSPCの増多とカルス形成を妨げることがわかった。骨修復中のSSPCの拡大、血管に沿った細胞遊走にPDGF-PDGFRβシグナル伝達が不可欠であることを示唆した。骨修復SSPCの遊走に関与するメカニズムをさらに調査するために、著者らはMMP-9およびVCAM-1がPDGF-PDGFRβシグナル伝達カスケードの下流エフェクターとして作用することを示した。以上より、著者らはPDGF経路が骨修復中にSSPC活性化の決定因子として作用することをin vivoで証明した。

    EphrinB2

    エフリンB2欠損骨細胞ではオートファジーが亢進することで、過剰な二次石灰化が起き、骨が脆弱化する

    原題:

    Increased autophagy in EphrinB2-deficient osteocytes is associated with elevated secondary mineralization and brittle bone

    著者:

    Christina Vrahnas, Martha Blank, Toby A. Dite, Liliana Tatarczuch, Niloufar Ansari, Blessing Crimeen-Irwin, Huynh Nguyen, Mark R. Forwood, Yifang Hu, Mika Ikegame, Keith R. Bambery, Cyril Petibois, Eleanor J. Mackie, Mark J. Tobin, Gordon K. Smyth, Jonathan S. Oakhill, T. John Martin and Natalie A. Sims

    雑誌:

    Nat. Comm., 10: 3436 (2019)

    POINT!

    骨の石灰化は類骨にミネラル結晶が沈着することによって生じる。ミネラルの沈着の詳細な機序は依然として明らかになっていない。骨芽細胞に発現するEphrinB2蛋白は接触依存性に骨芽細胞の分化や類骨石灰化に関与しており、骨細胞においてもEphrinB2発現は保持されている。著者らは、骨細胞におけるEphrinB2発現と石灰化制御の関係を骨細胞特異的EphrinB2欠損マウスを用いて調査した。これらのマウスでは骨形態に変化は見られなかったが、骨脆弱性が見られた。類骨の一次石灰化は通常の速度で開始されたものの、二次石灰化の亢進が認められた。EphrinB2欠損骨細胞には、オートファジー関連の遺伝子に発現変動が見られ、細胞質内のオートファゴソーム数が増加していた。これらのミネラル過剰沈着およびオートファジー亢進状態はRhoA阻害により拮抗された。以上より、骨細胞におけるEphrinB2はRhoA経路依存的なオートファジーを抑制することで、二次石灰化を制御し、骨量非依存的に骨強度の維持に寄与している可能性が示唆される。

    骨折治癒

    血中ApoEレベルの低下は高齢者の骨折治癒を促進する

    原題:

    Lowering circulating apolipoprotein E levels improves aged bone fracture healing

    著者:

    Rong Huang, Xiaohua Zong, Puviindran Nadesan, Janet L. Huebner, Virginia B. Kraus, James P. White, Phillip J. White, and Gurpreet S. Baht

    雑誌:

    JCI insight, 4: e129144 (2019)

    POINT!

    加齢は骨折治癒遅延のリスクファクターである。加齢による骨折治癒障害の機構を研究する際に、筆者らが着目したのがApoEタンパク質である。ApoEはリポタンパク質であり、脂質代謝と脂肪酸輸送に関連する。近年ヒトにおけるApoE多型が骨のミネラル密度の減少と股関節及び脊椎骨折のリスク増加と関連することが報告された。しかし、骨折治癒と筋骨格の老化におけるApoEの役割は明らかになっていない。筆者らは、ヒトとマウスにおいて加齢により血中ApoEレベルが増加することを確認した。筆者らがWTおよびApoE欠損マウスの骨折治癒を評価したところ、ApoE欠損マウスの骨折仮骨内で骨沈着が高いことが明らかとなった。in vitroで分化中の骨芽細胞にリコンビナントApoEを添加すると、細胞分化とマトリックスの石灰化が抑制された。この処理により、骨芽細胞の代謝系にも影響が見られた。また、in vivoにおいて血中ApoEが骨修復において強力に抑制することを示した。さらに、siRNAを使用して血中ApoEレベルを低下させると、老齢マウスの骨折仮骨の骨沈着と機械的強度の増強を示した。本研究により加齢により増加した血中ApoEが骨芽細胞の代謝に影響して骨折治癒を阻害することが明らかとなった。この知見は高齢者の骨折治療における治療標的としてApoEが有用であることを示唆している。

    可溶型RANKL

    可溶型RANKLは生理的には必須ではないが、がん骨転移を促進する

    原題:

    Soluble RANKL contributes to osteoclast formation in adult mice but not ovariectomy-induced bone loss

    著者:

    Tatsuo Asano, Kazuo Okamoto, Yuta Nakai, Masanori Tsutsumi, Ryunosuke Muro, Ayako Suematsu, Kyoko Hashimoto, Tadashi Okamura, Shogo Ehata, Takeshi Nitta and Hiroshi Takayanagi

    雑誌:

    Nat. Matab., 1: 868–875 (2019)

    POINT!

    RANKLは破骨細胞分化や免疫組織形成に必須のサイトカインである。また骨粗鬆症、炎症性骨破壊、がんの骨転移等の病態にも関与している。RANKLは膜結合型と可溶型の二つの形態を持つが、生体における役割の違いについては詳細には判明していなかった。筆者らは可溶型RANKLを選択的に欠損したマウス(ΔSマウス)を作製し、可溶型RANKLの生理的・病的意義を検証した。6週齢で解析したところ、破骨細胞分化、リンパ節形成、胸腺髄質上皮細胞分化においてはΔSマウスと野生型マウスの間には差を認めなかった。したがって可溶型RANKLは生理的には必須ではないことが分かった。次にマウスがん細胞(悪性黒色腫・乳がん)を用いて左心室内移植による骨転移モデルを施行したところ、ΔSマウスでは骨転移が有意に抑制された。一方で、腫瘍骨転移部における破骨細胞数には差がなかった。なお卵巣や副腎などの骨以外の臓器への転移には差を認めなかった。これらの結果より可溶型RANKLは破骨細胞非依存性にがんの骨転移を促進することが分かった。

    組織常在マクロファージ

    滑膜局所で維持される常在マクロファージは関節におけるバリア機能を有する

    原題:

    Locally renewing resident synovial macrophages provide a protective barrier for the joint

    著者:

    Culemann S Grüneboom A, Nicolás-Ávila JÁ, Weidner D, Lämmle KF, Rothe T, Quintana JA, Kirchner P, Krljanac B, Eberhardt M, Ferrazzi F, Kretzschmar E, Schicht M, Fischer K, Gelse K, Faas M, Pfeifle R, Ackermann JA, Pachowsky M, Renner N, Simon D, Haseloff RF, Ekici AB, Bäuerle T, Blasig IE, Vera J, Voehringer D, Kleyer A, Paulsen F, Schett G, Hidalgo A, Krönke G.

    雑誌:

    Nature. doi: 10.1038/s41586-019-1471-1. [Epub ahead of print]

    POINT!

     これまで、組織常在マクロファージは循環血液中の単球に由来するとされていたが、最近、その一部は発生初期に組織に定着したものであることが報告された。著者らは、関節滑膜のマクロファージの由来と機能の再検討に取り組んだ。マウス膝関節の透明化標本を観察したところ、平坦な形態のCX3CR1+マクロファージが形成する膜状の連続した構造が関節腔を裏装していた。CX3CR1+マクロファージは出生前から関節中に見出されたが、並体結合してもrecipientマウスに移入されないことから、発生初期に組織に定着・維持されると考えられた。滑膜を裏装するCX3CR1+マクロファージと滑膜深部に見出されたCX3CR1マクロファージのシングルセルRNA–Seq解析により、CX3CR1マクロファージには、MHCIIやAQP1を発現するサブセットとRELM-αを発現するサブセットが存在することが明らかになった。偽時系列解析により、前者は後者およびCX3CR1+細胞の前駆細胞であることが予測され、フェイトマッピングマウスの解析結果もそれに矛盾しないものであった。CX3CR1+マクロファージ同士の接触部位にはタイトジャンクションが発達していたことから、これらの細胞が滑膜バリアの形成に関わることが示唆された。関節炎発症後早期にこの細胞間結合は消失し、CX3CR1+マクロファージの連続性は失われ、MRI上で関節腔内への造影剤の流入の増加が認められた。CX3CR1+マクロファージの除去は滑膜のバリアの破綻と関節炎初期の炎症症状の増悪につながった。タイトジャンクションを安定させるイマチニブが関節炎を抑制したことから、滑膜バリアは炎症を抑制することが示唆された。以上より、関節滑膜を裏装するCX3CR1+マクロファージは関節局所で維持され、タイトジャンクションにより滑膜バリアを形成し炎症を抑制することが明らかになった。

    パーキンソン病

    腸管における感染はPink1–/–マウスにおけるパーキンソン病様症状を誘導する

    原題:

    Intestinal infection triggers Parkinson's disease- like symptoms in Pink1−/− mice

    著者:

    Matheoud D, Cannon T, Voisin A, Penttinen AM, Ramet L, Fahmy AM, Ducrot C, Laplante A, Bourque MJ, Zhu L, Cayrol R, Le Campion A, McBride HM, Gruenheid S, Trudeau LE, Desjardins M.

    雑誌:

    Nature, 571(7766): 565-569 (2019)

    POINT!

    PINK1およびParkinはパーキンソン病の原因遺伝子であるが、Pink1–/–マウスやPrkn–/–マウスはパーキンソン病様の症状を強く発症することはないため、これらの遺伝子変異の他に何らかの引き金が存在することが指摘されていた。著者らは、過去にこれらのマウスの抗原提示細胞はLPS刺激によりミトコンドリア成分をMHCクラスI上に提示すること (MitAP) を見出した (Matheoud, Cell, 2016)。この知見から、CD8+T細胞を介した炎症反応がパーキンソン病の病態形成に関与する可能性に着想した。各種細菌をRAW264.7細胞に感染させたところ、グラム陰性菌、特に腸管病原性大腸菌 (EPEC) を感染させた際にMitAPが強力に誘導された。このMitAPは、Pink1–/–マウス由来の樹状細胞では野生型細胞よりも高いレベルを示した。EPEC感染症のモデルに用いられるC. rodentiumを経口感染させたところ、Pink1–/–マウスでは野生型マウスと比較して、脾臓や脳でミトコンドリア特異的かつIFNγを発現するCD8+T細胞が多く見出された。LPSとIFNγで刺激したPink1–/–マウスの神経細胞とミトコンドリア特異的CD8+T細胞の共存培養ではMitAPが強く誘導された。Pink1–/–マウスのドーパミン作動性ニューロンはLPSとIFNγ刺激下でCD8+T細胞と共存培養することにより細胞死に陥った。C. rodentium感染Pink1–/–マウスでは、線条体ドーパミン作動性ニューロンの密度低下を伴う運動機能を認めた。以上より、感染に伴うCD8+T細胞を介した免疫応答がパーキンソン病の病態に関わることが示された。

    皮膚炎

    皮膚に分布するTRPV1陽性ニューロンは予期的な17型自然免疫応答による防御反応を誘引する

    原題:

    Cutaneous TRPV1+ Neurons Trigger Protective Innate Type 17 Anticipatory Immunity

    著者:

    Cohen JA, Edwards TN, Liu AW, Hirai T, Jones MR, Wu J, Li Y, Zhang S, Ho J, Davis BM, Albers KM, Kaplan DH.

    雑誌:

    Cell, 178(4): 919-932.e14. (2019)

    POINT!

    TRPV1+ニューロンは皮膚に広く分布し、痛みを司る神経細胞である。この細胞は感染や薬剤刺激に反応し、樹状細胞の活性化を介して17型自然免疫応答に関わることが報告されている。本研究で著者らは、TRPV1+ニューロンがこの免疫応答の誘導に十分であるのか、また、なぜこのニューロンが炎症反応に関与するのかを明らかにした。まず、光遺伝学的にTRPV1+ニューロンが活性化されるマウス (TRPV1-Ai32マウス) の皮膚に光照射を行ったところ、IL-17Aを産生するγδT細胞およびCD4+T細胞や好中球の浸潤、IL-23/IL-6/TNF-α/IL-17A/IL-22の発現上昇といった17型炎症反応を伴う表皮の肥厚・錯角化が認められた。よって、TRPV1+ニューロンの活性化は皮膚炎の誘導に十分であることが示された。薬剤による神経伝達の阻害実験から、これらの炎症反応は神経ペプチドの一つCGRP依存的であることが示された。次に、血流増加を指標に炎症の範囲を解析したところ、TRPV1-Ai32マウスでは光照射部位だけでなく、その周囲でも血流の増加を認めた。周辺部の血流増加は神経伝導に依存していたことから、局所でのTRPV1+ニューロン活性化が反射弓によって周辺部に炎症と感染防御を誘導すると考えられた。実際、細菌や真菌の感染は光照射部位の周辺部でも抑制されていた。以上より、TRPV1+ニューロンは感染部位局所だけでなく、その近傍にも予防的に感染防御反応を誘導することが示された。

    ゲノム編集

    i-GONAD法による受精卵のex vivo処理を行わないCRISPRによる生殖細胞ゲノム編集マウスの作製

    原題:

    Creation of CRISPR-based germline-genome-engineered mice without ex vivo handling of zygotes by i-GONAD

    著者:

    Channabasavaiah B. Gurumurthy, Masahiro Sato, Ayaka Nakamura, Masafumi Inui, Natsuko Kawano, Md Atiqul Islam, Sanae Ogiwara, Shuji Takabayashi, Makoto Matsuyama, Shinichi Nakagawa, Hiromi Miura and Masato Ohtsuka

    雑誌:

    Nat Protoc, 14, 2452–2482 (2019)

    POINT!

    30年以上使用されてきた従来の遺伝子組み換えマウス作製方法では、雌マウスから受精卵を採取し、ex vivoでマイクロインジェクションを行い、別の偽妊娠マウスに移植する、という3つの主要なステップが含まれる。著者らは最近、これらの過程を不要とするGONAD法(卵管核酸送達によるゲノム編集)という方法を開発した。GONAD法は、Cas9 mRNAとguide RNA(gRNA)をE1.5胚に妊娠雌マウスの卵管に注入し、in vivoエレクトロポレーションを行ってin situで受精卵に成分を送達する方法である。その後、Cas9タンパク質またはCpf1タンパク質とgRNAをE0.7胚に送達する、改良されたGONAD法(i-GONAD法)を開発した。i-GONAD法は、ドナー一本鎖DNAテンプレートを加えれば最大1 kbのインサートを含むノックインモデルを作製することも可能である。この方法を用いれば、偽妊娠マウスやマイクロインジェクション装​​置、胚操作技術を必要とせず、比較的簡単な装置でゲノム編集マウスを作製することが可能となる。本プロトコルはi-GONAD法を実施するための非常に詳細なプロトコルである。

    免疫複合体

    神経系で発現するFcgRIは急性及び慢性の関節痛に関わる

    原題:

    Neuronal FcgRI mediates acute and chronic joint pain

    著者:

    Li Wang, Xiaohua Jiang, Qin Zheng, Sang-Min Jeon, Tiane Chen, Yan Liu, Heather Kulaga, Randall Reed, Xinzhong Dong, Michael J. Caterina, and Lintao Qu

    雑誌:

    J Clin Invest, doi: 10.1172/JCI128010 (2019)

    POINT!

    従来、関節リウマチ(RA)における関節痛は炎症に起因すると考えられてきたが、関節炎の痛みと関節炎は少なくとも部分的には関連がない。本研究で著者らは、IgG免疫複合体(IgG-IC)の免疫受容体であるFcgRIが関節感覚神経のサブポピュレーションで発現し、ナイーブマウスに対するIgG-ICの関節内投与によるFcgRIのクロスリンクによって明確な関節炎は起こさずに、細胞体や末梢神経終末が直接活性化され急性の関節痛覚過敏を引き起こすことを示した。これらのIgG-ICの効果はPirt-Creを用いた感覚神経特異的なFcgRIノックアウトマウスで有意に減少した。抗原誘発性関節炎モデルマウスでは、関節感覚神経におけるFcgRI発現が活性化しており、抗体によるFcgRIの阻害または遺伝的欠失によって、関節の炎症には影響せずに関節炎の痛みと関節感覚神経の活動性亢進を有意に低下させた。以上から、感覚神経で発現するFcgRIは炎症性細胞での機能とは無関係に関節炎の痛みに寄与する可能性が示唆された。これらの発見は、神経細胞で発現するFcgRIがRAの痛みを治療するための標的となりうる可能性を示している。

    骨格系幹細胞

    Hox11を発現する局所の骨格系幹細胞は骨芽細胞や軟骨細胞、脂肪細胞の生涯にわたる前駆細胞である

    原題:

    Hox11 expressing regional skeletal stem cells are progenitors for osteoblasts, chondrocytes and adipocytes throughout life

    著者:

    Kyriel M. Pineault, Jane Y. Song, Kenneth M. Kozloff, Daniel Lucas & Deneen M. Wellik

    雑誌:

    Nat Commun, 10: 3168 (2019)

    POINT!

    多能性間葉系間質細胞(MSC)は、骨格形成や維持、修復に生涯にわたって必要である。著者らは以前、成人骨格前駆細胞が多く含まれるMSCでの胚性パターン形成転写因子Hoxa11の特異的な発現と機能を報告した。本研究では、新しく作製したHoxa11-CreERT2系統追跡システムを用い、発生期および出生後の両方の段階においてHoxa11-CreERT2で標識したHox11発現間質細胞に、生涯を通じて真の骨格幹細胞ポピュレーションが多く含まれる可能性を示した。Hoxa11系列陽性細胞は、LepR-CreおよびOsx-CreERで標識される前駆細胞を多く含むMSCポピュレーションを生じさせ、これらの細胞よりも上流であることが示された。またHoxa11系列陽性細胞は、骨髄内および骨内膜・骨外膜上で生涯維持され、MSCマーカーを持続的に発現して骨格系に広範囲に寄与し、著者らが調べた全ての段階で、軟骨細胞や骨芽細胞、骨細胞、骨髄脂肪細胞などの骨格系細胞を生じさせることが示された。さらに、発生期や出生後にHoxa11-CreERT2で標識した細胞は骨折損傷後に増殖し、骨折が成獣で誘導される場合においても軟骨や骨の再生に寄与したことから、Hox11発現細胞は骨格発生の最も早い段階から発生し、生涯を通じて自己複製する骨格系幹細胞が多く含まれることが証明された。

    破骨細胞

    Sfrp4はRor2/Jnkカスケード依存的破骨細胞分化を調節し、骨内膜の過剰な骨吸収から皮質骨を守っている

    原題:

    Sfrp4 repression of the Ror2/Jnk cascade in osteoclasts protects cortical bone from excessive endosteal resorption

    著者:

    Kun Chen, Pei Ying Ng, Ruiying Chen, Dorothy Hu, Shawn Berry, Roland Baron, and Francesca Gori

    雑誌:

    Proc Natl Acad Sci U S A., 116: 14138-14143. (2019)

    POINT!

    Wnt阻害作用を持つ分泌型frizzled receptor protein 4(SFRP4)の機能喪失変異は、、パイル病(OMIM 265900)の原因となる。これは、広い骨幹端、皮質骨の著しい菲薄化、脆弱性骨折を特徴とする骨格障害を呈する。Sfrp4欠損マウスでは、皮質骨の菲薄化が、骨膜および骨内膜の骨形成の減少と皮質骨吸収の増加と相関していることが観察された。 Sfrp4欠損マウスの皮質骨におけるRank1/Opgの上昇は、骨芽細胞依存的な破骨細胞分化を示唆しているが、Sfrp4が破骨細胞分化に細胞自律的に影響を与えることができるかどうかは不明であった。 骨髄由来マクロファージをRANKLで刺激するとSfrp4発現が上昇することがわかった。さらに、Sfrp4がRANKL誘導性破骨細胞分化を有意に抑制することがわかった。古典Wnt/b-カテニンシグナル伝達の阻害は破骨細胞分化に対するSfrp4の効果と関連しなかったが、非古典的なWnt/Ror2/Jnkカスケードをブロックすると、in vitroで破骨細胞分化が著しく抑制された。さらにSfrp4欠損マウスで見られる骨内膜破骨細胞の増加は、Sfrp4欠損と合わせて破骨細胞特異的Ror2欠損マウス(CtskCreRor2fl/fl)にすると抑制され、皮質骨の菲薄化も減少していた。これらのデータは、破骨細胞分化制御におけるSfrp4のオートクリンおよびパラクリン効果を示すものである。

    アミノ酸トランスポーター

    L-タイプアミノ酸トランスポーターLAT1mTORC1経路を介して破骨細胞分化を阻害し、骨恒常性を維持する

    原題:

    The L-type amino acid transporter LAT1 inhibits osteoclastogenesis and maintains bone homeostasis through the mTORC1 pathway

    著者:

    Kakeru Ozaki, Takanori Yamada, Tetsuhiro Horie, Atsushi Ishizak, Manami Hiraiwa, Takashi Iezaki, Gyujin Park, Kazuya Fukasawa, Hikari Kamada, Kazuya Tokumura, Mei Motono, Katsuyuki Kaneda, Kazuma Ogawa Hiroki Ochi, Shingo Sato,Yasuhiro Kobayashi, Yun-Bo Shi, Peter M. Taylor, Eiichi Hinoi

    雑誌:

    Sci. Signal. 12: eaaw3921 (2019)

    POINT!

    アミノ酸トランスポーターはアミノ酸の細胞内への取り込みを制御する分子であり、様々な細胞内プロセスに関与する。L-Typeアミノ酸トランスポーター1 (LAT1)は、ナトリウム依存的に中性アミノ酸を細胞内に取り込む機能を有し、がんや神経疾患に関与する。アミノ酸の細胞内取り込みは、骨恒常性を制御していると考えられるが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究において、筆者らは破骨細胞におけるLAT1が骨恒常性に重要であることを同定した。破骨細胞特異的にLAT1を欠損するマウスでは、破骨細胞数が増加し、骨量の低下が認められた。一方、骨芽細胞特異的にLAT1を欠損するマウスの骨は骨量、骨形成が正常であった。LAT1を欠損する破骨細胞ではmTORC1の経路が活性化された結果、破骨細胞のマスター転写因子であるNFATc1が核内に蓄積し、破骨細胞の分化および機能が亢進した。これらの発見は、破骨細胞におけるアミノ酸の取り込みが骨完全性の維持に重要な関連があることを示している。

    骨格異形成症

    ヒト骨格形成異常におけるマイクロRNA-140の機能獲得型変異

    原題:

    Gain-of-function mutation of microRNA-140 in human skeletal dysplasia.

    著者:

    Giedre Grigelioniene, Hiroshi I. Suzuki, Fulya Taylan, Fatemeh Mirzamohammadi, Zvi U. Borochowitz, Ugur M. Ayturk, Shay Tzur, Eva Horemuzova, Anna Lindstrand, Mary Ann Weis, Gintautas Grigelionis, Anna Hammarsjö, Elin Marsk, Ann Nordgren, Magnus Nordenskjöld, David R. Eyre, Matthew L. Warman, Gen Nishimura, Phillip A. Sharp, and Tatsuya Kobayashi

    雑誌:

    Nat. Med., 25: 583-590 (2019)

    POINT!

    マイクロRNA(miRNA)は、転写後調節因子として遺伝子発現を制御することで、様々な生命現象において重要な役割を果たしている。これまでに、miRNA遺伝子の機能喪失型変異が、ヒト先天性疾患に関与する例は幾つか報告がされているが、miRNAの機能獲得型変異がヒト疾患に関与するといった報告は存在しない。著者らは、新たな常染色体優性ヒト骨異形成症を発症する2家系を見出した。同患者の全ゲノムシークエンスの結果から、マイクロRNA-140(miR-140)遺伝子の1塩基置換を同定した。この1塩基置換を導入したマウスでは、骨異形成症患者と類似する表現系が認められた。miR-140の変異は、軟骨細胞において本来の標的遺伝子の発現亢進だけでなく、変異miR-140の新たな標的遺伝子の発現低下を引き起こした。さらに変異型miR-140は、RNA結合タンパク質Ybx1と標的RNAとの結合を競合阻害することが明らかとなった。本知見は、機能獲得型miRNA変異がヒト先天性疾患の原因となる最初の証拠を示したと同時に、変異miRNAが持つネオモルフ作用の分子メカニズムの一端を明らかにした。

    Singleton-Merten 症候群

    MDA5の構成的活性化を持つマウスにおけるシングルトン-マーテン症候群様骨格異常

    原題:

    Singleton-Merten Syndrome-like Skeletal Abnormalities in Mice with Constitutively Activated MDA5.

    著者:

    Nobumasa Soda, Nobuhiro Sakai, Hiroki Kato, Masamichi Takami, Takashi Fujita

    雑誌:

    J. Immunol., 203: 1356–1368 (2019)

    POINT!

    シングルトン-マーテン(Singleton-Merten)症候群(SMS)は、骨減少症、動脈石灰化、歯科的異常(若年性歯周炎と歯根吸収)などを特徴とするまれな常染色体優性疾患であり、原因としてMDA5タンパクをコードする IFIH1遺伝子の機能獲得型変異が知られている。本研究において著者らは、MDA5の恒常的活性型変異を導入したマウスでは、I型インターフェロンシグナルの増強を介して骨リモデリングが低下し、SMS様の骨表現系を呈することを見出した。本知見により、I型インターフェロンシグナルの阻害が、SMS患者の骨病変に対する有用な治療戦略となる可能性が示唆された。

    骨膜幹細胞

    TRAP+マクロファージ系細胞は骨膜細胞を動員し膜性骨化と骨再生を誘導する

    原題:

    Macrophage-lineage TRAP+ cells recruit periosteum-derived cells for periosteal osteogenesis and regeneration

    著者:

    Gao B, Deng R, Chai Y, Chen H, Hu B, Wang X, Zhu S, Cao Y, Ni S, Wan M, Yang L, Luo Z, Cao X

    雑誌:

    J. Clin. Invest., 129: 2578-2594. (2019)

    POINT!

     骨膜は骨表面のほぼ全域を被覆する。骨膜中のPeriosteum–derivedcell (PDC) は骨芽細胞など様々な細胞に分化する幹細胞 (MSC) である。PDCには様々なサブセットが含まれ、骨形成に重要であると考えられているが詳細は不明である。著者らはPDCサブセットの解析と制御機構の解析を行った。まず、免疫組織学的検討により、NestinまたはLepRを発現するPDCが骨膜外層に存在することが見出された。Nestin+PDCとLepR+PDCはそれぞれ若齢/成獣マウスに多く認められた。これらのPDCはコロニー形成能が高く、脂肪/軟骨/骨への分化能を示すなど、MSCの性質を有していた。次に、PDCの制御機構の解析を行った。TRAP+単核細胞はPDGF-BBを介してMSC遊走を誘導することが知られている。ジフテリア毒素を投与したTrap-cre iDTRマウス、Trap-cre Pdgfbfl/flマウス、Nestin-creERT2 Pdgfr-βfl/flマウス、LepR-cre Pdgfr-βfl/flマウスではPDCの骨表面への動員の抑制と骨形成の低下が認められた。Trap-cre Pdgfbfl/flマウスでは、骨再生の遅延も見られた。以上より、骨膜中のTRAP+細胞はPDGF-BBによりPDCを骨表面に動員することで骨形成と骨再生に寄与する事が明らかになった。

    線維芽細胞

    特殊な線維芽細胞が関節炎における炎症と組織損傷を誘導する

    原題:

    Distinct fibroblast subsets drive inflammation and damage in arthritis

    著者:

    Croft AP, Campos J, Jansen K, Turner JD, Marshall J, Attar M, Savary L, Wehmeyer C, Naylor AJ, Kemble S, Begum J, Dürholz K, Perlman H, Barone F, McGettrick HM, Fearon DT, Wei K, Raychaudhuri S, Korsunsky I, Brenner MB, Coles M, Sansom SN, Filer A, Buckley CD

    雑誌:

    Nature, 570: 246-251, 2019

    POINT!

    炎症性疾患の基礎研究においては、免疫細胞のサブセット解析が精力的に行われている一方、組織の間質を構成する線維芽細胞のサブセットの検討は十分でない。著者らは関節炎組織の線維芽細胞サブセットに着目した。関節リウマチ患者の滑膜と血清移入関節炎モデル (STIA)マウスの滑膜において、fibroblast activation protein-α (FAPα)が高発現することを見出した。FAPα-luciferase-DTRマウスにジフテリア毒素を投与したところ、関節の腫脹と破壊が抑制された。また、これらのマウスではケモカイン、炎症性サイトカイン、RANKL、プロテアーゼの発現も低値を示した。Single cell RNA-Seq法によりSTIA滑膜線維芽細胞の表現系解析を行ったところ、特徴的な遺伝子発現パターンを示す複数のクラスターが見出され、ヒトサンプルのクラスターと共通するものも見られた。各クラスターの解析を行ったところ、FAPα+THY1+クラスターにおいては炎症性サイトカインやケモカインの発現が高かった。一方、FAPα+THY1クラスターはRNAKLやプロテアーゼの発現が高く、破骨細胞分化支持能を示した。STIAマウスの関節にこれらの細胞を移入したところ、FAPα+THY1+細胞は炎症を増強する一方関節破壊には影響せず、FAPα+THY1細胞は炎症への有意な寄与は見られないものの関節破壊を増強した。以上より、関節炎病変部の線維芽細胞には複数のサブセットが含まれ、病態形成において異なる機能を有することが示された。

    CLCN7

    Clcn7変異によるマウス常染色体優性遺伝大理石骨病II型の骨外病変–臨床および治療上の意義–

    原題:

    Extra-skeletal manifestations in mice affected by Clcn7-dependent autosomal dominant osteopetrosis type 2 clinical and therapeuticimplications

    著者:

    Maurizi A, Capulli M, Curle A, Patel R, Ucci A, Côrtes JA, OxfordH, Lamandé SR, Bateman JF, Rucci R, Teti A

    雑誌:

    Bone Res., doi: 10.1038/s41413-019-0055-x, 2019

    POINT!

    常染色体優性遺伝大理石骨病II型 (ADO2) はCLCN7が原因遺伝子の変異により骨吸収不全をきたす疾患である。CLCN7は骨以外にも多くの臓器で発現するため、ADO2における骨外病変の存在が想定されるが、系統的な解析はされていない。そこで著者らは、ADO2の骨外病変の詳細な検討を行った。ADO2患者の検査所見により、脳/血球/筋/腎などに異常所見が見られた。マウスではこれらの臓器と肺でClcn7発現が高かったため、ADO2モデルマウスの肺/腎/筋/脳の解析を行った。これらのマウスでは、TGF-βシグナル経路に関わる遺伝子群の発現パターンが野生型のそれと異なっており、マクロファージに特徴的な遺伝子や線維化関連遺伝子が高発現していた。これに一致して、ADO2モデルマウスの肺/腎/筋ではマクロファージの集積とSmad2/3リン酸化亢進を伴う線維化が認められた。さらに、脳組織では血管周囲の線維化、β-アミロイドの沈着、アストログリアの増殖が見られた。免疫細胞染色法により、変異CLCN7は野生型とは